トレイダーズ証券の名ディーラー、井口取締役を大解剖!vol.2 ディーラーの仕事とは?相場の世界で生き残るということ
トレイダーズ証券の取締役として経営に携わりながら、現在も第一線でディーラーとして活躍する井口喜雄さん。
インタビュー企画の第2弾では、ディーラーという仕事のリアルに迫ります。新人時代に受けた厳しい教えや、10億円規模の損失を目の当たりにした経験など、世界最大のマーケットで勝負するディーラーならではの視点について伺いました。
トレイダーズ証券 取締役(CSO)兼 市場部長 井口喜雄
トレイダーズ証券 取締役(CSO)兼 市場部長の現役為替ディーラー。
1998年よりディーラーとして活躍し、ドル円や欧州通貨を主戦場に20年以上ディーリング業務を行う。
ファンダメンタルズから見た為替分析に精通しているほか、テクニカルを利用した短期予測にも定評がある。
認定テクニカルアナリスト。
「甘い考えは捨てろ」新人時代に先輩から叩き込まれたこと
ー新人時代に先輩から言われた言葉で今でも印象に残っているものはありますか?
ディーラーになりたての頃に先輩から繰り返し言われていた「マーケットは世界中でお金の奪い合いをしている場所だ」という言葉です。他にも、「札束を持って殴り合いをしているのと一緒」「これがわからないやつは一生この世界では勝てない」というのもありました(笑)。少し表現が強く、当時はかなり厳しく感じましたが、誰かが買うということは、誰かが売っているということ。今振り返ると本質を突いた言葉ばかりだったと思います。
「甘い考えでは生き残れない、プロもアマチュアも関係なく結果が求められる世界だ」ということを最初に叩き込んでもらったんです。その"厳しさ"があるからこそ面白いと今は思っています。
外国為替市場は1日に1,000兆超のお金が動く世界最大のマーケットです。世界情勢や経済の動きを肌で感じながら、その最前線で勝負できることはディーラーならではの魅力だと思います。
「マイナス10億円」を見た朝。今でも忘れられない出来事
ーこれまでで一番ヒヤッとした経験を教えてください。
2019年のフラッシュクラッシュ*ですね。ある日、いつものように早朝に起きてチャートを見たら、自分のポジションが大きく崩れていたんです。その損益はマイナス10億円超え。あまりの衝撃に本当に膝が震えました。あの時は、辞表を書くことも考えましたね(笑)。結果的には立て直すことができましたが、本当に人生で一番焦った瞬間だったと思います。
ただ、今振り返るとそういった経験も財産。その後も株価急落や地政学リスクなどさまざまな局面を経験してきましたが、経験を重ねることで冷静に対応できるようになった実感があります。
*瞬間暴落。株式や為替などの金融市場において、明確な理由や前触れがないまま、数秒から数分の間に相場が異常なほどの急落(あるいは急騰)を引き起こし、その後急速に元の水準へと戻る現象のこと。
「まず生き残る」20年以上変わらない市場への向き合い方
ー若手の方が暴落を目の当たりにした時は、どんな声を掛けますか?
もし後輩たちが同じ状況になったら、「その経験ができただけでも良かったね」と伝えます。
大暴落を目の当たりにした瞬間は体が硬直して何もできないもの。思考が止まり、指も動かなくなる。でも、その経験をした人は次に同じ局面が来た時、少し冷静に対応できるようになります。だからこそ"大暴落を実際に経験できたこと"自体が貴重な経験で、財産になるんです。
ーそのような考え方はどこから生まれたのですか?また、どのようなマインドで市場に向き合っていますか?
有名投資家ジョージ・ソロスの相場格言に「まず生き残れ、儲けるのはそれからだ」という言葉があります。「退場せずに市場に残り続けることが大事で、生き残りさえすればチャンスはいつか必ず訪れる」という考え方なのですが、この言葉を胸に秘めながらディーラーという仕事にあたっています。
大暴落が起きたり、1日で数百億円規模の資産ができたりする人もいる為替市場。ここで生き残るためには「マーケットは常に正しくて、自分は間違っているかもしれない」と思う謙虚さや素直さ、負けることも許容していくことが大事だと思っています。自分が正しいと思い込み始めると、大きな失敗につながってしまうんです。生き残り続けるために謙虚であり、生き残り続けることで経験を積み上げる。そしてその経験を次のトレードの一手につなげていく、この考え方をベースにして市場に向き合っています。
世界最大のマーケットで日々判断を重ねるディーラー。その華やかなイメージの裏には、想像以上の緊張感と責任があります。
それでも井口さんが20年以上第一線で活躍し続けているのは、「生き残るために謙虚である」という姿勢を貫いてきたからかもしれません。次回は、そんな井口さんが普段どんなことを考えながら仕事をしているのか、その仕事観に迫ります。