香港で生まれ、香港で育った。
彼女が日本へ渡ることを決めたきっかけは、少し窮屈だった環境からの「逃避」と、日本のアニメやカルチャーへの尽きない情熱だった。株式会社BeFreeとの出会いは、本当に「たまたま」。日本の就職活動の仕組みすら分からないまま手探りで進む中で、不思議な縁に導かれたという。
インタビュー中、彼女が大切にしているという「進むのも、逃げるのも勝ち」という言葉が、強く心に残った。
時に逃げることさえも肯定し、自分の選択を信じて軽やかに道を切り拓いてきた彼女。現在は会社のバックオフィスを一人で支える彼女の、しなやかで温かい素顔に迫る。
◆ アニメと『推し』が日本語の先生。教科書の外で学んだコミュニケーションの原点
ー まずは学生時代について教えてください。どんな学生でしたか?
勉強しない学生でしたね(笑)。ずっとぼーっとしてた記憶があります。当時は母が厳しくて、スマホも没収されていました。大学進学も、センター試験のような一発勝負のテストで、本当に運良く合格点ギリギリで滑り込んだ感じです。
ー 日本語はその頃から?
中学生の後半くらいからです。きっかけは日本のアニメでした。友達に勧められた『黒子のバスケ』にハマって。それと、ボーカロイドの曲をカバーする「歌い手」っていう文化にも夢中になりました。
ー そこからどうやって勉強を?
好きな歌い手さんの配信を聞き取れるようになりたくて、必死に耳を澄ませていました。あとは声優さんもすごく好きで。当時は有志のファンが翻訳してくれた動画を見ながら、「あ、こういう意味なんだ」って。私の日本語は、ほとんど教科書から学んだものじゃないんです。だからこそ、日本人みたいに自然なアクセントが身についたのかもしれません。
◆ 親からの逃避、そして偶然の出会い。求人票の片隅で見つけた『BeFree』との縁
ー 日本に来ようと決めた、一番の理由は何だったんですか?
正直に言うと、親から逃げたかった、というのが大きいです。監視されているような環境から抜け出したくて。それで日本に来たんですが、もちろん就職活動の仕組みなんて全然分からなくて。とりあえず色々な求人サービスに登録しまくりました。
ー BeFreeとはどうやって出会ったんですか?
あるエージェントの方からスカウトをいただいて。その方が紹介してくれた求人票の右上に、小さく「株式会社BeFree」って書いてあったんです。でも、求人の中身は全然違う会社のことばかりで。なぜかその「BeFree」という社名が気になって、「BeFreeに興味があります」って伝えたんです。そうしたら、「あ、うちの会社なんですけど、面接してみますか?」って(笑)。
ー すごい展開ですね(笑)。
そこからは早かったですね。バイトの休憩中に電話で面接して、その後Zoomでお話して。ちょうど日本に来る用事があったので、そのついでに対面でもお会いして、そのまま「採用になっちゃった」。本当に、何事も縁だなって思っています。当時はまだ社員が10人ちょっとしかいない中で、国外の人間を採用するって、すごい決断ですよね。
◆ 「私が支えなきゃ」。唯一の事務として奮闘する今と、フラットな社風がくれた居心地の良さ
ー 今は事務として会社を支えていますが、仕事のやりがいはどんなところに感じますか?
今は事務担当が私一人なので、「支えなきゃ」って思いますね。皆川さん(代表)をはじめ、みんなを支えたい。印刷みたいな小さなことから、みんなが「ちょっと面倒だな」って思うような作業まで、何でも頼ってほしいです。
ー 仕事をする上でのこだわりはありますか?
社員からの連絡には、時間に関わらずなるべく早く返信することです。**私、基本即レスなんです。**自分が返信を待ちたくないタイプなので、相手にも同じようにしたい。たとえ業務時間外でも、1時間以内には返すように心がけています。
ー BeFreeに入って、何かギャップはありましたか?
ずっと女子校育ちで男性が多い集団に慣れていなかったので、最初は少し怖いのかな、というイメージがありました。でも、入ってみたら意外とみんな優しい。社長の皆川さんも、良い意味で全然「社長っぽくない」というか、すごくラフで話しやすいんです。日本の会社って堅いイメージがあったので、こんなに柔らかい雰囲気の会社があるんだ、と驚きました。
ー 会社の好きな文化を挙げるとしたら?
やっぱり「フラット」なところですね。体育会系って言われることもありますけど、私はそんな風に感じたことはなくて。分からないことがあれば、誰に聞いても丁寧に教えてくれます。社員同士もすごく仲が良くて、この前はアポなしで同僚の家に泊まりに行きました(笑)。ご飯まで作ってくれて、次の日一緒に出社して。彼氏かなって。
◆ 「進むのも、逃げるのも勝ち」。固定概念を壊し、自分の選択を信じてほしい
ー 最後に、これからBeFreeに加わるかもしれない仲間へメッセージをお願いします。
「自分を信じて歩みを進んでいきましょう」と伝えたいです。
日本には「30歳までに結婚しないと」とか「転職は悪いこと」みたいなイメージがあるかもしれないけど、私の故郷の香港では全然そんなことありません。私の姉も40歳で独身ですし、転職を繰り返すことも当たり前。だから、固定概念に囚われないでほしいんです。
たくさん悩むことは大事です。でも、悩んだ末に自分が選んだことを信じて進んでほしい。
私には、昔の“推し”が教えてくれた、大切にしている言葉があります。それは、「進むのも、逃げるのも勝ち」っていう言葉。進むことはもちろん偉いけど、時には逃げることだって立派な選択です。過去に囚われたり、自分を追い込みすぎたりしないで、自分のペースで進んでいってほしいなと思います。
◆ 編集後記
「進むのも、逃げるのも勝ち」。
インタビュー中、彼女が教えてくれたその言葉は、彼女自身の生き方を鮮やかに映し出しているようでした。厳しい環境から「逃げる」ために選んだ日本への道。それは決して後ろ向きな選択ではなく、新しい可能性へと「進む」ための、勇気ある一歩だったのだと感じます。
そして、偶然見つけた「BeFree」という名前の片隅にあった縁を手繰り寄せ、今ではかけがえのない仲間たちを「支えたい」と語る彼女。そのしなやかな強さと、根底にある優しさに、私たちも日々多くの刺激をもらっています。
この記事を読み終えたあなたは、今、何を思っているでしょうか。
もし今の場所に少しの窮屈さを感じているなら、彼女のように環境を変えるという選択が、想像もしなかった未来への扉を開く鍵になるかもしれません。BeFreeが、そんなあなたの新しい一歩を踏み出す場所になれたなら、これほど嬉しいことはありません。