治療結果が異なるのは身体のシステムの違いが原因
生物好きが高じて医学の道に入ったのは平成2年、医師として33年が過ぎ、医者になってからの人生の方が長くなってしまいました。日々患者さんと接する中、治療経過は人により違っていたり、治療結果が予想通りにいかないことはよくあることでした。また食事療法も、きちんと数字を測っていても結果が出ないことがあり、数値が良くなったからといって、また同じ食事をしても結果が異なることは良くあることです。これらの原因はどこにあるのかを考え一つの仮説が得られました。それは「身体のシステムがどうなのか」ということです。
システム :血流
栄養を届ける
身体のシステムを動かすうえで、まず大切なのは血流です。血液は酸素や栄養素など臓器に必要なものを運んでくれます。酸素と栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質)は、臓器が働くのに必要なエネルギーに変わり臓器の原動力となります。血液の流れが滞ると臓器がエネルギー不足で働かなくなってしまいます。
老廃物の回収
また、臓器が働いた後に発生する老廃物や一緒に取り込んだ不要物質は、体外へ排出させないといけません。老廃物は身体にとどまり続けるといろいろと支障をきたして、致命的な事態に陥ることもあるからです。血液はこれら不要物を回収して排出する役割も担っています。
血流は心臓のポンプ運動で賄っている
血流は血液を流すポンプ運動で賄われます。ポンプで一番大事なのは、ご存じの通り心臓です。心臓は素晴らしいポンプです。365日24時間休むことなく働き、心臓の鼓動は自動調節され勝手に動いてくれます。本当にありがたい存在です。
システム :自律神経
交感神経
人類は進化の過程で生存競争に生き残るため、狩猟生活を行ってきました。狩りに挑んで獲物(食べ物)を得たり、強い相手に遭遇した時は回避する。理屈で判断する余裕がないときに発令する機能(戦闘と逃避)が身体に備わりました。いわゆる交感神経系という神経系が支配してくれているありがたいシステムです。ですが、この状態が続くと身体の過剰労働となり疲労してしまいます。
副交感神経
私たちの身体は必要以上に長続きしないよう命令するシステムが脳血管にできました。 例えば、血圧が高い状態になりすぎると、痛みや気持ちが悪くなるように感じる。身体にはブレーキが掛かり、やがて体を休ませることで回復をする。このシステムのおかげで寿命の延長にもつながりました。このように必要に応じて休息モードに変換する機能は副交感神経系という神経系が支配しています。
身体をコントロールする神経を「自律神経」と称していますが交感神経系と副交感神経系の2種類がバランスよく自動調節されると身体のシステムが正常に働いてくれるのです。
身体本来が備わっているシステム
食事をしないと血糖値が下がり、空っぽになった胃が収縮してお腹が鳴り、脳が刺激され「お腹が空いた」と感じます。食事をすることでエネルギーが補充されると血糖値も上がり、脳にある満腹中枢が刺激されて「お腹一杯」と満足感が得られます。これら一連の流れは自分の意識とは無関係に行われているシステムです。体内の環境の変化は内臓の神経(自律神経)が司っていて、脳の神経とネットワークで繋がっている素晴らしいシステムといえます。
身体のシステムが壊れると
例えば、アレルギーの症状でお悩みの方は多いのではないでしょうか。アレルギー疾患は、副交感神経の優位がもたらされた結果と考える方も多いのですが、実のところ交感神経が優位の状態が続いてしまい、身体の自動調整作用が作動し、副交感神経が活動する。 2つの神経の調整が崩れ、免疫反応が暴走した結果だといえます。
少し話は変わりますが、私達の身の周りには細菌やウイルス、ほこりなど、有害物質がたくさん存在しています。このような物質に身体がさらされていても病気にならないのは、免疫という防御システムが存在するからです。
自律神経は、炎症性疾患の病態にも関与しています。ストレスが加わると感染防御という免疫本来の機能が損なわれてしまう。免疫力が正常に機能する鍵となるのは、自律神経がバランスよく働いているかどうかということです。
コロナの影響でしょうか、砂場の閉鎖や抗菌砂場など子供達にはなるべく菌に触れさせない環境づくりが求められています。私が子供の頃は鼻たれ小僧がたくさんいて汚れた手であちこち触れては飛び回っていました。あえて自然の中に身を置き、免疫力・自然治癒力を上げてあげる。こんなことも必要なのではないかと考えさせられます。
身体のシステムを改善する内臓トレーニング
身体のシステムは自分の意志ではどうすることも出来ないことをお分かりいただけたと思います。内臓トレーニングは身体のシステムを働かせようと考えた健康法です。自分で出来ないのなら機械を使ってでも正していかないといけない。医師は病気を治すのが仕事ですが、長年患者さんと向き合ってきて身体のシステムをまず正しくしていこうと言う考えに至りました。それが出来ていないと、いくら良い薬を飲んでも「届いていないから効いていないよね」と言うことになるからです。血液が流れ、神経系のバランス調整ができていれば、薬も適材適所に届いて効果が表れるはずです。
内臓トレーニングに関わって15年が過ぎ、様々な患者さんの身体のシステムが改善された姿を見てきました。内臓トレーニングは特に「治療効果を上げる」「健康な人も健康な状態を維持する」という観点からお勧めしています。