人々の生活から、「めんどくさい」をなくす。
というミッションを掲げ、”予約”を切り口にビジネスオーナー・エンドユーザーへ様々な価値を提供しているクービック株式会社。
Coubicは今年6月、Zoomとの機能連携を開始しました。公開APIから機能を連携するだけではなく、Zoom本社の正式な審査を通過し、ZoomとAPI連携可能なアプリとして「App Marketplace」上に掲載されているサービスは、まだ日本でも数えるほどです。
まさに新型コロナウイルスの感染拡大が叫ばれ、世界が今より混沌としていた2020年春。かつてないスピードで実現したCoubicのZoom連携開発の舞台裏を、当事者4人にインタビューしました!
クービック株式会社
カスタマーサクセス[CS]:
寺門 諒太 (中左)
北村 祐一 (中右)
エンジニア[Eng]:
伊藤 薫人 (外右)
岸本 優一 (外左)
自社メディアの流入増からニーズを察知し、仮説8割で開発をスタート
ーZoom連携開発がスタートした、そもそものきっかけは?
寺門[CS]:CoubicでZoomが頻繁に使用されるようになったのが、2月下旬から3月初旬の時期でした。Coubicが運営する自社メディア「ビズシル」に、ヨガやフィットネスのオンラインレッスンの始め方を解説した記事を掲載したんです。その記事への流入が日ごとに増えていたのを受けて、「オンラインレッスンのニーズが伸びている」と判断しました。顕在化したニーズの存在は2割くらいで、8割は仮説ベースでしたが、オンラインレッスンに注力することを会社の戦略として決めました。
北村[CS]:そのとき僕は、カスタマーサクセス担当として毎日お客さんの声を聞いていました。「8割が仮説」というのは現場の感覚もそのとおりで、お客さんもZoom連携がどんな風に便利なのかイメージできておらず、話がふんわりしていたのを覚えています。
寺門[CS]:そしてほぼ同じころ、3月初旬〜中旬の時期に、オーガニックライフTOKYOという大規模なヨガイベントのオンライン開催の話が舞い込みました。イベントのスポンサーだった企業さんがCoubicを利用してくれていて、「オンラインでどうやって開催するか?」という相談をもらったんです。
ーその時点では、まだ機能連携の開発はされていないですよね?
寺門[CS]:はい。イベント開催初日の4月17日に向けて、スポンサーさんと準備を進めたんですが、結果的にはオペレーションでかなりバタバタしました。オーガニックライフTOKYOは毎年かなりの規模で開催されてきたヨガのイベントで、オンライン開催では約10万人もの参加者数を見込んでいました…!予約ページや受付のスロットが何個もあると、1つ1つにZoomのURLを手動で振らないといけなくて。人の手でそのオペレーションをやると、どうしてもミスが起きてしまい、カバーするのにさらに工数がかかります。
北村[CS]:そのエラーで参加者さんがレッスンを受けられなくなるのが、何よりクリティカルな問題ですからね。
寺門[CS]:そうですね。今後オンラインレッスンに力を入れるとしても、ここが自動化されないとずっとヒューマンエラーが起き続けると考え、開発側に要望をあげました。
※プレスリリース:世界最大規模のZoom×Coubic利用によるヨガイベント開催
やると決めたら1日で!ビジネス側の課題抽出から一気に要件定義へ
ー3月下旬というと、まだ緊急事態宣言が出るか分からなかった時期ですよね。日本だけでなく世界的な経済情勢も先が見えなかった中、スピーディーにプロジェクトを進行できたのがすごいです。
寺門[CS]:開発が決まると、すぐにCS側でオペレーションのフローを整理しました。オンラインレッスン開始までの業務フロー、ユースケースなど、想定できることを全部洗い出し、ドキュメントに落として可視化したんです。さらに、人の手でオペレーションを行なう中でエラーが多かった箇所を特定して、自動化すべきポイントを整理しました。これ、1日でやりました。
ーたった1日ですか!
寺門[CS]:午前中に開発側に話をして、そのまま要件定義に取り掛かって……1日で一気に集中してやりきりましたね。
伊藤[Eng]:開発側にワイヤーフレームが共有されたときには、かなり機能が絞られてシンプルな要件にスッキリまとまっていました。VPoEの佐藤(取締役)が、話が持ち上がったその場ですぐに書いてくれたんですよね。
寺門[CS]:佐藤と相談して、最初からスコープをミニマムにしたんです。例えばZoomにはミーティング機能の他にウェビナー機能もあって。お客さん全員の要望を満たすには両方とも必要でしたが、スピード重視でまずはミーティング機能だけに集中することにしました。
伊藤[Eng]:これが本当に必要最低限で、シンプルだったのが勝因だと思います。結果として1ヶ月くらいで機能をリリースすることができました。あのとき、もう1つでも何か気の利いた機能が追加されていたら、実装までもっと大幅に時間がかかっていました。
英語が前提 Zoom本社の審査基準を満たす開発の苦労
ー普段の開発の進め方はどんな形なんですか?
伊藤[Eng]:今はスクラムで開発を進めていて、2週間で1スプリントという感じです。Zoom連携は2〜3スプリントくらいで収まりましたね。毎週の進捗確認をしながら、CSとの間で決定した優先順位に基づいてやっています。
寺門[CS]:1つの開発に対して、1週目の前半くらいで一度進捗を確認。2週目にはもう次の開発の準備に入り、何を開発するかを話し合います。このサイクルがうまく回っているおかげで、開発スピードが以前に比べて早まったと思います。
ースピーディーな開発が実現できた理由は他にもありますか?
伊藤[Eng]:あとは、QAを社外に委託していることですかね。クービックの場合は、テストは割と積極的に外出ししていて。自社のエンジニアが検証環境でテストをするにはけっこう時間がかかるので、スピード面でのメリットは大きいです。
ー開発側の業務レベルで何か苦労した点はありましたか?
岸本[Eng]:今回は、Zoomの審査を受ける上で、一定の要件を満たす必要がありました。API連携という意味では他のケースと基本は変わりませんが、Zoomの基準に細かく合わせないと意図どおりにならない点は苦労しました。初めての取り組みで社内にノウハウもなかったですし。
伊藤[Eng]:一時期、Zoomのセキュリティの問題が取り沙汰されていたと思いますが、セキュリティの関係からか、リフレッシュトークン (リフレッシュトークン: webサービス利用の際、サーバーがユーザーを認証するために払い出す認証情報) あたりの制限が厳しかったですね
岸本[Eng]:リフレッシュトークンが1回しか使えなくて揮発するっていうのが難点ですね。トークンをZoom側へ確認するチャンスが1回しかない。
伊藤[Eng]:そうですね。Zoom予約の度にトークンを更新しないといけない場合が多いのが、意外と難しかったです。あと、Zoomとの連携に関する日本語の技術記事とかも一切なくて。英語の情報のみなので、ドキュメントを読んでいくのも大変でした。
ーGoogleとの機能連携も開発されていますよね。英語にはもともと強いチームなんですか?
寺門[CS]:代表の倉岡や、エンジニア側も佐藤をはじめとして英語のコミュニケーションができる人が社内には多くいます。Zoomの審査では、英語の自社サイトを持っていることも条件になっていました。クービックはもともとインバウンドの需要向けに、早くからプロダクトを海外対応させており、それが功を奏しました。GoogleのほうでやってきたことがZoomとの連携で活きた部分は、実際あったんですか?
伊藤[Eng]:その2つは地続きのイメージですね。概念的には「Googleで予約」の方が難しい気はします。
岸本[Eng]:Googleについては、つい先日「Googleで予約(Reserve with Google)」の連携に関するプレスリリースを出したばかりです。こちらはAPIでもないのでドキュメントもない。1からGoogleと一緒に開発をやる感じだったので、確かに難易度は高いと思います。
過去イチで大きい反響がクライアントからどしどし
ーZoom連携をリリースした後、お客さんからの反響はどうでしたか?
北村[CS]:率直に、すごかったです!今まで色々な機能の追加開発をやってきましたが、過去イチの大きさで反響があったと思います。お客さんの利用率のデータを見ても、明らかに高い数値ですね。
伊藤[Eng]:機能の設定画面で、1日にかなりの数の設定が行われていましたよね。
北村[CS]:まだ開発最中の3月下旬ころは、お客さんから事業経営についてシビアな相談が増えていました。新型コロナ感染のリスクが日々拡大し、「事業を縮小すべきか」「どう経営を見直していくか」という話が飛び交う中、Zoom連携への期待感は大きかったです。リリース後は「早速使ってみました!」というポジティブなフィードバックをたくさんもらいました。
寺門[CS]:この連携を皮切りに、フィットネス領域の大手企業との取引開始が一気に進んだことも、事業インパクトとして大きかったです(KONAMI、セントラルスポーツ、メガロス、ルネサンス等)。開発までのプロセスはもちろん、その後のセールスの協力も含めて、クービックのバリューである「Teamwork」を体現できた事例だと思います。
ーこの新しい機能連携について、さらに新しい改善も加えていくんですか?
寺門[CS]:最近では、自動チェックインという機能を他社に先駆けて実装しています。オンラインレッスンをZoomで実施する場合、出席確認がけっこうネックなんです。自動チェックイン機能によって、申込者に個別の暗号化されたURLを振ることで、主催者が簡単にCoubicの管理画面にて出席を確認できるようにしました。
伊藤[Eng]:改善というか、リリース後に比較的大きいバグが見つかったときは、想定外の事態で焦りました。機能をミニマムに絞ってスピード重視でリリースしましたが、すごい勢いで使われるので、不具合とか改善がすごいスピードで見つかります。多数のフィードバックを受けながら、今ではだいぶいい感じの機能に仕上がってきていると思います。
岸本[Eng]:もう今になると、開発した3月当時のことはぜんぜん覚えてないんですよね。でも、Zoomに関するノウハウがなくて苦労した反面、新しいことを吸収できるのは逆に楽しかったです。
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