私たちG-genは、Google Cloud 専業インテグレーターであり、Google Cloud プレミアパートナーです。「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」をビジョンに、Google Cloud のプロフェッショナルとしてお客様に伴走し、お客様のビジネスの成功に寄与することを目指しています。
小売業のお客様に対し、データ基盤の設計・構築をリードしたデータエンジニアの開原さん。BigQueryを用いた基盤設計・構築だけでなく、各部門のニーズの整理を通して「本当に必要なデータ活用」を導き出していきました。技術力に加え、丁寧な対話や調整力が求められるデータエンジニアリングの取り組みについて、お話を伺いました。
【プロフィール】
開原 大佑:クラウドソリューション部 データエンジニアリング課所属。医療系SIerで要件定義やデータ活用に従事し、2022年にG-genへ入社。現在はGoogle Cloudを用いたデータ基盤の設計・構築を担当している。
点在するデータと属人的なレポート作成が抱えていた壁
――G-genに入社された経緯を教えてください。
前職では医療系SIerでシステムの導入やカスタマイズに携わり、病院内データを使ったレポート作成や要件定義を担当していました。業務を通じて、次第にデータ活用の面白さを感じるようになったんです。
一方で、医療業界はレガシーシステムが多く、最新技術に触れられる機会が限られていました。今後のキャリアを考える中でクラウドに興味を持ち、G-genと出会いました。新しい技術を学びやすい環境や事業の可能性に魅力を感じたことが、入社の決め手です。
――現在はどのような業務に取り組んでいますか?
主にGoogle Cloud を活用したデータ基盤の設計・構築を担当しています。具体的には、BigQuery 上でのデータウェアハウスやデータマートの構築に加え、データパイプラインの設計や運用も含めたエンドツーエンドのデータ整備を行っています。また、Looker や Looker Studio を用いた BI ダッシュボードの構築もリードしています。
――今回のプロジェクトの概要を教えてください。
小売業のお客様向けに、新たなデータ基盤を構築したプロジェクトです。システム全体を刷新するタイミングで、データ基盤もゼロから作り直すことになりました。当時は、当社としても知見が十分に蓄積されていない状況で、なおかつお客様側も初めてデータ基盤構築に取り組む状態でした。私は本プロジェクトにおいて、要件定義や基盤の技術選定、データモデリング、レポート構成の設計などを主に担当しました。
――本プロジェクトでは、お客様にどのような課題があったのでしょうか?
当初は、基幹データベースや POS、EC など、複数の業務システムのデータがお客様社内に点在していました。各部門が CSV を出力して独自にレポートを作成していたため、横断的な分析が困難な状態だったんです。また、データがどこにあり、誰がどのデータを利用しているのかが把握できないという課題もありました。
部門横断の対話から「本当の課題」を見極める
――課題を解決するうえで、特に大変だった点を教えてください。
最初に各部門から「このレポートが欲しい」といった要望が多数寄せられましたが、どの業務課題を解決したいのかが整理されていない状態でした。そのため、目的やKPIをお客様と一緒にすり合わせるところから始める必要がありました。
また、関係者が多いプロジェクトであったことから、合意した内容で進めていても追加・変更の要望が発生しやすく、データモデルやレポート構成の手戻りをどう減らすかが、大きなポイントでしたね。
――具体的には、どのような工夫を通じて解消していったのでしょうか?
まずはお客様が「何を実現したいのか」を一つずつ確認し、利用可能なデータの構造や所在などを把握しました。そのうえで優先順位を決め、優先度の高いレポートから着手して「そのレポートに必要なデータは何か」を逆算して要件化しました。
また、当初はお客様のシステム部門との会話が中心でしたが、それだけでは実態が見えない部分も多く、各部門の担当者にも参加してもらいながら、部門ごとの目的や課題をヒアリングし、「本当に解決したいこと」を明確にしていきました。
さらに、要望を伺って進めるだけではなく、技術的に可能なこと・不可能なことを踏まえ、「この段階ではここまで実現できます」「今後はこのようなデータが必要になります」といった示唆も行いながら進めていきました。
データは作って終わりではない。価値を生む活用設計の重要性
――本プロジェクトを円滑に進めるために、開原さんが意識した事柄を教えてください。
まずは、お客様の業務をしっかり理解することです。小売業を担当するのは初めてだったため、お客様からも情報をいただきながら、業務の流れや背景を細かく把握していきました。
また、使用する技術についても、お客様の要望や状況にできるだけ寄り添う形で調整することを意識しました。例えば、Google Cloud で構築する場合のプランと、お客様が希望されるプランの両方を比較し、当社の責任範囲も含めてメリット・デメリットを明確にお伝えしたうえで、最適な選択ができるよう支援しました。
――本プロジェクトの成果として感じることは?
今回のお客様は複数の SaaSを利用されていたため、データを一元的に集約できたことでコスト削減につながりました。全体としても、データ基盤を管理しやすい形に整えられたと感じています。
さらに、お客様先の社内メンバーが共通でアクセスできるデータが増えたことで、いわゆる「データの民主化」が進み、現場での意思決定にも活用しやすくなりました。これまで各部門で手動で行っていた作業も自動化され、「運用が楽になった」という声もいただいています。
加えて、現場の社員のみなさんが BigQuery を直接触り、自分で必要なデータを確認する動きが生まれたと聞き、私としてもプロジェクトの成果を実感しました。
――本プロジェクトを通じて、どのような気づきや学びがありましたか?
まず、「特定の部門にとっての正解」と「全体最適としての正解」は必ずしも一致しないということです。特定部門の要望だけを基準にすると、一見成立しているように見える内容でも、全体の業務フローやデータ活用の流れを踏まえると、別の解決策のほうが適している場合があります。だからこそ、自分がお客様企業の一員になったつもりで複数部門の方と対話し、認識のズレを丁寧に埋めていくことが重要だと改めて気づきました。
また、データは「作れば終わり」ではなく、活用されて初めて価値が生まれます。お客様が抱える課題やニーズ、データをどのように見たいのかといった観点を細かく把握する必要性も強く感じました。背景にあるビジネス課題まで理解してこそ、現場にフィットしたデータ活用が実現できると考えています。
これらの気づきは、データ基盤の構築・活用を支援するうえで他のお客様にも共通するポイントです。今回得た学びは、別の案件でもすでに大きく活きていると感じますね。
技術が進化する今こそ、問われるのは「本質を見極める力」
――今後の目標を教えてください。
今後は生成AI領域にも積極的に取り組みたいですね。例えばGoogle Cloud のデータエージェントを活用することで、データ基盤の運用効率化や課題解決の幅がさらに広がると考えています。
ただし、一方で大切なのは、「何が本当の課題なのか」「何を解決したいのか」を正しく捉えることです。根本の理解があってこそ、技術やツールを最適な形で活かすことができるからです。技術が進化していく中でも、課題の本質を見極める姿勢は今後も大切にしていきたいと思っています。
――G-genのデータエンジニアにはどのようなスキルが求められますか?
もちろん、データ分析分野で求められる技術やスキルは必要ですが、最も大切なのはお客様の課題・目的・背景を正しく理解し、丁寧にヒアリングする力。つまり、言われたことをそのまま実装するのではなく、データが“本当に”活用されるために、当事者意識を持って提案していく姿勢だと思います。また、お客様にとって最適な選択肢を提示できるよう、自分たち自身が学び続けることも欠かせないと考えています。
特に当社のお客様は、すでに高度にデータ活用を進めている企業というより、クラウドを使い始めたばかり、または活用しきれていないフェーズにある企業が多いのが特徴です。いわば“ファーストステップ”を提供するシーンが多く、だからこそお客様の真の課題に寄り添う姿勢がより重要になりますね。
――最後に、求職者のみなさんへメッセージをお願いします!
当社には、自らオーナーシップを持ち、「これをやってみたい」「こんな勉強会を開きたい」といった形で主体的に動くメンバーが多く、互いに刺激し合いながら成長できる環境があります。
また、会社としてはまだまだこれから整えていく部分も多く、組織づくりに関わる面白さも味わえます。さまざまなお客様に寄り添いながら、Google Cloudの最新技術を使って課題を解決していく仕事であり、単なるシステム構築にとどまらない奥深さも魅力だと思います。
私自身、クラウド未経験からのスタートでしたが、しっかり学びながら取り組めば活躍できる環境だと感じています。クラウドの経験がない方も、ぜひチャレンジしていただけたら嬉しいですね。