はじめまして。株式会社ヤトラでトラベルデザイナーを担当している、ドイツ出身の テレザです。読書や旅行が好きで、知らない場所を訪れたり、新しい文化に触れたりする時間を大切にしています。
弊社は、日本を訪れる海外のお客様に向けて、飲み歩きツアーといった体験や、オーダーメイドの旅を企画する会社です。東京で暮らし始めてもうすぐ2年になります。現在は、海外の顧客とやり取りをしながら、その先にいるお客様の日本旅行をつくる仕事をしています。
しかし、この物語が始まったのは東京ではなく、人口およそ5,000人のドイツの小さな町でした。
忘れかけていた子どもの頃の夢
13歳の頃の私は、スタジオジブリの映画を観たり、日本の音楽を聴いたりしながら、日本で暮らす自分を想像していました。当時の私にとって、日本は美しく、どこか神秘的で、しかし、あまりにも遠い国でした。ですが、学校生活が忙しくなるにつれ、アニメを観る機会は少しずつ減っていき、日本への憧れも、いつしか心の奥へしまい込んでいました。
「子どもの頃の、現実になるとは思っていなかった夢」
その程度に思っていました。まさか、それが現実になるとは。
忘れていた夢を呼び戻した旅
2018年、高校を卒業する少し前のことです。母が卒業祝いとして、日本旅行をプレゼントしてくれました。
日本に着いた瞬間、自分の中で何かが変わりました。空港を出てから目にするものすべてが新鮮でした。駅で流れる短いメロディ。時間どおりに到着する電車。静かに列をつくって待つ人々。丁寧な接客。初めて味わう日本の料理。それまで映画や写真の中でしか見たことのなかったお寺。憧れていた風景。
何もかもが印象に残りました。現実なのに、どこか夢の中にいるような感覚でした。日本を好きになるまでに、時間はかかりませんでした。

箱根 芦ノ湖から望む富士山
日本を発つ頃には、子供のころのようにいつか必ず戻ってきたいと思っていました。
次も旅行で構わない。
もう一度、日本へ行きたい。
帰国後は、日本でワーキングホリデーをすることも考えました。
けれど、日本語は話せない。知り合いもいない国へ一人で移ることが怖く、踏み出せませんでした。
代わりに選んだのが、もう一つの憧れの国、ニュージーランド。
当時は、日本とは違う道へ進んだように感じていました。
今振り返ると、ニュージーランドで過ごした時間があったからこそ、その後の日本での生活に向き合えたのだと思います。
生き方を変えた一年

ニュージーランド・オークランドの街並み
ニュージーランドで過ごした一年は、その後の人生を大きく変えました。
ホステルで暮らし、大勢の見知らぬ人たちと同じ部屋で寝ることもありました。
育った国も、文化も、考え方も違う人たちと出会い、最初は赤の他人だった人たちが少しずつ友人になり、親友もできました。もちろん、今でもつながりが続いている人もいます。
知らない町へ行き、初めて会う人と話し、慣れない状況に飛び込む。毎日が、自分の安心できる範囲から一歩外へ出る練習のようでした。その一年を通して、自分が望んでいる生き方が明確になりつつありました。
「海外で暮らしたい」
「国際的な環境で働きたい」
「慣れた場所にとどまらず、これからも新しいことに挑戦したい」
自分が最も成長できるのは、不安があっても一歩を踏み出したときだと気づいたからです。
そのような思いを持ち、一年後、大学に進学するべくドイツへ戻りました。生まれ育った家を離れ、家族のもとから車で7時間ほどかかる町へ移り住み、学士課程に進みました。専攻は、グローバル・ビジネス&エコノミクス。
しかし、大学生活が始まると、再び日本は意識の奥へ遠ざかっていきました。勉学に追われ、将来のキャリアについて考える日々。
夢が消えたわけではありません。ただ、心の隅で静かに眠っていたのです。
定員10名、数百人の応募者、そして一通のメール
学士課程の修了が近づいていた頃、修士課程への進学を考えるようになりました。その過程で様々な大学やプログラムを調べていたのですが、その中にテュービンゲン大学のダブルディグリー・プログラムを発見しました。

ドイツ・テュービンゲンで学んでいた頃
それはなんと、ドイツで一年、日本で一年学ぶプログラムです。
忘れかけていた子どもの頃の夢が、突然、もう一度目の前に現れたのです。
しかし、募集枠はわずか10名。しかも、そこに数百人が応募していました。
自分が選ばれるとは、正直思っていませんでした。
ですが、うれしい誤算で、なんと面接に呼ばれ、できる限りの準備をして臨みました。
合格通知のメールを受け取った瞬間は、今でもはっきり覚えています。
画面を見たまま、胸が大きく高鳴りました。
一方で、うれしさと同時に不安もありました。簡単な一年にはならないだろう。
この選択は、きっと自分の人生を変える。そんな予感がありました。
実際、その一年は人生を大きく変えることになるのですが。
人生の中で、忘れられない一年
日本で過ごした一年は、今でも人生の中で特別な時間です。
日本、フランス、スペイン、イギリス、さまざまな国から来た人たちに囲まれて暮らしました。知らないことばかりで、戸惑う場面も。
それでも、ニュージーランドで過ごしていた時と同じように、最初は赤の他人だった人たちが、やがて何でも話せる大切な友人になりました。

東京で出会った大切な友人たちと
日本で過ごす時間の中で、時間を見つけては日本各地を旅しました。
新しい都道府県を訪れ、小さな町を歩き、その土地ならではの風景や文化に触れました。旅を重ねるほど、日本への思いは深くなるばかり。
学生として一年を過ごして帰国するだけでは、もう足りない。そう感じ始めました。
「ここに残りたい。旅行中には見えなかった、日本の日常を知りたい。日本で働き、自分を試したい。」
この環境の中で、自分がどこまで成長できるのか確かめたい。徐々にその思いが強くなっていきました。
自分に合う仕事を探し続けた6か月
日本に残ると決めた後、自分の国際的な経験やビジネスの知識、日本への関心を生かせる仕事を探し始めました。約6か月間、求人を調べ、応募書類を準備し、面接を受けました。
多くの仕事では、当時の自分よりも高い日本語力が求められていました。そうでないものの多くは、今までの経験や将来の目標と合わない仕事でした。
決して簡単な就職活動ではありませんでした。
一方で、その経験が自分がどのような環境で働きたいのかを、改めて考える時間も与えてくれました。
「国際的なチームの中で働きたい」
「大学で学んだビジネスの知識を生かし、セールスの経験を積みたい」
「仕事を通して成長しながら、自分が心から関心を持てる分野に関わりたい」
少しずつ、求めているものが明確になっていきました。
それでも、就職活動は難航。今後の進路を考え直し始めていた頃、一つの求人を見つけました。日本の旅行会社で働くポジション。
会社名は、ヤトラ。Travel Japan TogetherのInstagramを以前からフォローしていたこともあって、その名前にはすぐ気づきました。

Travel Japan TogetherのInstagram
最初に浮かんだのは、
「私にチャンスがあるとは思えない。でも、応募するだけしてみよう」
応募した翌日、面接の案内が届きました。あまりに早かったので、何かの間違いではないかと思ったほどです。
面接では、代表であるSomaと話しました。
会社が目指していること。これから実現したいこと。仕事に対する思い。
話を聞くうちに、どんどん惹き込まれていきました。
「これは、自分が探していた仕事かもしれない」
日本を旅することが好きでした。
国際的な環境で働きながら、ビジネスの知識を生かし、セールスのキャリアを築きたいと常々思っていました。
挑戦できる仕事がしたい。成長したい。自分が本当に好きなものと仕事を結びつけたい。
ヤトラには、そのすべてがありました。
特に惹かれたのは、チームの雰囲気です。異なる国や経歴を持つメンバーが、それぞれの視点を持ち寄って働く。共通しているのは、日本と旅行が好きで、お客様の心に残る旅をつくりたいという思いです。
ここなら、自分も学びながら力を発揮できる。一人の人間としても成長できる。そう感じました。
面接の後、ヤトラで働く機会をもらったときは、すぐには信じられませんでした。それまで別々の方向へ進んでいるように見えた人生の選択が、少しずつ繋がっていく感覚。初めて、そんなふうに思えました。

一緒に働くヤトラの仲間たち
13年後の今
日々の仕事や暮らしに追われていると、今の自分が13歳の頃の自分にどう映るのかを忘れてしまうことがあります。ドイツの小さな町で、スタジオジブリの映画を観ながら日本での生活を想像していた13歳の私。
それから13年がたった今、東京で暮らしています。世界中から日本を訪れる人たちのために、心に残る旅を企画する仕事をしています。
夢までの道のりは、一直線ではありませんでした。何年も、日本のことを意識さえしない時期もありました。日本へ行く勇気が持てず、ニュージーランドを選びました。大学のプログラムに合格できるか不安になり、日本での就職を諦めそうになったこともあります。
けれど、追いかけるのをやめた夢が、必ず消えてしまうとは限らないのかもしれません。夢は心の奥に残り、もう一度自分が向き合える日を静かに待っているのかもしれません。必要な経験を積み、そっと一歩を踏み出す勇気を持てるようになるまで。
もちろん今でも、学ぶべきことはたくさんあります。日本語をもっと上達させたい。セールスの力を伸ばしたい。より頼れるトラベルデザイナーになり、会社にも今以上に貢献したい。
ヤトラで働いていてやりがいを感じられることは、決められた仕事をこなすだけで終わらないことです。自分の考えを提案し、責任を持って取り組み、最後までやり抜くことを、日々の仕事を通して学んでいます。より良い仕事の進め方を、チームと一緒に考える機会もあります。
国際的なキャリアを築きながら、常に新しい課題に挑みたい。
そう考えていた自分にとって、今の環境は大きく成長できる場所です。
同時に、ここまで歩いてきた自分の道のりも、足跡も、大事にしたい。
今の生活を知ったら、13歳の私はきっと信じられないほど喜ぶと思います。
そんな昔の自分を思いながら、好きなことを仕事にできている今に感謝し、これからも努力を重ねていきます。
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