一人のライバーの発信をきっかけに、TikTok Shopの売上は一気に伸びた。
けれど責任者の大森さんは、その成果を素直には喜ばなかった。再現性がない、と言い切る。
シリーズ累計販売数700万枚を超えるD2C着圧ブランド「BELMISE(ベルミス)」をはじめ、複数の自社ブランドを展開する株式会社ファストノットは、いま新しい販売チャネルとしてTikTok Shopの立ち上げに取り組んでいます。動画やライブの画面内で商品を選び、そのまま購入できるチャネルです。
その責任者を務めるのが、大森翔さんです。2023年9月の入社から、ちょうど3年。前職はアニメや漫画のIPグッズを企画する仕事でした。企画して、作って、卸したら終わり。その先どこまで広がるかを、自分では決められなかった。その悔しさが、大森さんをマーケティングの世界へ連れてきました。
作ったものが誰の力で売れるのか。前職で向き合ったこの問いに、大森さんはいま、TikTok Shopでもう一度向き合っています。IPの力でもなく、タレントの力でもなく、仕組みで売る。その挑戦の現在地を、これから一緒に働く仲間と、ファストノットの新しい取り組みを知りたい方の双方に向けて聞きました。
プロフィール
大森 翔(おおもり しょう)|新規獲得ダイレクトマーケティング事業部 TikTok Shop責任者。2023年9月入社。前職はIPグッズの企画。入社後、自社カートと獲得型チャットボットを未経験から担当し、半年で責任者に。リテール、広告代理店の窓口、商品開発を経験したのち、新規チャネル開拓のためTikTok Shopの責任者に就任。カートとチャットボットの管理も継続して担う。
企画して、卸したら終わり。その先を決められなかった
——まず、前職の仕事から聞かせてください。
アニメや漫画のIPを使って、グッズやイベントを企画する会社にいました。会社がIPを取得して、その中から施設や動物園のような場所を探してコラボを持ちかける。企画が通ったら、イベント用のイラストを考えて、そのイラストでどんなグッズを作るかを詰めていく。企画と製造が中心の仕事です。
——もともと、その業界を目指していたんですか。
いえ、新卒のときは教職を考えていました。教育実習まで経験しました。子どもに教えるモチベーションはあっても、自分自身が成長している実感が欲しくなってしまって。新卒という切符を使わないのはもったいないと思い、一度就職する道を選びました。当時アニメと漫画にハマっていたので、それを仕事にできたら面白いだろうと。
——そこから1年ほどで転職を考えたのは、なぜですか。
大きかったのは、企画したら終わりだったことです。イベントを企画して、PR TIMESに出して、X(旧Twitter)に投稿したら、そこで僕らの仕事は終わり。その先どこまで広がるかは、IPの強さに依存してしまう。人気作品なら勝手に拡散されるし、そうでなければ届かない。
——自分たちの手で広げる手段はなかったのですか。
ありませんでした。作ったものをもっと届けたいのに、その方法を持っていなかった。どうすれば広げられるのかと考えていたときに、マーケティングという仕事を知りました。企画と製造の先にある、届けるところまでを自分でやりたい。それで転職を決めました。
求人に並んだ言葉と、「できないと言わない」
——ファストノットを選んだ決め手は何でしたか。
3年前の求人に、自分の力で稼ぐ、マーケティングを身につける、成長のために自ら努力する、という趣旨の言葉が並んでいたんです。僕が前職で持てなかったものが、そこに全部書いてあった。しかも当時の僕には、目指すものがまだなかった。ここでなら、それを見つけられると思いました。
——入社してみて、最初の印象はどうでしたか。
圧倒されました。コミュニケーションの量が多くて、全員が仕事に貪欲。自分がやるという当事者意識が社内に満ちていました。ここでやっていけるのかという不安が、正直ありました。
——最初に任されたのは、自社カートとチャットボットでしたね。
はい。商品の販売ページにボタンがあって、押すとチャットボットが購入まで案内する。商品を選んで、名前を入力して、ツールの中で買い切る導線です。そのシナリオを組んで、名前の入力欄が分かりにくければ直す、という改善を回していました。
——完全に未経験の領域でした。どう食らいついたんですか。
何も知らなかったので、もらったものは絶対にやる。それだけは決めていました。知識は自分で取りに行くしかないので、暇なときは社内のチャットを過去まで遡って読む。分からない言葉が出てきたら調べる。商品の知識も隙間時間で入れる。それを毎日続けていました。カートやチャットボットのシステムまわりも知見はなかったので、社内のエンジニアと相談しながら、調べて覚えていきました。
——半年で責任者になっています。なぜ任されたのだと思いますか。
仕事に対する責任の強さを見てもらえたのかなと思います。年齢は一番下で、経験もない。雑用も含めて言われたことは全部やる、できないとは言わない、できるまでやる。そのスタンスを崩さなかったことが、少しずつ信頼に変わりました。
——任された瞬間のことは覚えていますか。
上司が、半年でここを任せられるから任せるね、と言ってくれたんです。その人が一人で担っていた領域を、丸ごと手放してくれた。それを見て、人はこうやって任される範囲を広げていくんだと学びました。自分もいろんな領域を担えるようになりたい。その気持ちが、いまも原動力です。
周りの熱量が、時間の使い方を変えた
——入社当初は、仕事と時間の使い方をどう考えていましたか。
定時までに終わるのが普通だと思っていました。仕事は自分の生活のためにするもの。だから残業はしたくないし、しないで済むように仕事を組むべきだと考えていました。
——それが変わったきっかけは何だったんでしょう。
周りの姿です。社員一人ひとりが夢や目標を持ち、そのために必要なことを自分から取りに行っていました。一緒にやらなければ置いていかれる。このままでは埋もれて終わると思ったんです。
——危機感だけで、考え方まで変わるものでしょうか。
当時のメンターの言葉も大きかったです。自分の人生や生活を大切にしたいという目的は、僕もメンターも同じ。だからこそ、仕事の時間をどう成長につなげるかを考えている、と。仕事と生活を対立させない考え方に、強く惹かれました。
——そこから、働き方はどう変わりましたか。
時間の使い方を自分で決めるようになりました。業務の中で何を優先するか、どこで学びの時間をつくるかを自分で考える。誰かに求められたのではなく、自分の成長のために選んだ働き方です。
カートを持ったまま、店頭にも、代理店にも、商品開発にも
——カートとチャットボットの責任者になったあと、リテール事業部にも入っていますね。
カートの管理は続けながら、もう一つ領域を広げることになりました。当時は事業部の垣根を越えて、全員が横断して動いていた時期です。リテールでは取引先店舗への営業、店頭販売、商品のPOP作りをやっていました。
——その後、広告代理店の窓口、商品開発と領域を広げていますね。
事業の広がりに合わせて、必要とされる領域を引き受けてきました。広告代理店の窓口を担い、商品開発にも関わるなかで、新しいチャネルを開拓する人が必要になった。その立ち上げを引き受けたのがTikTok Shopです。
——同時にいくつも抱えることになります。どう整理していたんですか。
言われたものは絶対やる、もらったものはすぐやる。それを徹底したうえで、焦らないことが一番大事だと気づきました。タスクが重なると焦りそうになるんですが、そういうときは一旦全部忘れて、まずこれをやろう、と一つに絞る。考える瞬間に落ち着いて、一つずつ片付ける。それだけです。
——当時は、一つのことを極めたい気持ちもあったと聞きました。
ありました。どうせやるなら納得いくまで一つを掘りたいと。結果として、カート、店頭、広告、商品開発と全部の現場を見たことで、商品がお客様に届くまでの手段を一通り持てた。前職で持てなかったものを、ここで全部揃えていました。
誰が紹介しても伝わる仕組みをつくる
——いまのTikTok Shopの取り組みについて教えてください。
TikTokを見ていると動画やライブが流れてきますよね。その画面の中に商品が表示されていて、そのまま購入できる。それがTikTok Shopです。責任者として、このチャネルをゼロから開拓しています。僕が企画を担い、動画制作は外部のクリエイターの方々と組んでいます。
——グロースのきっかけは何だったんですか。
一人のライバーさんの発信が大きく伸びたことです。そこから大きな売上につながりました。これには再現性がありません。一人の方の発信力に頼る形になっている。
——成果が出ても、手放しで喜べなかったのはなぜですか。
前職と同じ構造だと思ったんです。IPが強ければ売れる、タレントが強ければ売れる。それでは僕らの力で売ったことにならない。あの売上のピークを、別の商品や発信者にも応用し、同じ規模を再現できるようにする。それがいまの注力点です。
——具体的には、どう攻めているんですか。
その人だから買われる理由ではなく、商品の魅力を伝える仕組みを作ること。シナリオがあって、商品を紹介する動画やライブがあって、それ自体で売れる状態です。実は手応えもあって。うちには、フォロワーが数百人から数万人のクリエイターさんから、この商品を紹介したいという依頼が来るんです。いわゆる知名度が高くない方でも、投稿した動画が多くの再生数を集めることもあります。
——人の力ではなく、伝え方で売れているということですか。
そうです。商品の見せ方、伝え方次第で、動画1本でも大きな売上はつくれる。それをいかに量産して、広げていくか。そこができれば、ライバーさん一人に頼らなくても同じ規模をつくれます。
——ファストノットの売上構造の中で、TikTok Shopはどこを目指していますか。
TikTok Shopを、会社の新しい柱の一つに育てたい。そうなれば、会社として打てる手がさらに広がります。そこを担える存在になりたいです。
——代表直下の組織だと伺いました。どんな環境ですか。
はい。代表から直接フィードバックが来ます。こういう考え方があるんだけど、と一段上の視点をもらえるので、学びやすい環境です。いまは事業の優先順位がはっきりしている時期で、何をやらないか、どこに集中するかを全員が共有したうえで動いています。ピリピリはしていなくて、社員同士でプライベートでも遊びますし、誰かの誕生日をまとめてお祝いする日もあります。
積み重ねたものに、無駄はない
——この3年で、自分がどう変わったと感じますか。
仕事が楽しくなりました。業界のこと、TikTok Shopをどう伸ばすか、そういうことが日常の関心になっている。この業界はなぜこうなっているんだろう、と気になるようになったのは大きな変化です。
——個人としての目標はありますか。
自分でお金を作れる術を、一人で持てるようになりたい。いまの僕のスキルと知識では、まだそこに届いていないと思っています。長期で言えば、人のためになるものを作りたい。無添加の野菜を使ったお菓子とか、そういうものが好きなので。その力をつけるために、まずはここでTikTok Shopを成功させます。
——その目標に、いまの仕事はどうつながっていますか。
全部つながっています。目の前の仕事に責任を持ち、成果につなげた分だけ、次の挑戦を自分でつかめる。この3年で、それを実感しています。
——どんな人が、この会社に向いていると思いますか。
成長意欲がある人。それに尽きます。得意なことがまだ分からなくてもいい。積み重ねたものに無駄なものはないと、僕は本気で思っているので。周りから学ぶために自分から動ける人が、ここで大きく伸びます。
——最後に、この記事を読んでいる方へひと言お願いします。
僕は、作ったものが誰の力で売れるのかを決められないのが悔しくて、この会社に来ました。3年経って、届けるまでの手段は一通り持てた。いまは、人に頼らず仕組みで売る挑戦の途中です。やる気はあるけれど、何が得意かまだ分からない。そういう人にこそ、ここで積み重ねてほしい。無駄になる経験は、一つもありませんから。
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