【ソフトバンク入社直後:データエンジニアとしての第一歩】
ーー前回は就職活動までのお話を伺いました。続いてソフトバンク入社後の社会人生活について教えてください。最初に配属されたのはどのような部署だったのですか?
守屋;入社後は、まずデータエンジニアとして配属されました。交通や観光などの分野でビッグデータを活用した分析を担当していました。たとえばGISを使ってRやPythonで統計分析をしたり、位置情報系のソリューションの裏側のデータベース構築をしたり。
ーー大学の研究でもデータ分析をされていましたが、そのスキルが活かせたのでしょうか?
守屋;まさにそうです。イノシシの移動分布をGISで分析していた経験が、そのまま位置情報データの取り扱いに活かせた感じですね。ただ、通信キャリアの扱うデータ量やスピード感は大学とは段違いでした。だからこそ「大量のデータを扱いたい」という欲求を満たせて、とても刺激的でしたね。
【部署をまたいで10個の業務経験:柔軟な異動と挑戦】
ーーソフトバンクでは4年間で10個もの部署を経験されたとか。かなり特殊なケースですね。
守屋;初期配属前には人事本部長の前でも「交通をやりたいんです!」と主張して、とにかくやりたいことは全部言うタイプだったので、それなりに希望は通していただけたんですよね。とはいえ、不本意な異動もありました。ただそこでも「成果物は120%で出そう」と決めて、自分が納得いかない案件でも、逆に提案を続けながら与えられた業務はしっかりこなしていました。
ーー短期間でさまざまな部署を体験するメリットは大きそうですね。
守屋;本当にそうでした。AIコンサルタントとして、J.Score(消費者金融や保険会社のデータ分析)やARM関連の海外プロジェクトなどにも関わりました。イギリスやアメリカの拠点と話したり、アルゴンヌ研究所との共同研究に携わったり。グローバルな視野も得られたし、商社とのやりとりの経験も積めて、社会人としての幅が一気に広がりました。
【社内起業制度とイノベンチャーへの挑戦】
ーーソフトバンクには社内起業制度もあると聞きますが、守屋さんも挑戦されたんですか?
守屋;はい。3年目くらいから最終審査に進むようになって、事業の数でいうと6個くらいアイデアを出しました。研究的なアプローチの延長線上にあるイノベンチャーの種をいくつか練り上げていて、たとえばStationAIのスタッフとの出会いもそこで得ました。
ーー社外のアクセラレーターとも繋がれたんですね。
守屋;そうなんです。SBイノベンチャー(現在はSTATION Aiも)の事業推進部長さんが「気軽に来てください」と言ってくれたのに、実際厳しくアドバイスされたり(笑)、でもすごく面倒を見てもらいました。おかげで自分の「ビジネスを考える」力が磨かれたと思います。
【個人事業主としての活動:RPAコンサルとAI導入支援】
ーーその後、2020年にRPAコンサルタントとして個人事業を始められています。どのような経緯だったのでしょう?
守屋;実は「14万円あげるから生活データを全部ください!」というユニークなプロジェクトに参加していたことがきっかけなんです。当時はまだ副業ブームの走りくらいの時期でしたが、そこから「普通のコンサルティングで手伝ってほしい」「AI使えないか?」と声がかかるようになって、個人事業をスタートしました。
ーーコンサル先は中小企業がメインだった?
守屋;はい。中小企業のAIコンサルをする中で、課題感を強く感じました。彼らはとにかく人手不足をなんとかしたい、というニーズがあるのに、高額なソリューションを提示されることも多くて。そこを改善できないかと思ったんです。
ーー個人事業として手応えを感じた案件はありますか?
守屋;OCR関連で「AIを使っているはずが、実は使っていないと思って売っている」なんて事例があって、衝撃を受けました。学習はしませんと言われたけれど、調べたら実際には使っていて。代理店まで降りてきていないという現状を突きつけられました。もっと現場に近いアプローチが必要だと痛感して、なおさら「自分でプロダクトを作らないといけないかも」と思うようになりました。
【NousLagus(ノスラゴス)設立の背景】
ーーそして2021年についにNousLagusを設立されたと。やはり「自分でプロダクトを作る」必要性を強く感じたんですか?
守屋;そうです。社内プロジェクトで試してみる案もありましたが、予算が通らず。最終的には独立してやろう、と。運良く、THE SEEDの廣澤さんが事業への想いを理解して協力してくれて。初回の開発案件も受託しながら、会社を立ち上げて少しずつプロダクトづくりを進めていきました。
ーー創業当初は大変だったのでは?
守屋;ほんとに右往左往していました。受託案件を引き受ければお金は回るけど、プロダクト開発に集中できない。でもお金がないと開発が進まない。オフショアの方にも頼んでみたけれど、意思疎通できないと困ることも多くて…。結果としてはベータ版はものづくり補助金を活用して作り切り、融資も受けてなんとか乗り切りました。
ーーそういう現場での奮闘が糧になっているんですね。
守屋;はい。私自身がソフトバンク時代に培ったデータ分析やAIコンサルの知見をベースに、中小企業や個人事業主としての実体験を組み合わせることで、ようやく「自分たちにしかできないソリューションを作る」道筋が見えてきた感じです。
【まとめ:データとビジネスを繋ぐ懸け橋】
ーーソフトバンクでの多彩な業務経験と個人事業での現場感が融合し、現在のノスラゴスがあるんですね。
守屋;そうですね。私がずっと好きだった “データ分析” は、ビジネスにおいては「どう使うか」「何に役立てるか」が重要です。グローバル視点、AIコンサル、個人事業の経験を通じて見えてきたのは、単なる技術屋ではなく “ビジネスとAIの橋渡し” をする人材が必要だということ。そして、それを現場レベルで実践できるプロダクトが求められているんだと痛感しました。