ほぼ20年の会社員人生に区切りをつけ、独立してから4年目を迎えた。会社員を辞めてよかったか?と問われることがある。私は瞬時にイエスと答える。
正直ここまで続けてこられるとは思っていなかったが、ほとんどの事はその気になれば、何とかなるようである。まったく仕事がなく焦燥しきった時期もあったが、営業や商品開発などの種まきが少しずつ芽を出してきた実感である。石の上にも三年、継続は力なり、とはよく言ったものだ。まだまだ安定とは程遠く、明日はどうなるかわからない、気の休まらない状況。それでも、会社員時代にはなかった「生きている!」という感覚を毎日味わうことができている。私の性に合っているようだ。
会社員の頃と大きく変わったこと。ひとつは「不平不満が言えなくなったこと」だろう。仕事が終われば飲みに繰り出しては、箸で人を指しながら、あれやこれやと不満を吐き出していたものだ。しかし、経営者となればすべて自分の責任。うまくいくも、いかないも自分の能力がすべてだ。たとえ部下のした仕事に問題があったとしても、それを是正できなかったのは自分のせいとなる。
社会や政治に対する不満も、他責から自責に変わってくる。これまでは政治や行政のシステムに対して批判することしかできなかった。経営者になって、自分の会社が社会に組み込まれるひとつのシステムとして、本当に役立つことができているのか、ということに思考が向いていく。自ずと今の社会制度の問題に対して、自分ができることと、できないことが見えてきた。政治は投票、社会はビジネスを通して変えるしかない。そう思うようになった。
起業を通じて、私は「自分の力では変えようのないこと」に対して、不平不満を募らせたり、いたずらに悩んだりすることから解放された。これこそが、起業を人に勧めたい理由のひとつである。
寄稿:南海日日新聞 つむぎ随筆(2025年7月)