私たちcovsは、長野県白馬村に事務所がある制作会社です。デザイン事務所業務の他、店舗型のオンデマンド印刷所の運営と写真・動画撮影を主な業務として行なっています。
デザインをするだけの従来のデザイン事務所ではなく、もっとお客様と近い距離で、まずはどんな小さなことでも気軽に相談できる「地域の相談窓口」として、頼られる存在を目指しています。
今回は代表取締役の太田さんにインタビューを実施。covsが大切にしている価値観や今後の展望についてお話を伺いました!
【プロフィール】
太田 祐一(おおた ゆういち):代表取締役。2010年に某有名事務所のアルバイトからデザイナーキャリアをスタートし、その後デザイン事務所と広告制作会社を経て2016年に独立。フリーランスのグラフィックデザイナーを務めたのち、2021年5月に株式会社covsを創業。モットーは「すべての仕事にデザインはある」。
「北アルプスエリア で、デザインはcovs」と言われる存在になりたい
――太田さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
高校卒業後に上京し、家具のデザイナーを目指して、インテリアデザインの専門学校に通いました。就職先も大手の家具屋だったのですが、そこでたまたま販促用のポスター制作に携わることになりまして。続けていくうちに、とても面白い仕事だなと感じるようになりました。
「デザインのプロになりたい!」という強い衝動に駆られた末に家具屋を退職し、24歳でデザイン事務所の扉を叩きました。また、並行してデザインの専門学校に通いながら、専門的なスキルを身につけていきました。
自分が生まれ育った長野県白馬村に戻ってきたのは、子どもが産まれたことがきっかけです。自然豊かな環境のなかで子育てをしたかったんです。当時は東京でフリーランスデザイナーとして活動していましたが、2017年冬に家族で白馬村に引っ越すことに決めました。
――拠点を白馬村に移したあとも、しばらくはフリーランスとして活動していたんですよね。そのようななかで、起業の道を選んだのはなぜですか?
「北アルプスエリアをクリエイティブの力で押し上げたい」という想いがあったからです。
当時、このエリアに特化したデザイン業務を行っている制作会社はなく、大都市の地域の会社が仕事を受注している状況でした。だからこそ“北アルプス地域で、デザインといえばcovsだよね”と言われるような唯一無二の会社を創りたかったんです。
もちろんフリーランスのデザイナーであっても、仕事を通じて地域に貢献することは可能です。ただ、自分1人ではできる事柄に限界がありますし、地域の方々からの信頼度という点でも物足りない面があります。地域のニーズを拾い上げながらエリアに対して強い影響力を発揮していくためにも、起業という選択が必然だと感じました。
お客様のニーズをすぐに汲み取れる距離感が魅力
――現在はどのようなお客様が多いのですか?
地元のお客様が大半で、その多くが個人事業主のお客様です。北アルプスエリアは地域柄、新規事業へのハードルが低く、飲食業や宿泊業、施工業などに新しく参入する個人事業主の方が多くいらっしゃいます。そうしたお客様から、店舗や事業用のwebページ、ロゴや看板、リーフレットなど多岐にわたる制作物のデザインを依頼いただいています。
ちなみに、最近は宿泊施設の予約サイトのオーダーをいただくことが多いですね。制作周りの仕事を含め、お客様のブランディング活動全般に携わらせていただいているイメージです。
――営業活動はどのように行っているのですか?
新規開拓はほとんど行っておらず、ほぼ100%お客様間の口コミでオーダーをいただいています。お客様との距離が近いため、すぐに仕事につながるメリットがありますね。
先日もたまたまコンビニでお客様に会ったのですが、その場の世間話で、納品したロゴやHPのデザインに対する反応やフィードバックをいただけたんです。そうした気軽にコミュニケーションを取れる距離感は、制作業務においてとてもプラスになる部分です。
またありがたいことに、一度制作業務を担当したお客様から、追加のオーダーをいただくケースも多々あります。
――太田さんは東京でのクリエイティブ活動の経験もありますが、現在の仕事とどのような部分に違いを感じますか?
一番の違いは、お客様のニーズの汲み取りやすさですね。
東京での仕事は、依頼主とデザイナーとの間に、たとえば広告代理店や自社のADなど介在する人物が多いことに苦労しました。伝言ゲーム形式に話が変わっていったり、自分が提案したいデザインが実現できなかったりと、僕にとってはストレスも大きくて。
ただ、現在は依頼主様とじかにやりとりを行うことができます。先方の考えやご要望を自分でいくらでも聞き出せるから、とても仕事がやりやすいんです。
一方で、その分デザイナーにはマルチタスクが求められます。ただデザイン業務に専念すればよいというわけではなく、会話力やビジネス能力など総合的な力を磨く必要がありますし、当社の社員にもそうあってほしいと考えています。
――なるほど、だからこそcovsでは、1人のデザイナーが最初の打ち合わせから納品までワンストップで案件を担当しているのですね。
そうですね。現在、お客様への初回ヒアリングの際は、僕と一緒に当社の担当デザイナーにも必ず同席してもらうようにしています。お客様との世間話のなかで、いかにお客様の人となりや家族構成などへの理解を深めていくか。洞察力を高めることが、最終的にお客様に喜んでもらえるアウトプットの創出につながると思うんです。
covsがハブとなり地域のお客様の想いを叶えていく
――会社としてのミッションを教えてください。
この地域に根差した制作会社として、「責任を持ってやり遂げること」が当社のミッションだと考えています。実際に行政からお任せいただいている仕事も多々ありますので、地域のブランディングに携わっているという認識を常に持ちつづけること。また、どんなに小さな仕事であっても、なるべくすべてのニーズに対応していきたいという想いがあります。地域のみなさんの“お困りごと”に応えられる最後の砦でありたいんです。
たとえば以前、「自分で名刺をデザインしたものの、印刷の方法がわからない」というお客様がいらっしゃいました。そこで、そのようなお客様にも気軽に利用していただけるよう、事務所内に店舗型オンデマンド印刷所を作ったんです。まさに「駆け込み寺」ですね(笑)。
――白馬村という地域全体のブランディングに貢献するという想いで事業を行っているのですね。
はい。そもそも、白馬村自体が長野五輪の競技会場にもなったことで、いまだに海外からの旅行客が多い地域なんです。またコロナ禍による都心からの移住者増加の影響や、地域をあげてSDGsに取り組んでいることもあり、非常に多様性に富んだエリアです。
そうした多様な考え方や価値観を持った方々が共存する環境下で、covsも多様な人材が集まる場所でありたいと思っています。実際、当社ではグローバルメンバーのデザイナーも活躍していますし、これからもさまざまな感性やものの見方を大切にしていきたいと考えていますね。
――そうしたミッションを踏まえ、covsの中長期的な目標は?
最終的なゴールとして、「当社がこのエリアのコミュニケーションツールになればいいな」と考えています。お客様の想いを受け止めながら、お客様が想定するターゲットに対して“ちゃんと届けられる制作”ができる会社を目指しています。
そのために、今後数年間は「経営の安定」「仕事の安定」「組織の安定」という3つの方針を掲げています。具体的には、きちんと利益を生み出す仕事をしていくこと、受注のサイクルをコントロールできるようになること、それらの実現のために人材を増やしていくことが注力すべき課題です。
――短期的には、どのような目標を掲げていますか?
「写真・動画事業」の事業化です。既に社内に専用のスタジオを制作中で、「fotosta!」というブランドを立ち上げました。“デザインのcovs、写真のfotosta!”というイメージです。
僕自身もプロカメラマンとして活動していますが、写真・動画に精通した地域の人材はまだまだ不足している状況です。地元の天候の感覚や、場所の距離感などをよく把握している人にこそ表現できる世界があると思いますので、人材育成を行いながら、事業として確立できるまでに高めていきたいです。その結果として、地域のクリエイティブを底上げできたら嬉しいですね。
自分らしいクリエイティブを生み出せる人材を目指してほしい
――一緒に働くメンバーたちに期待することを教えてください。
僕のコピーはいらないと思っています。ポジションとしての違いはありますが、当社のメンバーはみな対等な立場だと思っています。だからこそ、自分自身の個性を発揮しながら、僕と違うことができる人=自分らしいクリエイティブを作りあげられる人になってほしいですね。
お客様に対しても、必要だと思うことがあればきちんと意見をし、よいものを生み出すためにしっかりと議論を重ねていく。そんな姿勢を持った人になってもらいたいと考えています。
――最後に、求職者のみなさんへメッセージをお願いします!
楽しみながらポジティブに取り組める方と一緒に働けたら嬉しいですね。
デザイナーは大変な仕事だと言われがちですが、まずは自ら仕事を楽しむことが大切だと思っています。辛い事柄を乗り越えて納品した先に、お客様の笑顔が見られる。その喜びが大きな原動力になるからです。
当社は少数精鋭で地域密着の仕事ができますし、仕事の合間に豊かな自然に触れながらリフレッシュすることもできます。ぜひそうしたのびのびとした環境のなかで、一緒に楽しく働きましょう!