こんにちは、ネストエッグで広報・ブランディングを担当している岸畑です。
私たちが運営する貯金アプリfinbee(フィンビー)は、11月にユーザーオンボーディング(※)の設計を変更する大型のアップデートを行いました。
※ユーザーオンボーディングとは、ダウンロードしたユーザーにアプリを素早く簡単に理解し、体験、利用開始してもらうことを指します。
一般的に、アプリはダウンロードされても利用開始までに多数の離脱が発生します。少しでも多くの利用開始者を増やすためにオンボーディングの設計はとても重要になります。
今回は、このオンボーディング改修プロジェクトを統括したマーケティング部 富宇賀、リードエンジニアを担ったプロダクト開発部 伊東の2名に話を聞きました。
■話者 写真左から
・伊東慶輔 :プロダクト開発部 モバイルアプリケーションエンジニア
・富宇賀直也:マーケティング部 部長
ユーザーの声からfinbeeのコアな体験である「貯金開始」に至るまでのフローに課題
ーー今回、オンボーディングを変更した背景を教えてください。
富宇賀:ダウンロードしたばかりの方から「わかりづらい」という声をいただくことがあり、貯金開始まで至っていないという課題がありました。データ上でも貯金開始率の点で、銀行口座を連携していても貯金開始していない人が一定数にいたので、貯金開始までのフローに大きなボトルネックがあると考えていました。
ーーユーザーの声と数値で取得できる部分から、ボトルネックを特定していたんですね。
富宇賀:そうですね。それを改善するために、VOCから具体的な課題を抽出し、外部のデザイナーとどのような流れでオンボーディングの体験をしてもらうのがよいのかを設計をしました。UI/UXのデモをつくって簡単なユーザーテストをして、それを踏まえてデザインを微調整して開発をしていきました。
ーーデザイン部分について、外部の方をアサインしたんですね。デザイナーの選定はどのような点を重視されたのでしょうか。
富宇賀:今回は、UIを含めUX領域に強みがある方というところでNeruの新井さんに依頼しました。finbeeのコア体験は、目標をつくって貯金を始めるところです。finbeeというサービスの理解を促しながら、コアな体験に導いていくためにUX領域を重視しました。
ーー具体的には、どのように変更されましたか。
富宇賀:変更点は大きく2つあります。ひとつは、貯金開始までのフォローをすること。以前の設計だと貯金開始に至るまでのフォローが薄い状態でした。最初にウォークスルーがあって会員登録をして、あとはユーザーにお任せ……という状態だったので、人によっては「会員登録の先は、どうすればよいかわからない」ということが発生していました。
変更後は、貯金目標を立てて、金額を決めて、画像を変えて……という一連の貯金開始までの流れをオンボーディングの中でおこない、終了時には貯金を開始している状態に変更しました。
▼新旧比較図:以前は、ウォークスルー後に「アカウント登録」だったが、変更後はウォークスルーのあとに「つもり貯金」体験に変更。「アカウント登録」は後ろに設計。
富宇賀:もうひとつは、銀行連携なしでも利用できると理解してもらうための変更です。これまでに銀行連携なしでも「おためし貯金」という機能で利用できる状態だったのですが、ユーザーから「〇〇銀行がなくて使えませんでした」という声も多く、うまく誘導できていませんでした。
まずは試しに使ってもらって、「こういう風に使えるんだったら銀行連携して使ってみる価値があるよね、銀行連携しよう!」という流れの方がユーザー体験としては適切だと考えました。
ーー今回から、「おためし貯金」が「つもり貯金」という表現に変更になりましたよね。
富宇賀:はい、ユーザーに伝える言葉と体験を変更しました。「おためし貯金」だとトライアルだと思われることがあって、「おためしはいつまでですか?」といった問い合わせもあったので、それを「つもり」という表現に変えています。
オンボーディング・プロジェクトでは、「コミュニケーション」が鍵に
ーープロジェクトを進める中で、こだわった点、意識した点を教えてください。
富宇賀:ユーザーとの「コミュニケーション」ですね。新たなオンボーディングではfinbee(フィンビー)ちゃんが登場して、次の行動を促したり、アクションを取ると反応したりするように設計しています。
▼画面上部にfinbeeちゃんが次の行動を促すメッセージを表示
ーーコミュニケーションを重視されたのはどのような狙いからでしょうか?
富宇賀:ビジョンの「すべての人にバンソウを」をアプリの設計としても体現するためですね。オンボーディング以前からチャットボットでfinbeeちゃんがメッセージを出したり、会話をしたりしていたのですが、今回はオンボーディングでコミュニケーションを取りながらバンソウ者として次のアクションを促すという設計にしています。
ーーfinbeeちゃんにはどんな印象を持ってもらえるようにコミュニケーションの声掛けを意識されましたか?
富宇賀:社内のブランドガイドラインでfinbeeちゃんのキャラ設定は、”王様のブランチの佐藤栞里さん”としていたということもあり、「居るとほっとできて笑顔になるけど、前に出すぎない人」という感じのイメージを意識しました。
頻度も工夫し、うっとうしくない程度に案内してくれる立ち位置を目指しました。ユーザーのストレスを減らすことやスピード感を重視して、リリースした後にユーザーがつまずいているところが見えたらガイドを足す方針にしています。
ーー伊東さんはどのようなこと意識されていましたか?
伊東:僕はアプリの開発側で責務を担っていました。開発体制として業務委託の比較的若い方と一緒にやっていて、指示を出す役割という意識が強かったです。彼のタスクに漏れがないようすること、二人でやる場合に「待ち」が発生しないようにタスクを組み立てたりすることに注力しました。
また、デザイナーの方がXDというデザインツールにデザインを載せてくれたものの細部、例えば、このボタンを押したときにはこっちの画面に遷移するといった部分などを別途UIフローを作成してチーム内で認識齟齬が発生しないように努めました。
富宇賀:伊東さんのそういったリードエンジニア的な動きは、プロジェクトが円滑に進んでいった要因ですね!伊東さんがプロジェクトをしっかり理解して、XDから意図を読み取ったり、開発現場に伝えてくれたりしたことで、こちらへの手戻りが少なくてとても助かりました。
ーー開発段階では伊東さんがリードエンジニアとして社内と業務委託・社外のエンジニアの方へのコミュニケーションやXDからの解釈をやられて活躍されてたんですね。ユーザーの体験でも「コミュニケーション」、プロジェクトの進め方としても伊東さんの「コミュニケーション」が肝になっていたんですね!
貯金開始者数が4倍に増加!出しっぱなしではなく振返りをして、さらなる進化を
ーーまだリリースして1週間ほどですが、初速の変化はいかがですか?
富宇賀:貯金開始率は向上しています。以前と比較すると貯金開始ユーザーが4倍になって明確にあがりました。
ーーすごいですね!
富宇賀:初期のデモ段階では、オンボーディングがもっと長かったんですが、デザイナーとも「これだとさすがに離脱が増えるよね」という話になりました。ユーザーテストの結果としても目標を作り終えるまでにかなり苦労している印象だったので、オンボーディングはコア体験のみに絞り設計し直しています。初期デモのままリリースしていたらもっと離脱が多くここまでの結果は出なかったと思います。
ーー期待しているユーザーの声の変化はありますか?
伊東:ピンポイントですが、「使ってみたら良さそうだったから会員登録しようかな」というのが嬉しいですね。以前は、ユーザー登録が必須でしたが、今はユーザー登録なしで先に貯金体験をしてもらうことを重視しているので、「ためしに使ってみてよかった」というのが聞けると嬉しいですね。
富宇賀:それはでてくると嬉しいですね。全然機能がわからない段階で会員登録を求められるのはストレスだと思うので、体験してから判断してもらえたらよいと思います。
ーー足掛け1年ほどの大きなプロジェクトでしたが、ひと段落して率直にどんなお気持ちですか?
伊東:開発案件の規模としては大きかったので、ほっとしたというのが大きいですね。ただ開発スピードを重視して一部、対応を見送った機能があるので、落ち着いたタイミングでスケジューリングしていきたいです。
あとは、振返りをして改善していきたいですね。振返りは、数字が一番議論しやすいと思うので数字は最低限出して、生の声も聞いてみたいです。
富宇賀:一定の成果が出たのでよかったのと、伊東さんと同じですが、データを見ながら振返りをしていきたいです。改めてユーザーテストができると理想ではありますね。その辺りは他の開発タスクとの優先度見合いにはなってしまいますが、数字をみながら改善すべき箇所は改善していきたいです。
伊東:そうですね。施策全般として、出しっぱなしではなくてちゃんと振返って、つめこみすぎになるので一部の使われていないものは止めるといった判断もしていく必要があると思います。
ーー今後、finbeeで実現していきたいことを教えてください。
伊東:デザイナーの新井さんに作っていただいたオンボーディング以外のデザインで実装されていないものが多くあります。よいデザインのものを実装してユーザーに届けていきたいですね。
あとは、サクサク感でユーザーの離脱が変わると言われているので、パフォーマンスをチューニングして同じアプリの見た目でもサクサク動くようにしていきたいです。
ーーそういったパフォーマンスの部分でも改善の余地があるんですね。富宇賀さんはいかがですか?
富宇賀:オンボーディング改修ではユーザーの理解促進と貯金開始率向上を課題とし推進してきました。今回のリリースでそれらはある程度解消されたので、次は一番大きい課題のリテンション改善を進めていきたいです。自動貯金アプリと謳っていることもあって、アプリを立ち上げる動機がユーザーからしたらあまりないのが現状です。
しかし、ビジネスとしては広告モデルで収益を立てるという目的があるので、ユーザーをどうリテンションさせるのかはかなり重要になってきます。それに対する施策もいくつか予定しているので、それらがリリースされると少しずつ改善されていくと考えています。