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ホラクラシーで事業って回るの? 新規事業開発やってる岡村さんとおしゃべりしてきた


広報としていろんな取材や問い合わせに対応していると、結構な数の場面で聞かれる質問がある。

「ホラクラシーって、本当に組織として機能するんですか? 仕事回らなくなったりしないんですか?」

私はむしろこの質問をしてくる記者や編集者は信頼できると思っている。なぜなら私も同じように思っていたし、今のダイヤモンドメディアのあり方、もっと言えば仕事の進め方についても(ホラクラシーであれなんであれ)完全なる発展途上であり、もっともっと進化していく余地があると思っているから。

そこで今回は、主に新規事業を手がける取締役の岡村雅信と話してみた。創業当時は大学生のアルバイトだった岡村。10年間、ダイヤモンドメディアと共に歩み、様々な案件に携わってきた。(ちなみにTOP写真は社員旅行にて撮影した岡村さん(餅つき中))


彼に聞きたかったことは2つ。

・ダイヤモンドメディアはミッションやビジョンを掲げない、と言っているけど、これが無い状態で事業って回るの?

・実際現場でやりにくいことも多いのでは? 嫌になることない?

では、見てみましょう。


▲今回おしゃべりした岡村さんwithヒョウモントカゲモドキ氏

会社のミッション・ビジョンはない。でも「サービスを通して実現したいこと」は常にブラッシュアップしている。

ーーうちの会社って、ミッションとかビジョンを明文化しない、と言い切ってるじゃないですか。でも、色々な組織論の教科書的な本には、そういったものを明文化しておくことの重要性がひたすら書かれてる。これがない状態で、事業って回るの?

岡村:会社としては明確には作ってないですね。でも、「サービスを通して実現したいこと」については常にチーム内で議論し、ブラッシュアップしていますよ。

ーー具体的にはどんな内容なんですか。

まずはそのサービスで解決したい顧客の課題がありますよね。シンプルに、その課題をちゃんと解決できる、ということが一番のミッションです。それで、解決したい課題に対して解決策がフィットしない、顧客が使いこなせないなら、アプローチを変えてフィットさせて、使いやすくしていく。

もっとわかりやすく言えば、そのサービスのメリットを研ぎ澄ましていくことですね。ダイヤモンドテールは集客。OwnerBoxはオーナーと管理会社のコミュニケーション、業務効率化。Centrl LMSは賃料査定業務の効率化と募集業務の可視化。

壮大なものではなく、目の前で使ってくれているお客さんを大事にするということが、まずは何より重要だと思います
ただ個人的には、会社としても(ミッションやビジョンは)あった方がいいんじゃないかなと思います。採用するにあたって人のフィルタリングもできるし、「この会社にいるメンバーはこういうことしていきたいんだよね」と立ち返るところがあるというのは悪いことではないと。

昔は「人それぞれ」「個人を尊重しよう」という考え方で、一人一人が自分の考えを持ってベストを尽くそうという空気でした。働き方や考え方を尊重するのはもちろん良いことだと思います。でも、組織のあり方という点ではどうなのだろうと思うところも多いですね。

働き方が多様化している中で、お金のことだけ考えれば会社に所属して働く意味ってなくなっていくわけで。組織として成し遂げたいことがあって、この組織でそれをやりたい、という人が集まってくる、というのが最初にあるということで良いと思うんです。

それがないのに人が集まるというのは、単にその会社の名前に惹かれて「どこでも良いから雇用されて安心したい」とか、起業するなら「会社を作ってみたい」とか、そういうモチベーションだということですよね。先に人が集まって、その人たちで「じゃ、何する?」っていうサービスの作り方も今まではあったと思うんですが、それも減っていくんじゃないかなぁ。

ーー確かに。働き方が多様化していけば人材の流動性も高まるし、複数の企業に所属するハードルも下がっていく。そうなれば「参加するプロジェクトを決める」くらいの感覚で転職するようになるのかもしれないですね。

そうですね。なんとなく、みんな会社っていうものを重く捉えすぎな気がします。「一つのプロジェクト」ぐらいの感覚でいいのではないでしょうか。

ミッションやビジョンとかだって、壮大なものを語らなきゃいけないと思いすぎなんですよ。

うちの会社のミッションも、もっと気軽に決めればいいのになと個人的には思っています。会社の事業に紐づけて、整合性の取れたミッションに調整しようとすると、なんか無理やり作ったみたいなものになってしまいますよね。

極端な話、今やってる事業に紐付ける必要はないと思うんです。「たくさんのプロジェクトが生まれるコミュニティを目指す」でもいい。企業が大切にしているものや軸をはっきり示せれば。

目指していきたいものが変わっていくのもいいんじゃないですか。人の価値観、大切にしてるものも変わっていきます。普遍的な大事なものを掲げようとするとわけわかんなくなるので(笑)。

時代にあった形で見直す、定期的に変えていくことを前提として良いんだと思うんです。その代わり、今大事にしてるものはその都度発信していかないと、その時の組織にマッチしない人が入ってきちゃうので。

シビアな環境に身を置かなければ、人もサービスも成長しない

ーー事業を成長させるという観点で、岡村さんが心がけていることはありますか?

ホラクラシー経営とかティール組織とか色々言われますが、これは全部、自社サービス型のビジネスモデルに切り替えて地道にお客さんとの関係性を作ってきたからこそできていること。受託開発だけで食いつないでいた時代は今より自由じゃなかったし、今の方が厳しさみたいなものはないように思います。それ自体に良い・悪いはないと思うのだけど、やっぱり社内でもお客さんとの距離が近い人と遠い人に分かれています。
あくまでもお客さんと僕らは対等な関係だけど、クライアントがいるから成り立っているビジネスモデルな訳で。当たり前だけど、お客さんがいなくなってしまったらそもそも会社として存続していくことはできません。そのことは、一人一人がより自覚しないと。でもそれって気持ちの問題だけで解決できるものではないので、体制や仕組みとして、エンジニアにも客先とのミーティングに同席してもらったり、あえて担当企業を決めずに満遍なくお客さんに会うようにするとか、いろいろ実践しています。

一番効率よく進めようと思えば、社内では一番経験も長いし、サービスに関する知識もあるから、俺がフロントに立つのが早いし確実なんですよ。でもそうすると、熱量やお客さんへの知識量にムラが出てしまう。加えて、みんなの成長機会も、サービス品質の向上機会も奪ってしまう。
「自由で緩い」ではない、同じくらいみんながクライアントと接する機会のある、シビアな環境。これは悪いことではなくて、ステークホルダーからのシビアな圧力によって背中を押されたり、成長できることも多いんです。そういう環境にしていくということがいいサービスづくりにつながると考えています。

大事なのは、チームがお客さんの方を向いて運営されていることです。

少し話が脇道に逸れますが、うちの会社では、社内制度などをみんなで作るのが特色だと思うんですが、その仕組みが社内のメンバーだけでなく、お客さんも含んだステークホルダー全員にとっていい仕組みになっていかなければいけないと痛切に感じているところです。

働いている人にとって良い仕組みになっているのは当たり前。関係している他の人にとってもいい仕組みを作れなければそれはただの自己満足。ステークホルダーが社外にもいることを意識してやっていくのが、私たちの次のステージだと思います。

ホラクラシーだからやりにくいこと。「命令できちゃえば楽なのに」と「教育のこと」。

ーーうちの会社は上下関係もなく、役職が決まっていないですよね。事業を進めるのは、大変じゃないですか?嫌になることない?

この状態でずっと仕事をしているので比較ができませんが、あえて大変なところを挙げるなら、命令ができないところですかね。する気もないけど「命令できちゃえば楽なのになぁ」と思うことは多いです。

ーー「命令できちゃえば楽なのに」って、他の会社ではなかなか無い悩みかもしれませんね。でも、外部の人を入れてプロジェクトで動いたりする時には同じような悩みが生まれるのかも。

そうですね。今のチームでは、具体的な指示はあまりしないようにしています。だからその分、一人一人が能動的にやる必要があります。とはいえ知識量も違うし、業界に対する経験値も全然違う。背景の共有をすっ飛ばして、「これはこうじゃないかな」という感覚の部分は、同じくらいの経験や知識量がないと「そうだね」ってならないと思うんですよね。

業務知識も業界経験も浅ければ、「確かに、こういう時はこの判断になるよね」と共感してもらえない。この共感の部分って難しくて、説明したり、教えてどうこうなるものではないではないじゃないですか。明確な上下関係があって、コンセンサスを取らずに命令して終われるならその方が楽だよなぁと。

ーーあぁ…。新規事業だと特にそういう共感要素を共有できるかどうかって重要ですよね。

まさに。新規事業って、答えがない。「ここまでいったらゴール」というものがなくて、走るしかない。走りながら考えていく。そういう時に、知識や経験の少ない人に合わせて時間がロスしちゃうのは単純にもったいないです。新規事業は「ナマモノ」。いいアイディアでもスピードが遅いと腐ってしまうので、スピードも大切にしていきたい。

とは言え、多分この差って、よっぽど頑張らない限り埋まらないと思うんですよね。業界のつながりが多いから、お客さん以外からも情報は入ってき続けるし、もちろん自分でも情報を集めに行くし。

よく「岡村さんがいうとそれが正解になっちゃうから(黙ってて)」みたいに言われるんですが、それもおかしいよなと最近感じていて。俺が声がデカイのはその通りだけど、でも俺が仕事全力でやるのは、それはそれでよくない?(笑)

周りを見て自分の仕事のペースをセーブするというのはおかしな話だと思うので、今後もこんな感じで仕事はします。ただ、実務からは少しずつ離れて、新規事業の開発に集中できる環境にはしていきたいですね。それが会社にとって必要なことだと思うので。むしろ、俺が実務から離れていくことで「岡村よりも自分たちの方がサービスに詳しいです」と胸を張ってお客さんと話せるようになってほしいです。知識も大切ですが、自信をつけることも成長には必要だと思っています。

ーーなるほど。他に、ホラクラシーならではのやりにくさってあります?

あとは教育の難しさかな。

別に上下関係じゃなくても、明確に「この人が教育係」とか決めてしまえば、仕事の進め方から資料の作り方に到るまで指摘できると思うんだけど、それがなければただ文句を言われただけのように感じてしまって話が入ってこない。でも実力の差はあるから、そこを埋めるための努力が本人の心がけだけになってしまう。それって、「実力がある人」というリソースを会社がうまく使えていない状況はシンプルにもったいないなーと感じる時があります。

▲声が大きくて怖がられることも多いんですが基本めちゃくちゃ優しい人です。※Google社とは関係ありません

ホラクラシーだからよかったことも、もちろんあるよ。

ーー逆に、事業をすすめる上で「ホラクラシーだから良かったこと」ってあります?

ありますよ。一概には言えませんが、他の制作会社さんと比べると、最終的にはかなりお客さんに親身になってやれてるのかなと。

例えば受託のシステム開発でも、要件定義が一度FIXしたらそのまま進めて、後で仕様変更があったら追加費用請求、とかよくあるパターンですよね。売り上げが増える方がいいから、「これはうまくいかないだろうなぁ」と思っても黙っている、という会社も少なくないです。追加費用ももらえて、結果的に担当もマネジャーも評価される。「プロジェクトが成功したかどうか」は売り上げに関係ない。失敗してもそれが得になっちゃう構造なんです。

でも、うちの会社だと、お客さんと一緒にプロジェクトを進めるという意識がすごく強いので「その機能本当に必要ですか?」って結構はっきり聞きます。そうすることが、結果的にお客さんにとってはいいと思うからです。だから、普段付き合ってる会社よりは生意気かもしれません。お客さんからすると面食らう場面もあると思いますよ(笑)。

「後から追加費用とればいいや」って思っていれば、絶対聞かないことも最初からどんどん聞いていきますからね。お客さんに対するスタンスが厳しいと言わたこともあります。受託開発でも、自社サービスでも、はっきりしないお客さんにはきちんと言うし、うまくいきそうにないことはうまくいかないと伝えます。

契約上は、もちろんお金をもらってるわけだからパワーバランスはお客さんの方が上です。でもそれ以上に、同じプロジェクトのメンバーだと思ってますからね。「成功させたいですよね。一緒に幸せになりましょう!」という気持ちで取り組むと、自然と言わなきゃいけないことって出てきます。

それが「ビジネスやプロジェクトにコミットする」ってことなんじゃないかなと思うんです。ここは契約書には書けないですからね。だから付き合ってみないとわからない部分だけど、俺はすごく大事にしている部分ではありますね。

まとめ

ホラクラシー組織で事業を進めていくということの難しさは、そのまま「人の成長についてどう考えるか」という問いに繋がるなと今回初めて気づいた。

なぜなら組織の成熟度と個人の成長スピードが、ビジネスの成長に直結するからだ。「トップダウンで命令したり、数値目標やノルマを決めない」ということはすなわち「誰かが描いたサクセスストーリーに乗っかることはできなくて、ひたすら自分たちが成長していくことでしかビジネスが成長しない」ということだから。

複数名の組織である以上、そこにいるメンバー間で実力の差が生まれることは仕方ないのだけれど、その「差」についてどう考えるかは答えのない問いだ。
みんなに成長するよう求めるというのもなんとなく違う気がするし、でも放置するのが正しいのかと言えばそうとも言い切れない。結局メンバー間でコミュニケーションを重ねていくしかないのだけど、「命令できちゃえば楽なのにな」という岡村さんの呟き、すごく切実だった。

でも、こういう組織だからこそ生まれる「寄り添い感」はそのままビジネスにも反映されている。社内だけじゃなく、クライアントに対しても。これは新たな気づきだった。
「ホラクラシー」は組織運営の方針であって、本業とは関係ない気がしていたのだけど、そんなことも無いのかもしれない、もっとつながりがあるのかもしれない、ともふと思った。この「ホラクラシーならではの、お客さん側から見たメリットをもっと見出して伝えていく」、そんな広報活動もこれからやってみたいなと思った、岡村さんとのおしゃべりでした。おしまい。

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