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1on1の導入とその一例

Photo by Tim Mossholder on Unsplash

1on1を導入した意図

1on1導入以前の問題

  • 人間関係が希薄だった。
  • 個人の不満や目指すところを共有する場がなかった。
  • 業務内外の問題が個人のパフォーマンス・幸福度を低下させていた。
  • 個人の能力の成長角度が鈍化していた。

はじめはどれも小さかった問題が、次第に大きくなっていくのを感じ、このままでは組織的な問題になってしまうと予感したところから、1on1の導入を検討しました。

私が1on1を導入した目的は次の3点に集約されます。

  1. 個人が問題を抱え込むことを防ぐ
  2. 個人の目標達成を支える
  3. 組織と個人のベクトルをマージする

今回は 1. 個人が問題を抱え込むことを防ぐ についてのみ言及します。

個人が問題を抱え込むことを防ぐ

どうして抱え込むのか

抱え込みの原因については組織における心理的安全性に関する書籍等で言及されるところですが、今回は組織の変容ではなく1on1によるアプローチを述べていきます。

個人に関わる諸問題は共有されやすい問題とされにくい問題があります。

業務内外と喫緊性高低で分けると考えやすいです。

  1. 業務内かつ喫緊性高→共有される
  2. 業務内かつ喫緊性低→共有されにくい
  3. 業務外かつ喫緊性高→共有されにくい
  4. 業務外かつ喫緊性低→共有されない

※喫緊性 = 緊急度高かつ重要度高

抱え込みは2〜4に分類される問題で発生します。

ここの大きな問題としては個人が主観的かつ直感的に分類してしまうということです。

上司や同僚に共有すべき問題も、「これはプライベートの問題だから」とか「私が頑張れば済む話だから」ということで共有されず、次第に問題が大きくなり、共有しないすべきでは無いと分類した問題は、次第に個人に重くのしかかります。

1on1ではそれらの問題を共有してもらう、つまり自己開示てもらうためにいくつかのステップに分けて、共有されやすくするために整備をおこないます。

相互開示

便宜上、1on1を設定する側をサーバント、1on1を受ける側をクライアントと呼ぶこととします。

1on1初期のクライアントは「こんなこと言っても本当に大丈夫かな…」という不安が常に頭にある状態です。この不安を「ここでは何を言っても大丈夫」とするところを目指し、そのために行うことが自己開示です。自己開示は一回の1on1で完了するものではなく、漸進的な相互開示によって達成されるものです。

具体的な方法論については他の書籍に譲りますが、基本動作としては次のようになります。

  1. サーバントから深い開示を行う。
  2. クライアントがそれに呼応し話し始める。
  3. サーバントが傾聴する。
  4. クライアントが深い開示を行う。

ここで言う深い開示とは、先に述べた「こんなこと言っても本当に大丈夫かな…」のレベルを下げていくことです。その初手として、サーバントからこんなことですら言っても大丈夫という例を見せることが有効です。

浅い開示の例としては「実は先日の資料作成について〇〇さんにミスを指摘されてしまいました。原因を分析した上で改善します。」のように、保身めいた言い方になっている場合が多いです。

逆に「これ結果的にインシデントにならなかったからよかったんですが、実はプランBの提案資料に大きなミスがあったんですよね。まあ大丈夫だろうと思ってチェックしてもらってなかったんですよね。」というように、その事実が公になれば個人の評価が下がってしまうようなものを聞き出せると、開示のレベルとしては十分に深いと言えます。この深い開示をサーバント側から先に行うことでハードルを下げることができます。

そしてそのような深い開示を受けるには、ここだけの話であるということを前提とする必要があり、それは一度口にしたから得られる理解ではなく、回を重ねるごとにコンテキストに刷り込まれていくものです。最初は「ここだけの話…」という枕詞が必要であったり、毎回注意事項として読み上げる必要があるかもしれません。

繰り返す

1on1は繰り返し行うものであり、定期的な1on1の時間を確保するためには常に時間との戦いがあります。

時間的な制約があることでアジェンダを固めすぎると定型的で限定的なコミュニケーションになっていくため、願わくば時間を気にせずノーアジェンダで話したいものです。しかし、お互いにその時間を拠出し合うわけですから、なるべく時間密度を濃くする必要があります。できるだけノーアジェンダに近づけるための工夫を込めて、私は次のように1on1を設計しています。

1on1テンプレート

## 2021/00/00

- 前回の取り組みたいことの振り返り
- 業務でもやもやしたこと
- プライベートでもやもやしたこと
- 業務でわくわくしたこと
- プライベートでわくわくしたこと
- 動きがよかった人
- 今回から次回までに取り組みたいこと

この項目は次のような意図を組み込んでいます。

  • KPTのエッセンス
  • 業務内外の問題の共有
  • 個人に問題の喫緊性を判断させないための「もやもや」
  • 個人の動機や価値観、大切にしている時間を知るための「わくわく」
  • 周囲に目を向けて健全な競争を産むための「動きがよかった人」

記録する

1on1を隔週で実施していますが、1on1の内容はNotionのPrivateページに残しています。

記録の目的としては

  • テキストに起こすことでクライアント自身を客観視できる
  • 前回設定した目標が達成されているか
  • 毎回悩み続けている解決が難しい問題が見えてくる
  • クライアントに対する知識が増える

などがあります。

最後のクライアントに対する知識が増えるは特に重要です。

多くの業務に追われながら1on1を週に何人もこなしていると、そのクライアントをどれだけ大切に思っていても、そのクライアントの情報や抱える問題をついつい忘れてしまいます。サーバントにとっては何にもいるクライアントの一人ですが、クライアントにとっては唯一のサーバントです。話したことを忘れられていたという事実だけで、「ちゃんと聞いてくれて無いんだ…」という印象を与えてしまいます。

クライアントがどういう人か記憶することは難しいので、しっかりと記録することで、毎回そこにある知識を参照しながら1on1に望むことができます。

最後に

1on1を導入した目的のうち「個人の目標達成を支える」「組織と個人のベクトルをマージする」の2点については今回言及しておりませんので、気になった方はお気軽に岩田のTwitterにご連絡ください。

上記に記したことは私が1on1を設計し、実施するにあたって考えていることのほんの一部です。また1on1の設計は、組織、クライアント、サーバントに依って異なってきます。まずはあなたの組織になぜ1on1を導入するのか、という目標を明確にした上で基本的なことが書かれている書籍を読んでみてください。

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