こんにちは。日本マタニティフード協会の山本です。私たちは、この5年半で、約1,100社の企業さんの商品が、売れていくところと、苦戦するところを、隣で見てきました。そこからの考察をまとめてみました。
長い記事なので、先に中身を書いておきます。
この記事に書いてあること
・想いのある商品が売れる場合と苦戦する場合を分けているのは、たいてい4つの要素に分類できる
・コンセプト、ペルソナ、3C、4Pなど、学んだ理論がバラバラに見える理由とつなげ方
・苦戦している商品の担当者から繰り返し聞く「口癖」と、その口癖が示している弱点
・「まず認知を取りたい」の前に、確かめておきたい一つの問い
私の実家は、長野でりんごと桃をつくっている農家です。
子どものころから、父と母が365日、天気を相手にしているのを見てきました。霜が降りれば夜中に畑へ出て、雨が続けば病気を心配し、台風が来れば実が落ちないことを祈る。自然に勝つことはできないので、順応しながら、その年にできる最善を積み上げていく。
店に並んでいるりんごは、その人がこれまで積み上げてきた、現時点での究極の形だと思っています。
(トップの写真は、その実家のりんご畑で、たんぽぽを摘んでいる娘です)
私たちは、協会を始めてから、約1,100社の企業さんとお付き合いをしてきました。食品も、日用品も、ベビー用品も、中には私たちとの出会いをきっかけにファミリー向けに訴求してみるという商品もあり、業種も規模もさまざまです。でも共通していることがあります。どの商品の後ろにも、あの畑と同じ、誰かの365日があるということです。
その想いがまっすぐ伝わって、売れていく商品があります。一方で、同じくらいの想いを込めているのに、苦戦する商品もあります。この違いはどこから来るのか。今日はその話を書きます。
買う側も、仕入れる側も、疲れています
子供の体力は無限ですね。この時は、違う意味で疲れています笑
先に、受け取る側の現実を正直に書きたいなと思います。
いま、たいていの商品はコモディティ化(均質化)しています。「無添加」「国産」「オーガニック」と書かれた商品は、棚に何十とあります。情報も同じで、SNSを開けば、いい商品の紹介が無限に流れてきます。様々な技術が発展していく中で、大きな差をつけにくくなっていると考えています。
スーパーの棚の前で、子どもを抱っこしたまま商品を手に取り、裏を見て、数秒で決める。うちの妻も私も、そうやって買い物をしています。そこで働いているのは「今日を無事に終わらせたい」という気持ちであり、商品ごとのこだわりを読み込む余裕はありません。
仕入れる側も同じです。小売のバイヤーさんの受信箱には、毎日、何十通もの商品提案が届きます。全部に「想いを込めてつくりました」と書いてあります。想いを疑っているわけではありません。ただ、その言葉だけでは、もう選ぶ理由にならないところまで来ています。
つまり、届かない原因は、つくり手にも、買い手にもありません。想いのある商品と、疲れている受け取り手が、うまく出会えていないだけです。
フレームワークを、やってみたことはありますか
企業さんとお話ししていると、こんな声をよく聞きます。
コンセプトメイキングをやった。ペルソナも書いた。カスタマージャーニーの図もつくった。ビジネスモデルキャンバスも埋めた。3Cも4PもSTPも学んだ。全部やってみたけれど、それぞれがバラバラで、つながりが見えない。結局、明日の売り場で何をすればいいのか分からない。
私も、以前は同じでした。
30近い事業をやってみて、残ったもの
少しだけ、私の話をしますね。
新卒で入ったのは、テレビ番組の制作会社でした。子ども向けの番組をつくっていました。もともと、多くの人に影響を届けられる仕事がしたくてテレビの世界に入り、子どもたちを笑顔にして、学びも届けられることに価値を感じていました。
ただ、あの業界は特殊です。このまま続けると、テレビ業界の中でしか通用しない人間になるな、と感じました。世の中一般で通じる人になりたくて、24歳のときにフリーランスとして独立しました。
そこから30歳までの間に、通算で30近い事業やプロジェクトの立ち上げに関わりました。コワーキングスペースの運営のような、場所を売る仕事。オーガニック商品を集めた小売店のような、物を売る仕事。オンラインで形のないサービスを売る仕事、オンラインで物を売る仕事。企業向けと個人向け。大企業の新規事業と個人がゼロから始める起業の伴走。都市の企業と、地方の企業。大きなイベントから、各カテゴリで一番おすすめの商品だけを集めた「もう迷わない」をコンセプトにしたユニークなECサイトまで。
その中の一つに、15坪ほどの小売店がありました。初年度に年商1億円という目標を立てて、なんとか達成できた店です。ここで私は、売る側と同時に、仕入れる側でもありました。毎日届く商品提案を読み、棚に置くものと置かないものを決める。いまも都内で2つの店舗を運営しているので、バイヤーとして商品を見る立場は続いています。だからこの記事では、つくり手の目と、売り場の目の両方から書きます。
現在も運営する都内の店舗の様子
うまくいったものもあれば、もちろん、いかなかったものもあります。ただそのおかげで、どういう事業が、どこで苦戦するのか。どこはお金になりやすく、どこはなりにくいのか。事業の強さは、何で決まるのか。それを、本で読んだ知識ではなく、自分の実体験として広く見ることができました。
そのときに、頭の中にあったフレームワークが、少しずつ一つの形にまとまっていきました。それが、いまから書く式です。
1,100社を見てきて、繰り返し出てくる形
社内ではずっと、この式を使っています。
売上 = ① 商品の魅力 × ② 売り方(伝え方) × ③ 売り場 × ④ 競合
契約企業向けセミナーの資料より
新しい発見ではありません。世の中にある理論を、現場で使える4つの枠に整理しただけです。ただ、1,100社の商品を見てきて、売れる場合と苦戦する場合を分けていたのは、毎回この4つのどれかでした。
そして、大事なのは、掛け算だということです。どれか一つがゼロに近いと、他がどれだけ良くても、結果はゼロに近づきます。「いい商品なのに売れない」は、ほとんどの場合、①は高いのに、②③④のどこかがほぼゼロになっている状態です。
だから、なんとなく全部を良くしようとはしません。いちばん弱い一つの項を探して、そこに集中する。掛け算なので、弱い項が直ると、全体が跳ねます。
横文字のフレームワークは、この4つの枠に収まります
学んだことのある理論を、思いつくかぎり並べてみます。(この章は流し読みでも良いです!)
① 商品の魅力に入るもの
コンセプトメイキング、バリュープロポジション(提供価値)、USP(独自の強み)、ジョブ理論(顧客が商品を「雇う」理由)、ブランディング、機能的価値と情緒的価値。すべて「誰の、どんな困りごとを、どう解決して、どんな気持ちにするか」を言葉にするための道具です。
② 売り方(伝え方)に入るもの
ペルソナ、STPのうちのT(誰を狙うか)、カスタマージャーニー、AIDMAやAISAS、マーケティングファネル、4PのうちのPromotion、コミュニケーション設計。すべて「誰に、どの順番で、何を伝えるか」の道具です。
③ 売り場に入るもの
4PのうちのPlace、チャネル戦略、流通設計、オンラインとオフラインの使い分け、卸と直販の設計。カスタマージャーニーの「どこで出会うか」の部分もここです。
④ 競合に入るもの
STPのうちのP(ポジショニング)、競合分析、ファイブフォース、便益ベースの代替品分析。3CのCompetitorもここです。
式の外側で、全体を見るもの
3C(自社・顧客・競合)は、①が自社、②③が顧客との接点、④が競合。SWOTやPESTは、4つの項それぞれに「いま追い風か、向かい風か」を書き込むための背景分析。ビジネスモデルキャンバスとリーンキャンバスは、この式を事業として成立させる設計図。PMF(プロダクトマーケットフィット)は、4つの項が全部そろって初めて起きる状態のことです。
こう並べると分かるのですが、どの理論も、4つの項のどれか一つを深く掘るための道具です。だから一つずつやると、掘った穴がつながりません。先に4つの枠を置いて、いまどの枠が空いているのかを見る。それから、その枠に合う道具を取りに行く。順番が逆だったんです。
① 商品の魅力:「あるか、ないか」ではなく、「言葉になっているか」
契約企業向けセミナーの資料より
苦戦している商品に、魅力がないことは、まずありません。あるのに、言葉になっていないだけです。
魅力には、機能と情緒の2つがあります。機能は、成分や製法や安全性のように、数字で言えるもの。情緒は、使ったときにどう感じるか、つくり手の何に共感するか。機能は土台ですが、数字で言える分、真似されやすい。「これでいいや」ではなく「これがいい」と選ばれる理由は、たいてい情緒のほうにあります。
バイヤーさんが商談で最初に聞くのは、「一言で言うと、何の商品ですか」です。消費者が棚の前で数秒で判断しているのと、同じことを聞いています。
誰の、どんな困りごとを、どう解決して、どんな気持ちにするのか。これを一文で言えるかどうか。私たちが企業さんと最初に取り組むのは、ほとんどの場合ここです。あの畑の365日を、一文にする作業です。
② 売り方(伝え方):「どういう商品として見せるか」を決めること
契約企業向けセミナーの資料より
伝え方というと、広告やSNSの話だと思われがちです。もちろんそれも含みます。ただ、その手前に、もっと大事な決めごとがあります。この商品を、誰の、何のための商品として見せるのか、です。
商品の価値は、結局「誰の、どんな困りごとを解決するか」に尽きます。この「誰」が決まっていないと、伝え方は決まりません。
たとえば、たんぱく質を多く含んだ冷凍食パンがあるとします。よくあるPOPは「高たんぱくな冷凍パン、いかがですか?」。これで手が伸びるのは、もともとタンパク源を探している人だけです。
順番を変えてみます。「手軽に、健康になりたいですか?」ほぼ全員がYESです。「日本人に不足しがちなたんぱく質が、手軽に摂れたら嬉しいですか?」ここで「そういえば」と気づく人がYESになります。「家族みんなで美味しく食べられる朝食なら嬉しいですか?」自分の食卓が浮かんだ人がYESになります。そのあとに、はじめて商品名を出す。三段のYESを積み上げた人にとって、それは売り込みではなく、待っていた答えになります。
先に決めるのは「何を言うか」ではなく「誰に、どの段のYESを取りにいくか」です。バイヤーさんへの提案書も同じです。一枚目に商品名とスペックが並んでいる提案書は、「もう探している人」にしか届きません。
一つ、補足があります。ターゲットを絞ることを、悪いと言っているわけではありません。ただ、絞った先の人数で、目指している売上が本当に成り立つのか。ここは必ず確かめてほしい点です。刺さる相手まで絞りながら、同時に、そこに十分な大きさの市場があるか。この両方を見ることが、②では大事だと思っています。
「知られたけど、売れない」
企業さんからいちばん多くいただくご相談は、「まず認知を取りたい」です。
認知は、たしかに必要です。知られなければ、何も始まりません。ただ、その前に一つだけ、一緒に想像してほしいことがあります。
仮に、認知が取れたとします。広告がうまくいって、SNSでも話題になって、御社の商品名を、狙っている人の多くが知っている状態になった。そのとき、隣に並んでいる競合に、勝てますか。
「勝てる」と即答できるなら、認知に投資するタイミングです。いまの状態を増幅すれば、そのまま売上になります。
少しでも自信がないなら、順番が逆です。認知は「いまの状態を増幅する装置」なので、勝てない状態を増幅すると、「知られたけど、売れない」が起きます。名前は広まったのに棚が動かない。しかも一度そうなると、二度目の認知はもっと取りにくくなります。
だから私たちは、こう考えています。認知を取る前に、方程式の解を大きくしておく。①が一文で言えて、④で隣に負けない状態をつくる。それから増幅する。同じ広告費で、返ってくる量がまったく違います。
もう一つ。一度知られること(認知)と、必要な瞬間に思い出されること(記憶化・想起)は別物です。「つわりで食べられないときは、あれ」「夜泣きで困ったら、あれ」と結びついた状態が記憶化で、売上に効くのはこちらです。そして記憶化は、①が一文で言えていないと起きません。ここでも、順番は①が先です。
③ 売り場:「売上」ではなく「役割」で組み立てる
契約企業向けセミナーの資料より
売り場は、「どこで売るか」より先に、「そこに狙っている人がいるか」で決まります。良い商品に良い伝え方でも、妊婦さんがいない場所に置けば、掛け算は成立しません。
そのうえで、売り場は一つひとつ選ぶものではなく、組み合わせて設計するものだと思っています。
たとえば、誰もが知っている有名店に置く。そこで数が出なくても、「あの店で扱われている」という事実が、商品の信頼になります。その信頼を持って、実際に数が動きやすい場所に置く。有名店では売れなかった商品が、「有名店取り扱い」を入口に、自社のECで伸びている例は、実際にあります。
価格が高い商品なら、高い理由が伝わる場所を選ぶ必要があります。百貨店は、どの商品にも接客がつき、価格の理由を店員さんが伝えてくれる場所です。一方、いわゆる高級スーパーは、お客さんの層は近くても、基本的に接客がありません。お金を持っている人がいる場所と、価格の理由が伝わる場所は、別だということです。
逆に、「オンラインでしか買えない」ことを価値にする設計もあります。都内に一つだけ、実際に試せる場所をつくって、接点を増やす設計もあります。
バイヤーとしての目線でも同じです。仕入れる側が考えているのは「この商品が売れるか」だけではなく、「うちの棚の、どの役割を埋めてくれるか」です。定番の穴を埋めるのか、話題をつくるのか、客層を広げるのか。提案の一行目に、その答えがあるかどうかで、読まれ方が変わります。
各売り場に期待するのは、売上ではなく役割。売上は、全体の流れの結果として生まれます。私たちの有明と府中の店が、いろいろな企業さんの「試せる場所」を引き受けているのは、この考え方からです。
④ 競合:お客さんは「カテゴリ」で買わない。「便益」で買う
競合というと、棚の隣に並ぶ同じカテゴリの商品を思い浮かべます。もちろんそれもあります。ただ、実際の買い物はそこでは決まっていません。
栄養補助食品の本当の競合は、隣の栄養補助食品ではなく、サプリかもしれないし、宅配のミールキットかもしれない。お客さんが買っているのは「商品」ではなく「手間なく栄養を摂りたい」という便益で、その便益を満たすものはすべて競合です。妻が棚の前で比べているのも、隣の商品ではなく、「これを買うか、今日は作るか、それとも実家に頼むか」だったりします。
バイヤーさんは、もっとシビアに、棚の隣と比べています。だから両方の目が要ります。便益で競合を定義し直すと、何で差をつけるべきか、その価格でいいのかが、はじめて正しく決められます。
ここで、二つ注意があります。
一つは、競合を避けすぎることです。同じカテゴリとも、カテゴリ外の代替品とも被らない位置を探しているうちに、そもそも誰も必要としていない位置を選んでしまうことがあります。被らないことと、求められることは別です。
もう一つは、位置が時間とともにずれることです。発売当初は高級路線だった商品が、10年経つと、もっと高価でこだわった商品が周りに増えて、気づけば中間の価格帯になっている。でも社内の戦略は、発売当初の「高級」のまま。自社にとっては新しい商品でも、世の中では類似品がすでにある、ということもあります。競合は一度決めて終わりではなく、定期的に見直すものです。
気をつけたい口癖
ここからが、この記事でいちばん書きたかったところです。
1,100社とお話ししてきて、苦戦している商品の担当の方から、繰り返し聞く言葉があります。先にお断りしておくと、どれも私自身が言ったことのある言葉です。売る側としても、バイヤーとしても、同じ判断ミスをしてきました。
① 商品の魅力が、言葉になっていないとき
食品なら「うちの商品は、食べてもらえば良さがわかる」。食品以外なら「一回使ってもらえばわかる」「実物を見てもらえば伝わる」。
たぶん本当です。でも、食べてもらう前、使ってもらう前に選ばれなければ、その機会は来ません。これは、魅力を言葉にする作業を先送りしているサインだと思っています。「こだわっています」「想いを込めています」「品質には自信があります」も同じです。事実ですが、棚の前の数秒、提案書の一行目では、何のこだわりかが伝わりません。
もう一つ、①の口癖で見逃されやすいものがあります。「自分たちが売れば売れるんです。イベントで自社スタッフが立てば売れるのに、卸先だとなかなか動かなくて」。
これも、魅力が言葉になっていないサインです。自社のスタッフは、商品の良さを体で知っているので、言葉にしなくても売れます。でも卸先の店員さんは、その体験を持っていません。POPやパッケージや一枚の資料で伝わる言葉がなければ、その商品は、バイヤーさんから見て「うちでは売りにくい商品」になります。消費者に伝わらないだけでなく、扱いづらい商品になってしまっている。これはもったいないです。
② 売り方(伝え方)が、決まっていないとき
「うちの商品は、どんな人にでも合うんです」「相手に合わせて、どんな見せ方でもできます」。
もし、妊婦さんにはこう、共働き家庭にはこう、祖父母にはこう、と即座に言い分けられるなら、良い状態です。でも多くの場合、「誰にでも」は「誰にも決めていない」の言い換えになっています。商品の価値は「誰の、どんな困りごとを解決するか」なので、「誰」が抜けている時点で、伝え方はまだまとまっていないと考えたほうがいいと思います。
「まず認知を取りたい」「SNSでバズれば」「インフルエンサーに紹介してもらえれば」も②の口癖です。認知はいまの状態を増幅する装置なので、①と「誰」が決まっていないうちに増やすと、「知られたけど売れない」になります。「良さを全部伝えたい」「パッケージに全部書きたい」も同じで、全部伝えると、何も残りません。
③ 売り場を、量で見ているとき
「大手スーパーに入れば売れる」「コンビニに置ければ」「大手ECモールに出せば」「百貨店に入れば」。「有名店に売り込めば、売上は上がるはずだ」。
有名店でも、売れない商品はたくさんあります。私も棚をつくる側にいたので、これは断言できます。大きな売り場に入っても、狙っている人がその棚の前を通らなければ動きません。
「うちは価格が高くなってしまうから、お金を持っている人がいるエリアで売りたい」も、よく聞きます。気持ちは分かります。でも、お金を持っている人がいる場所と、高い理由が伝わる場所は別です。接客のない高級スーパーに置いても、理由が伝わらなければ、隣の安い商品に負けます。
逆の口癖もあります。「うちはオンライン向きだから、店舗は要らない」「ネットで売れているから、卸はやらない」。オンライン向きの商品ほど、触って試せる場所が空白になっていることが多い。
どれも、売り場を「売上の量」で見ています。有名店は箔付けに使い、数は動く場所で取り、理由は伝わる場所で伝える。売り場は、単体で選ぶのではなく、役割で組み合わせるものです。
④ 競合を、狭く見ているとき
「うちと同じような商品はない」「競合は〇〇社です」「うちは唯一無二です」「まったく新しい商品です」「過去のどの商品にもない革新性があります」。
「同じような商品はない」は、たいてい同じカテゴリの中だけを見ています。お客さんは便益で買うので、カテゴリの外に本当の競合がいます。栄養補助食品の競合はミールキットかもしれないし、抱っこひもの競合は「今日は出かけない」という選択かもしれない。「〇〇社です」は、隣の棚だけを見ていて、「今日は作ろうかな」「今あるもので済ませよう」と競っていることに気づいていません。
「まったく新しい」「革新的」は、それ自体は良いことなのですが、裏返すと、お客さんがその商品を使っている場面を想像できない、ということでもあります。比べるものがないと、人は価値を測れません。新しい商品ほど、「これは、あなたが今使っている〇〇の代わりです」という橋渡しが要ります。その設計ができているかが大事です。
どこが弱いか分からないとき
「とりあえず値下げしよう」「とりあえずキャンペーンを打とう」「とりあえず商品を増やそう」。
4つのどこが弱いか分からないときに、いちばん手を出しやすいのが価格と数です。でも値下げは①を削る行為で、原因を直さないまま体力だけが減っていきます。商品を増やすのは、弱い項をそのまま増やすことです。
口癖に気づいたら、その項が弱いというサインです。責める話ではなくて、どこを直せばいいかが分かった、という話です。
私たちのスタンス
実家のりんご。娘には少し重いようです。
ここまで読むと、「協会が診断してあげます」という話に聞こえるかもしれません。そうではありません。
想いを込めて商品をつくること自体が、まず素晴らしいことです。あの畑を見て育った私は、そこを疑ったことがありません。ただ、想いが受け取り手に届くまでの道のりで、止まってしまう場所がある。私たちが1,100社を見てきて分かったのは、止まる場所には、だいたい4つのパターンがある、ということだけです。
だから私たちは、助けるという立場ではなく、一緒に良いものをファミリー層に届ける側にいたいと思っています。苦戦している場所があるなら、その場所を一緒に探す。協会の店舗も、コミュニティも、認定制度も、この4つの項のどこかに手を入れるための道具として、この式の上につくってきました。
家の中でも、だいたい同じです
娘に選んだ服が「パパ、それ上下合ってないよ」と却下される話を前に書きました。あれは、私の中では②の失敗です。服自体は悪くない(と思っている)。でも、5歳の娘という受け取り手にとって、どの段のYESから入るべきだったかを、私が考えていない。
仕事も家も、結局は「相手にとってどうか」を確かめ続けることでしかなくて、この式は、そのための確認リストのようなものだと思っています。
御社の方程式は、どの項が弱いですか。分からなければ、一緒に確かめるところから始められます。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。