「茶道体験? 京都には何百年も続く素晴らしいお茶屋さんがたくさんあるじゃないか」
私たちがこの事業を始めると言った時、そんな声をいただいたこともあります。 おっしゃる通りです。京都には、人間国宝級の先生や、代々続く由緒正しい家元がいらっしゃいます。
スタートアップが、正面から「格」や「歴史」で勝負しようとしても、勝てるわけがありません。 ましてや、私たちはそれらの方々と競い合ったり、取って代わったりしようなどとは、微塵も考えていません。
私たちが目指しているのは、「競争」ではなく「棲み分け(共存)」です。
なぜ、今、私たちが茶道体験をやるのか。 それは、伝統を守る方々だけではカバーしきれない、「インバウンド観光客のための『入り口』」が圧倒的に不足していると気づいたからです。
今日は、私たちが京都という街で果たそうとしている「翻訳者」としての役割と、そこで働く面白さについてお話しします。
■ 「一見さん」が入れる場所がない
私たちがターゲットにしているのは、「日本文化に興味はあるけれど、どこに行けばいいか分からない」という海外からの旅行者(インバウンド)です。
彼らの視点に立った時、伝統的な茶道の世界は「壁」だらけです。
- 言語の壁: 予約サイトや当日の説明が日本語のみ。
- 作法の壁: 「正座ができないと失礼になるのでは」「作法を間違えたら怒られるのでは」という恐怖心。
- 心理的な壁: 「一見さんお断り」の文化や、厳格すぎる雰囲気。
「興味はあるのに、怖くて入れない」 これでは、せっかくの日本のファンを逃してしまいます。
そこで私たちの出番です。 私たちは、伝統への深いリスペクトを持ちつつ、それを現代の観光客に合わせて「翻訳(編集)」することに徹しました。
■ 「素人」だからこそ、顧客目線を徹底できる
正直に申し上げますが、創業メンバーである私は、茶道の専門家ではありません。 しかし、だからこそ「初めて体験する外国人の気持ち」が痛いほど分かります。
私たちは、専門家の先生方に監修をいただき、作法の本質をご指導いただきながら、あえて大胆な「翻訳」を行っています。
- 英語でのストーリーテリング: 単に動作を教えるだけでなく、「なぜ茶碗を回すのか(謙譲の心)」といった精神性を、英語で分かりやすく伝えます。
- 「正座なし」の選択肢: 足の悪い方や慣れていない方のために、椅子席や掘りごたつ式のスタイルも許容し、リラックスしていただきます。
- 撮影タイムの設計: 本来は厳禁とされることも多い写真撮影も、「旅の思い出」として尊重し、映える照明やタイミングを設計しています。
本物の精神性を守りながら、パッケージだけを現代風にアップデートしたいと考えています。
老舗が守っているのが「深さ(Deep)」だとするなら、私たちが担うのは「広さ(Wide)」。 まずOHINERIで茶道の楽しさを知り、「次はもっと本格的な先生のところに行きたい」と思っていただく。 そうやって京都全体の文化消費の裾野を広げることが、私たちのミッションです。
■ マニュアル化するのは「作業」。あなたに任せるのは「演出」
私たちの強みは、この体験提供をビジネスとして「仕組み化」しようとしている点にあります。
現在、予約管理や清掃、準備といったバックヤード業務については、徹底的なマニュアル化を進めています。 「作業」で脳を使わず、「接客」に全力を注いでもらうためです。
- 「今日はハネムーンだから、サプライズでお祝いの言葉をかけよう」
- 「お子様が退屈そうだから、茶筅(ちゃせん)を触らせてあげよう」
- 「日本のアニメが好きそうだから、その話題で盛り上げよう」
こうした「目の前のお客様に合わせた演出(エンターテインメント)」には、マニュアルはありません。 あなたの個性とホスピタリティが、そのまま商品価値になります。
オペレーションは科学的に効率化し、接客は人間味あふれる温かいものにする。 この「冷」と「熱」のバランスこそが、OHINERIの勝ち筋です。
■ 京都の「敵」ではなく「良き隣人」になる
この戦略のおかげで、今では京都市内のホテル様からも 「OHINERIさんなら、ゲストを安心して紹介できる」 と、多くの送客をいただけるようになりました。
また、近隣の店舗様や地域の方々とも連携し、「地域全体でゲストをもてなす」関係性を築きつつあります。
私たちは、京都の伝統を荒らす「黒船」ではありません。 古き良き文化を、新しい層へ橋渡しする「翻訳機」でありたい。
このスタンスは、これから全国展開していく上でも変わりません。 その土地の文化をリスペクトし、地元の方々がリーチしきれない層へ届ける役割を担う。 それが、私たちが目指す「体験版スターバックス」の姿です。
■ 文化の「編集者」になりませんか?
現在、私たちはこのモデルを一緒に磨き上げてくれるコアメンバーを募集しています。
求めているのは、単にお茶を点てられる人ではありません。 「日本文化を、どう見せれば世界に伝わるか?」を考え、実行できる「編集者」のような視点を持つ人です。
- 海外留学で「日本の良さが伝わらないもどかしさ」を感じたことがある人
- 接客が好きだが、マニュアル通りの対応には飽き足らない人
- 京都の伝統産業と、新しいビジネスの架け橋になりたい人
今のOHINERIなら、あなたのその想いを、「事業」という形に変えられます。
未経験でも構いません。 必要な作法や知識は、私たちが提携している先生方や研修を通じて、しっかりとお伝えします。 大切なのは、「文化を翻訳して届ける」というミッションへの共感です。
1,200年の歴史を持つこの街で、新しい「おもてなし」のスタンダードを一緒に作りませんか? 二条の店舗で、あなたにお会いできるのを楽しみにしています。