プロダクト重視 or 技術重視。どちらのエンジニアも評価されるチームをつくる【エンジニアインタビュー vol.1:アプリケーション開発部門マネージャー 高瀬 賢二】
天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。現在、エンジニアの積極採用を行っております。天地人のことをより深くお伝えすべく、入社の決め手や、業界のポテンシャル、仕事のやりがい、チームのカルチャーを掘り下げる社員インタビューシリーズを始めます。第一回は、アプリケーション開発部門マネージャーのソフトウェアエンジニア、高瀬 賢二さんにお話を伺いました。
プロフィール
高瀬 賢二 / 東京都出身
Jazzギタリスト、 ボウリング場社員といった20代を経て、30代で医学系翻訳会社に入社。法人営業を経験後、社内SE(開発 & 情シス)となりエンジニアとしてのキャリアに転向。2019年より株式会社レトリバに入社。「分析AI YOSHINA」の立ち上げから開発メンバーとして参加し、v1.0リリース後はインフラチームを立ち上げ、サービスの成長を支える。地球環境やサステナブルな社会に向けた取り組みに惹かれ、2024年3月に天地人に入社。
主な開発環境(現在の業務で主に扱っている技術スタック)
- Frontend: Javascript/Typescript (VueJS) , HTML/CSS
- Backend: Python (Django)
- CI/CD: Github Actions, Playwright
- インフラ: AWS, Azure, terraform, Docker, docker-compose, kubernates, PostgreSQL
toB toCを超えて、to地球な天地人に惹かれて入社
ーーー高瀬さん、本日はどうぞよろしくお願いします。プロフィールを拝見したのですが、なかなか変わった経歴をお持ちですよね。営業からエンジニアに転向されるきっかけはなんだったのでしょうか?
エンジニアに転向したのは、社会人10年目くらいの頃でした。その前は、翻訳会社の営業を担当していたんですが、ちょうど子どもが生まれたばかりで、育児の負担がすごく大きい時期で。とにかく早く帰らなきゃいけない。早く帰らないと食事も作れない、子供も育たないので死活問題。
なので、業務効率化ツール的なものを、自分でプログラミングしたんですよ。それが自分のエンジニアリングの原体験になるんですかね。この出来事がきっかけで「現場の実務経験を活かして、是非効率化ツールの開発に参加してください」と、IT部門長に引き抜いてもらって。そこからは独学で、情報処理技術者の資格などを取りながらスキルを獲得してきた感じです。
その後は、業務効率化を追求するうちに、自動翻訳や機械学習、人工知能に自分の興味が移り、自然言語処理をメインフィールドにする株式会社レトリバに転職しました。
ーーー自然言語処理から衛星データは、分野として結構飛躍があるように感じられますが、どのようなきっかけで天地人を知ることになったのですか?
自分のキャリアを棚卸して考えたときに、自然言語処理の業界にこのままいてもいいと思いつつも、何か他にも可能性があるような気もして、Wantedlyで色々な企業さんを見ていました。
天地人を最初に知ったときは、宇宙や地球環境、サステナビリティなど、並んでいるキーワードのスケールが大きくて、面白そうだなーと。toBtoC問わず「to地球」みたいな、可能性の大きさには惹かれましたね。
あとは、ポテンシャルもすごく高いと思いました。人工衛星のデータをマップ上に表示して何かしらの価値を出すというビジネスモデルなので、価値提供のしかたが限定されていないんです。お客様の業界次第で、活用のパターンがいくつもある。ニーズ先行でも、技術先行でも、どちらの方向からもサービスを展開できるので、ビジネスとしての広がりが大きいと感じました。
ーーー宇宙や地球環境、サステナビリティは、キーワードとしては魅力的ですよね。そんな第一印象を抱きつつ、実際入社するにあたっては何が決め手になったのでしょうか?
一番大きいのは、自分の持っているスキルが今の天地人にフィットしそうだと思えたことですね。前職では、新しいプロダクトを生み出す0から1のフェーズ、1から10に伸ばすフェーズの2段階に関わってきました。前職で経験した、プロダクトを生み出す起承転結のようなものが、自分の中で汎用的な技術、ノウハウとして通用しそうな感覚があったんです。まさにそのフェーズにある天地人で挑戦してみたいと思いました。
前職は宇宙もGISも関係ないですが、「エンジニアチームを強くする」という文脈でなら、貢献できるんじゃないかなと。
ーーーまさにそうですね。高瀬さんが入社されてから、エンジニアチームが更にパワーアップしたのをひしひしと感じています。
プロダクト重視のエンジニアと、技術重視のエンジニア。どちらも評価されるマネジメントを
ーーー 実際に入社したあと、苦労したことや、ギャップを感じた部分はありますか?
思ったよりやることが多いのは悩みどころですね。誰が何をしているのか、どれぐらいの負荷でやってるのかを把握しないと、マネージャーの仕事は始まらないので。組織構造や会社のお作法も理解しないといけない。スタートアップなので、誰もルールを決めてない部分も多くあって、環境のキャッチアップに1か月はかかりましたね。
あとは、ギャップというか、意外だったのは、営業組織の強さでしょうか。テック系の企業って、技術ありきで事業が進むところも多い印象なんですが、天地人は逆に営業ありきで回してくれる部分が大きい気がしています。
技術ファーストの場合だと、エンジニアには「こういうことやりたい!でもマーケットにどうやって展開すればいいかわからない」という苦しさがあるんですが、天地人では逆で「マーケットの要望がしっかり把握できた。さてどうやって技術で応えよう」という発想になるので、僕としては嬉しい悲鳴って感じです。
ーーー「営業が強い」からこそ、「エンジニアがやりたいようにできない」的な息苦しさはあったりするんでしょうか?
この問題は、前職のときから考えていました。僕は、「技術や専門性にコミットしたいエンジニア」と「製品サービスや事業全体にコミットしたいエンジニア」は、どちらも組織に必要だと思っています。組織の「開発力」を底上げするためには、技術にコミットしたいタイプの人、事業にコミットしたいタイプの人、それぞれのメンバーの比率が偏らないバランス感が重要だと、今までの経験から学んだので。
自社の事業活動に対して感度が高く、営業視点やお客様目線で開発作業にコミットしてくれるエンジニアは、技術者ではないマネジメント層から評価されやすい傾向にあると思います。当たり前ですよね。でも、こういうタイプしかいない組織だと、技術者としての力をキープするのが難しい。「営業側の目線、自社の売り上げや事業のことはあまり関心がないけど、この分野の技術は自分に任せてくれ」的な、エンジニアとして突っ走りたい人も評価される仕組みがないとダメなんですよ。大事なのは多様性と、バランスです。
プロダクトにコミットしたい人はコミットしてもらって、深いところの技術が足りなければ、それをフォローできる人が補う。技術にコミットしたい人は技術にコミットしてもらって、プロダクトへの活用やビジネス側への架け橋は、そこをフォローできる人が補う。そうやってお互いに補完しながら、会社として価値を出せる仕組みが必要です。その環境を用意できるかは、マネジメントで決まるんですよ。 どちらのタイプのエンジニアも活かせるマネジメントを、自分はしないとダメだと思ってます。
ーーー チームビルディングの深淵ですね。個性的なキャリアをお持ちの高瀬さんならではの視点のように感じました。
そうですね。僕はエンジニアになったのが比較的遅い年齢だったこともあり、特定の分野で何か抜きんでた技術を持っているタイプではないと思っています。自分がマネージャーとしてできるのは、誰にも見えていないところを見たり、みんな見てるけど手を出したくないことを喜んで手を出したりってことかなと。「お掃除屋さん」って言い方もアレですが、とにかく転がって収集がついてないものに秩序をつけるのが僕なりのマネジメントなんだなと、最近わかってきたように感じます。
こういう考えは、学生時代から続けていたJazzギタリストとしての在り方に影響されてますね。Jazzって、譜面がない音楽じゃないですか。その場で起きる化学反応が、アンサンブルとしてまとまっていくところが面白い音楽だと思っています。
仕事にも通じるのは、進め方って実は全てが決まってるわけじゃないじゃないですか。これから新しいプロダクトを売り出そうっていうときに、その売り方、作り方の正解が最初から見えている人なんていない。その場でみんなの力を合わせて作るという活動になるので。この向き合い方は、ジャズで学んだことが大きいです。
ーーー 仕事とはJazzである、ってことですね! 柔軟で強いチームを作ろうとする高瀬さんは、天地人のカルチャーを体現されているように感じました。
フロントエンド、バックエンド、画像解析。専門性がゆるやかに交差するカルチャーを作りたい
ーーーチーム全体のお話を、もう少し聞かせてください。どのように作業を分担していますか?
開発チームは、Webアプリケーションチームと解析チームの2つに大きく分かれています。
Webアプリケーションチームはさらにフロントエンド、バックエンドの2つ、解析チームはデータ処理、解析処理の2つに分かれています。開発業務はプロジェクト単位で動くものが多いので、チームごとの完全な縦割り分業ではなく、得意な人が中心になって、それぞれ手を出せるところでやっていく。かなりフレキシブルな状態です。
ーーー 高瀬さんがご担当されているプロジェクトはどんなものですか。
僕はインフラバックエンドエンジニアとして採用されているので、まずはインフラ周りやAPIサーバーなど、一番得意な分野に当ててもらっています。その中でもやはり、「天地人コンパス 宇宙水道局」は会社として一番力を入れているプロダクトなので、しっかりコミットしていますね。
マネジメント領域では、組織としてのガバナンスの向上やセキュリティインフラの全体的な底上げから手をつけているところです。
ーーー 実際に「天地人コンパス」の開発に携わるようになって、改めて感じた魅力はありますか?
先ほども言ったように、お客様のニーズによって多種多様なアウトプットができるので、同じものを作ってるつもりでも現れ方が全然違います。「自分が作ったあのシステムが、こんな場所で使ってもらえてるんだ」という出口の広さが面白いです。
例えば、最近メディアに取り上げてもらった「月面アスパラガス」とか。僕たちが日々メンテナンスしている天地人コンパスが活用されて、鳥取砂丘でアスパラガスが育っている。そして近い将来、月面でアスパラガスを自給自足するための、壮大な計画の一端を自分も担っているなんて、とても面白いと思います。
参考:JAXAベンチャー天地人、鳥取県・衛星データ活用サービス実証事業を令和6年度も継続。鳥取砂丘での高品質なアスパラガス生産に向け、現地で栽培実証へ
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000124.000045963.html
ーーーエンジニアチームに新しく入ってくる人は、どんなタイプだと活躍できそうですか?
天地人に入って、代表のメッセージとかを聞いて肌で感じるのは、やっぱり「冒険が好きな人」はフィットするイメージがありますね。冒険とはつまり、技術を使って面白いことをしたい、ワクワクしたい、新しいことに興味がある人かなと。
ただ、会社に入ると最低限やらなければならない役割が決まってしまうので、いかに日々の開発フローの中でワクワクを見つけてもらうか。そういう文化を作るのも、マネージャーとしての役割だと思っています。
ーーー「ワクワク」は、天地人の中でもよく聞くキーワードですね。一方で、チームとして課題に感じている部分はありますか?
コラボレーションのカルチャーをもっと根付かせていきたいですね。例えば、ツールを整えていくような動きが、今はまだ案外弱かったりします。長期的な運用を前提に、拡張性が高くて変更しやすく、チーム全体でメンテナンスしやすいツールはきちんと整えていきたいですね。
解析チームでも、フレームワークの使い方など製品開発技術の便利なところを知ってもらえるといいし、バックエンドが得意なメンバーたちからインフラの基礎知識のところを教えてもらった方がいいとか、フロントエンドからバックエンドに「APIのレスポンスデータをさらにこうやって加工して、このライブラリを使ってこの画面ができている」とか。そうやって、交差する領域がもうちょっとじわっと浸透するように仕掛けたいと思ってます。
そのために最近始動したのが、エンジニア技術ブログの立ち上げです。技術者として外部にもどんどんアウトプットすることを奨励して、それがきちんと評価される仕組みをつくりました。
ーーー全社会議で提案してくださった案の中のひとつですよね。さっそく継続運用の体制が整えられて、高瀬さんのスピーディな実行力が光っていました。それでは最後に、エンジニア目線で感じる、宇宙業界の発展の可能性を伺いたいです。
ChatGPTや汎用人工知能による大規模言語モデルのAIがコモディティ化してきているので、この波に乗ることで、これまでとは全く異なるサービスを生み出せるチャンスは感じます。
天地人が属する宇宙業界や地図アプリでも同様で、これまでの形とは全く異なる可能性があるのは面白いです。コンパスに学習させるAI次第で、UIが地図である可能性すらも否定されるかもしれません。そのくらい、幅広く挑戦ができる。
AI以外では、ドローンやセンサーといったIoTの分野も変化や発展が早いので、人工衛星以外のデータとコラボレートしたサービスも生み出していけると思っています。
ーーーエンジニアにとっても、今後の展望に魅力や可能性を感じてもらえる環境ということですね。これからももっと、全員が「ワクワク」しながら働けるように、組織としてもバックアップしていきたいと思います! 高瀬さん、本日はありがとうございました。