15th Rockでキャピタリストとして活躍する中島大貴。北海道大学で宇宙の研究に没頭し、その後、日本を代表する大手総合商社で財務・管理のプロフェッショナルとして着実にキャリアを積み上げてきました。一見、順風満帆に見える大企業での歩み。なぜ彼は33歳というタイミングで、未知の領域であるベンチャーキャピタル(VC)の世界へ飛び込む決断をしたのでしょうか。「技術への情熱」と、組織人として培った「確かな地力」。その二つが今、ディープテックの社会実装という新たな舞台で、大きな化学変化を起こそうとしています。
── 学生時代は「電波天文学」という、とても専門的な研究をされていたそうですね。
中学生の頃から「宇宙の端には何があるんだろう?」という根源的な問いに惹かれ、天文学の道を志しました。大学では80億光年先にある天体やブラックホールの観測研究に明け暮れる毎日でした。ただ、修士課程を終えるタイミングで、自分の将来を客観的に見つめ直しました。最先端の研究を継続するための環境維持の難しさや、自らの研究者としての適性を考えたとき、一度ビジネスの世界へ出てみようと決意したのです。当時の自分には「ビジネスの仕組みが全く分からない」という強い課題感がありました。だからこそ、まずは経済の根幹を学べる環境で、徹底的に自分を鍛えたいと考えました。
── 選んだ道は総合商社。どのようなキャリアを歩まれたのですか?
入社以来、一貫して全社的な財務・管理業務に携わりました。連結グループ全体のキャッシュフロー管理や決算に直結する数字を扱う仕事は、組織の土台を支える極めて責任の重いものでした。
特に大きな経験となったのは、数年間にわたる海外駐在です。現地の事業運営を財務面から管理・統括する役割を担いました。日々の実務を通じて組織を動かし、事業の土台を整えていく経験を一つひとつ積み上げていく。その粘り強い研鑽こそが、今の私の基礎となっています。
商社で叩き込まれたプロジェクトマネジメント、緻密な係数管理、そして組織としての立ち回り。これらは、派手さはなくともビジネスを動かす上での「不可欠な地力」です。この10年間で築いた基盤があったからこそ、新しい挑戦への一歩を踏み出す自信が持てたのだと思います。
── 順調なキャリアの中で、なぜVCへの転身を決断したのでしょうか。
商社の最前線にいるうちに、心の奥底にあった「科学技術を社会に役立てたい」という熱が、再び大きくなってきたのがきっかけです。かつて研究を志した人間として、優れた研究成果に資金を流し込み、社会を変えていく仕組みを作りたいと。
また、年齢的な焦りもありました。転職を決めたのは33歳。「35歳がキャリアの軌道を大きく変えられる最後の分岐点」と考えたのです。今の安定したレールを進むのか、それとも未知のフロンティアを切り拓くのか。35歳という節目を前に、後者の道を選びたいという想いが決断を後押ししました。
そんな時、15th Rockの「北海道大学関連のファンドを立ち上げる」という構想を聞き、運命的なものを感じて参画を決めました。
── キャピタリストになって1年。商社での経験はどう活きていますか。
キャピタリストとしての仕事は、不確実ななかで仮説を立て、能動的に投資判断を下すことです。商社時代に培った「リスクを最小化する慎重さ」と、今の「可能性を見出す能動感」。この両方のバランスを保てることが、ディープテック投資における私の強みだと感じています。
短期的なトレンドを追うのではなく、長期的な視点で「将来の社会に不可欠となる技術」の探索に注力しています。
── 最後に。中島さんのように「これまでのキャリアを活かしてVCに挑戦したい」と考えている方へメッセージをお願いします。
かつて宇宙の端を目指した探求心は、今、形を変えて「未来の社会を支える技術」を見出すための情熱へと繋がっています。
大企業で培った実務経験は、VCの世界でも強力な武器になります。挑戦者である起業家たちと同じ視線に立ち、まだ見ぬ社会の土台を築いていく。それが私の選んだ、プロフェッショナルとしての新しい生き方です。
もし今のキャリアに「専門性」や「情熱」を掛け合わせたいと考えているなら、VCという選択肢は最高にエキサイティングな場です。