クリエイティブとテクノロジーで「使いやすさ」を追求する。天地人のパイオニア【エンジニアインタビュー vol.3:アプリケーション開発部門マネージャー 吉田 裕紀】
天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行うJAXA認定ベンチャーです。現在、エンジニアの積極採用を行っております。天地人のことをより深くお伝えすべく、入社の決め手や、業界のポテンシャル、仕事のやりがい、チームのカルチャーを掘り下げる社員インタビューシリーズを始めます。第三弾は、アプリケーション開発部門マネージャーのデザインエンジニア、吉田 裕紀さんにお話を伺いました。
プロフィール
吉田裕紀 / 東京出身
ロンドンの大学でデザイン科を卒業後、現地の広告会社に入社し、クリエイティブテクノロジストとしてグローバルブランドのデジタルキャンペーンにてプロトタイピングやテクニカルディレクションに携わる。帰国後は同社の東京支社を経て、科学技術への興味から日本科学未来館に転職。展示企画開発担当として先端テクノロジーを使った地球観測データのインタラクティブ展示企画、360度映像の研究開発やクリエイターとのイベント企画などを手掛ける。その後フリーランスのWebエンジニアを経て、2019年天地人にジョイン。
主な開発環境(現在の業務で主に扱っている技術スタック)
- Frontend:Vue.js, React.js, Leaflet, MapboxGL
- Backend:Python (Django)
- CI/CD: Github
- インフラ: AWS
自分は今、人生で1番いいものを作れているか?
ーーー吉田さん、本日はどうぞよろしくお願いします。吉田さんのキャリアのスタートはロンドンですが、どのようなきっかけで海外へ挑戦されることになったのでしょうか?
<画像:吉田さんのロンドン時代>
もともと、分野横断的なデザインを学びたいという気持ちが強かったので、ゴールドスミス・カレッジというロンドンの大学に進学しました。グラフィックデザインやプロダクトデザイン、インタラクションデザインなど、全てのデザインを総合的に学べる学校って、当時はそこくらいしかなかったんです。今でこそ日本にもいくつかできていますが。
ダイバーシティが根付いているロンドンでは、先入観や型にとらわれることが文化的に日本より少ないと思います。友達と一緒にギャラリーを借りて展示をしていたら、たまたま通りかかったキュレーターに声をかけられ、その場で次の展示が決まったこともあります。こういった環境のおかげで、良いものはどんどん取り入れていくスピード感やスタイルが身についたと思います。
ーーー卒業後は、ロンドンでどのようなお仕事をされたのでしょうか。
ロンドンの広告会社で、クリエイティブテクノロジストとして、テクノロジーを使った広告企画を担当していました。キャンペーン用のWebサイトや、インタラクティブインスタレーションなどの企画で、テクノロジーで実現できるアイデア出しや、実際に動くモックアップの制作、技術関連全般のテクニカルディレクションですね。
広告制作ではアートディレクターやプランナー、コピーライターなど、それぞれのスペシャリティが多様なので、技術リテラシーにもばらつきがあります。相手の理解度に寄り添って技術を伝える力は、ここで養いました。
ーーーロンドンと日本の文化の違いで印象的なエピソードはありますか?
ロンドンの会社に入社したときの歓迎パーティーで、会社のトップに肩をガッと掴まれて「ここで、人生で一番の良いものを作れ。そして辞めろ!」って言われたんですよ(笑)。
この言葉は未だ自分の中に残っていますね。その後のキャリアでもずっと意識してて。「自分は今、人生で一番いいものを作れているか」という問いは、ずっと頭にあります。
ーーーこれは強烈なパンチラインですね!
プロダクトを自分たちで育てられるのがデザインエンジニアの醍醐味
ーーー日本に戻られたあと、天地人にジョインするまでどのようなお仕事をされていたのでしょうか?
日本には、2010年頃に本帰国しました。もともといた会社の東京支社に入ったあと、先端科学技術と社会をつなぐサイエンスコミュニケーションという仕事に惹かれ、お台場の日本科学未来館に転職しました。展示企画開発担当として、地球観測データのインタラクティブ展示や、360度映像用の特殊なディスプレイを活用したコンテンツなどを企画制作しました。
その後、フリーのWebエンジニアとしてWeb上のVRコンテンツやオンラインチケットサービスの開発を担当し、その時期に創業者の櫻庭さんと出会い、天地人にジョインすることになりました。
ーーー天地人への入社の決め手は何でしたか?
やっぱりJAXAベンチャーっていうところも魅力的でしたね。超初期段階に入社したので「衛星画像で土地を探す何かをゼロから作る。まだそれが何かはわからない!」という無限の可能性がすごく魅力的で、楽しかった。ユーザーが誰かも定まってない手探りの状態が一番苦しかったので、最初に実証実験をさせてもらったゼスプリさんからフィードバックをもらえたときは感慨深かったです。
参考記事:JAXAベンチャー天地人の「衛星データ×キウイフルーツで地域活力を創造する提案」が内閣府宇宙開発戦略推進事務局「課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト」に採択 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000045963.html
プラットフォームを作るのが昔から好きなんですよね。自分が作ったものを人が触って、予想外の使い方をしてくれたりすると、ワクワクするんです。その予想外の使い方が良いときも悪いときもありますが「こういう使い方もあるんだ!」という、作った自分ですらわからない発見がある。インタラクティブなものをつくる醍醐味だと思っています。
僕はもともと、クライアントワークやイベント企画をしていたので、天地人でひとつのプロダクトに腰を据えて開発する際に、自分たち自身で長期的な視野でロードマップを描けるのがすごく新鮮なんです。プロダクトを育てていく楽しさを求めるタイプのデザインエンジニアにとっては、良い環境だと思います。
衛星データって、長い間存在はしてたけど活用されていなかったデータのひとつなんですよ。そこを活かしていけるという可能性の幅の広さも、魅力のひとつですね。
ーーー今も開発を進める中で、吉田さんが大切にされていることはありますか?
天地人コンパスでは、GISや衛星画像を「専門家以外も使える」ことを常に意識しています。専門的な知識や技術がなくても使いやすいこと、それをエンジニアリングとデザインの両面から考えることが自分の役目だと思っています。例えば、「天地人コンパス 宇宙水道局」でいうと、ユーザーは自治体の水道課になるので、紙で業務管理する文化が根付いています。この業務フローを無理やりに全てデジタル化するのではなく、ユーザーが紙のまま残したい部分はきちんと理解する。ユーザーのやり方を尊重したうえで、紙とデジタルを両立する方法を日々模索しています。
ロンドン時代から染みついた、個性を尊重する働き方
ーーー創業当初から現在まで、プロダクトや市場が変化してきました。マネージャーという立場上、苦労も多かったのではないでしょうか?
自分がマネージャーという意識が強まってきたのは、入社から2年ほど経ってチームの人数が増えてきてからですね。最初はフロントエンドはずっと1人でやってたので。プロダクトが「とりあえず作ってみる」フェーズだった開発当初より、クリアしなければいけない技術レベルも上がって自分ではできないことも増えました。自分もよくわかっていないことを人にお願いすることに最初抵抗があったのですが、人が増えるに連れて、自分の関心事がモノからヒトに移ってく感覚はありました。エンジニアの中でも、システマティックな領域が好きな人もいる一方で、フロントのインタラクション寄りの部分が好きな人もいる。人の個性や興味関心を知ることが好きなので、それぞれに寄り添いながら、お互いが楽しく仕事できるような環境づくりのやりがいを感じ始めたところです。
<画像:いつも和気藹々としているエンジニアチーム>
ーーーエンジニアと話していると、皆さん「チームの雰囲気が良い」とおっしゃるのですが、その理由を聞くと「吉田さんが穏やかだから」と返ってきます。吉田さんのその優しいリーダー像は、どのようにできあがったのでしょうか?
今までの職場やチームにはだいぶ影響されてますね。僕は今まで、天地人のようなエンジニアだけのソフトウェア開発チームにいた経験が逆に無いんですよ。広告会社でも未来館でも、アートディレクター、コピーライター、サイエンスコミュニケーターといった、バラバラの役目を負ってる人の集まりでした。それぞれが必殺技を持ってる集団で「この分野はこの人に任せられる」という絶対的な信頼がある環境だったんです。今の自分の「人の個性を活かしたい」という特性も、そういった経験から来てる気がしますね。個性を伸ばして、その人らしくのびのび働ける方が、本人にとってもチームにとっても最適だと僕は思うので。僕は自分のキャリア上、エンジニアリング面でメンバーに具体的に教えられることは多くない代わりに、それぞれの個性をなるべく伸ばしながら今後もずっと活かせる経験を積んでもらって、みんなが人生で最高の仕事ができるようサポートしたいと思っています。
ーーー個性豊かな組織の中で互いに尊重し合うことが、吉田さんにとってはスタンダードなんですね。とはいえ、エンジニアチームも人数が増えてきて空気が変わってる部分もあるのではないでしょうか?
僕の体感では、今のエンジニアチームはシーズン3くらいなんですよね。会社創業期に数人で開発していたのがシーズン1で、その後に仲間が少しずつ集まってチームができてきたのがシーズン2。そして今、高瀬さん、白井さんといったシニア層が加わり、コラボレーションがますます活発になっています。技術面でもソフトウェア開発におけるエンジニア組織としての強度が格段に上がった気がします。精神面でも助けられている部分が大きいです。
ーーーポジティブな変化なんですね! 逆に課題に感じる部分はないですか?
Web、GIS、リモートセンシング、AI、デザインなど専門領域間のコラボレーションをより高めて技術の横断力をあげていきたいと思っています。また、エンジニアチームの内側というよりは、外側、つまり他部署といかにシンクロしていくかも課題だと感じます。エンジニアとビジネスのブリッジというのはすごく大切。エンジニア側もビジネスのニーズやユーザーに対しての解像度を上げつつ、ビジネス側にも、エンジニアだから気付く課題やアイデアなど一緒にサービスを作っていく意識を共有していけたらと思います。
ーーーでは、今後チームに加わってもらいたいのはどのような方ですか?
面接ではいつも「自分自身で何かを作っているかどうか」を尋ねています。やっぱりスタートアップなので、与えられた仕事だけこなす人よりも、自分で提案して自分で何か作るという力が求められると思いますね。また、そこからその人の興味のある領域などがわかったりもします。
クリエイティブとテクノロジーの両輪を追求する
ーーー吉田さんの視点からは、業界の展望をどのように捉えていますか?
天地人コンパスが使っているような技術、GIS分野は、今後どんどん発展していくと思います。自動運転やドローン、XRなどの分野では、すべて位置情報やGISの組み込みが欠かせないので。その発展の中で、特に天地人は業界に縛られずにサービスを展開していけるのが強み。天地人の技術と、多様な業界のニーズの掛け合わせで、可能性は無限に広がります。
ーーー吉田さん個人として天地人で成し遂げたいことは何かありますか?
アプリケーションデザインが自分の個性だと認識しているので、エンジニアリングの技術よりも、そこを磨いていきたいですね。デザインとエンジニアリングの両方ができる面白さは、アウトプットを人が使ってるところを想像しながら、アプリケーションを作って、UI実装して、実際に使ってもらうという、流れを一連で設計できるところなんです。天地人コンパスの開発は、まさにそれが実現できる環境なので、自分の領分としてしっかり極めていきたいと思います。
ーーー「使いやすさ」やUIは、社内でもよく話題になっているので、天地人としてすごくこだわっている部分ですし、ポジティブなフィードバックも受けます。今日のお話を聞いて、天地人のそういうスタンスは、吉田さんがいてくれたからこそ浸透したものなのかなと感じました。ロンドン時代から、創業初期のエピソード、そして今に至るまで、貴重なお話ありがとうございました!