すべての始まりは、18歳の決意
株式会社ステップ代表の白鳥和明は、青森県出身。高校卒業後、最初に就職したのは地元の漁港にある仲卸会社でした。
一番下の立場だったため、朝3時30分に出勤してシャッターを開け、カニなどを売る毎日。そんな生活を送っていた18歳の頃、白鳥の中に「いつか自分で会社をつくりたい」という思いが芽生えます。
きっかけの一つになったのが、農業を営む父親の仕事を手伝っていたときのことでした。近くのテニスコートでテニスを楽しむ人たちを見て、「会社をつくって見返してやる!」と決意したといいます。
もう一つ、白鳥の背中を押したのが、当時愛読していた『少年ジャンプ』の『北斗の拳』でした。作中でラオウの最期を目にし、「人生は一度しかない」と強く意識するようになったそうです。
数学が得意だったこともあり、「かっこいいコンピュータの世界で独立しよう」と考えるようになります。
この18歳のときの決意が、後のステップ創業へとつながっていきました。
会社の倒産をきっかけに、大学進学を決意
18歳で「コンピュータの世界で独立する」という目標を持った白鳥は、20歳で青森から上京。社員寮のあるシステム開発会社に入社し、ITの世界でキャリアをスタートさせます。
しかし、22歳のときにバブル崩壊の影響を受け、勤務していた会社が倒産。当時は不況の真っただ中で、高卒で新たな就職先を見つけることは簡単ではありませんでした。
そこで白鳥が選んだのが、大学への進学です。父親に負担をかけたくないと学費の安い大学を探し、慶應義塾大学法学部の通信課程へ進みました。
在学中はアルバイトをしながら、自分で学費を払い、仕事と勉強を両立する生活を続けます。
卒業を目指して猛勉強を続けていましたが、最後の卒業論文でつまずき、卒業が1年延びることに。
ところが、その1年間に生命保険会社でプログラマーとして働く機会を得ます。
一見すると遠回りにも思えるこの経験が、その後の白鳥のキャリア、そしてステップへとつながる「生命保険×IT」との出会いになりました。
生命保険のシステム開発から、BAの道へ
大学卒業後、27歳で外資系生命保険会社のSE募集に応募した白鳥。それまでの経歴を「変わった人生の面白いヤツ」と認められ(笑)、無事入社することになります。
入社後は、生命保険会社の基幹システムの開発・運用に関わるさまざまな業務を経験。ここで生命保険の業務とIT、双方の知識を身につけていきました。
その後、大きな転機が訪れます。2004年、会社にM&Aの噂が出たことで業績が低下し、リストラの指令が下りました。しかし、自分の部下を切ることは忍びないと考えた白鳥は、自ら会社を退職する道を選びます。
次に選んだのが、別の外資系生命保険会社でのBA(ビジネスアナリスト)という仕事でした。
BAは、業務とITの間に立ち、ビジネス上の課題や要望を整理しながら、システムに必要な要件へと落とし込んでいく役割です。白鳥はここでさらに経験を積み、生命保険の業務とシステム、双方への理解を深めていきました。
そして、このBAとしての経験が、後にステップを創業する際の出発点となります。
創業当初に白鳥が始めたのも、自身が習熟していたBA業務の受託でした。そこからSIT(システム統合テスト)、PMO、SIへと少しずつ事業領域を広げていくことになります。
「好きなポジションを選んでいい」その言葉が独立のきっかけに
BAとして経験を積んだ白鳥は、その仕事ぶりを評価され、日本人では2人しか選ばれなかった次期リーダー育成プログラムに指名されます。
そしてプログラムを修了した後、上層部からかけられたのが「好きなポジションを選んでいい」という言葉でした。
会社員として考えれば、これ以上ないほど恵まれた状況です。そのまま会社に残り、幹部としてキャリアを築いていく道もありました。
しかし、白鳥がその言葉を聞いて思ったのは、まったく逆のことでした。
「このままここにいたら、辞められなくなる」
思い出したのは、18歳の頃から抱き続けてきた「自分の会社をつくる」という夢です。いつか独立するのであれば、今しかない。そう考え、白鳥は会社を辞めて独立することを決断しました。
次期リーダー育成プログラムを修了したばかりだったこともあり、独立を伝えれば怒られるのではないかという不安もあったといいます。
ところが、返ってきたのは意外な言葉でした。
「Congratulation!」
白鳥は当時を振り返り、「アメリカ人は懐が深いと思いました」と笑います。
この出来事は、白鳥にとって今でも大切な記憶として残っています。新しい道へ進もうとする人を引き止めるのではなく、その挑戦を心から祝福する。自身がそうして背中を押してもらったからこそ、今度は自分が、社員が新しい一歩を踏み出そうとするときに応援できる存在でありたいと考えています。
こうして2006年5月、36歳で株式会社ステップを創業。18歳の頃に思い描いた「コンピュータの世界で独立する」という夢を、約18年の時を経て実現しました。
しかし、会社を立ち上げた時点では、まだ現在の姿があったわけではありません。
白鳥自身が培ってきたBAの経験を武器に、一つひとつ仕事を積み重ねながら、少しずつ会社としての強みを築いていきます。その歩みの中には、現在につながる大きな転機もありました。
次回は、創業したばかりのステップがどのように事業を広げ、現在につながる強みを築いていったのかをご紹介します。