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【アニメ制作会社の中の人#08】プロデューサーインタビュー/ブランドイメージが強いI.Gだからこそ任せてくれるタイトルがあるし、海外からのオファーも多いです。

黒木類(くろき るい)。日本工学院専門学校卒。Production I.G制作部長。


表現手段として確立してから、まだまだ若いアニメ業界の中で、30年近い歴史を持つProduction I.Gの制作部長を務める黒木さん。キャリアの中で、アニメオリジナル作品からヒットタイトルまであらゆる作品を創出し、現在も10本近いタイトルに関わり続けている。そんな黒木さんに、現在の仕事内容から、オリジナル作品やヒットの生まれ方、さらには学生に求めることまでを伺った。


黒木さん、本日はお忙しい中お時間を頂き、ありがとうございます!部長にこういった質問をお聞きするのは少しはばかられますが、現在どんな仕事をしているか教えてください。

去年からだと『真・中華一番!』、『PSYCHO-PASS サイコパス 3』、『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』、『Fate/Grand Order-神聖円卓領域キャメロット-』のアニメーションプロデューサー、『B: The Beginning』シーズン2のプロデューサーをしています。あとはオリジナルを含む新作3本のプロデュースと、何本かPVの制作をしています。


すごい数の作品に携わっていますね。ほかの方のインタビューで「プロデューサーは、人によって仕事の領域が異なる」と伺ったのですが、黒木さんの場合は、アニメーションプロデューサーとしてどの領域の仕事を主に担当されていますか?

僕の場合は、作品の立ち上げと、作品に合わせたスタッフィングをする部分に注力することが多いです。監督やクリエイターのスタッフィングをやって、最後の納品までの大きめのスケジュールを出して、実行は作品スタッフと制作さんに託す。そういう感じが多いです。


プロジェクトの上流に関わられることが多いのですね。だから携わっている作品数も多いのかと感じました。ちなみに、先ほどおっしゃられたPVというのはどのようなものなのでしょうか?

オリジナル作品や新作を仕込むときに、PV(プロモーションビデオ)が必要になってくるんです。そのPVをもとに、実制作時にいくら費用がかかりそうかとか、仕上がりはこういう感じになりそうだとかのイメージを膨らませます。製作委員会組成の前段階の仕事のような、いわばものさしづくりですね。

そのPVができたあと、費用や権利に関して関係各社さんとの交渉を進めていくのですが、その段階で必要となってくる作品の予算やスケジュールの見積もりの感覚は、アニメーションプロデューサーが最も理解しているので、その役割が求められるわけです。


なるほど、なんだか少しリアルな部分をお聞きしてしまいました。笑

まぁ、制作会社はやりすぎるとつぶれちゃいますから。笑 監督の良いところを最大限ひきだして仕事を進められるのがベストですが、会社を続けるにはどうしたらいいか、失敗をどれだけ少なくするかといったリスク管理的な部分を、僕は意識的に考えるようにしています。


先ほどオリジナルというワードが出ましたが、オリジナルをやりたいと思っている学生さんも多いかと思います。黒木さんはある意味いまその場所にいるわけですが、どうやっていまの仕事にたどり着いたのでしょうか?

プロデューサーを経験した回数ですかね。回数をやった分、付き合っているクリエイターさんや会社さんが増えるじゃないですか。何回か仕事をすると、その人がどういう仕事をするかわかってきます。お互いが理解できてしまえば、ゴールまでの道のりはぐっと近くなると思います。ただ、信頼を作るには、やっぱり時間と回数が必要です。


脚本家や監督がコアメンバーになって立ち上がる場合が、一般的なのでしょうか?

2パターンあります。1つは今言ったような、監督や脚本家の作り上げたイメージをオリジナルにしていこうというもので、2つ目は、こういうところに売りたいからこういう風に作ろうというパターンです。

当たり前ですが、前者のほうが難しいです。説得力がないと買ってもらえません。そういうときに、先ほど言ったPVが必要になってくるわけです。ただ実現が難しい分、そういった作品が決まった時は、してやったり感がありますね。


たしかに、それが決まると気持ちよさそうですね。ここから黒木さんのお考えについて聞いていければと思いますが、黒木さんの思うこの仕事の面白さはなんだと思いますか?

0が100になったときです。アニメって基本、どんな作品でもゼロから始まり、それを100にしていく仕事です。それが出来上がったときは、どんな作品であっても楽しいなと思います。


制作過程で、その実感を得るのでしょうか?

僕の場合は、中間過程はあんまり気にしてないですね。途中を見ると、驚きが薄らいじゃうんですよね。キャリアが長い分、途中を見ちゃうとどれくらいのあがりになるかなんとなくイメージしてしまうので、逆に見たくないんです。笑

あと、自分の采配によって、沢山のクリエイターの仕事をみれるというのは、面白いかもしれないですね。脚本、作画にしても、美術、撮影にしても「ひと月いくらでお願いします」という発注で、その人のクリエイティブが生まれるわけなので。


時には自分の采配で、その人が花開くかもしれないですものね。

そうですね。采配というわけではないですが、その人の作品過程を一緒に考えられるのは楽しいです。たとえば、いま『銀河英雄伝説 Die Neue These』をやっている多田さん(多田俊介監督)がいるのですが、最初にお会いしたときは演出さんでした。その後『REIDEEN』で副監督、その次にCLAMPさんのOVA作品『ツバサ TOKYO REVELATIONS』で初監督。そこからテレビシリーズや劇場作品を経験していただいて、『黒子のバスケ』で押しも押されぬ監督さんに……。クリエイターと一緒にそういう階段を作ってゆけるのも、仕事とお金を決める側じゃないとできない面白さかもしれません。


その面白さは、制作ならではかもしれませんね。次に、仕事の上で大切にしていることはありますか?

スピードと納期です。たとえば1年間で1タイトル進行できる人と、1年間2タイトル進行できる人であれば、後者のほうが動かしているお金も人も多くなります。その分経験が積めるわけです。

プロデューサーって、ヒット作を一本でも出すことができたら、この業界で続けられると思うんです。でもどんなに頑張っても、ヒットしない作品はいっぱいあります。そうなると数をこなすというのが、一番打率が高くなるんです。だからスピード感と、作品をちゃんと納品するということを大切にしています。


ヒットはなかなか生まれないとのことですが、あえて言うなら、ヒットする作品の変数はなんだと思いますか?

難しいですね…。ただ、テレビシリーズであれば、1本目流れたときに、だいたいの勝負はつきますね。

作品の面白い面白くないという部分は、アニメのクオリティもありますが、本当に作品が持ってるポテンシャルとしか言えなくて。それを世の中の人がどう判断するかだと思います。僕らに決定権はないです。


つまり、現場ではコントロールできない?

多分、できないと思います。それができないからこそ、僕は打席に立つ回数を増やすようにしています。

ただ「作品にあった人を探せるか」は、ヒットを生む上で大事なことだと思っています。まず、原作となるものを読むじゃないですか。そうすると「あ、ここを汲み取ってほしいんだろうな」というところが見えてきて、じゃあそれをわかってくれる監督、ライターをたてよう、となります。プロデューサーをとっても、自分自身が興味ないものは、その人に無理やりやらせても、あんまりいい結果にならないのかなと思いますね。

雨でも身体を動かせるように、黒木さんのご自宅にはボルダリング壁があるとのこと。


それでは、ここからは就活生に向けた内容にシフトしたいと思います。黒木さんは、どんな人にProduction I.Gに入社してほしいですか?

「自分のリズムとペースを守れる人」です。ただ、自分ファーストでは困ります。アニメ制作は、クリエイターたちを後押しする、裏方に近い職種です。フラットな世の中になっているとはいえ、自分が裏方に回るという意識をしっかり持つことが大事です。そして、支えとなる裏方の人が、周りに引っ張られていちいち折れてしまっては、現場が立ち行かなくなって、みんな困りますよね。だから、自分のリズムとペースを保てる人は、アニメ制作の現場で活躍できると思います。


就活の面接時などに、感じることはありますか?

よく「サークルのリーダーでした」など、アピールされる人がいます。それはそれで全く構わないのですが、ただ、それが一番大事というわけではありません。リーダーじゃなくて、全然大丈夫です。

たとえば、レギュラーになれなくても部活を続けるという人が世の中にはいて、そういう人には自然と粘り強さが身についていると思います。「チームを勝たせるために、ずっとブルペンキャッチャーやってました」でも全然構いません。そういう人は、周りを見ながら自分の役割を見つけることができるんじゃないかなと思います。


Production I.Gの強みはなんだと思いますか?

100%、ブランド力です。あとは、制作体力かな。

ブランド力は、ある意味「I.Gさんならこれくらいできますよね」とベースを決められてしまうので、重荷に感じてしまう時もありますが、やっぱりいい刺激になります。それを感じながら結果を出さなくちゃいけないプロデューサーたちは、いい意味でヒリヒリしながら仕事をしていると思います。

でも、それくらいブランドイメージが強いI.Gだからこそ任せてくれるタイトルがあるし、海外からのオファーもくるし。普通の制作会社では、なかなかそうもいかないかと思います。


制作体力というのは、どういう意味合いなのでしょうか。

I.Gは、座付きのアニメーターさんはいるけど、実は監督は少ないです。まず作品があって、そこに一番あう監督を社内外に問わず選ぶことができる環境になっていると思います。

作品や監督によって求められる現場の形は様々だけど、対応できる土壌があるのは強いです。

なぜそういう環境があるかというと、プロデューサー、制作一人一人の強さに基づいた、優れた制作ルーティンがあるからです。『アンパンマン』じゃないですが、そういったタイトルがなくても、I.Gが長く続けられている理由があるとすれば、そういうところじゃないかなと思います。


業界を外から見ているだけでは気づきづらい、新鮮な見方だと感じました。それでは最後に、黒木さんが今後作りたいと思っている作品を教えてください。

んー、『アンパンマン』みたいな作品かな?笑


つまり、 “長く国民に愛される作品”?

いいね、それ!笑 まぁ国民というか、国内外問わず愛されるような作品を、かな。あとは、みんな怒らない作品。笑 継続して作れるやつがいいな……。あとは「完全に賞を狙った長編をつくる」というのは、なんとなく考えてたりしてますけどね。笑

一方で、若い人にバトンを渡していきたいという思いもあります。若い人が作らないと、その時代のものになりません。僕は昭和の人間だから、昭和のフィルムにしか仕上がらない。個人的にはその時代のプロデューサーが出すものが、一番いいだろうと思っています。アニメって、古臭いものじゃないですし。

僕たちは若い人に、人材、お金、スケジュールといった後押し、そしてアドバイスはできます。だから、若い人にどんどん活躍してほしいと思っています。ウチから出すなら、下手なものにはなりませんし、ダメなものは、企画書もらった時点で「これ売れないよ」って言っちゃいますしね。笑


若手や中堅の方々が、口々に「I.Gは若い人にチャンスを与える会社だ」と言っていましたが、その由来がわかったような気がしました。本日は、ありがとうございました!





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