CARVAAN Brewery&Distillery醸造長 木村 栄
Q.【入社経歴・動機】
A.モノ創りだけではなくコト創りを 伝統と革新が融合したビールを造りたい
奄美大島で生活していた中学時代、大自然に関わる中でモノを創る楽しさを覚えて高校は農業科に進学。果実や野菜など栽培全般を学び、卒業後は北海道の牧場で暫く農業に携わっていました。
その後東京から北海道まで自転車の旅をする機会があり、行く先々で日本人の温かさやホスピタリティーに触れ、日本の伝統を活かした日本人らしいモノ創りに関わりたいと思うようになりました。
20歳の頃、それを叶えるために酒造メーカーに就職し13年間勤務。当初は日本酒造りを希望していましたが、配属されたのはビール部門。実は当時、ビールが苦手で美味しさが全く分からなかったんです。それでも関わる内にビール造りの楽しさに目覚め、苦手な人にこそ心から美味しい!と思ってもらえるようなビールを造りたいという想いが生まれました。 最初は謂われた仕事をこなす日々でしたが、沢山の失敗を重ねる中で様々な方法を試しながら学ぶことを学びました。25歳には醸造長を任されるまでになりましたが、成長が止まってしまった自分に気が付きました。
自分のキャリアに悩み、退職。一度ビール造りを離れて営業の仕事なども経験しましたが、やはり大好きなビール造りをライフワークにしたいという想いを消すことは出来ませんでした。伝統と保守だけではない、今まで築いてきた文化を守りながらも革新的なビールを造りたい…その自分の理想と驚く程シンクロしたのがFAREASTという会社でした。企業理念と社長メッセージを読み、此処で単なるモノ創りだけではなく、コト創りに関わりたいと思い、2017年CARVAAN BREWERYの新規起ち上げの際にFAREASTに入社しました。
Q.【仕事内容、働き方】
A.「歴史が映り、文化が薫る」気品溢れるビールを造ること
商品開発/原料仕入れ/醸造/機械メンテナンス/ホップ栽培/外部イベント設営運営 季節やシーンに合わせたブランドの顔となるビールのレシピ開発が一番のメインの仕事。
FAREASTのビール造りにおいて三つのコンセプトを大切にしています。まず、その土地に受け継がれてきた文化やストーリー、そのビールのスタイルが生まれた背景とルーツを表現すること。貿易会社ならではの世界中から集めた原料を最大限に活かすこと。そして、そのビールをどんな人がどんなシーンで飲むのか、お客様の顔を想像して造ること。
美味しいビールというのは大前提として、それを味わうことが楽しくなるようなストーリー性のある文化的なビールを常に目指しています。 そのためには、醸造の過程において味の決め手となる麦汁造りは細心の注意を払って妥協なく丁寧に造っています。モルトやホップはベルギー最古の精麦会社から仕入れ、副原料もすぐに手に入るアジア産のものではなく、香り高いエジプトのスパイスを使うなど、素材の選定にも拘っています。 酵母は生き物。醸造は一日でも止めることは出来ないので、チームでフレキシブルに調整してローテーションを組み、365日間ブルワリーを稼働させ続ける工夫をしています。
ホップ栽培は僕にとっても初めての挑戦でした。日本では大手メーカー向けに独占栽培されているので栽培に関する有力な資料が出回っていないんですよ。僅かな情報だけを頼りに毎年改良を重ねています。常に勉強、勉強です。 今まで無我夢中で取り組んできたことが実を結び、飯能産柚子とエジプト産コリアンダーの薫る「ベルジャン・ホワイト」がJAPAN GREAT BEER AWARDで金賞を受賞しました。
Q.【FAREASTとは?大変なことは?】
A.チャンスを掴むのは自分次第 様々な分野で活躍するスタッフに刺激を受けて成長できる場所
チャンスとヒントが無限に広がっている会社ですね。それを掴むか掴まないかは自分次第で、そう望めば自分がなりたいものになるための入り口に立てると思います。それは何の動機でも良いと思うんです。自分のやりたい事がある、頑張っている人達に追いつきたい、苦手を克服したい、力を試したい。何でもエネルギーを持って取り組めばそれが成果として認められる、そんな環境の中で働いています。
此処にはジェラート、焼き菓子、パン、料理など様々なジャンルの創り手が居ることも面白いところですね。常に自分の分野外の創り手から刺激を受け、学び続けられるので、それが一見全く無関係なことでもビール造りのヒントになったりするんです。売り手として造ったビールをお客様に説明してくれる人サービスセクションのスタッフとのコミュニケーションも大事ですね。お客様からフィードバックをいただく第一線にいる彼等からヒントを得ることも多いです。 ビール醸造以外のタスクも多いので、仕事をこなす効率性や速さも身に付ける必要があります。逆境もチャンスとして捉えると乗り越えるのも楽しいものです。
CARVAANでは月に一度様々な国をピックアップしたイベントを行うのですが、そのテーマに沿ったビールレシピの開発が思うように進まない時は苦戦しました。「ジプシージャズナイト」では北インドからヨーロッパへ流浪の旅をするロマ族が、旅路の途中でその土地その土地のものを手に入れながら目的地にたどり着くまでの過程をテーマにしたビールを造りました。歴史や地理、各地の食材の調査を掘り下げながら、ようやくそれが形になった時は本当に嬉しかったですね。生みの苦しみに捉われがちな時ほど、周囲の話に素直に心を開くことが一番の近道だと思います。
FAREASTでは自分に出番が回ってくる前からいつでもチャンスを掴める準備をしておくことが大切ですね。とにかく凄い速さで目の前に次々と新しい環境が現れるので、初速の早さが求められます。将来設計はいい意味で持たなくて良いと思いますよ。それよりも目の前のことを自分のやりたいことではないと決めつけずに何でも一生懸命取り組んでみること。それが結果として次の自分の道に繋がります。
Q.【今後の目標は?】
A.新規販路開拓に挑戦したい
今までは直営の実店舗を中心に店内で飲むタップで提供する形がメインでしたが、これからはより多くの方にブランドを知っていただき、ビールを楽しんで貰えるように違った形でも広く提供していきたいと思っています。 工場拡大の目途が立ったので、生産量を上げて缶やボトルビールとして卸し売りも予定しています。そのためにはまず大量生産出来る体制作りと、大きなロットで醸造する中での品質コントロール、ブランド力を落とさずに販売できる流通先の選定などを進めています。
モノ創りは常に勉強。これで良い、という終着点はありません。やればやるほど挑戦し続けたいと思うようになります。毎日挑戦し続けられるこの仕事が今、本当に楽しいですね。