“毎日のお昼が、ちょっと楽しみになる。”そんな気持ちを届けたくて。― スープジャーのパッケージデザインに込めた想い
今回ご紹介するのは、アスベル株式会社「LUNTUS(ランタス)スープジャー」のパッケージデザイン。スープジャー本体の色味も提案しました。
このデザインを手がけたのは、入社4年目のデザイナー・大野さん。「毎日の昼休みに少しだけ気分が上がるような、そんな存在を目指しました」と語る大野さんに、デザインの裏側について伺いました。
■ プロジェクトについて
― 今回のプロジェクトの概要を教えてください。
奈良県に本社がある総合日用品メーカー、アスベル株式会社のステンレス保温・保冷スープジャーのパッケージデザインを担当しました。職場でのランチタイムが少しでも楽しみになるように、「使ってみたい」と思っていただけるようなビジュアルや雰囲気を意識しました。
― どのような依頼内容・ご要望でしたか?
スープジャーの売上向上を目的としたリニューアルプロジェクトでした。従来のパッケージは機能的ではあるものの、やや堅い印象があったため、トレンドを意識しながら、使用意欲を高めるようなデザインへの刷新が求められました。
― このクライアントとのお仕事は今回が初めてだったのですか?
当社としては以前から長くお取引のあるお客様で、私自身もバイヤー向けのチラシ制作などで関わってはいましたが、デザイン提案を含めて一案件をメインで担当するのは、今回が初めてでした。
― プロジェクトはどのように進めていったのですか?
まずはスープジャー本体の色味の検討からスタートしました。色の方向性が固まってきたタイミングで、パッケージのラフ案をいくつか作成し、クライアントと一緒にデザインの方向性をすり合わせていきました。正面ビジュアルについても、フォントや文字の太さなど、細かな部分も何度も調整を重ねました。
■ デザインの意図について
―ターゲット層はどう捉えて、どんな風にデザインに落とし込んだのですか?
クライアントからの要望としては、30〜40代の女性がメインターゲットでした。「平日のお昼に温かいスープや冷たいサラダを楽しみたい」というニーズに寄り添い、“丁寧な暮らし”を楽しむ方の日常にフィットするデザインを目指しました。
―パッケージデザインで特に工夫した点は?
カラーごとに“美味しそう”と感じていただけるよう、情緒的な印象を大切にしました。見た瞬間に「これ、ランチに使ってみたいな」と思っていただけるような、そんなデザインを目指しています。 また、スープジャーを使ったレシピアイデアも掲載し、「使ってみたい」という気持ちを後押しできるよう工夫しました。
― 本体のビジュアルがイラストなのが、珍しくてかわいいなと思いました。写真にしようとは思わなかったのですか?
実は、写真のビジュアルも作成し、比較検討していました。結果として「イラストの方がグラフィックとして新鮮で目を引く」と評価され、最終的にイラストになりました。
― イラストの提案に対するクライアントの反応はどうでしたか?
「イラストもインパクトがあっていいね」と好意的でした。最終決定までは写真の案とも悩まれていた印象でしたが、「イメージを刷新したい」というプロジェクトの目的に合致するという点で、イラスト案が選ばれました。
■ 本体の色味について
―スープジャー本体の色味も検討したそうですね。
はい。色味は、使う人の気分に寄り添えるかを軸に考えました。
毎日使うものだからこそ、日常になじみながらも、気分がちょっと上がるような色合いを目指しました。
― 4色すべてを大野さんが決めたのですか?
いえ、ディレクターやクライアントとも相談しながら進めました。初期の段階では、ファッションやインテリアのトレンドをリサーチし、分析・予測した資料をもとに色の方向性を提案しました。こうしたリサーチ自体も新鮮で、とても楽しかったです。
― プロダクトの色は、どのように決めていくのですか?印刷物とは違いますよね。
リサーチによって見えてきたトレンドカラーを、実際の製品の大きさに合わせた色の紙を作り検討していきました。候補が絞れてきた段階で、クライアント側が製品に実際の色を吹きつけたサンプルを作成してくださいました。それをもとにさらに微調整を加えていきました。
また、最終決定に向けては、TCD社内でもアンケートを実施。ターゲット層に近い社員に直感的な好みを聞くことで、より実感のある色選びができたと感じています。
■ プロジェクトを振り返って
― 苦労した点や、それをどう乗り越えたか教えてください。
実は、クライアントに対面でデザインをプレゼンするのは初めてで…。すごく緊張して、プレゼン前には上司にも「めちゃくちゃ緊張している」とバレるくらいでした。
最初は話すスピードも速くなってしまったのですが、以前受けたスピーチ講習で「思っている倍ゆっくり話すとちょうどいい」と聞いたことを思い出し、呼吸を整えて話すことで、少しずつ落ち着いてプレゼンできるようになりました。
― 印象に残っているクライアントとのやりとりはありますか?
「デザインは製品にプラスアルファの魅力を与えてくれる存在」―クライアントからいただいたこの言葉が特に印象に残っています。どれだけ良い製品でも、デザインが伴わなければ手に取ってもらえない。そのことを実感し、デザイナーとしての責任とやりがいを強く感じました。
また「“美味しそう”なビジュアルがないと、この製品は欲しくならない 」という言葉も印象的です。見た目の美しさだけでなく、購買意欲につながる表現を意識する大切さを学びました。
― このプロジェクトを通して得た気づきはありますか?
デザイン提案では「納得してもらえる伝え方」が非常に重要だということです。背景や意図をしっかり伝えることで信頼につながり、より良い合意形成ができると学びました。
そして、パッケージデザインは情報を伝えるだけでなく、使う人の気持ちに寄り添う力があることもあらためて実感しました。 日常の中でふと目に入ったとき、さりげなく幸せな気持ちを届けられる—そんなデザインをこれからも目指していきたいと思います。
■ おまけ:担当者のちょっとした日常
― スープジャーをご自身でも使用されていますか?
実は現在も愛用中です。最近はこのスープジャーにお味噌汁を入れて出社しています。コンビニの価格高騰もあり、日々の節約にもなっています。スプーンが本体に収納されているのも便利で、うっかり忘れがちな私にはぴったりです。