「日本の動物医療の知見や製品を、海外にも届けたい」
──その想いを現実に変える最初の一歩が、台湾での挑戦でした。
QIXが初めて台湾のペット市場に足を踏み入れたのは、2015年。台北で開催されたペットショーに出展したことが始まりです。
しかし当時は、市場のニーズも顧客像も不明瞭で、何が求められているのか、どんな価値が提供できるのか──その全てが手探りの状態でした。
その後、台湾市場での本格展開に向けて転機となったのが、afpet社とのパートナーシップでした。
afpetは、トリミングサロンやペットケア領域で高い専門性と現場理解を持ち、教育や啓発活動にも力を入れている企業。
最初の取り組みは、ごく小規模な製品導入と、現場へのヒアリングからスタートしました。
当時の台湾は、ペットケア市場が急成長する一方で、製品情報や技術の浸透にはばらつきがありました。
都市部ではハイブランドや先進的なケアサービスの導入が進んでいた一方で、地域によっては商品・教育格差が顕著であり、何より「現場の声に丁寧に耳を傾けること」が不可欠でした。
そうした中で、QIXの皮膚ケア製品やスキンケアサプリメントは、現地の臨床課題にフィット。
単なる製品の導入にとどまらず、「使い方の思想」や「背景にあるエビデンス・設計思想」への関心が高まりました。
“モノ”ではなく、“価値”をどう届けるか──そんな問いが共有され始めた瞬間でもあります。
afpet社も、販売代理という枠を超えて、「啓発型ディストリビューター」としての役割を拡張。
各地でのセミナー開催、臨床現場での事例共有、トリマー・獣医師への教育活動など、共創の取り組みが広がっていきました。
ペットケアから動物医療への挑戦
台湾では近年、トリミング市場の高度化が進み、飼い主の美意識・衛生意識も非常に高い傾向にあります。
皮膚トラブルを未然に防ぐ・改善するという“予防的ケア”への関心も強く、QIXの「見える化されたスキンケア」は、まさに現地のプロフェッショナルにとって“待望の選択肢”でした。
QIXとしても、「製品提供」だけでなく「教育パートナー」としての立場を明確にし、2020年代からは台湾の教育機関とも連携。
獣医師だけでなく、愛玩動物看護師・トリマーに向けた研修カリキュラムの共創にも取り組み始めています。
また、afpetからのフィードバックを受けて、訴求内容や教材の調整も行われ、台湾市場に最適化された「伝え方・届け方」が磨かれてきました。
その結果、「信頼できる日本ブランド」として、QIXのポジションは着実に根づきつつあります。
afpetの担当者は、こう語ってくれました。
「私たちはQIXを“ブランド”ではなく、“価値観を共有するチーム”だと思っています」
このような関係性が構築されてきたからこそ、2020年から始まった“台湾獣医師団の来日プログラム”へと発展していきます。
次回は、afpetと共に来日した台湾獣医師チームの3日間──QIX本社・動物病院・大学・ペット施設までを巡る、リアルな“日本体験”の記録をお届けします。