こんにちは!株式会社国境離島革命団の深井です。
今回登場するのは、弊社国境離島革命団の副社長・蛸島です。
東京のIT企業でBtoBマーケティングの責任者を経て、その後はライブ配信事業会社の取締役として事業・組織づくりを経験。現在は鹿児島で、地方企業のSNSを中心としたマーケティング支援に携わっています。
そんな蛸島が鹿児島に来て驚いたのが、「地方は、SNSで認知を取ること自体は東京よりずっとやりやすい」ということでした。
一方で、「SNSをやれば売れる」というほど単純でもないと言います。
「東京とは全く別の、地方ならではのマーケティングの正解がきっとあるはず。」
東京と鹿児島、両方でマーケティングを経験したからこそ見えてきた地方企業の可能性と、これからSNSで本当に強くなる会社の条件について聞きました。
プロフィール
蛸島|株式会社国境離島革命団 取締役 副社長
小樽商科大学卒業後、株式会社DONUTSへ入社。SaaS事業の初代専任マーケティング担当として、Web、広告、広報、アライアンスなどをゼロから構築。リード数を約1.5倍に伸ばし、正社員・アルバイトを含む6名規模のマーケティングチームへ成長させる。
その後、ライブ配信事業を手がける株式会社キャリーの取締役として、経営・組織・新規事業などに携わる。
現在は株式会社国境離島革命団の取締役として、地方企業のSNSマーケティングや事業戦略を担う。
「起業できるスキルが欲しい」から始まったマーケター人生
――まず蛸島さんって、学生時代からマーケターになりたかったんですか?
全然です。
もともとはコンサル志望でした。
というのも、当時は明確に「これがやりたい」というものがなかったんです。
だからこそ、将来何かやりたいことが見つかったときに使える、汎用性の高いスキルが欲しかった。
就職活動をしながら考えていたのが、「大手企業に入って、自分で起業できるようなスキルが本当につくんだろうか?」ということでした。
だったら、BtoBもBtoCもやっている勢いのある小さな会社で、いろいろ経験した方がいい。
そう考えて、スタートアップだった株式会社DONUTSに入社しました。
LPもHPもない。最初の仕事は「マーケティングを信じてもらうこと」
――DONUTSでは、いきなりマーケティング担当だったんですよね。
そうですね。
SaaS事業のマーケティングを3年間やりました。
ただ、僕が入った当時は、営業の人が片手間でマーケティングをやっていたような状態。
専任担当は僕が初めてでした。
LPも十分に整っていない。Webサイトも改善の余地がある。アライアンスの仕組みもない。
本当にゼロからでした。
しかも、マーケティングって最初から予算をたくさんもらえるわけじゃないんです。
「この人にお金を預けたら成果を出してくれる」と決裁者に信頼してもらわないと、予算は増えない。
だから最初は、広告を大量に出すのではなく、Webサイトや広告の改善、広報でメディア掲載を取るなど、なるべくお金をかけず、自分たちでできることを泥臭く積み上げました。
そこで成果を出して、信頼を得て、少しずつ予算を増やす。
最終的にはリード数を約1.5倍にして、マーケティングチームも正社員・アルバイトを含め6名規模になりました。
東京のマーケティングは「競合がとにかく強い」
――その経験って、今の革命団にもかなりつながっていますよね。東京でマーケティングをしていて、一番難しかったのは何ですか?
とにかく競合が強いことですね。
東京には、マーケティング予算を潤沢に持っている会社も多い。
同じ顧客を取り合っている競合も、広告を出すし、Webサイトを改善するし、SEOもやる。
だから、「誰に、どういうポジションで選ばれるか」をかなり細かく設計しないと勝てない。
当然、予算配分も重要です。
広告に100万円使って何件取れたのか。
どの施策から商談につながったのか。
ちゃんと効果測定できる状態を作ってから、次の施策を打つ。
そういう環境でマーケティングを学びました。
事業を伸ばすには、「マーケティング」だけでは足りなかった
DONUTSでマーケティングの基礎を徹底的に学んだ蛸島。
その後、株式会社キャリーの取締役としてライブ配信事業の経営に携わります。
ここで初めて、マーケターではなく「事業そのものを作る側」に立つことになりました。
――キャリーに入ってからは、仕事の範囲が一気に広がりましたよね。
全然違いました。
株主とのコミュニケーションが3割、バックオフィスや組織づくりが4割、事業が3割くらい。
マーケティングだけ考えていればいい立場ではなくなりました。
当時はコロナ禍でライブ配信市場が急成長していて、ライバー事務所もどんどん増えていました。
市場が伸びているから、参入企業も増える。
そうなると、単に広告を出して集客するだけでは勝てません。
ずっと考えていたのは、
「競合がこれだけいる中で、自分たちは何が違うのか?」
ということでした。
「どう売るか」の前に、「何が強いのか」を考える
たとえば、有名ライバーが代表を務める事務所なら、その人自身の知名度が強力な集客装置になります。
一方、僕らの会社には同じ武器はありませんでした。
そこで目を向けたのが、親会社であるエンタメ企業が持つアセットでした。
――そこでオーディションモデルを作った?
そうですね。
「自分たちが持っている強みは何だろう?」と考えると、親会社のエンタメ領域のアセットが使えることだった。
だったら、それを最大限活用したビジネスモデルを作ろうと。
そこでオーディションとライブ配信を組み合わせたモデルを作ったら、大きく伸びました。
この経験は結構大きくて。
マーケティングって「どう売るか」を考える仕事だと思われがちですけど、その前に、
「そもそも自分たちは何が強いのか?」
を理解しないといけない。
強みがないものを、マーケティングだけで無理やり売るのには限界があるんですよね。
ライブ配信バブルの終焉。新規事業の撤退を決めた
そしてもう一つ、蛸島のマーケティング観を大きく変えた出来事がありました。
ライブ配信市場の成長が落ち着き、競合が増えていった時期です。
既存事業の成長が鈍化する中、新たな成長軸を作るため新規事業へ投資。
しかし、思うような成果は出ませんでした。
――これまでのキャリアで一番しんどかった瞬間って、ここなんですよね。
そうですね。
投資だけがどんどん膨らんでいく。
当然、「どこまで続けるのか」を判断しないといけない。
最終的には、新規事業から撤退することを決めました。
人員ごと事業を売却することも考えました。
でも、立ち上げから一緒にやってきたメンバーとは、この会社でまだ一緒に会社を大きくしたいと思った。
だから事業はやめるけれど、メンバーには既存事業へ残ってもらうことを選びました。
このとき改めて、
「施策だけを見ていても、事業は伸ばせない」
と感じました。
マーケティング施策が正しいか。
だけではなく、
そもそも事業に強みがあるのか。
顧客から選ばれる理由があるのか。
そこに会社のリソースを投資するべきなのか。
事業全体を見なければ、本当の意味で成果は出せない。
この経験は、今の革命団でクライアントと向き合う上でもかなり影響しています。
2023年、「AI×SNS」を自分で試してみた
そんな蛸島がSNSへ本格的に興味を持ち始めたのが2023年。
生成AIが徐々に一般にも広がり始めた頃でした。
――そもそもSNSって、もともとの専門領域じゃなかったんですよね。
全然やったことなかったです。
ただAIが出てきて、「AI×SNSで何かできないかな」と思って分析を始めました。
市場の大きさや、SNSの視聴者層との相性、競合状況を見ながら、まずは参入障壁の低い領域で実際にアカウントを運用してみた。
すると、そのアカウントがバズって「SNSって、もっと大きいことができるんじゃないか」と思ったのが、SNS事業に本格的に入っていくきっかけでした。
鹿児島に来て驚いた。「認知を取ること自体は、すごく簡単」
その後、フィールドを東京から鹿児島へ移します。
そこで感じたのは、東京とはまったく異なるマーケティング環境でした。
――実際に鹿児島でSNS運用を始めて、最初に何を感じました?
一番最初に思ったのは、
「認知を取ること自体は、すごく簡単だな」
ということでした。
これはSNSに限った話ではなくて、東京で地方向けにサービスを展開していたときから感じていました。
地方だと、TVCM一本でも大きな知名度や反響につながることがある。
SNSも同じです。
競合する情報量が東京より少ない分、良いコンテンツを出せれば、その地域で一気に知られることがある。
でも、実際にやってみると次の壁がありました。
「知られる」と「行動してもらう」は、全然違う。
再生数が伸びた。
フォロワーが増えた。
それだけでは、来店や採用、購買にはつながらない。
「東京でやってきたマーケティングと何が違うんだろう?」
と考えていくと、地方企業がSNSを活用する意味が少しずつ見えてきました。
地方企業こそSNSを活用すべき3つの理由
――東京と鹿児島の両方でマーケティングを経験して、「地方企業こそSNSを活用する理由」って何だと思いますか?
地方企業こそSNSを活用する理由は大きく3つがあると思っています。
一つ目は、地方には「良いのに、知られていないもの」が本当に多いこと。
二つ目は、SNSは従来のマーケティングツールと違い、その商品のスペックだけではなく、背景にあるストーリーまで伝えられること。
そして三つ目は、SNSのアルゴリズムによって、その情報を必要としている人や地域に適切に届けられること。
東京でマーケティングをやっていた頃は、「競合よりどう目立つか」を考えることが多かった。
地方に来てからは、それ以前に、「まだ知られていない価値をどう発見して、どう伝えるか」が重要だと感じるようになりました。
理由① 「知られていない」が、そのまま伸びしろになるから
――まず一つ目の「知られていないこと」について教えてください。
地方企業を見ていて、本当に多いんです。
良い商品がある。
良いサービスがある。
面白い社長がいる。
働いている人も魅力的。
でも、知られていない。
東京だったら、同じような商品やサービスを出している競合が何十社もいて、広告予算を使って顧客を取り合うこともあります。
一方、地方では「そもそも存在を知ってもらえていないだけ」という会社も多い。
そこはSNSがかなり力を発揮できると思っています。
たとえば飲食店なら、新店舗のOPENやメニューが大きく変わるタイミングは特に強い。
オープンから時間が経っていても、「実はこんな場所だった」「こんな商品がある」といった知られていないハード面の強さがあれば、そこから伸びることもあります。
採用でも同じです。
福祉、看護、物流などの領域や、若年層を採用したい営業職・エンジニア職など、SNS上で仕事選びの情報に触れる層との接点を作りやすい領域があります。
良いものがある。でも知られていない。
このギャップが大きい会社ほど、SNSで伸びる余地があると思います。
理由② CMでは伝え切れない「ストーリー」まで届けられるから
――二つ目が「ストーリー」。なぜ地方企業にとって、ここが重要なんでしょう?
昔のマス広告では、短い時間で便益や他社との違いを伝えることがすごく重要でした。
たとえばTVCMなら15秒程度。
「この商品にはこんな特徴があります」
「使うとこんなメリットがあります」
と伝える。
もちろん、それにはそれの強さがあります。
でもSNSは、もっと長い文脈を伝えられる。
1分のショート動画も作れるし、長尺なら10分、30分でもいい。
なぜこの店を始めたのか。
なぜこの商品を作っているのか。
誰が作っているのか。
なぜこの土地でやっているのか。
商品そのものだけではなく、その背景にあるストーリーまで届けられる。
今は、単純にスペックを比較して「こっちの方が性能が良いから買う」だけではなく、
「この人から買いたい」
「この会社を応援したい」
「この考え方が好き」
みたいな情緒的な理由でも、人が動くようになっています。
だから、ストーリー×商品・サービスそのものの強さがある企業は、SNSとものすごく相性がいいと思います。
地元の豆腐屋だった建物だけでも、コンテンツになる
蛸島が現在担当していてSNSを中心に大繁盛している福島県のある店舗には、その考え方を象徴する要素が詰まっています。
もともとは地域の豆腐屋だった建物。
地産地消へのこだわり。
バリアフリーへの配慮。
店内に置かれている一つひとつの装飾。
そこで働く人たち。
それぞれに「なぜそうしているのか」という背景があります。
――蛸島さんが言う「強いストーリー」って、感動的な創業秘話が必要という意味ではないんですよね?
全然違います。
僕が思う強いストーリーって、
何かしら人の感情が動くもの
です。
共感でもいい。
驚きでもいい。
同情でもいい。
極端に言えば、「この人ちょっと嫌い!」でもいい(笑)。
何も感じないことが一番弱い。
地方には、東京の会社ほど広告にお金を使えない企業もあります。
でも、その代わりに知られていない歴史、人、文化、ストーリーがある。
事業主自身がその価値をちゃんと理解して大切にしていれば、そこには自然とコンテンツの種が生まれます。
理由③ 「全国に広く」ではなく、「必要な人」に届けられるから
――そして三つ目が、SNSのアルゴリズム?
そうですね。
マス広告では、「どれだけ多くの人へ届けるか」が非常に重要でした。
でもSNSでは、必ずしも全国100万人に届く必要はありません。
その商品や会社に興味を持つ可能性が高い人へ、コンテンツを届けられる。
最近は特に、全国で何百万再生という大バズだけではなくて、特定の趣味や地域、属性に深く届く「小さなバズ」が増えている感覚があります。
革命団が「ローカルバズ」に可能性を感じている理由も、ここです。
――だから鹿児島の10万再生が、全国100万再生より価値を持つ場合もある?
全然あります。
重要なのは再生数ではなくて、
誰に届いて、その人がどう動いたか。
鹿児島のお店なら、北海道の人に100万回見られるより、実際に来店できる鹿児島の人に10万回届いた方が価値が高い場合があります。
僕らがやりたいのは、単にバズらせることではなく、
「狙ったエリアで認知を取り、正しく行動変容まで起こすこと」
なんです。
でも、「SNSをやらない方がいい」と言うこともある
ここまで聞くと、「地方企業はとにかくSNSを始めるべき」と聞こえるかもしれません。
でも、蛸島はそこを明確に否定します。
――ここまで「地方企業こそSNS」と言ってきたのに、SNSを勧めない会社もある?
全然あります。
地方でSNSを始めたい会社さんと話していると、SNSを魔法みたいに捉えているケースもあります。
「SNSをやれば売上が伸びますよね?」
「バズれば採用できますよね?」
でも、そもそも商品に選ばれる理由がなかったり、来店後の体験に問題があったりする状態でSNSだけ頑張っても、根本的な解決にはならない。
これはキャリー時代にも学んだことです。
強みがないものを、マーケティングだけで無理やり売り続けることには限界がある。
本質は、事業の特徴とマーケティング施策を正しく噛み合わせることです。
SNSを発注したいけれど、「なぜSNSをやりたいのか」「本当の経営課題は何なのか」が整理できていない企業も少なくありません。
だから革命団では、SNSの企画を考える前に、
「そもそも何に困っていますか?」
「お客さんから何を評価されていますか?」
「逆に、なぜ選ばれていないと思いますか?」
というところから一緒に整理します。
AIで誰でも発信できる時代、「中身がないもの」はもっと厳しくなる
――これからAIがさらに普及すると、SNSマーケティングはどう変わると思います?
制作工数はめちゃくちゃ減ると思います。
動画を作る。
文章を書く。
画像を作る。
そういう作業はどんどん簡単になって、誰でも発信できるようになる。
だから逆に、商品やサービスそのものの強さがもっと重要になると思っています。
AIでそれっぽい動画を100本作れても、商品が良くなかったら意味がない。
むしろ情報が増えるほど、薄っぺらいコンテンツは選ばれなくなる。
それって、ある意味SNSがなかった頃の「口コミ」に戻っていく感覚なんですよね。
本当に良いものを作れば、自ずと広がる。
ただし、「良いもの」は自分たちが良いと思っているものではありません。
お客様が良いと思うものです。
なぜ売れていないのか。
なぜ選ばれていないのか。
そこから目を逸らさず、商品自体を磨き続ける。
その上でSNSを使って、強みやストーリーを過不足なく伝える。
これからは、その両方が必要になると思います。
東京で当たり前だったスキルが、地方では大きな価値になる
――最後に、この記事は採用候補の方にも読んでもらいたいんですが、東京から鹿児島に来た蛸島さんだからこそ伝えたいことってありますか?
僕自身、東京から地方に来て一番感じたのは、
東京で当たり前だと思っていたスキルが、地方ではすごく重宝される
ということです。
東京では競合が多くて、自分よりマーケティングができる人なんていくらでもいる。
でも地方へ来ると、その経験を必要としている企業がたくさんある。
しかも経営者と直接話して、会社の売上や採用そのものを一緒に考える機会も多い。
日本って、東京以外が全部一つの「地方」なのではなくて、日本そのものが、たくさんのローカルの集合体だと思うんです。
鹿児島で通用するスキルを作れたら、次は熊本、福岡、北海道、東北にも持っていけるかもしれない。
そして、その先には海外のローカルもある。
「東京でちょっとくすぶっている」
「もっと事業に近いところでマーケティングをやってみたい」
「地方発のベンチャーで、全国に通用するスキルを作ってみたい」
そんな人にとって、地方はキャリアを諦める場所ではなく、自分の市場価値を違う角度から試せる場所だと思っています。
編集後記
「どう売るか」の前に、「そもそも何が強いのか」を考える。東京でのマーケティングと事業撤退の両方を経験した蛸島だからこそ、SNSを魔法として語らない。その姿勢こそ、革命団のマーケティングの原点なのかもしれません。