「ベジタリアン」や「ヴィーガン」と聞いて、どのようなイメージが思い浮かぶでしょうか。 「少し偏っている」「健康意識が高すぎる人」「なんだか難しそう」――そのような印象や、自分とは遠い世界の出来事のように感じる方もいるかもしれません。
私はその見えない壁を壊し、誰もがサステナブルな食の選択肢を当たり前に選べる社会を作ろうと法人を立ち上げ、走り続けています。
愛犬と「いのち」への問いかけ
私が大学1年生の時、 オランダからの留学生に「ヨーロッパでは、環境問題のためにベジタリアンになる人が増えているんだ」と教えられたのです 。その時は、ベジタリアンと環境問題がどう結びつくのか、全くピンときませんでした。
しかし20歳のとき、12年間家族として寄り添ってきた愛犬との別れが訪れました。 深い悲しみの中で、毎日泣いて過ごしていると、近所に住む女性が震えているチワワを連れてきました。「そんなに泣いている間、この子の世話をしないか」と。そのチワワが震えている理由は、ペットビジネスの中で子どもを産み続け、体がボロボロになり産めなくなるまで道具として使われるような暮らしの中で人間を恐れているからでした。産めなくなったので殺処分をされる間際に、その女性が引き取り里親を募集しているということでした。その日から、ペットビジネスの影で人間の都合によって生まれ殺されていく犬や猫の現実に思いを馳せるようになりました。
「なぜ、この子たちは人間の都合で扱われてしまうのだろう」という問いは、犬や猫だけに留まりませんでした。 毎日食べている豚や牛、鳥、そして魚たち。「自分の食事のために、彼らに苦しい思いをさせたり、命を奪ったりしたくない」 そう思い、自然と肉や魚介類を食べない「ベジタリアン」へと足を踏み出しました。
自分で調べていくうちに、ベジタリアン、さらにはヴィーガンという選択は、動物のためだけではなく、家畜産業による温室効果ガス、大量の水や土地の消費などの観点から地球環境や、世界の飢餓問題の解決にも繋がるサステナブルな選択なのだと理解していきました。
ベルギーで出会った「当たり前の選択肢」と、帰国後の最初の挑戦
環境問題に関心があり選んだ京都大学農学部でしたが、大学の難しい講義や予算も時間もかかる大掛かりな計画よりも、今すぐに自分自身で取り組めるアクションがベジタリアンの生活でした。 大学院時代、ベルギーでのインターンシップで目にしたのは、日本とは異なる日常でした。
レストランに入れば、当たり前のようにベジタリアンメニューがある。 スーパーにもたくさんの選択肢が用意されている 。 ベジタリアンというライフスタイルが当たり前に尊重され、いつも選択肢がありました。
帰国後、ひとつのプロジェクトを立ち上げました。 それは、「大学の食堂に、ヴィーガン基準のベジメニューを導入しよう」というものでした。
今すぐに自分たちの手で取り組めるアクションがここにある――そう信じて、京都大学の食堂の統括者に、想いを直接伝えに行きました。 それから半年間、ほぼ毎日の話し合いや調整、食材調達などを経てついに京都大学の食堂へ、肉や魚、卵、乳製品を使わないヴィーガン基準のベジメニューを導入することができました。
ベジメニューが導入されたことで、ベジタリアンの学生が喜んでくれたのはもちろん、そうではない一般の学生たちもベジメニューを手に取り、嬉しそうに食事をしていたのです。
「選択肢さえあれば、人は自然と地球や動物に優しい選択ができる。世の中は、変えられるんだ」
この瞬間の感動が、現在の活動の大きな原動力となっています。
ポール・マッカートニー氏の言葉に背中を押され、本気で生きる道へ
大学院を卒業後、民間企業の食品会社の海外事業部に就職しました。
2015年、社会人として働きながらもベジプロジェクトの活動を続けていた私に大きな転機が訪れました 。
「週に1日はお肉を食べない」という「Meat Free Monday(ミートフリーマンデー)」キャンペーンを世界中で発信している、元ビートルズのポール・マッカートニー氏へのインタビューが東京ドームで実現したのです。
憧れのポール氏と対面し直接言葉を交わしたその日「私も、自分の本当にやりたいこと、やらなきゃいけないことのために、本気で生きてみよう」と決めました。
翌年の2016年に勤めていた会社を退職し、 ベジプロジェクトジャパンをNPO法人化させました。
選択肢が「当たり前」にある未来へ向けて
NPO法人化してからのベジプロジェクトは、多角的なアプローチで日本の食文化に優しい変化を起こしてきました。
- ヴィーガン認証制度の運営
ー日本国内で最も広く使われる認証マークのひとつとなり、企業の商品開発をコンサルティングを行っています - ベジマップの制作・配布
ー観光案内所等で配布され、ヴィーガン対応店の集客をサポートしています - 自治体や企業との協業・専門家アドバイザー活動
ー国や東京都、各自治体のベジタリアン・ヴィーガン関連の専門家として多様な事業に参画しています - Webメディア「VegeTime」の運営、イベントの企画運営など
誰しも、慣れ親しんだ食生活をいきなり100%変えることは難しいかもしれません。でも、週に1日、あるいは毎日の食事の中に、少しでもヴィーガンというサステナブルな選択を取り入れてくれる人が増えれば、世界は確実に良くなっていきます。
私が目指しているのは、より多くの人たちが自分の意思で気持ちよく優しい選択ができる社会です。
現在は、さまざまな自治体や企業との連携をさらに強め、実績を着実に積み上げています。この実績をより大きなものとし、さらなるコラボレーションを通じて日本中にヴィーガンの選択肢を増やしていくのがベジプロジェクトの今後の展望です。
動物にも、地球環境にも、そして自分自身の健康にも優しい「プラントベース」というライフスタイル。 美味しいヴィーガン料理が選択肢として当たり前にあるサステナブルな未来を、私たちと一緒にワクワクしながら創っていきませんか?