大谷真緒(おおやまお)さん 神奈川県茅ヶ崎市出身。ロンドン生活を経て、現在ベルリン在住。DIGLE MAGAZINE 立ち上げ当初から交流を持ち、現在は業務委託として関わるメンバー。ジェンダーはノンバイナリー。 こんにちは、コーポレート部門の栗原です。今回は、現在ベルリン在住でDIGLE MAGAZINEの立ち上げから関わってくださっている大谷真緒さんにインタビューしました!真緒さんは普段、日本時間の夕方から稼働してくださっています。
ーロンドンからベルリンでの生活に移られていかがですか?真緒さんが住みやすい街でしょうか?今どのように過ごされているか、教えてください。
今まで自分が住んできた東京やロンドンに比べると、ストレスをあまり感じずに、リラックスして過ごすことができています。イギリスではイーストロンドンに住んでいたのですが、都会で人口も多いですし、街がずっと忙しく動いていたので、つられて自分自身も慌ただしい生活をしていたように思います。ベルリンは首都ですが、ベルリンの壁崩壊を経て、荒廃とした状態から徐々に立て直してきた街なので、都会に比べると人口も高層ビルも少なく、街の中に緑が溢れていて、ほどよく田舎のような雰囲気が漂う街です。
生活のことでいうと、去年の3月に引っ越してから最初の方は忙しくしていましたが、半年目ぐらいから生活の基盤が整ってきたこともあり、少しずつですが心身のバランスが保てるようになってきました。ベルリンのゆったりとした空気の中で過ごしているからこそ、自分のペースで生活を送れている気がします。
ベルリンの街中
ベルリン・ノイケルン地区の川沿い
ベルリンの公園 Mauerpark
ベルリンの中心部を流れるシュプレー川
ーロンドンとベルリンの音楽事情において感じていることや、気づきはありますか?
私の視点から見ると、ロンドンの音楽シーンの魅力は、さまざまなスタイルとジャンルが融合する多様性。それに対し、ベルリンは独自性のあるクラブカルチャーでよく知られています。
私は日本に住んでいた時からロンドンのバンド・シーンやアーティストが好きで、特にロンドンのインディロックバンドに夢中でした。なので、元々シーンが広いことも知っていたんですけど、実際にロンドンに来てみると、毎日、数多くのライブが開催されていることに、本当に驚きました。また、自分の好きなアーティストが、身近にいることに興奮したことを覚えています。ロンドンに移住するアーティストも多く、コミュニティの絆も強いため、至るところで新しいものが生まれるエネルギーを感じました。
ベルリンのクラブカルチャーは、この街を象徴する一つです。小さな街ながら、大小合わせて約300以上のクラブがあって、クラブを目的に他国から来ている人にもよく出会います。特にドイツ政府から文化的に重要な施設と認められたBerghainというクラブには、入場するために長蛇の列ができることも。私は初めてベルリンを訪れた際にBerghainへ遊びに行ったのですが、このクラブの自由な文化や人々の持つエネルギーに衝撃を受けて、その日のうちに移住することを決意しました。ベルリンではダンスミュージックを通した人との交流が盛んなので、お互いにインスピレーションを与え合いながら、創造性を刺激しあっている感覚があります。
コロナ禍でナイトクラブとしての営業はしていなかった時のBerghain(2021年夏)
ー好きな音楽について教えてください。
ここ数年、ダンスミュージックが特に好きで、クラブにもよく遊びに行きます。DJがかける音楽に合わせて踊るのも好きですし、ダンスフロアで生まれるつながりや一体感が私はとっても大好きです。クラブに行くようになってからは、日本でもロンドンでもベルリンでも新しい友達ができたのと、クラブカルチャーを知っていくことで、自分の行動や考え方も変わりました。
また、自分にとって居心地のいい場所がクィア・コミュニティだったので、クィア・パーティーによく足を運んでいて、ロンドンに住んでいた時は、特に<Boudica>や<UNFOLD>というパーティーに遊びに行っていました。
ベルリンに引っ越してからは、他のことに夢中になる時間が多くなったことで、ナイトクラブにはあまり行かなくなってしまったのですが、たまにBerghainだったり、自分の好きなコレクティブが開催しているパーティーに遊びに行きます。
ー特に影響を受けた映画はありますか?どういうところに共感や発見がありましたか?
私は好きな映画を繰り返し観るタイプなのですが、特に『パロアルト・ストーリー』という映画は、6年間ぐらい、毎年必ず観ているように思います。ティーンの日常を描いている青春映画なので、影響を受ける点では、何も影響を受けていないような気がするのですが、やっぱり何年も観ていると、自分も成長して価値観や考え方も変わってくるので、一番最初に観た時には共感できなかったキャラクターに共感ができるようになったり、新しい気づきがあったりして、最近は、繰り返し同じ映画を観るという行為に面白さを感じています。
『パロアルト・ストーリー』は、日常の一コマを映し出している物語だからこそ、飽きないのかもしれないですし、私は映画の色使いや雰囲気、流れている音楽も大好きなので、ついその世界に浸りたくなる映画です。
ー座右の銘を教えてください!
”the darkness that you fear will disappear”です。これはThe Chemical Brothers の「The Darkness That You Fear」という曲の歌詞の一部で、座右の銘というより、自分にとって忘れたくない言葉です。
2021年の夏にロンドンに移住する前の2ヶ月間だけ、ベルリンに住んでいたのですが、その時に遊びに行っていたパーティーで、この曲を初めて聴きました。
そのパーティーに出演していたEllen ElianというDJがこの曲をかけたのですが、曲がかかった瞬間、心にあった不安や暗い気持ちが溶けるように消え去ったんです。会場の雰囲気のおかげもあったと思うんですけど、周りの人たちもフロアで踊りながら涙目になっていたり、抱き合っていたり...会場全体がとても高揚感に包まれていて。
パンデミックが続く中で、多くの人が同じように先の見えない不安を抱えていたからこそ生まれる、明るい希望に満ちた瞬間でした。それ以来、その思い出も含めて、この言葉は私にとって救いであり、元気を与えてくれる言葉です。
ー今いちばん興味があることはなんですか?
健康でいる方法や自分が快適でいれる過ごし方のような、セルフケアに関連することに興味があって、気になることを学びつつ、日々取り組んでいます。
これまで自分が持っているADHDという特性をコントロールできていないせいもあって、生活がぐちゃぐちゃになってしまうことが多かったのですが、今は日常生活をできるだけ記録して、自分を理解するように努めたり、ADHDや健康についての知識を取り入れることで、徐々に症状が改善してきているように思います。
あと、興味があることは、最初に本を読んで知ることから始めるようにしているのですが、ここ最近はジェンダー論や、フェミニズムの本を読んでいます。
ーDIGLE MAGAZINE にジョインしたきっかけと、どのような業務をしているかを教えてください。
かなり前のことなのでうろ覚えなのですが、DIGLE MAGAZINEが自分が好きなアーティストを多く取り上げていたのと、この時にちょうどプレイリストを作ることにハマっていたことも重なって、興味を持ったのがきっかけだったと思います。
日本に住んでいて、ライブハウスにたくさん通っていたこともあり、もっとインディペンデントな活動をしているアーティストを知ってもらいたいという気持ちも強かったので、「SCHOOL IN LONDON」というインディロックを紹介するコレクティブにも参加していました。色んなことに携わってみたかったのと、人との繋がりを持ちたかったので、気になる場所には積極的に足を運んで、声をかけるようにしていました。
▲ラジオ局 BAYFM78の番組にセレクターとして参加した際に選曲した楽曲のプレイリスト
業務内容はその時々で変化しているのですが、主にプレイリストやニュース記事の制作、インタビューやコラムなどの編集とライティングを担当しています。
ー編集者として大切にしていることや、気をつけていることはなんですか?
編集者として大切にしていることは、読み手の立場に立つことです。日記などのパーソナルなものとは違って、人に読んでもらうものなので、文章が誰かを傷つけたり、悲しませたりして、嫌な気持ちをさせないかをまず最初に考えて、「読み手がこれを読んで、どう思う?」という問いをどんどん突き詰めていきながら、形を整えています。 文章を読むきっかけは様々だと思うのですが、どんなきっかけでも、読んでもらうということは、その人の大切な時間に寄り添うことだと思っています。だからこそ、読み終えた時に満足してもらえたら、とっても嬉しいですし、さらに心を動かすことができたら、編集者としてこれ以上の幸せは他にないような気がしています。
ー真緒さんから見て、DIGLE MAGAZINE の魅力はなんだと思いますか?
デザインを刷新
DIGLE MAGAZINEの魅力は、常にコンテンツや発信の仕方が変化しているところです。その時のメディアの状況にもよりますが、同じことをやり続けるよりも、新しいことにチャレンジする方が多いですし、自分たちの発信について頻繁にフィードバックもしています。そうしたことをずっと繰り返しているので、メディアの価値観も常にアップデートされていますし、ここ1、2年はフェスやライブイベントも主催してきたことで、さらに経験が積み重なって、より視野も広がっているのではないでしょうか。SNSで発信している内容や、記事の展開も少しずつ変わっているので、日々起きているメディアの変化を、読者の方にも楽しんでもらえたら、嬉しいです。
ーこれまで、DIGLE MAGAZINEというメディアはどういう風に変化していっていると感じますか?
DIGLE MAGAZINEは、立ち上げ当初はプレイリストを中心とした音楽メディアでしたが、次第に記事が増えたことで、発信する幅が広がって、今は音楽とカルチャーに関する情報が中心になっています。自分たちが「今、知ってもらいたい」と思う情報を読者に届けているので、取り扱う内容もその時々によって少しずつ違います。集まっている人はみんな音楽が大好きなので、音楽という軸は変わらないのですが、日々新しい経験をする中で、私たちの考え方も変わっていくので、変化する価値観を共有しながら、メディアも変化しているように感じています。
ーCotoLab. の魅力はなんだと思いますか?
メディア事業部以外にも、デジタルマーケティング事業があり、開発チームもいるのがCotoLab.の魅力です。各事業部の持っている知識や技術が違うからこそ、苦手な部分もサポートし合えるので、何か困ったことがあっても素早く解決できます。それぞれが得意分野を活かしながら、目標に向けて取り組んでいるので、お互いに刺激し合えますし、新しいアイデアも生まれやすい環境だと思います。
ーCotoLab.で仕事をする面白さややりがいはなんですか?
海外に住みながらも一緒に働けていることが、自分の中でのやりがいです。私は常にリモートワークで働いていて、日本とドイツには時差が8時間(夏は7時間)あるため、連絡が取れる時間に制限があります。しかし、そうした状況でも不自由なく仕事を続けられているので、CotoLab.が各個人の状況に合わせて調整できる柔軟性には、面白さや将来性を感じています。一人で仕事をしている時間が長いのでたまに寂しくなりますが、CotoLab.が信頼してくれていることが働くモチベーションに繋がっているので、自分もここで成長しながら、経験したことを仕事に活かしたいと思っています。
ーこれまでCotoLab.で仕事をしていて、印象深かった出来事はなんですか?
これまでで一番印象深かった出来事は、メディア事業部長の江藤さんにイギリスに移住することを伝えた際に「仕事はどうするの?」と聞かれて、「続けたいです」と答えたら、あっさりOKが出たことです。海外から続けるのは難しいだろうと思っていたので、二つ返事で了解してもらったことに拍子抜けしたと同時に、すごく安心したのを覚えています。
ー仕事問わず、個人的にやってみたい(チャレンジしてみたい)ことはありますか?
人に寄り添い、助けになることをしたいと思っています。これまでの人生を振り返ると、私は他の人があまり経験しないような失敗をたくさんしてきましたし、周りの人を気付かずに傷つけてしまうこともあったため、後悔が多いです。
海外に住んでからは、日本では普通に出来ていたことが難しくなり、自己肯定感ももっと低くなりました。何度も「どこに行っても何もうまくできないかも」と思い落ち込んでいます。でも、こうして落ち込む度に、自分のことを深く見つめ直したことで、次第に考え方も変わってきて「小さくても自分が誰かにできることがあるかもしれない」って思えるようになったんです。これまでの自分は変えられないけれど、これからの自分は少しずつ変えていけると思いながら、自分が人にできることを形にていきたいと思っています。
ーDIGLE MAGAZINE の仕事に興味を持ってくれている方へメッセージをお願いします!
DIGLE MAGAZINEは、変化が多いメディアですが、その変化を楽しみながら発信していくことができたら、個人としても成長ができるような気がしています。仕事での目標よりも、人生での目標を軸にして、一緒に新しいものを生み出していけたら嬉しいです。フラットに話せる場も大事にしているので、DIGLE MAGAZINEに共感したり興味を持ったら、ぜひ気軽に声をかけてください。
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