高齢者1人を、現役1.9人で支える国
いきなりですが、クイズです。
いま日本では、65歳以上の高齢者1人を、何人の現役世代(20〜64歳)で支えているでしょうか。
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答えは、約1.9人です!(総務省「人口推計」2025年7月1日現在をもとに試算)。
1990年には5人以上で1人を支えていました。それがこの30年あまりで、2人で1人を担ぐ「肩車型」の一歩手前まで来ています。
ニュースでもさんざん語られてきた話です。「少子高齢化、大変だよね」。でも、私たちはこの数字を「大変だ」で終わらせたくないと思っています。
もし「支える側」の定義を変えられたら?
先日、社内であるシミュレーションをしてみました。
もし、75歳まで誰もが安全に・健康に働ける社会になったら、この数字はどう変わるのか?
「支える側」を20〜74歳、「支えられる側」を75歳以上として、同じ人口推計データで計算し直すと——
- 20〜74歳:約8,316万人
- 75歳以上:約2,114万人
- 支え手比率:約3.9人
1.9人が、3.9人になる。倍以上です。
さらに面白いのはここからです。「支え手が3.9人いた時代」を過去の国勢調査から探すと、1997〜98年頃に行き当たります。つまり、「65歳で支えられる側に回る」という前提を変えるだけで、人口構造の負担感という意味で、日本は約27年分、若返ることができるのです。
増税でも、劇的な出生率の回復でもなく、「歳を重ねても現役でいられる身体と職場」をつくることで、この国の時計を四半世紀巻き戻せる。この計算結果に、私たちは自分たちの事業の存在意義を改めて確認しました。
ただし、これは「自然には起きない未来」です
もちろん、話はそんなに単純ではありません。
1997年の「3.9人」は、若い人口構造が自然に生み出した数字でした。一方、私たちが目指す「3.9人」は、意志を持ってつくらなければ実現しない数字です。75歳以上の人口はいまも増え続けており、何もしなければ、支え手の定義を広げても比率はまた下がっていきます。
そして何より、「75歳まで働ける」を根性論にしてはいけません。
日本の労働災害の現場では、働く人の高齢化に伴って転倒災害が増え、高年齢労働者の労働災害防止は政府の重要な方針にもなっています。「働き続けたい」という意欲があっても、身体機能の変化に職場環境や仕事の設計が追いついていない。それが現場のリアルです。
89歳まで働いた祖父
なぜここまで「働き続けられること」にこだわるのか。ここで少しだけ、個人的な話をさせてください。
私の祖父は、89歳まで働いていました。
歳をとると、特に男性は孤独になりやすいと言われます。仕事を辞めた途端、人と話す機会が減り、社会との接点が細くなっていきがちです。
働き続けることで社会とのつながりを保ち、仕事を通じて誰かに「ありがとう」と言われる機会がある。それが、祖父の毎日に張り合いを与えていたように思います。
もちろん、無理をして体を酷使し、怪我をしてしまっては元も子もありません。だからこそ、加齢による体の変化に対して、無理のない範囲で、自分らしく働けること。そして、そういう働き方ができる「場」があること。それが本当に大切なのだと、強く感じています。
「支え手比率」は経済の数字ですが、その裏側にあるのは、一人ひとりの尊厳と社会とのつながりです。また、働く人だけでなく、雇用する会社にとっても持続可能でなければなりません。
私たちAYUMI BIONICSがやっていること
AYUMI BIONICSは、従業員の身体機能や労災リスクをAIで可視化し、改善に繋げるサービスを開発し、日本国内のさまざまな企業に提供しています。
私たちが向き合っているのは、統計の中の抽象的な「高年齢労働者」ではありません。「まだまだ現場に立ちたい」と言うベテランの職人さんであり、「経験豊富な社員に長く活躍してほしい」と願う経営者であり、労働災害リスクと日々向き合う安全衛生の担当者です。
一人ひとりの身体機能を可視化するのは、「まだ働けるか」を選別するためではありません。その逆です。加齢による体の変化を本人と職場が正しく知ることで、無理のない範囲で、その人らしく働き続けられる仕事の設計や行動変容を促すことができます。
労災リスクに先回りして手を打ち、ケガで現場を離れる人を一人減らす。それが「働ける年数」を延ばすことにつながり、積み上がれば国全体の支え手比率を変えていきます。小さなスタートアップではありますが、私たちはそのソリューションを数年かけてお客様とともに磨き上げてきました。
世界中の安全衛生の展示会を回っていますが、類似のサービスはとても珍しく、働く人の高齢化に世界で最も早く直面している日本だからこそ生まれたサービスだと感じています。
課題先進国・日本は、世界最大の実証フィールド
そして、この課題は日本だけのものではありません。今年9月9日からシンガポールで開催されるアジア最大級の労働安全衛生展「OS+H Asia 2026」では重要な領域として「WSH for an Aging Workforce(高齢化する労働力に対応する労働安全衛生)」を掲げています。
日本で磨いたこのサービスを、私たちは「Safety AI Agent for Aging Workforce」として世界へ打ち出していこうとしています。2027年頃からは、米国を含む海外市場への展開も目指しています。
世界で最初に課題に直面した国は、世界で最初に答えを出せる国でもあるはずです。
一緒に「日本を27年若返らせる」仲間を探しています
正直に言えば、私たちはまだ小さなチームで、国内事業がようやく上り始めた段階です。リソースが潤沢にあるわけでもありません。
それでも、自分たちの仕事が「1.9人 → 3.9人」というこの国の根っこの数字につながっている実感は、何にも代えがたいものがあります。
- 社会課題を、感情論ではなく数字とプロダクトで解きたい方
- 現場のリアルとAI・テクノロジーの両方に興味がある方
- 日本で生まれた仕組みを、世界の新しいスタンダードにしていきたい方
そんな方と、ぜひ一度お話しさせてください。まずはカジュアルにお話しするところからで大丈夫です。募集ページからお気軽にご連絡ください。
歳を重ねても、安全に働き続けられる。
社会とつながり、誰かの役に立ち続けられる。
そんな人を一人でも増やすことが、結果として、この国の「1.9人」を変えていく。
私たちは、テクノロジーの力で日本を27年若返らせることに、本気で挑戦しています。