「クライアントに評価されていないものは意味がない。その評価を率直に受け取れる環境が、いいクリエイティブにつながっていると思います」
レイロのデザインチームを束ねるクリエイティブディレクターとして、自らもブランドデザイナーとして手を動かしながら、チーム全体のクリエイティブの質を引き上げているのが、中井佑香さん。
前職では大手メーカーでパッケージデザイナーとして約6年間腕を磨き、2022年10月にレイロへジョイン。「つくるだけ」ではなく「考える上流から関わりたい」という思いを胸に、新たなフィールドへ踏み出した彼女に、これまでの歩みからレイロでものづくりに関わる意義、クリエイティブディレクターとしての仕事の真髄、そして目指すクリエイター像を聞きました。
中井佑香(なかい ゆか) 大阪芸術大学デザイン学科 グラフィックデザインコース卒業後、医薬品・化粧品メーカーに入社。約6年間パッケージデザイナーとして在籍。2022年10月より株式会社レイロのクリエイティブディレクターとして活躍中。
美しいものへの関心が、デザイナーという仕事と重なるまで
——まずは、中井さんがデザインやものづくりに興味を持ったきっかけを教えてください。
小さい頃から、色がきれいなものや美しいものに自然と目が向く子どもでした。どちらかと言えば、外で体を動かすよりも、物語を考えたり絵を描いたり、一人で世界をつくっていくような遊びが好きで。家族に美術館へ連れていってもらう機会も多く、あの独特の空気感にも惹かれていました。
学生時代は美術系の高校に行こうか迷った時期もあったのですが、両親の勧めもあり普通科へ。吹奏楽にのめり込んで、一つのことを独学で追求する楽しさを知った一方で、根底にはずっと美術やアートへの関心を抱えていました。
それが職業として結びついたのは、美術の先生の存在が大きかったです。もともと関心があったところに、その先生からのアドバイスを受けて、独学で学び、大阪芸術大学デザイン学科 グラフィックデザインコースに進みました。
——独学で……!実際に大学でデザインと向き合ってみて、どんな変化がありましたか?
入学当初は、グラフィックデザインの手法や技法をほとんど知らない状態だったので、すべてが新鮮で「ここからがんばるしかない!」と熱量がさらに上がった感覚がありました。技法も知識もとにかく貪欲に吸収していきましたね。
そうして学ぶうちに、本当にまだまだ自分はデザインを理解していなかったんだなと。例えば、見た目の美しさもそうですが、つくったものによってどんな課題が解決されるのか。その視点を持って、背景にある思想を設計していくなど、考えるべきことの深さや幅を知ったのは、自分にとってとても大きな変化でした。
——前職では、メーカーのパッケージデザイナーの道に進まれました。
就職を考えたとき、デザイン事務所、広告代理店、デザインとは関係のない会社……いくつかの選択肢がありました。でも当時の私は、デザインだけに人生を捧げるというより、「自分の時間も大切にしながら働きたい」という気持ちも持っていて。それならば、安定して気持ちよく働けるメーカーがいいと考えました。
業界として選んだのは化粧品・医薬品系。学生時代の教授陣からの講評の方向性や、自分のアンテナの方向から、「美しさの表現が求められる分野なら自分の特性が活かせるのでは?」と感じていたんです。
——中井さんにしか表現できない「高級感」「美しさ」、私たちも日々のぞかせていただいています!入社してからはいかがでしたか?
入社してからの1年は追いつくのに必死で。負けん気の強い性格もあって「社内で頼られる存在になりたい」と、がむしゃらに何でも取り組みました。
そんな仕事に向き合う姿勢を見ていただいていたこともあり、2年目にはあるブランドをまるごと担当させてもらえることに。プレッシャーも大きかったですが、そのぶんやりがいも比例して大きくなっていきました。
でも、前職の環境には本当に恵まれていたんですが、経験を重ねていくにつれて、「パッケージデザイン以外の世界も見てみたい」「違うデザインの分野にも挑戦してみたい」という気持ちが自分のなかで強くなっていって。その後、3〜6年目ごろには、最初に選ばなかった「デザイン事務所での働き方」が、あらためて魅力的に映るようにもなっていました。
ブランディングの世界へ踏み出したのは、上流から関わりたかったから
——そこからレイロへのジョインに至った経緯を教えてください。
代表の八田さんからお声がけいただいたことがきっかけです。以前から信頼していた方だったので、まずは話を聞いてみようと。
これまで、企画やコンセプトなどの設計と、それを形にする仕事といったかたちで役割分担しながら業務に従事していました。その過程で、コンセプトをつくり、世界観を設計することへの興味が増していっていたんです。
さらには、パッケージデザイン以外にも領域を広げたい、自分の能力を試してみたいという気持ちもずっとあったので、レイロとの出会いはタイミングとしてもぴったりでした。
レイロがブランディングハウスとして、制作だけでなくブランドの根幹から関わる仕事をしていると知り、「ここならその想いが叶えられる」とジョインを決めました。
——入社してギャップはありましたか?
レイロのデザイナーには提案の場にも出席して、自分のつくったものを自分の言葉で伝える機会があります。実はクライアントと直接話すことがとても得意というわけではなかったので、最初は正直少し身構えていたんです。
でも、クライアントの率直な評価を肌で感じられることは、デザイナーとして本当に必要なことだと感じていて。「クライアントに評価されていないものは意味がない」という厳しい現実と向き合いながら、そこに喜びを見出せる環境がレイロにはあると感じています。
相手の想いをダイレクトに受け止められることで、相手の「こうしたい」という熱量がそのままつくるものに乗ってくる。対話を通じてものをつくる経験は、想像以上に新鮮で充実したものでした。新たなキャリアにチャレンジしてよかった、と心から思えた瞬間のひとつでしたね。
クリエイティブディレクターとして担う、二つの役割
——現在の業務について教えてください。
ブランドデザイナーとして自分でも制作に携わりながら、クリエイティブディレクターとしてデザインチーム全体のクリエイティブを監督する立場でもあります。
デザイナーとしては、日々コンセプトを決めるなどのプロジェクトの上流から関わり、それを形にするまでを一貫して担います。「この課題に対して、このデザインで本当に解決できているか?」という視点を常に持ちながら制作に向き合っています。
クリエイティブディレクターとしては、チームが手がけているすべての案件のデザインを把握して、「クライアントの意図が反映されているか」「この課題解決として成立しているか」をジャッジしています。週1回のデザイナーMTGではメンバー同士で進捗を確認し合うなど、ディレクターとしてクリエイティブの質を担保しながらも、基本的にはデザイナーに任せる姿勢を大切にしています。
——チームへの関わり方で、意識していることはありますか?
デザイナーそれぞれの特性を見ながら、案件のアサインや新しい挑戦の機会を考えています。私としては、得意なことだけではなくて、苦手な領域にも挑戦してもらうことで、みんなが「オールマイティなデザイナー」として成長してほしいという想いがあります。
個人的には、デザイナーに「苦手があってはいけない」と考えていて。本来は高いアベレージを持ちながら、そのうえで「この魅せ方がとびきりうまい」という強みがある状態が理想だと思うんです。
同時に、デザイナーが「なぜそのデザインにしたのか」という発想の起点は大切にしたい。場合によっては形を変えなければいけないこともありますが、よっぽどのことがない限り、その人ならではの個性やアイデアが最大限発揮できるようにしています。
クライアントの要望に応える力と、自分がつくりたいものへの意思、その両方を高いレベルで持ち続けられるチームを目指しています。
——この仕事ならではのやりがいはどんなところにありますか?
今まで関わってこなかった分野の仕事について深く知れることが、純粋に楽しいです。デザインを考えるにはその分野を理解する必要があるので、まず「知っていく」作業がある。その過程が積み重なって、自分の引き出しが増えていく実感があります。
裁量権が大きく、自由に発想できること、そしてクライアントもデザイナーの意思をリスペクトしてくれること。そんなレイロの環境だからこそ、いいクリエイティブが生まれると感じています。
「オールマイティ」であり、「自分の世界観」をも持つデザイナーへ
——中井さん自身の今後の展望を聞かせてください。
まず、レイロのデザイナーチームとしては、全員が「なんでもお任せください」と言えるプロフェッショナルな集団でありたいです。今のメンバーはみんな意欲的で、それぞれ成長の過程が見えています。今後は、そこに個人としての個性や世界観も加わって、とがりつつも全部できる、高いアベレージをたたき出せるチームに一緒に育っていきたいと思っています。
その前提のもとで、個人としては「自分の世界観」も確立していきたいですね。得意な表現の傾向はあるし、こういうものをつくりたいというイメージもある。でも、まだ代表作と言えるものはない状態。
世界的に見ても、「この人の作品だ」と一瞬でわかる——そんなクリエイターへの憧れがあって。今はまださまざまな興味が自分の中に散りばめられているので、それを研究的に絞り込んで、表現を追求していきたいです。
——レイロの雰囲気や、チームの空気感はどんなものですか?
根本的に、一人ひとりの人間としての誠実さがあるメンバーが集まっていると思います。みんながお互いのことを考えながら仕事していて、自然と思いやりが循環している感じがある。
働くうえで一番大事なのって、人間関係だと思っていて。そこが整っていないとデザインにも打ち込めないですから。その意味でも、本当に恵まれた環境にいると感じています。
チームとしても、少数精鋭の組織だからこそ、メンバー同士の作品がよく見えていて、お互いの「ここがすごいよね」をわかり合える感じがあります。「こういう方法を教えてほしい」「ここをもっと追求したい」とポジティブにデザインと向き合う空気が根付いている。リスペクトを持ち合えているいいチームだと、あらためて感じています。
——最後に、どんな人と一緒に働きたいですか?
「自分はこうしたい」という意思がある人です。こっちのほうがいいのではないか、こう表現したい——そうした欲求や熱が、ものをつくる行為への向き合い方そのものだと思うからです。センスは存在すると思うけれど、それはあとから養っていける部分でもある。それよりも根本的な意欲があるかどうかを大切にしたいです。
「自分が何を好きか」を理解していて、自分のことをもっと知りたいと思っている探究心を持っている人が、きっとレイロの環境に合っていると思います。一人の人として、デザイナーとして、自分で先を見て動ける方と一緒に、いいものをつくっていけたら嬉しいです!