「信頼」を科学し、データサイエンスとピープルアナリティクスを活用して組織開発を支援するサイエンスカンパニー、シンギュレイト。今回は、弊社でデータサイエンティストとして活躍する北島さんにインタビューしました。

これまでの経験・経歴から考えるデータサイエンスに対する哲学、自身の役割、シンギュレイトの面白さを伺いました。前編・後編にわけてたっぷりお届けします！

北島さん / データエンジニア

東京大学にて生物の仕組みを物理的視点から探究する学際領域を学ぶ。卒業後、株式会社システム計画研究所に新卒エンジニアとして入社し、GPU計算やAI/データサイエンス領域で技術を磨く。独立後、株式会社七夕研究所を創業し代表取締役CEOを務める。現在は、株式会社シンギュレイトにてデータサイエンティストとして組織開発支援やCRE室（社内CTO的役割）を担う傍ら、ミイダス株式会社HRサイエンス研究所にてエンジニアとしても活動。

「データサイエンスは道具」現場に活きる技術を追求した、データエンジニアとしての原点

ーーまずは簡単に、北島さんの現在の主な肩書きや活動について教えてください。

現在個人としては、データサイエンス領域で現役エンジニアとして活動しています。また、個人事業として2021年に立ち上げ、2023年に法人化した株式会社七夕研究所の代表取締役／CEOも務めています。自身の会社では、事業開発と技術系をメインに、CTOの役割も果たしています。

ーーこれまでの経歴、またデータエンジニアとしてのキャリアの始まりを教えてください。

実は、学生時代は生物物理の畑にいたんです。東京大学 教養学部 基礎科学科 生体機能分科(現在は統合自然科学科)、総合文化研究科広域科学専攻に在籍し、所属研究室は理学部物理学科・理学系研究科物理学専攻と兼担していた教員のもとで運営されていました。

卒業後は、システム計画研究所に新卒のエンジニアとして入社しました。もともと、会社がGPU計算(CUDA、GPGPU)を画像処理・動画処理領域で得意としていた経緯から、第3次AIブームに会社全体で乗っかる判断をして、私も早い段階からそこに投入されていました。

とはいえ、しばらくは個人の技術要素としては迷走していましたね。しかし、当時日本発で開発されていた深層学習フレームワーク「Chainer*」の使い勝手が非常に良かったことから、これを使うようになってからはどんどん技術を積み上げていきました（*現在は開発を終了し、PyTorchに合流）。そうして自分の強みは完全に「データサイエンス×研究」に。退職する頃には社内で「ミスターChainer」なんて呼ばれることもありました（笑）。

ーー“ミスターChainer”、そこまで技術を磨かれてきたのですね…！

データサイエンスは、あくまで道具だと思っているんです。そう考えると、その道具が高度であればあるほど良いというわけではないんですよね。高度な道具があっても、それを現場で使えるのかと言われたら別の話だし、使えなければ意味がないですから。

高度なものを極めていく代わりに、組み合わせる領域の知見をちゃんと理解することを最重視しています。

「鹿内さんの後を駆けてきた」その中で出会ったシンギュレイト

ーーシンギュレイトとは、どのような経緯で関わるようになったのでしょう？

1社目の会社にいたときから、シンギュレイト代表の鹿内さんとは面識があり、仕事を依頼していただいていたんです。鹿内さんからの案件は、内容的にどれよりもワクワクしていました。

私自身のキャリアも、鹿内さんの後を駆けてきたような感じでもあるんです。彼には、要所要所でいつも相談をさせていただいていて。「会社を辞めて、独立したい」という話もしました。そこで、シンギュレイトから仕事をいただくようになったんです。

ーーシンギュレイトの仕事は、どのような点に惹かれたのでしょうか？

民間で、臨場感を持ってがっつり研究できる場に出会えたのはシンギュレイトが初めてでした。社会物理学的な分野に触れたのもここが初めてです。もともと、私が情報社会学に興味を持っていたので、その問題意識とマッチしたことも惹かれた理由として大きいですね。

また、鹿内さんは少し無茶振りをしても「やろう！」と乗っかってくれるんですよね。そういう面白さも感じていました。

実務としてプロジェクトをこなしながら「社内CTO的立ち位置」も兼任

ーー現在担当しているプロジェクトや担当領域を教えてください。

主にデータ基盤構築・整備、技術選定、運用まわり、社内連携などを行っています。またプロジェクトとしては、東北地方を中心に展開しているドラックストアチェーン薬王堂さまのデータサイエンスを担当。こちらでは、薬王堂×シンギュレイトの合同チームを作り、ワンチームになって取り組んでいます。主にデータ基盤構築、難易度高めの開発を担当しつつ、「社内において技術の最後の砦」にもなっていますね。

かつて在籍していたメンバーから、「北島さんに聞いて答えが得られない場合、その問いの答えはシンギュレイト内にはない」と言われていました。そう言われた私本人としては「過分な評価ですよね？」と問いたくなったのですが（笑）、本来このスタンスであるべきだと思っています。こういったポジションを果たすことで、皆さんとの信頼を作っていくことにつながりますからね。

ーー北島さんは、実務を超えて「社内CTO的な機能」としても動かれているのだと聞きました。

そうですね。正式名称はCRE室(＝Cingulate Reliability Engineering)となりました。日本語に訳せば「シンギュレイト信頼開発」です。長期的に考えると会社的には正式にCTOがいたほうがいいと思うのですが、今のシンギュレイトの状況であれば、今のような形で意外と何とかなるなという感覚です。

実際、CTO業務の多くはチーム単位に委譲できていますし、他社の場合だと自社プロダクトの技術トップがCTOになったりしますよね。そのため、実際のCTOとは若干異なる領域を見ているという感じになります。

抽象的に言うと、社内全体で「ビジネスが大事なのは当然だけど、技術にもちゃんと気を配っています」ということを皆さんとの共通認識にするためのチームという理解です。

ーーなるほど。では、具体的には何を行なっているのでしょう？

基本的には「目配りの目配り」や、意思決定支援ですね。チームにはそれぞれ固有のミッションがあり、それら固有のミッションを達成するには固有の最適解があります。無理に各チームの判断を壊すことなく、各チームが作った知に全社で乗っかっていく。それを実現するための役割でもあるんです。

そういう意味では、ファクトブックとも通じるものがあるかもしれません。ファクトブックはマテリアルをバウンダリーオブジェクトとして扱う勉強会ですが、社内CTO的な役割(＝CRE室)は技術をバウンダリーオブジェクトとして扱う懇談会でもあって。必然的に、どちらも野中郁次郎のSECIモデルを回す場にもなっていますね。

続く後編では、北島さんが感じるシンギュレイトの面白さや他社との違いを、業務内容や働き方の視点から深掘りました！ぜひあわせてご覧ください。