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ブラック企業を回避する求人広告の読み方とは?2000社以上を取材したライターが解説

【筆者プロフィール】
石原遼一

小学校と同じくらい通った早稲田大学在学中からライターの仕事を始め、卒業後、出版・広告業界で会社員とフリーランスを行き来する生活に。気づいたらHR・求人広告を軸にスポーツ、遊技を含めて雑多なコンテンツをつくる人間になっていた。最近は、クライアントに採用コンサルティングから広告運用まで丸ごと頼まれることも。○○広告大賞に応募するのはめんどくさいから一切しないけど、一緒に仕事をした営業は、広告効果や採用率で表彰されていると報告だけ多々受ける。累計で2000社以上の取材をし、7000本以上の制作を行ってきた。夢は山奥でバーニーズ・マウンテンドッグと大型熱帯魚に囲まれ、仙人のような暮らしを送ること。現実は地方都市での引きこもり、ときどき上京の生活である。

僕のブラック企業体験


「先月入社したあいつは××(放送禁止用語※人類最古の職業とも言われる)の息子だからダメだ」、「うちは残業代を払っていませんから(きっぱり)」。10年以上、この業界にいると色んなクライアント企業がいる。「この場面で堂々とよく言えるな」って言葉を投げかけられることもあったし、塀に囲まれた場所でお務めされていた方にしつこくゲイバーに誘われたり、入った瞬間、個人の営業成績が張られている昭和のようなオフィスに行くこともあった。

そう言えば、編集・Tさんと出会った会社は、タイムカードがなく、月末に“自己申告”で出退勤時間を提出していた。もちろん、休日出社しようと終電で帰ろうと、書類上の僕はいつも9:00~18:00勤務でワークライフバランスが充実しているのである。あまりにも素敵な会社だったので、僕は半年で脱走した。Tさんは4年くらいいたはずで、きっと極度のMなのだろう。

上に書いたのは教科書通りのブラック企業である。確信犯的に人を使い捨てようとしていた。でも、世の中には人によってブラックかホワイトか感じ方が違う会社、善意はあるけど単純に法律を知らない会社もいっぱいある。今回は、転職を考えている方に、2000社以上を見てきて僕が感じる現実と求人広告でブラック企業を避ける方法を書いていこうと思う。

ルールを知らない採用担当者が意外と多い

男女雇用機会均等法とか職業安定法とか、採用にはいろんな法律が絡んでくる。当然、守らなきゃいけないのだけど、法律を100%遵守できている企業って、マイノリティじゃないかな。一部の超大手くらいだと思うし、彼らですら労働問題がニュースになることが珍しくない。そこには、現実と法律のギャップもあるし、そもそも中小企業は採用担当であってもルールの中身を知らないことが多いのだ(本人に悪意はない)。

たとえば、かなりの企業が導入しているみなし(固定)残業代制度では、みなし時間と金額に加え、超過分は別途支給する旨が必要なのだけど、「超過しないから表記を削除してくれ」と言われることが、20回に1回くらいある。これは残業時間が少ないというホワイト要素を含みつつ、法律違反なパターンだ。「うちは15分単位で時間外手当を全額支給している」っていうのも時々あって惜しい。残業代は1分単位で支給しなければいけないのだ。ちゃんと出しているのは、すごく良いと思う。あとは管理職だから出さなくてもOKでしょっていう発想。この場合の管理職の定義はとてもハードルが高くて、基本的には役員クラスじゃないと当てはまらない。某ファストフード店の店長の裁判判例を見ればわかるだろう。

ほとんどの求人は中小企業である(だって数が圧倒的だから)。厳密に精査していったら、一部を切り取って、どれもブラックのレッテルを張られてしまうのかもしれない。でも、確信犯的なブラック企業と違って、彼らは彼らなりに社員を思いやろうとしているし、その環境に満足して働いている人もたくさんいる。マンパワー不足と「これまでもずっと同じやり方で問題なかったから」という発想によって、法律の変化に追いつけていない。だから、求職者の人も、自分の許せる部分、許せない部分を認識して、うまく折り合いを付けて欲しいと思う。義理と人情の世界だ。法律を守らないといけないという大前提は当然受け入れるけど。

ブラック企業を回避する求人広告の読み方

良いことは書いて、悪いことは書かない。求人に限らず、広告の基本である(僕がそうだとは言っていない)。「○○何個分のビタミン」とか食品メーカーはアピールするけど、「▲▲と××の栄養素はゼロ」とか補足は併記しないし、すべてを網羅していたらキリがないだろう。同時に、嘘も絶対書いてはいけない。書かないのと嘘を書くのは違うのだ。給料とか平均残業時間とか事実と異なっていたら、完全にNGである。食品表示偽装なんかと同罪で、発覚して証拠を提出すれば、一発でその求人広告媒体への掲載が禁止となるだろう。

つまり、何が言いたいかというと、「書いていないことを想像しよう」である(月給とか休日とか必須項目は除く)。僕個人で言えば、残業が月30時間以内(職種にもよるけど)、賞与が3ヶ月分以上あれば書く。書いてないということはつまり…である。あとは、雰囲気的なところで言えば、「アットホーム」や「働きやすい」なんて個人の主観で、まあ自称○○程度に認識してくれればと思う。

そして、ここからは僕の経験に基づく考えであり、当てはまれば100%NGという訳ではないが、以下のような求人広告を見かけたら危機センサーを働かせてほしい。

固定残業代の内訳と超過分の残業代別途支給の旨が記載されていない

シンプルに言えば、残業代の前払いなので、これくらい発生するという想定のもと月給に含まれている。だから、何時間分含まれているかで残業時間が推測できる。過去に僕が書いた最長時間は88時間分。過労死ラインだ。あとは、営業や建設系なのに、固定残業代が入っていない会社はリスキー。ほぼ含まれている職種であり、特に原稿内に残業代は別途支給と書いてなければ、なにかが隠されている可能性が高い。

「人材」を「人財」と記載している

求人広告上は、「○○の人材or人財を募集します」とかよく書かれるが、後者の場合は匂う。(本人の意思とは関係なく)教育プログラムや会社のイベントを押し付ける会社に多い表現であり、社員想いのフリをした善意の押し売り傾向が強い。そういう場所では、実務以外に時間を取られ、結果的に仕事に追われるという状況が多発する。

やたら社長推しで社員がほとんど登場しない

たとえば、原稿の大部分が社長のメッセージになっていたり、トップの写真が社長のソロの場合がある。まあ、出たがりっているよねって感じだ。ワンマンな社風がすぐに想像できるし、合わない場合は最悪である。よほど信者になれる自信がない限りは、避けて通った方が安全だ。

最上位の広告枠で事務を募集している

全職種の中でトップクラスの人気がある。完全週休2日で土日休み、年間休日120日以上あれば、各媒体の下から2番目、真ん中クラスのサイズで掲載しても合格倍率は300倍くらいになる。難関だ。なのに、最大サイズで掲載されている事務の求人が各媒体でいくつもあるのはなぜだろうか。そう、罠である。実態は大体、未経験可の派遣系の施工管理(管理系事務などと自称)やITエンジニア(IT事務などと自称)だ。これを嘘だと指摘する方もいるだろうが、職種の定義とはなんだという話で、逃げられるだろう。いわゆるオフィスワーク、一般事務を探しているのであれば、検索一覧を一気に後半に飛ばしてしまっても良いだろう。

「ノルマなし」の記載がない営業募集

ノルマなし、既存顧客が多数とちゃんと書いてあるかを確認しよう。書いていなければ、ゴリゴリの新規営業だ。わざわざ「新規開拓ガッツリやってもらうよ」とはアピールしないからね。「当社の商品を既存のお客様をメインに営業していただきます」、「当社の商品をお客様に営業していただきます」。似たような文章だけど、営業のスタイルはまったく違うのである。新規開拓に躊躇なく取り組めるなら、どちらでも良いと思うが。

まとめ

いろいろ書いてきたけど、極端なブラック企業というのは、求職者のみなさんの想像より少ないと思う。大体がフツーの会社だ。主要な求人メディアであれば、採用と定着の保証がないのに、50万とか100万円のキャッシュを出すわけだから、それだけのゆとりがないと募集をかけられない(派遣系は事業と直結するからニュアンスがちょっと違う)。ゆとりがあれば、社員の待遇を上げること(=ホワイト化)もできるはずなのだ。

ちょっとした書かれていないことへの想像力があれば、すごく警戒する必要はないと思う。それに広告で分からない情報は面接で聞けば良い。答えられない、隠す会社は断って問題ないだろう。お互い話し合って、納得できる転職の懸け橋となる仕事をしている僕は、とても素敵である。

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