企業が陥る最大の危機は、「何もかもが上手くいっているように見える時」かもしれません。
かつてのQIX(当時ペティエンスメディカル)もまた、数字では成長している一方で、内側から静かに“創造性”を失いかけていた時期がありました。
今回は、その停滞と迷走を抜け出し、“もう一度、理念から始める”決意を固めた“第二の創業”の物語です。
「なぜか、前に進んでいない」感覚
今から7-8年ほど前に、売上は伸び、製品数も増加。
一見すると順調に見える時期でした。
しかし内部では、次第に“製薬会社の模倣”に陥り、社員の間にも「どうせ自分たちは、◯◯の下位互換」といった空気が広がっていたのです。
・数字優先
・機能訴求偏重
・独自性の喪失
・部署間の分断と責任転嫁
これは後に、“ペティエンス病”と私たちが呼ぶようになるほどの構造的な迷走でした。
“商品開発”ではなく、“企業の再設計”を。
私自身も他のプロジェクトとの兼務が増え、会社のズレに気づくのが遅れました。
しかし、ある時ふと気づいたのです。
「これは、事業の問題ではなく、“在り方”の問題だ」
だからこそ私は、単なる改善ではなく、会社そのものの“意味”を問い直す改革に着手しました。
- 製薬をベンチマークしない
- 製品ではなく“体験”を創る
- オリジナリティとスピードを重視する
- ランチェスター戦略で、“弱者の勝ち筋”を見極める
- そして何より、「私たちは何者か」を定義し直す
「QIX」へ──再出発の社名変更
2019年、社名を「ペティエンスメディカル」から「QIX」へ。
それは単なる名称変更ではなく、自分たちのセルフイメージを刷新する行為でした。
QIXとは「Quest for Integrated eXperience」の頭文字。
製品単体ではなく、「ペットと飼い主の生活に統合された体験」を届ける存在へ。
このタイミングは、今にして思えば“理念で会社を引き直した瞬間”でした。
迷走の中で見えた、本当に大事な問い
なぜ、私たちは事業をしているのか?
何を売るために、会社は存在するのか?
その答えはやはり、「QAL=Quality of Animal Life」という理念にありました。
数字を追うことが目的ではなく、“ペットの生活の質”を高める”という原点に立ち返ることが、再出発そのものでした。
最後に:成長ではなく、“成熟”の道を歩む
QIXにとって、あの10年は決して“失敗”ではありませんでした。
むしろ、自分たちの土壌を耕し直すような、大切な時間だったと今では思います。
もし今、目に見える数字や成功があるのに、なぜか“違和感”があるとしたら――
それは、問い直しのタイミングかもしれません。
QIXの「第二の創業」は、その違和感に正直になった瞬間から始まりました。