「シンプルにやれないならやらない」アラン・ケイに学んだ宇宙大好きエンジニアの話(前編)【エンジニアインタビュー vol.5:アプリケーション開発部門マネージャー 白井 康雄】
天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。現在、エンジニアの積極採用を行っております。天地人のことをより深くお伝えすべく、入社の決め手や、業界のポテンシャル、仕事のやりがい、チームのカルチャーを掘り下げる社員インタビューシリーズを始めます。今回は、プロダクト開発部・アプリケーション開発マネージャー、白井康雄さんにお話を伺いました。
プロフィール
白井康雄 / 福島県出身
小学生でプログラミングを始める。高校生の頃にApple製品の背後にある哲学に感動し、真に使いやすいソフトウェアの探求をキャリアの軸とすることを決意。新卒で入社した株式会社ビービットではWeb広告管理システムの開発や新サービスの立ち上げに従事。弁護士ドットコム株式会社ではUXエンジニアとしてユーザーリサーチやコード品質改善に関わる。医療系企業を経て、2024年7月に天地人に入社。
主な開発環境
- Frontend: JavaScript/TypeScript, Vue.js, React, Vite, Jest, Vitest, Leaflet
- Backend: Python (Django)
- CI/CD: GitHub Actions, Playwright
- インフラ: AWS, Terraform, Docker, Kubernetes, PostgreSQL
福島県からフルリモート参戦のエンジニアリングマネージャー、白井康雄
ーーー白井さん、本日はよろしくお願いします。入社から2ヶ月ほど経ちましたが、チームには馴染めましたか?
▲フルリモートの白井さん、奥様にご協力いただき「インタビューを受けてそうな写真」を撮影していただきました
いかんせん福島からフルリモートで働いているので「同じ釜の飯を食う」的な機会にはまだ恵まれておらず。とはいえチームの規模が大きくないため会話の機会も多く、だいぶカバーできているとは思います。出社した暁には櫻庭さんのVision Proで遊びたいですね。
ーーー出社されたタイミングで是非、みんなでご飯を食べにいきましょう! 福島には元々住んでいたんですか?
地元は福島なんですが、ずっと東京で働いていました。福島へは妻の妊娠を機に里帰りして。子育てに時間を使いたかったこともあり、フルリモートでも働ける(※)宇宙領域のエンジニア職を探していたので、天地人と出会えたことはまさに僥倖でしたね。
ーーー天地人としても僥倖だったと思います。
※現在天地人では週に一度、出社推奨日を設定しております
地球大好き、宇宙も大好き。意欲の源泉はSFに
ーーー現在天地人でプロダクト開発に従事されていますが、宇宙領域には元々興味があったんですか?
はい、それはもう猛烈に。宇宙が好きすぎて、2022年にJAXA主催の宇宙飛行士選抜試験を受けたほどです。
ーーーそれはすごい、筋金入りですね! 結果が気になります。
書類で落ちてしまいました……。おそらく、健康診断の数値が良くなかったんですね……。
ーーーそれは残念でした……。ただ、得られたものも多かったのでは?
そうですね。「宇宙好きな人ってこんなにいたんだ」と思えたのは経験としてかなり大きかったです。志望者の中にはあらゆる業界の第一線で働く優秀な方が多くて、医師をしている人もいればパイロットをしている人、JAXAでロケット開発をしているという人もいました。試験を通じて知り合った方とは今でも交流が続いていて、毎週オンラインで勉強会を開いたりしていましたね。そこからかなり刺激を受けてしまい、当時ホワイト企業で働いていたのですが「俺の人生、このままでいいのか……!? 少しでもワクワクする方に進んだほうがいいんじゃないか!?」そんな想いに駆られて退職、スタートアップである天地人に入社する運びとなりました。
ーーーすごい! まさに宇宙兄弟ですね。
▲『宇宙兄弟』にて、宇宙飛行士選抜試験中に居場所を見つけた主人公・ムッタ(出典:https://alu.jp/series/%E5%AE%87%E5%AE%99%E5%85%84%E5%BC%9F/crop/paste/MpKm1vqJ6blN8HOn5eN5)
小学生の時、親に学研の『まんが宇宙開発事典』を買ってもらったんです。それを読みながら「ふむふむ、今アメリカとソ連(当時)が宇宙開発競争をしているんだ、アツいな」と思っていた記憶があります。加えてSF小説、特にアイザック・アシモフの『ファウンデーション』シリーズが大好きだったので、輪をかけて宇宙に想いを馳せることが当たり前になっていました。「人類が宇宙を目指すのは当然だよね」ってくらい。一方で、クラスメイト含む周囲にとってはきっと、そこまで当たり前のテーマではなかったですよね。
『ファウンデーション ―銀河帝国興亡史〈1〉』アイザック アシモフ (ハヤカワ文庫SF)。最近AppleTVで映像化もされたそう!
ーーーそこで「あ、俺って宇宙好きなんだ!」って気付いたわけですね。
そうですね。宇宙への興味が転じて「地球を守りたい」と考えるようにもなりました。だって宇宙にこれだけ星があるのに、(現状)地球でしか生命が確認されていないわけですよ。そんな貴重な環境を人類が我が物顔で支配しているのはどうしても許せなくて。宇宙飛行士を目指そうと思った時にも、根底にはそんな想いがありました。「こんなかけがえのない地球を守るために、人類は地球の外に出ていかなければならない」と。
ーーーまさに天地人の掲げるミッション「宇宙ビッグデータを使い人類の文明活動を最適化する」ともリンクしますね。
僕、天地人のミッションがめちゃくちゃ好きなんですよ。初めて知った時から感銘を受け続けています。大それたことを言っているとは思うけど、これをぶらさなければ絶対に人は集まり続けるだろうし、いずれ世の中に対して大きなインパクトを与えられると思っています。
ーーーそのあたりに関して、働き始める前と現在でギャップってありましたか?
ギャップはなくて、解像度が上がった感じですね。メイン事業の一つである天地人コンパス 宇宙水道局では「自治体業務のDX」っていう、人間の手が必要な作業を地道に頑張られてるじゃないですか。すごく根気のいる大変な仕事だろうと思うけど、それを積み重ねていった先に大いなるミッションの達成があると思うので「天地人ちゃんとやってるな、信用できるな」と思います。偉そうですけど(笑)。
▲ちゃんと「ろくろをまわすポーズ」もしてくれました
Apple、そしてパーソナルコンピュータの父アラン・ケイとの出会い
ーーー白井さんはファーストキャリアからエンジニアとしてご活躍ですが、そこは元々どういったきっかけで?
親が使っていたMacを初めて触ったのが小学校4年生の時ですかね。以来、30年以上にわたってAppleユーザーを貫いてます。
ーーーすごい! 年季が入っていますね……。
はじめはただ面白くて触っていたんですが、高校生の頃Apple製品開発の背景にある思想に触れる機会があって、すごく感動したんです。「The Computer for the Rest of Us」というもので、要はそれまで軍人や研究者など一部の人のものだったコンピュータを、子供や主婦といった「普通の人」のためと再定義するものでした。小学校の頃から既に自己流でプログラミングを始めていたんですが、そんなAppleの思想に共感して「使いやすいソフトウェアを生み出して、世の中に価値を提供し続けること」をキャリアの軸に据えようと思いました。
▲筋金入りのAppleユーザー(前々々職時代)
ーーーかなり早熟な高校生ですね……。大学ではパーソナルコンピュータの父と言われるアラン・ケイから学ばれたという話を耳に挟みました。
僕の通っていた大学に、たまたま客員教授としていたんですよね。当時はご存命なことすら知らなかったんですが……。知らない方向けに説明すると、彼はコンピュータがもっと大型で一般の人が気軽に扱えるような操作体系を持たなかった時代に、子どもでも簡単に使える、学びや創造のためのツールとしての「パーソナルコンピュータ」という概念を提唱し、現在まで至る操作体系の礎を設計した人物です。コンピュータ業界のアインシュタインみたいな人ですね。
ーーー彼から直接学んで、どんな影響を受けましたか?
学ぶ以前はコンピュータに対し数学的な産物、つまり計算機でデジタルツールで、という理解をしていたのですが、彼は「人類の“情報”に取り組む歴史の産物」という説明をしていたんです。本来動物として鳴き声しか持たなかったところから「言語」を生み出し、「文字」を生み出すことで場所や時間に捉われないコミュニケーションが可能になった。そして「印刷」技術の発達により爆発的に情報の流通が加速して、「コンピュータ」により情報の民主化が始まる。
コンピュータが生まれる以前は情報の管理って非常にコストがかかることだったんです。アナログな手段に頼るしかないから、入力にも検索にも交換にも手間がかかる。「情報の独占」なんてことも起き得ます。だからコンピュータの誕生というのは情報の民主化の萌芽であって、パーソナルコンピュータというのはそれを具現化して見せたものだったんです。そういった価値転換があったのは大きかったですね。
▲『宇宙博2014』というイベントにて宇宙服から顔を覗かせる白井さん。幸せそうです
そんな元来の「宇宙好きエンジニア」がJAXAベンチャー・天地人に入社して感じたこととは……?続きは次回、後編にてご紹介していきます! 刮目して待て!
(つづく)
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