「やってみせ、言って聞かせて…」山本五十六の言葉に学ぶ、フルリモート組織のマネジメント論
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」——山本五十六のあまりにも有名なこの言葉を、日々のマネジメントの拠り所にしているという開発部マネージャー。
フルリモート・フルフレックスで、しかも平均年齢29歳という若いメンバーが中心の組織で、この言葉をどう実践しているのか。その具体的な工夫を聞いた。
——数ある名言の中で、なぜこの言葉を大切にしているのですか。
「マネジメントというと、指示を出してできているかチェックする、というイメージを持たれがちです。
でもこの言葉が言っているのは、それとは順番が逆なんですよね。まず自分がやってみせる。次に、なぜそうするのかを言葉で説明する。そのうえで、相手にやらせてみる。
そして、できたことをちゃんと認める。この4つの順番を飛ばさないことが、結局は一番遠回りに見えて近道だと思っています」
——「やってみせ」の部分は、フルリモートだと難しくありませんか。オフィスなら隣の席で作業を見せられますが。
「そこはまさに悩んだところです。画面の前で黙々と作業しているのを後ろから覗き込む、ということができませんから。
なので今は、実装や設計で判断に迷いそうな場面では、画面共有をしながら『自分だったらこう考える』というのをその場で見せるようにしています。
結果だけを渡すのではなく、迷ってから決めるまでの過程ごと見せる、という感覚です」
——「言って聞かせて」「させてみせ」の部分は、具体的にはどう実践していますか。
「一度見せたら、次は必ず理由をセットで言葉にします。『なぜこの設計にしたか』を説明しないまま次の指示を出すと、相手はただの作業者になってしまう。そして、説明したらすぐに任せます。
要件定義のような、これまで下流工程しか経験がなかったメンバーにも、小さい範囲からでいいので実際にお客様とのやり取りに同席させて、自分で判断する場面を早めに作るようにしています」
——「ほめてやらねば」というのは、リモート環境だと機会を作るのが難しそうです。
「本当にその通りで、意識しないと褒めるタイミングは簡単に逃してしまいます。オフィスなら『いいね、それ』と一言で済むことも、リモートだと文字にするか、言葉にする場を作らないと伝わらない。そこで大きいのが、代表が2週間に1回実施している1on1です。代表とメンバーが直接話す場を設けていて、内容は仕事の話に限らず、雑談でも構わないことになっています。
そうやって代表が一人ひとりと話す時間を持つと、成果として表には出ていないその人なりの努力や、実は陰で苦労していたことが見えてくるんです。そこで聞いた業務改善に必要な話はマネージャー陣にも共有され、負担になっている原因を取り除く動きにつなげています。
今は代表が1on1を担当していますが、今後は私たちリーダー層が実施していく可能性もあります。そうなったときに、ちゃんとメンバー一人ひとりの努力や苦労を聞き取れる自分でいたいので、そこは今から意識して頑張りたいと思っています」
——この考え方を、これからどう組織に広げていきたいですか。
「今はまだ、自分がメンバー一人ひとりに対して意識的にやっている段階です。でも本当は、この『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめる』という順番を、メンバー同士でも自然にできる組織にしていきたい。裁量を渡すというのは、放っておくこととは違う。任せる前にきちんと見せて、任せたあとにきちんと認める。この順番を守れる人が増えるほど、フルリモートでも強い組織になっていくと思っています」