ダイナモピクチャーズから会社分割による会社設立、GENDAへの参入、とここ3年あまりで目まぐるしく状況が変わってきたダイナモアミューズメント。その変化は総じてポジティブな影響を及ぼし、GENDAでのシナジーを活かしながらダイナモアミューズメントならではの事業展開を見据えています。
今回は、当社のステートメントを中心に、PM中村(写真左)、P浅井(写真右)が代表取締役 小川直樹(写真中央)にインタビューを行ないました!ぜひお読みください!
ダイナモアミューズメントのステートメント「驚きを楽しもう」について、
どんな想いで設定されたのでしょうか?
小川:長年やってきたことを振り返って、自分たちが大事にしてきたものは技術先行型の理念ではないよね、という考えがまずありました。例えば、最近メインの商材になっているVRにしても、VRはあくまでユーザーに何かを届けるための“手段”でしかなくて、VRやります!とか新しい技術を届けます!というのは違うと思っています。じゃあ、ユーザーや社会に対して何を届けているんだろう、それってなんだろうというのを必死に言語化しようとしたときに出てきたのが“伝えたくなる驚き”だったんですね。
––––––“驚き”にはどうのように行き着いたんですか?
小川:アトラクションっていう軸をもとに考えたり、似たような事業の他社のステートメントもたくさん見てきたんですけど…自分たちはユーザーが思わず“すげえ!”って叫んでしまうようなものを、その爆発力があるものを追い求めてきたなというのに気が付いて。私はこの一度の“すごい!”を作り続けたい。それを波及していきたい。これが我々のテーマ、クリエイティブポリシーだな、と思いました。
––––––その“すごい!”を紐解いて言語化したのが“驚き”ということですね
小川:皆さんにとっての“すごい!”を作り続けるのって、いばらの道だと思うんです。毎回新しいことをやらないといけないから、とても大変。でも、毎回新しいことをやるのが楽しいと思える人間が集まっていて、それを実現できているから会社のステートメントとしてすごくしっくり来たというのがありますね。
––––––新しいこと、には新しい技術も使う場面が多そうですよね
小川:そうなんです。初めて出会うものに対しての“すごい!”という驚きのパワーは大きくて、その感動を作るためには、結果的に新しいテクノロジーを使い続けないといけなかったりする。でもその新しいテクノロジーはあくまで手段として、誰も感じたことのない“すごい!”を作ることをきちんと目的にすることが、自分たちのクリエイティブポリシーにとって重要なんです。テクノロジーは驚きのための手段でしかない。それを忘れない。
––––––たしかにそうですね。手段と目的を取り違えないようにするのはとても重要だと思います
小川:あと、“驚き”が世界に波及していくというのも重要に思っていて。例えばテーマパークやイベントに行ってすごい体験をして、心の底から“うわ!すごい!”って思ったものって、人は絶対誰かに伝えたくなるじゃないですか?自分の中でおさえていられない衝動。ロケーションだったら、その場で“あれすごいんだよ、見てみてよ”って伝えるし、今ならSNSで“すごい体験をした”って伝えようとしますよね。そうしたコミュニケーションが生み出せるような“驚き”を作っていきたい。それをテーマにして我々は、“作る”、“拡げる”、そしてそれを“楽しむ”のが我々の社会貢献かつ自分たちの原動力であるというのが現在のステートメントです。
––––––そんなステートメントの中、現在各所で人気コンテンツとして稼働していて当社を代表するライドアトラクション「ウルトラ逆バンジー」ですが、どのようにして誕生したのでしょうか?
小川:もともと展示会向けのコンテンツとしてVRと4Dを組み合わせてみたのがうまく機能していたのはあったんですけど、ほぼ同時期にコンセント渡邊課の渡邊課長(https://watanabeka.com/)から、ドローンがビルの前で地上から上空まで行って降りて着地するという360度映像を持ち込んでいただいたんですね。「これを4Dと組み合わせたら何かすごい体験ができるんじゃないか」と言っていただいて。MX4D®って3軸で動いていて上下の動き幅はそんなにないんですけど、VRで視界を囲ったうえで高層ビルを前にして上下する重力感や揺れをモーションで再現したらとんでもなく浮遊感やスピード感を感じることができて。これはすごい!となったのがきっかけでした。
––––––そのひとつ前の作品に深海を冒険する「メガロドン 伝説の巨大鮫」というのもありましたよね?「ウルトラ逆バンジー」がそれ以上に人気コンテンツになったのはなんでだったんでしょうか?
小川:その上下感、浮遊感、スピード感で“すごい!”となった感覚を大事にしたところがありますね。そのコンセプト1点に絞って作りました。企画で一番大切なのは、コンセプトとその軸。その軸、つまり目的が何なのかというのを明確にしたコンテンツは必ずうまくいきます。当時はそんなに意識してなかったところもあるんですが、プロトタイプで確信を得ていたので、自然とその状態になった形ですね。
––––––当時は、ダイナモピクチャーズ(現ニンテンドーピクチャーズ)の一部署でしたよね
小川:そうですね。その、ダイナモピクチャーズのクオリティに対する熱意と熱量は確実に活かされていて、そのマインドは今も受け継いでいると思います。
––––––やはり、もともと技術先行ではなく、何を届けるか、を重視していたのは昔から変わらなかったんですね。
小川:そこがユーザーの皆様やクライアントに通じたのか、厳しいコロナの状況を潜り抜けて、初導入していただいたハウステンボスはじめ各所で大切に長く稼働を頂いていますね。コロナ禍にもかかわらず、人気を得られていたので、席数を倍増頂いたりもしました。
––––––現在、どれくらい展開されているんでしたっけ?
小川:20弱くらいの場所で、長いところでは7年くらい使っていただいていますね。
––––––人気のジェットコースターくらいの稼働ですね!デジタルコンテンツでそれを実現できているのはすごいですね
小川:コンセプトがブレていないことがここまで重要であるというのは、我々としても大変勉強になりました。制作当時は、CGデザイナーたちとの戦いでした(笑)。例えば、デザイナーとしてはこれまで画面で見せてきたクオリティの高いCGの見せ方というのがあって、ただ体験の軸からすると優先度はそこは違う場面があったり。コンセプトと軸を説明してやり直してもらったりしていましたね。軸があれば、トライアンドエラーを繰り返せるのがとても大きかった。エラーの評価、トライの内容決めがその軸をもとに進行できて。MX4D®モーションプログラマーやCGデザイナーが同時にそうした話ができる体制も我々の強みではありましたね。このコンテンツはこういう“驚き”“すごい!”を体験させたいんだって。
––––––その頃から“驚き”というキーワードは出てきていたんですね
小川:当時はそんなに明確に言語化はしていなかったけど。それが大事なんだ、それをやりたいんだっていう想いのきっかけとして「ウルトラ逆バンジー」の存在は大きかったですね。
––––––その後の、フリーロームVRアトラクション「BIOHAZARD WALKTHROUGH THE FEAR」でもコンセプトや軸っていうものがやはり重要視されたんですか?
小川:そうですね。ただ、コンセプトや軸って、簡単にたどり着けるものでもなくて……。大分苦労しましたね。ユーザーに何を体験させたいんだっていうのを、ひたすらプリミティブな方向に突き詰めていかなきゃいけなくて。ディレクターが最終的に引き出したワードが“絶望を体験させる”でした。その軸が見えてからは、かなり大変だったけど、迷うことなく進めることができましたね。目指すゴールが共有されているので。「ウルトラ逆バンジー」「BIOHAZARD WALKTHROUGH THE FEAR」を経て、このコンセプトや軸の大切さを会社全体が深く認識していった感じですね。最近の事例でいうと、「ウルトラセブン THE ATTRACTION」はきちんとそこを突き詰めるところから始められましたね。“最速体験”という誰でも楽しくて驚く体験を軸にすることができて、今の東京ドームシティアトラクションズでのあの素晴らしい形が実現できました。
––––––そうしたそれぞれのコンテンツの高評価もあって、GENDAの片岡会長からグループ参入のお話があった形ですよね
小川:当社のコンテンツにすごく興味をもって頂いて。バイオハザードなんかは福岡まで体験に行ってくれたりしました。なんてフットワークの軽い人なんだ、というのが第一印象です(笑)。福岡で体験したバイオハザードを“世界一面白いVRだ!”ってとても評価して頂いて。その後、片岡会長のビジョンもお伺いして、この人とならこんなことができそう、あんなことができそうっていうのがすぐにたくさんイメージできました。会話が成り立つスピード感も早くて。あと、誰かが言っていたんですけど、会長なのに偉そうじゃないって(笑)。コンテンツをちゃんと心から楽しんでいる姿も拝見していたので、とても好感を持てました。ダイナモの人間は皆心から自分たちの仕事を楽しめるメンバーばかりで、そこを大事にしているので、一緒にやっていけるイメージはすぐに湧きましたね。
––––––GENDAのグループ企業としていろいろな可能性も広がりますよね
小川:グループシナジーで実現できることもたくさんあるし、規模の面でも今までにできなかったようなチャレンジもできる。そして、そのチャレンジに期待してくれているのもすごく感じます。世界一のエンターテイメント企業を目指しているGENDAのグループ企業の中で、エンタメ・コンテンツを作ることを担う会社ではあるので、面白いものを発信する最前線としてグングン進んでいきたいですね。
––––––とても責任重大でドキドキしますが、同時にそれ以上のワクワクがありますね。本日はありがとうございました!
小川:ありがとうございました!一緒に驚きを楽しみましょう!
次回は小川がどんな人物なのかを深掘り!こちらもお楽しみに!