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より美味しい一杯のために。旅の音が目指すスペシャルティコーヒーの味と美味しさの秘密

※本記事はオウンドメディア「suu」より転載しています。

1日の始まりに、仕事や家事の合間に、疲れて帰ってきた夜に。自分だけの落ち着ける時間を過ごすときに飲むコーヒーは、至福の一杯です。

Suu(ECサイト)で取り扱うコーヒーは、一般的にスペシャルティコーヒーと呼ばれているもの。世界のコーヒー農家から仕入れた厳選した豆だけ使用し、“より美味しい一杯”のために「珈琲焙煎所 旅の音」の焙煎士が丁寧に焙煎し、みなさまにお届けしています。

本格的で美味しいコーヒーが気軽に手に入る現代において、なお「スペシャルティコーヒー」と明確に位置付けられるコーヒーにはどのような特徴があるのか、旅の音の焙煎士・池尾さんにお話を伺いました。

わたしたちの目指す「美味しいコーヒー」、そしてスペシャルティコーヒーの奥深い世界を探索していきましょう。


一般的なスペシャルティコーヒーとは?

日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)によるスペシャルティコーヒーの定義


スペシャルティコーヒーとは、世に数多あるコーヒーの分類のひとつです。解釈や定義については協会やお店、人によって少しずつ異なります。ここでは一般的に広く知られている日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)の情報をもとに、スペシャルティコーヒーの定義について見ていきましょう。

同協会は、スペシャルティコーヒーを「消費者(コーヒーを飲む人)の手に持つカップの中のコーヒーの液体の風味が素晴らしい美味しさであり、消費者が美味しいと評価して満足するコーヒーであること」と定義しています。また、コーヒーの豆(種子)からカップまでの総ての段階において一貫した体制・工程・品質管理が徹底していることが必須とされており、「From seed to cup」を大事にしています。

スペシャルティコーヒーとして認められる最低条件は、「生産された国」「生産された農園」「生産者」「豆の品種」が明確であること。言うなれば“コーヒー豆の血統書”です。これが明確でなければスペシャルティコーヒーとは言えません。

多くのコーヒー豆は、生産や流通の過程でさまざまな産地、農園、品種のものが混ざり合い、それぞれの個性を感じることが難しくなっています。だからこそ明確な定義を設け、特別なコーヒー=スペシャルティコーヒー」と位置付けているのです。


スペシャルティコーヒーの歴史

遡ること半世紀。当時のコーヒーは、アメリカが産地である中南米諸国から「買い叩く」状況にありました。そのため、アメリカのコーヒーは品質の低下を免れず、薄かったコーヒーはさらに薄くなり、アメリカのコーヒーは「まずい」という印象が定着してしまいました。

転機を迎えたのは、東西冷戦が終わりを迎えた頃。アメリカ・カルフォルニア州に赴いたひとりの男が、「まずい」とされたアメリカのコーヒー界に革命を起こします。アルフレッド・ピート氏。「クラフトコーヒーの祖」としてその名を広く知られるPeet's Coffee & Teaの創業者です。


高品質のアラビカ種のコーヒー豆のみを使用した彼のコーヒーは、より濃く、より甘くローストされ、瞬く間に人気となりました。これを契機に、アメリカコーヒー界は少しずつ高品質を求める方向へとシフトしていきます。そして1982年、アメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA)が誕生。「スペシャルティコーヒー」という言葉と概念が広まり、量より質が求められるようになりました。

日本国内においては、1987年においしいコーヒーの普及と啓蒙を目的に「全日本グルメコーヒー協会」が発足。2003年には、国内外に向けてより開かれた協会として「日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)」が設立されました。こうしたスペシャルティコーヒーの流れを受け、それまでは浅煎りのアメリカンコーヒーを出していた喫茶店でも、深煎りのコーヒーが流行となっていきます。

また、この時期になるとコーヒー豆の品質基準においてもより高いクオリティが求められるようになります。生産国という大きなカテゴリーではなく農場や生産者、品種や精製方法などの単位で一銘柄とする「シングルオリジン」の価値が高まり、コーヒー豆それぞれの個性を最大限に引き出してお客様に伝えることが大事だとされました。

現在のスペシャルティコーヒーもこの流れを組んでおり、「コーヒーの味の7割は生豆で決まる」と言われるくらい、豆に対しては厳しい基準を設けています。


スペシャルティコーヒーへのこだわり

コーヒー豆の仕入れのこだわり

わたしたちは、中南米諸国を中心に、コーヒーの産地として有名な国々から高品質のコーヒー豆を仕入れています。特にミャンマーでは、実際に旅の音の焙煎士やバリスタが現地へ足を運び、生産農家と密に連携して豆づくりから一緒に取り組んできました。

小規模生産者がていねいに育てたコーヒー豆の質は、大量生産されたコーヒー豆とは異なり個性的でバリエーションも非常に豊か

一例を挙げると、「アラエロビック」と呼ばれるコーヒー豆を発酵させる精製方法があります。コーヒーとしてイメージしやすいチョコの風味や苦味といったものではなく、ピーチやベリーのような果物に近い香味であったり、ハーブの香味であったりとコーヒーらしからぬ味と香りが特徴です。現在取引をしているミャンマーの農家さんのコーヒー豆は、糖度が高く甘いのが特徴で、豆の段階からすでに甘味を感じることができます。


一方で、こうした小規模生産者の育てたコーヒー豆は個性的で美味しいのにもかかわらず、流通の過程で他のコーヒーと混ぜられてしまったり、驚くほど安い値段で取引されていたりと、その価値が適切に伝えられていないのが現状でした。そうした実情を見て、わたしたちはコーヒーの個性を最大限活かすべく、小規模の区切りで一銘柄とし、その豆に合わせた生産処理を行なう「マイクロロット」を作って仕入れようと決意。毎年生産地を訪れ、個性的な農家さんから仕入れを積極的に行い、農家さんの新たなチャレンジ・味作りに一緒に取り組んでいます。

旅の音ならではの精製、焙煎のこだわり

わたしたちが提供するスペシャルティコーヒーは、先述の理由から個性的かつフレーバーが豊かで甘みが強いのが特徴です。その背景には「精製方法」「焙煎方法」のこだわりがあります。


コーヒーの精製方法は一般的に大きく分けて二つあり、それが「ウォッシュドプロセス(水洗式)」「ナチュラルプロセス(乾燥式)」

ウォッシュドプロセスは、コーヒーの実の果肉部分を最初に除去した後水を使って洗い上げてから乾燥させる方法で、コーヒー豆を洗ってから天日干しするため、透き通ったクリアな味わいが特徴。より繊細で複雑なフレーバーを感じられるのが魅力です。

一方、ナチュラルプロセスは豆の周りに果肉が付いたまま乾燥させます。そのため、コーヒーチェリーがもつ糖分や香りが豆に移り、独特なフルーツ感や甘みが生まれます。ウォッシュドプロセスに比べるとよりしっかりとした甘みやボディー感が感じられるのが特徴です。

旅の音は、「甘み」を大切にするためにナチュラルプロセスで多くのコーヒー豆を精製してきました。もちろん、ウォッシュドプロセスを好まれるお客様もいらっしゃるのですが、時間の経過でコーヒーが冷めてしまった場合、酸味が強く出てしまうことがあります。お客様には時間を気にせず、できるだけゆったりとコーヒータイムを楽しんでもらいたい。そうした思いから、甘みを長く楽しめるナチュラルプロセスで精製したコーヒー豆を提供しています。

焙煎の過程で難しいのは、甘味、酸味、苦味それぞれの味のバランス。甘味と酸味を比較した際、味の強度としては酸味の方が勝り、いくら甘味が強くても酸味に負けてしまいます。そこで、酸味が消え、甘味が強く出て、苦味がそこまで強くないといった難しいバランスを目指して焙煎をしています。そのため、旅の音の煎りはレンジ(範囲)が狭く、中煎り若干下から中煎り若干深め辺りの範囲で焙煎をしており、総じて飲みやすい味にまとまっているのが特徴です。



また、コーヒー豆の甘みを引き出すにあたって、とても大事なのが「メイラード反応」。加熱により、糖とアミノ酸などの間で風味や旨味を左右する褐色物質の「メラノイジン」ができる反応です。この反応が起こる時間を「メイラードフェーズ」と呼び、どれだけコーヒー豆の甘みを引き出せるかはこの時間の長短によって決まります。短すぎると甘みが足りないし、長すぎるとブイヨンのような香ばしさが強く出てしまう。このバランスも、焙煎するにあたってとても難しい部分です。


今主流となっているものの多くは、苦味と酸味が強めで尖った味がするスペシャルティコーヒー。でもそれだと毎日飲むには適していない。

わたしたちはコーヒーを通じて豊かな日常を提供できるよう、毎日でも飲めるような甘くて飲みやすいコーヒーにこだわっています。


甘みが強く、個性的かつ豊かなフレーバーが特徴の旅の音のスペシャルティコーヒーは、毎日でも飲みやすく、時間の経過を気にせずにゆったりと楽しめる味わい。一日頑張って働いた疲れた心と身体を休めるために、美味しいコーヒーとともにすぅっと一息。飲む人にとって「安息の地」になるようなコーヒーを目指して、一杯一杯のコーヒーに思いを込め、丁寧にに届けていきます。


京都市左京区の静かな住宅街にある「珈琲焙煎所 旅の音」。「コーヒーを通して、お客様にゆったりとした豊かな時間を過ごしてほしい」という思いを込め、小さな店内で、毎日丁寧にコーヒー豆を焙煎しています。

お店でも、ご自宅でも。“より美味しい一杯”を目指すわたしたちのスペシャルティコーヒーをお楽しみください。


ライティング:Suu編集部

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