【CDOインタビュー】DP社が「最高開発責任者」を置いたワケ。ビジネスと開発をつなぐCDOの使命とは
こんにちは!Digital Platformer株式会社(以下「DP社」)です。
今回は、内田 済CDO(最高開発責任者)へのインタビューをお届けします。
DP社には、技術の責任者であるCTOとは別に、開発のアウトプットに責任を持つ「最高開発責任者」(Chief Development Officer、以下「CDO」)がいます。一般的なスタートアップではCTOが技術・開発全般を担うケースが多い中、なぜDP社はCDOを置いているのでしょうか。
背景にあるのは、多くの企業が抱える「ビジネスと開発のギャップ」です。このギャップを解消することが「ブロックチェーンの社会実装に不可欠」だと、内田CDOは語ります。
さまざまな開発現場を経てDP社に参画した内田CDOに、CDOのミッションや今後の成長に向けた組織づくりについて聞きました。ぜひご覧ください!
CDO 内田 済
大学卒業後、機械設計・ソフトウェア開発者としてキャリアをスタート。CADパッケージ開発やSI案件のリーダーを務め、顧客企業のアジャイル開発への転換をリード。その後、コンサルティングファームにてスタートアップ企業のDX推進や大手メーカーの業務改革支援など、幅広い領域で実績を重ねる。2025年より当社に参画。
DP社の「CDO」とは?あえてCTOとは別に新設した理由
――内田CDO、本日はよろしくお願いします!まず、DP社における「CDO」とはどのような役割なのか教えてください。
内田:世の中で「CDO」と呼ばれる役職はいくつかありますが、DP社のCDOは「最高開発責任者」(Chief Development Officer)を指します。一言で表すと、開発のQCD(品質/Quality、コスト/Cost、納期/Delivery)を担保するポジションですね。CTOがテクノロジーをリードする立場であるのに対して、CDOは開発のマネジメントを担当し、そのアウトプットに責任を持ちます。
この2つの役割は、一般的にCTOが兼ねるケースが多いと思います。しかしDP社では、あえてポジションを分けている。CTOが技術戦略を、CDOが開発のマネジメントを担うことで、それぞれの専門性を活かしながら事業を推進する体制にしています。
――DP社も以前はCTOだけでしたが、なぜCDOを新設したのでしょうか。
内田:DP社は創業期の立ち上げフェーズを経て、成長フェーズへと進んでいます。これまではスタートアップらしい情熱と瞬発力で開発してきましたが、今後はそれだけでは不十分で、持続力が大事になります。
私たちが取り組むブロックチェーンの社会実装は、一度きりの成功では意味がありません。社会に出した後もプロダクトを磨き、価値を提供し続けていく。そのためには、開発プロセスをきちんと整え、品質や納期を安定的に担保できる体制づくりが必要です。
そうした背景のもと、開発全体を俯瞰しながらQCDをコントロールする役割として、CDOが設置されました。
――CDOとして、どのような取り組みをしているか教えてください。
内田:最初に取り組んだのは、開発リソースの“見える化”です。どの開発にどれだけの人が関わっているのかを整理するところから始めました。会社の戦略にあわせて、正しくリソースを使える状態にするための基盤づくりですね。
現在はそうした管理の枠を超えて、より現場に近い、開発のプロセスにも踏み込んでいます。本当の意味で開発者が力を発揮するには、現場レベルの動きにまで目を配り、環境を整えていく必要がある。そのために、たとえば北國銀行や石川県といったクライアントとの定例会に参加して、戦略面の議論や、開発側のリソース配分をどうしていくかといった調整も行っています。
――顧客・ビジネス側に働きかけながら、開発体制や環境を整えていると。
内田:そうです。開発側では、「ステーブルコイン」と「分散型ID」の各プロダクトを担当するマネージャー2名とよく話をしています。状況を共有したり、彼らを通して現場の課題を吸い上げたり。ビジネス側とやり取りすることも多いですね。
ビジネスと開発の間には立場の違いによるギャップがあり、隙間も生まれやすい。そこに人をうまく割り当てられればいいのですが、それができないケースもあります。無理に開発メンバーがつなぐと負荷がかかってしまうため、私が間に立って、ギャップや隙間を埋めるよう動いています。エンジニアたちが力を発揮できるように、体制やプロセスを整える。これも私の重要なミッションです。
自分のスキルと価値を拡張し続ける―大手SIerからコンサル、そしてDP社へ
――内田CDOはエンジニア出身と伺いましたが、どのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。
内田:今で言うリスキリングの繰り返しでしたね。どんどん仕事を変えながら、自分の“スキル”や“生み出す価値”を広げてきました。
最初のキャリアは、木材加工機械メーカーでの機械設計エンジニアでした。1995年に大学を卒業して就職し、最初の2〜3年は図面を引いたり構造を考えたりする業務をしていました。Windows95が登場して汎用PCでも機械を制御できるようになったのを機に、社内のソフトウェア開発部門に異動しました。
そこで数年経験を積んだ後、大手SIerのグループ会社に転職。この会社には20年ほど在籍しました。CADのパッケージにはじまり、SIやカスタマイズと開発範囲を広げ、次第にマネジメントも任されるようになりました。
――マネジメントを経て、コンサルタントに転身されたそうですね。
内田:はい。だんだんとマネジメント側にシフトする中で、「もう一度現場に携わって自分のスキルや経験を伸ばしたい」と考えるようになって。それで、同じグループ内のコンサルティング会社に移籍しました。
最初はかなり苦労しましたね。それまでの知見を活かせるテクノロジー領域ではあったものの、開発とコンサルティングでは必要なスキルも考え方もまったく違うので。
一般的な受託開発では、顧客から「こういうことをやりたい」と要望があって、それに対してどうつくるかを考えていく。一方でコンサルティングでは、そもそも顧客自身が「何が課題なのか」を明確にわかっていないケースが多いんです。決まった答えがない中で、課題そのものを整理し、構造化するところから始めなければなりません。本当に大変でしたが、「課題に向き合うとはどういうことか」を深く学ぶ、貴重な経験を積めました。
――その後、DP社に入社した経緯を教えてください。大企業の安定した環境を離れるのは、大きな決断だったのでは?
内田:きっかけは、前職で一緒に仕事をしていた仲間がDP社のメンバーと知り合いで、紹介してもらったことです。転職活動をしていたわけではなく、本当に偶然の縁でした。
前々職で開発を担当していた頃からずっと、「どこかで一歩踏み出さなければ」という思いは持っていたんです。ずっと同じ場所に留まるのではなく、常に挑戦しながら前に進んでいく。その延長線上に、スタートアップへの挑戦が自然と浮かび上がってきました。
DP社を紹介してもらったのは、ちょうどDP社の事業が芽を出し、世の中から注目され始めたタイミングでした。このフェーズであれば、私が培ってきた知見を活かして事業成長に貢献できるはず。「とにかく挑戦してみよう」と思い、あまり深く考えすぎずに入社を決めました。
ビジネスと開発の“ギャップ”をなくし、持続的な社会実装へ
――冒頭で、「ビジネスと開発のギャップを埋める」とのお話がありました。具体的にどのようなギャップがあるのでしょうか。
内田:まず前提として、これはどの企業にも共通する課題です。ものづくりの会社には、開発部門があって、ビジネス部門や事業部門もある。その間には多くの場合、“谷間”、つまりギャップが生じます。
たとえば、ビジネス側からすると「なぜ開発はこれをつくってくれないんだ」「なぜこんなにお金や時間がかかるんだ」と思う。一方で開発側は、「それをつくるには時間もプロセスも必要で、簡単な話ではない」と考える。このギャップを埋めなければ、本当の意味で企業は成長できません。
DP社は風通しの良いフラットな組織ですが、私の立場から見ると、まだ部門間のギャップがあると感じています。
――なぜ、そうしたギャップが生じるのでしょうか。
内田:背景の一つに、アジャイル開発が本来の意味で機能していないことがあります。これもDP社に限らず、多くの企業で見られる課題です。
アジャイル開発は本来、ビジネス側と開発側が一体となって動くための仕組みです。でも実際には、開発現場の中だけでアジャイルが完結しているケースが少なくありません。たとえばPO(プロダクトオーナー)は、ビジネス側の代表として意思決定を担う役割のはずですが、現実には多くのステークホルダーの意見を取りまとめる調整役になりがちです。そうなると、ビジネスの背景や意図が開発現場に届くまでに時間がかかり、結果としてアジリティが損なわれてしまいます。
本来なら、ビジネスの情報をもとに開発者自身が考えて判断できるはずが、目の前のタスクをこなすことに終始せざるを得なくなる。この結果、「要件定義」「開発」など工程が分断されてしまい、小さなウォーターフォールを繰り返すような状態に陥ってしまいます。
――成長の足かせになりかねない、重要な課題ですね。
内田:そのとおりです。ビジネスと開発の間のギャップを残したままでは、今後の事業成長の中でブレーキがかかるでしょうし、本当の意味でのイノベーションも起こせません。このためDP社では、本質的なアジャイル開発の実現を目指し、ビジネスと開発が一体で駆動する体制づくりを進めています。
ビジネスと連携し、顧客やユーザーの期待に応えるプロダクトをつくる。そして、つくったプロダクトの品質を常に担保していく。その“持続力”こそが、ブロックチェーンの社会実装を進める上で不可欠です。一朝一夕にはいきませんから、今からしっかりと取り組んでいきます。
私はこれまで、大企業からスタートアップまでさまざまな会社を見る中で、組織の大小を問わず同じような課題に直面してきました。自分がギャップの間に立ち、何とかして両方をつないでいく。これは私にとってライフワークに近いかもしれません。大変ですが、その分やりがいがあって面白いですよ。
「答えがない」から面白い。自分たちの手で“Web3への道”を切り拓く
――ブロックチェーンの現状とこれからについて、内田CDOのお考えをお聞かせください。
内田:技術とは、それ自体を高めるだけではなく、実際に社会の中で使われ、価値を生み出してこそ意味があるものだと私は考えています。
ブロックチェーンの登場から10年以上経っているにもかかわらず、「世の中に広く浸透している」と言えるユースケースはビットコインだけ。広まらない大きな要因は、代替手段が既に存在していることです。
キャッシュレス決済がある中でステーブルコインを、GoogleIDなど中央集権型の認証サービスがある中で分散型ID(DID/VC)を広げていく。これは簡単なことではありません。
しかしブロックチェーンには、ただの決済手段やIDにとどまらない独自の価値があります。その価値を社会全体に広げるためにも、預金型ステーブルコインの「トチカ」(※)を一つの成功事例として育てていく必要があります。
※トチカ…北國銀行と共同で開発した日本初の預金型ステーブルコイン。スマートフォンアプリの「トチツーカ」を通じて、いつでも・どこでも銀行口座からチャージでき、銀行口座に戻して換金することもできる。2024年3月にリリースし、石川県内の加盟店で利用されている。
――「トチカ」はリリースから2年目に入り、重要なフェーズを迎えていますね。
内田:今がまさに、正念場です。最初は“日本初の預金型ステーブルコイン”として注目を集めましたが、大事なのは「この仕組みをどれだけ社会に根付かせられるか」です。
ユーザーは日常の中で便利に使える。
加盟店は手数料負担が少なく換金もしやすいため、次の投資にお金を使える。
その結果、地域にお金が循環し、経済が活性化する――こうした世界が広がらないと、次のステップは生まれません。
そのためにも、開発者が「何をつくるか」「それが社会でどう使われるか」を理解することが大切だと考えています。「何をつくるか」がすでに決まっている開発もありますが、それも“Web3の社会実装”という大きな流れの中にある重要なプロセスです。
意義を理解しながら目の前の開発に取り組む。その上で、次のステップを議論できる時間もちゃんと確保する。その環境をつくるのはCDOである私の責務です。開発者が疲弊しないよう、バランスよく仕事を配分していきます。
――内田CDOから見た、DP社で働く醍醐味は何ですか?
内田:DP社は行政との関わりも深く、名だたる大手企業と対等な立場で社会課題を議論しています。多方面とつながりながら価値を創造できるのは、この会社の大きな強みです。
Web3やブロックチェーンの技術がこれから社会でどう活用されていくのか、まだ誰も答えを持っていません。敷かれたレールの上を進むのではなく、自分たちで道を切り拓く必要があります。その過程は地味だし、あまり変化や手応えを感じられないかもしれません。
でも実は、世の中を変えるような大きなインパクトを起こしている可能性がある。後から振り返ったときにはじめて「これがWeb3への道だったんだ」とわかるのでしょう。こうした経験ができるのは、DP社ならではの面白さだと思います。
――つながりを広げながら道を切り拓き、価値を生み出していく。そのために、どのような人に来てほしいですか?
内田:カルチャー面で言えば、「仕事を通して社会や地域に貢献したい人」がマッチしやすいと感じています。今いるメンバーも、自分の働きが世の中の役に立つことをモチベーションにしている人が多い印象です。
もう一つ大事なのは、好奇心が旺盛なこと。面白そうだと思ったらまずは飛び込んでみて、その経験から何かしらの学びや気づきを見つけられる人が合っているかと思います。
Web3やブロックチェーンの知識は、入社時点では必須ではありません。それよりも大切なのは、QCDを意識しながら価値あるものを創造・提供していく力です。当たり前のことを当たり前にやれる方であれば、十分に活躍できる会社ですよ。
――最後に、この記事を読んでいる方へのメッセージをお願いします。
内田:先ほど、DP社には好奇心が旺盛な人が合っていると言いました。こうしたタイプの方は転職回数が多くなったり、キャリアの軸が一見バラバラに見えたりすることがありますが、それに引け目を感じる必要はありません。
大事なのは「なぜその選択をしたのか」「そこにどんな意味があったのか」を自分なりの言葉で語れることです。熱意を持って、自分なりに選び取りながら、いろいろな経験を積んできた。それはあなたの立派なストーリーだと思いますし、そのストーリーにDP社が加わる未来があるならとても嬉しいです。
DP社では、単なる技術開発にとどまらず、社会課題の解決という大きなテーマに挑んでいます。これから進んでいく未来がどうなるかは、まだ私にもわかりません。ぜひ一緒に、不安やドキドキを共有しながら、未来を探求していきましょう。
――内田CDO、本日はありがとうございました!
今回は、内田CDOへのインタビューを通じて、DP社におけるCDO(最高開発責任者)の役割やミッション、今後の成長に向けた組織づくりについて紹介しました。
この記事を読んで、少しでもDP社について知っていただけたら嬉しいです。
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企画・編集:株式会社スリーシェイク 文:中道侑希 編集協力・撮影:三谷恵里佳