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「はじめのうちはそもそも“意志を持つ”ってどういうことなのかもわからなかったんです」思考し続けるシステムエンジニアの挑戦
メンバーの言葉から、LINKedというチームの核心にせまるインタビュー企画。今回話を聞いたのは、システムエンジニア兼プロダクトマネージャーの京都要(みやこ・かなめ)。過去の経験を活かし挑んだサービス設計の現場で、京都の前に立ちはだかった壁とは?実現したい未来のために己と向き合い続ける彼の目に映る、事業のこれまでとこれからについて詳しく聞きました。
事業者視点でものづくりがしたかった
LINKedに入ったのは2020年12月。それまでは銀行の業績分析を行うBIシステムの開発や、大手小売業向けECサイトの開発保守、サブスクECサイトの構築などに携わってきました。
ここでやっていこうと決めたのは、スキルを活かして新しいものづくりに関われそうな環境だったことと、同じエンジニアでも今度は事業者視点でやってみたいという気持ちがあったから。
僕は今年で40歳ですが、僕の世代のエンジニアって、外部の事業者から依頼された内容に沿ってソフトウェアパッケージの開発やソフトウェアの受託開発をするようなエンジニア集団、いわゆる「ソフトハウス」で経験を積んできた人が多いんですよ。そうすると、事業者側に立って育成される機会ってなかなかなくて。今はまた時代も変わってテクノロジー主体でサービスを展開しようとする企業も増えてきましたが、少なくとも僕の時代はそうでした。
でも、だからこそ、自分の頭でユーザーにとって理想的な体験を考えて、それをこの手でサービスとして世に出してみたい。そんな野望を抱えた僕みたいな人間は、実は結構多かったんじゃないでしょうか。
「それで、要さんはどうしたいの?」
この一年を振り返ると、とにかく己の意志と向き合い続けた期間だったなと思います。
LINKedの重要な特徴のひとつとして、「意志を問われる環境である」ということが挙げられます。ですが僕自身、はじめのうちはそもそも「意志を持つ」ってどういうことなのかもわからなかったんです。
ビジョンに対する強い共感は当初からあったものの、いざ仕事を始めてみると、IT領域に関する専門知識のあるメンバーが少なかったこともあり「スキルで事業に貢献しよう、チームを引っ張ろう」という思考に流れて、見える世界がどんどん矮小化していく自分がいました。目の前の課題をスキルで解決する、というところに終止していたんですね。ビジョンはビジョン、現実は現実と、両者の間にはいつからか溝のようなものができていました。
それでも当時の自分としては十二分に考えているつもりだったので、しばらくは苦しかったですね。共感と納得感を持って加入した事業のためにエンジニアとして最善を尽くしているのに、なかなか前進できない状況が続きました。
その時に社長の本田によく言われたのは「それで、要さんはどうしたいの?」ということ。大事なのはスキルでも共感でもなくて、事業を理解しようとする姿勢だったり、何より僕自身が何をしたいと思うか。つまり意志の問題だという話です。
今思えば、たしかにあの頃の僕は、LINKedが描くビジョンに対して"自分は"何がしたいのか、どんな世界をつくりたいのかがうまくイメージできていなかった。ビジョンに対して「いいね」「楽しそう」と共感はしていても、そこからもう一歩踏み込まないと本当に必要なアクションって考えられないんですよ。
そこから脱せたのは、やはり本田との対話によるところが大きいと思います。日々壁打ちを重ねていく過程で思考が整理されて、目の前の霧が晴れていくような感覚を覚えました。「自分の意志ってこれなんだ」ということが徐々に実感できるようになって、正直かなり気持ちも楽になって動きやすくなりましたね。
それ以降、データ分析や施策の提案に関しても、徐々にクリティカルに捉え実行できるようになってきたと思います。意志がスキルとつくりたいビジョンを繋ぎ合わせて、やっと両輪で走れるようになってきたような感覚かな。
聞くこと、想像すること、考え続けること。
己の意志に触れるきっかけとしてはもうひとつ、やはり事業者チームとしてUI/UXの設計に関われたことが大きいですね。僕たちのサービスにおける理想的なユーザー体験=「良い仕入れ」ってなんだろう?という問いに対して、チームメンバーや外部のパートナーと何度も話し合い、時には実際のユーザーであるパン屋・ケーキ屋を訪ねてヒアリングを行って、その結果を持ち寄りさらに議論を重ねました。
過去の仕事でもユーザビリティについては都度真剣に考えてきましたし、数字の向こう側にいるユーザーの行動を想像すること自体はエンジニアの本分だと思うのでそもそも意識していたことではありましたが、やはり受託側ということもあって今ほどの深度で向き合ったことは正直なかったと思います。
お店のバックヤードに入らせていただいてユーザーであるシェフたちと直接話をしてからは、数字が語るユーザーのイメージがぐっと鮮明になりましたね。いくらヒアリングをしたところですべてを知ることは不可能ですが、ファクトを集めることはすごく大切なこと。想像の領域って、集めたファクトを起点に大きく広がるんです。ファクトを集めて、そこから自分の頭で想像して、考え続ける。そうして初めて「これが今必要な体験なんだ」と、事業者チームとして胸を張って外部の仲間に伝えられるんだと思います。
再スタートの決断とチームの変革
実は今できつつあるサービスのUI/UXって、僕が入社してすぐの頃に一度ゼロに還ってるんです。色々な事情がありましたが、一番の要因は関わる人全員が納得できるプロセスを踏めていなかったこと。多くの時間とお金を費やして進めてきたことではありましたが、それでもこのままでは良いものにならないと組織として判断し、体制を一部組み直して再スタートを切りました。
それまで受託側でものづくりに携わってきた僕からすればかなり衝撃的な出来事でしたし、正直なことを言えば「とりあえずローンチして追々修正していけば良いじゃん」と内心思っていたんです。でも、それは間違いだった。今ならはっきりそう断言できます。だって、今のUI/UXってあの当時つくっていたものと全く別物なんですよ。プロセスも内容の濃さも、再スタートを切ってから全く別次元のレベルに引き上がりました。あの時のものをベースにその後どれだけ改善を繰り返したとしても、その延長線上に今の状態はあり得なかったと思います。
それはきっと、この一年でチームの価値観や文化が醸成されてきた結果でもあります。事業者であるLINKedが強いチームになってきたことで、チーム内の連携はもちろん、外部パートナーとのコミュニケーションもよりスムーズかつダイレクトになり、周囲に熱が伝えられるようになった。今多くの優秀な仲間を巻き込んで理想の環境づくりに邁進できているのは、そういうことなんじゃないかなと思っています。
前進し続けるチームのなかで、僕には何ができるだろう、何がしたいのだろう。
昨年の今ごろまでは、メンバーそれぞれが己の業務に対して頭を使うばかりで、横の連携が満足にとれていませんでした。何か困ったことがあっても周りに協力を求めず、独りでどうにかしようとするメンバーが多いというか。責任感が強いという見方もできますが、個人的にはどちらかというと信頼関係の希薄さに原因があったんだろうなと思っています。
その関係性が変わり始めたのは、5月に始まったリーダーシップ制度以降。仕事を個々の業務単位ではなく、リーダーを立ててプロジェクト単位で進めていくというやり方を導入してからというもの、なぜこのプロジェクトをやるのか、リーダーとして、あるいはメンバーとしてどう役割をまっとうするかを問われる局面が増えました。その結果、チームの全員が自分の言葉で意志を発露し、チーム内外と有機的にコミュニケーションをとりながらひとつのゴールに向かえるようになった。そこから仕事の中身も徐々に研ぎ澄まされているように感じます。
そんなチームのなかで、僕自身がエンジニア兼プロダクトマネージャーとしてプライドを持ってやっていること、この先もやり切りたいと思っているのは、「データで皆を引っ張る」ということ。
日々の昼礼で「MAU(Monthly Active Users / 月毎のアクティブユーザー数)」をはじめ様々な数値を毎日メンバーに共有しているんですが、それなんかも最たる例ですね。膨大なデータのなかから今のチームや事業に必要なポイントを見定め、伝えていくことで、円滑な意思疎通をサポートしたり、あるいはチームの視点や行動を引き上げることも可能になります。何に照準を合わせてどう伝えるかって本当に難しいんですが…日々試行錯誤をしつつ、ブラッシュアップを続けています。やり甲斐はすごくありますね。言わずもがな、データというのは揺るぎない「事実」です。受け入れざるを得ない圧倒的な存在、それがデータで、僕はその力を誰よりも信じて、誰よりも活かしていかなければいけない立場だと思うんですよ。
2月のローンチを目前に控え、チームも事業も毎日猛スピードで走っています。仕入れにまつわる課題を払拭し、魅力的な個人店を営むパン屋さん、お菓子屋さんを支えて繁栄する街をつくる。そんな僕たちの理想に向かって、この先もメンバーたちと力を合わせてやるべきことを全うしたいです。