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自転車のシェアリングを、量子アニーリングで最適化。配置を効率化するソリューションを開発

筑波大学大学院に在籍しながら、シグマアイでは「シェアリングサービスの再配置最適化」プロジェクトを立ち上げて推進している山根さん。このテーマを掲げた背景や、プロジェクトの進捗と今後の展望を語ってくれました。

山根 直樹(やまね・なおき)

シグマアイ:開発担当

筑波大学大学院 システム情報工学研究群 情報理工学位プログラム 修士課程 1年 在籍

筑波大学で機械学習を専攻。研究室のSlackでシグマアイに興味を持った

-シグマアイにアルバイトとしてジョインするまでの経緯を教えてください。

私は、山口県出身で、高専時代からシステム構築や統計について学びたいと思っていました。情報科学の力によって世の中を便利にしたくて、現在は筑波大学で機械学習に関して研究しています。データに触れるのが楽しいので、自分には合っている領域だと思いますね。

シグマアイとの出会いは、研究室のSlackです。量子アニーリングを扱っているシグマアイの情報が流れてきて、興味を持ちました。代表の大関さんと観山さんのコメント付きで、アルバイト募集の告知がポストされて、完全リモート勤務OKということもありジョインしました。

モバイルバッテリーや自転車のシェアリングを、量子アニーリングで最適化する

-ジョインした後は、どのような仕事を担当しましたか?

アルバイトとして入社したのは、2022年8月です。まずは、eラーニングのコンテンツを閲覧して、量子アニーリングに触れることから始めました。一通りの知識を得た後に、観山さんから「山根君が取り組みたいテーマを、まずは自分で考えてみて」と言われたので、自分なりにリサーチに取り組むことに。もともとは「物流の最適化」を考えていたのですが、既にシグマアイでは事業化されていたので、別のテーマを深掘りしました。

そこで、フードデリバリーの会社が「モバイルバッテリーの再配置輸送」に取り組んでいたのを思い出したのです。スマホの充電のために用いるモバイルバッテリーを、街の各地に置いて一般のお客さんに貸し出しているのですが、その在庫を配達員が管理するビジネスです。料理を届ける合間にモバイルバッテリーも運ぶので、一石二鳥で面白いな、と感じていました。このバッテリーの配置と、配達員が移動を行う順番を、量子アニーリングで最適化できるのでは、と考えたのです。

そして、もう一つのアイデアは、同じ「街」から連想したシェアリングサイクルの最適化です。つくば市でも少しずつ普及していて、自分も目にしていました。シェアリングサイクルは、お客さんが利用した自転車を、再配置するためにトラックで移動させています。どのトラックがどのルートを回るのか、それぞれの駐輪場に何台ずつの自転車を配置すればよいのか。バッテリーが自転車に置き換わっても、量子アニーリングの最適化で問題を解決できるのでは、と考えたのです。

複数の解法を用いることで、シェアリングサイクルの再配置を最適化するソリューションを開発

-シェアリングの最適化プロジェクトは、具体的にはどのように進めましたか?

先輩エンジニアの丸山さんと取締役の観山さんに相談しながら進めました。「他社の事例も無さそうだし、技術的にも新しいし面白そうだね」「地域を限定すると、問題がコンパクトになって解きやすいよ」「モデルを洗練させることができれば、他の分野にも活かせそう」とアドバイスをいただきました。おおまかな方向性が固まったのが、2022年10月くらいでした。

そこからは、「シェアリングサイクルの最適化」にフォーカスして、ソリューションの中身を詰めていったのですが、一つの壁にぶつかりました。「各ポートでどの車両が再配置を行うのか」は、量子アニーリングで最適化できるのですが、「アイテムをどこからどこに動かすのか」「車両の移動順序はどうするのか」という問いには、あまり相性が良くなかったのです。何度も試行錯誤を繰り返した末に、「線形最適化ソルバ」という新しい解法を用いることで、何とか乗り越えることができました。

*60のポートを6台のトラックで最適化するケースを想定。品川周辺5km四方では69ポートであり実用的な時間

シグマアイには、研究室のような自由な雰囲気を感じている

▲シグマアイ社内会議の様子

-ここまでのプロジェクトを振り返っていかがでしょうか?

今回の取り組みは、自由に取り組ませてもらいました。ここまでまとめるのに半年を要しましたが、自分でテーマを決めて、自分で定式化して解法を生み出すことができました。先輩の丸山さんには、分からないことがあればすぐに相談できましたし、数多くのアドバイスをいただきました。シグマアイのメンバーは、大学院生の自分に対してフラットに接してくれるので、プロジェクトを進めやすかったです。学びながら仕事を進めることも推奨されるので、気後れすることも全くありませんでした。

シグマアイには、研究室のような自由な雰囲気を感じます。ビジネスとしての成功だけではなく、サイエンスのアプローチで物事の本質を見ようとする。一方で「モデルが完成すれば終わり」ではなく、社会への実装を強く推進している。ビジネスとサイエンスのバランスが絶妙だと感じています。

企業への提案を通じて、モデルを磨いていく。候補となる企業をピックアップ中

-「シェアリングサービスの再配置の最適化」プロジェクトは、今後はどのように進めますか?

今のアプローチの延長線上として、机上でモデルを洗練させることは考えていません。企業に対してラフに提案して修正を重ねることで、より磨いていきたいです。「再配置」を効率化したい企業は多くあります。それぞれの企業が抱えている課題は様々です。その解決のためにどのように貢献できるのか、提案活動の中で模索したいと考えています。シグマアイとすでにお付き合いがある企業と、実証実験として取り組むのも一つの方法で、観山さんには候補となる会社をピックアップいただきました。

-最後に、山根さん自身の今後のキャリアは、どのように考えていますか?

今、修士1年でこれから就職活動が始まります。色々な会社のインターンシップに参加して、自分の可能性を模索したいですね。今のところは、システムエンジニアとして社会に貢献したいと考えています。シグマアイで学んでいることは、どの会社で社会人になっても活きるはず。特に社会問題からテーマを発想して、自らで解決のための検証を重ねた経験は、何物にも代えがたいものだと実感しています。

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