デザインとは
一期一会という言葉がある。茶道に由来し、目の前の出会いは二度と繰り返されない、一生に一度のものだと心得て、心を尽くすという教えだ。デザインもまた、これに似ている。ある人が、あるプロダクトやサービス、空間に出会う瞬間は、その人にとって一度きりのものだ。同じユーザーでも、昨日と今日では状況も心境も違う。だからこそデザイナーは、目の前の一つひとつの接点を「その都度が唯一無二」として扱う姿勢を持たなければならない。使い回しのテンプレートのように扱った瞬間、デザインは人との出会いではなく、作業になってしまう。
しかし、一期一会の精神だけでは、デザインは成り立たない。そこには公平さが必要になる。公平とは、誰に対しても同じ基準、同じ機会を用意することだ。文字の大きさ、色のコントラスト、操作のしやすさ——これらは特定の誰かのためだけに用意されるものであってはならない。年齢も、身体的な条件も、文化的背景も異なる人々が、同じ入り口に立てること。それが公平なデザインの土台になる。
だが公平を「一律に同じにすること」だと取り違えると、デザインは冷たいものになる。ここで公正という視点が要る。公正とは、それぞれの違いを理解した上で、真に妥当な扱いをすることだ。車椅子の利用者に階段しか用意しないのは公平でも公正でもない。一人ひとりの事情に応じて、必要なところに必要な配慮を届けること——それが公正なデザインの姿勢だ。同じ踏み台を配るのではなく、その人が本当に必要としている高さを見極めること。
つまりデザインとは、一期一会の心で目の前の出会いを一度きりのものとして真剣に受け止め、公平な土台の上に、公正な配慮を重ねていく営みだと言える。誰にでも開かれていながら、誰にとっても他人事ではない。そういう緊張関係の中に、本当に良いデザインは生まれるのではないだろうか。