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【アニメ制作会社の中の人#07】プロデューサーインタビュー/「じっくり育てるというよりも、やれそうだからやらせてみる」というのが、私には合ってるなと感じます。

磯部 真彩(いそべ まあや)。東放学園映画専門学校アニメーション・CG科卒。アニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These』のアニメーションプロデューサー。


アニメーター志望から制作志望に――。専門学生時代、アニメーターとしての道を志しながらも、授業や自主制作を進める中で自然とまとめ役になることが多く、次第に「制作」という仕事を考え始めた磯部さん。その考えをもとにProduction I.Gに入社して以来、数々の作品の制作を担当したのち、大作『銀河英雄伝説 Die Neue These』のアニメーションプロデューサーを一手に引き受けるまでに飛躍。“クリエイター”と“制作”両方の視点を持つ磯部さんに、制作としての働き方を伺った。


磯部さん、本日はよろしくお願いいたします!いつも朝会でジャケット姿をお見掛けしておりました。早速ですが、現在どのような仕事をされていますか?

『銀河英雄伝説 Die Neue These』(以下、『銀英伝』)のアニメーションプロデューサーをしています。作品の制作は終了しているのですが、直近では、劇場用にダビングをし直したり、ポスターなどの版権業務の進行をしたり、宣伝関連の監修をしたりしていました。案外、納品してからも忙しいですね。あとは新作の仕込みをしています。


1つの作品に対して、多岐にわたって仕事をされているのですね。一般に、どの領域までがプロデューサーの仕事なのでしょうか?

各話数では、担当している制作進行が責任をもって進行管理をしています。それ以外の、話数に換算できない企画から納品までを、金銭面・スケジュール面をみながら進行していくというのが、プロデューサーの仕事になると思います。言い換えれば「監督の次に作品に寄り添っている人」でもあるかもしれません。

ただ、作品やプロデューサー個人の考え方によって全然違うのが実際でもあります。私は、『銀英伝』では今も納品後のことを色々とやっているので、かなりがっつり付き合っている方だと思いますね。


『銀英伝』シリーズは原作も壮大ですし、特にしっかりと向き合うことが求められそうですね。

そうですね、はじめはどうやって組み立てていこうかとかなり考えました。

『銀英伝』は3つの勢力が覇権を争う、“スペースオペラ”と呼ばれるほど長大な作品です。いままで私が携わった作品のほとんどは、美術設定をして頂く方が一人か二人だったのですが、本作では3つ国が登場するので、1つの国に1人の設定マンを立てることにしました。

たとえば、近代的な雰囲気が得意な人に『自由惑星同盟』(3つの勢力のうちの1つ)を頼もうとか、ヨーロッパ的な、ロココ調っぽい建物が得意な人にあそこを頼もうとか、建築家に依頼していくようにアサインしていったんです。その人の個性が、そのまま国の個性になるようなイメージです。


わくわくするお話ですね!先ほどもおっしゃっていましたが、珍しいスタッフィングの仕方ですよね?

私がもともとやっていたのは『黒子のバスケ』という作品だったのですが、それは現代日本だし、登場キャラクターの年齢層も比較的低めで、少年少女に向けた作品、というはっきりとした狙いがあったので、構築の仕方も比較的シンプルでした。原作には絵もありますから!

一方で『銀英伝』の原作には字しかないので、いままでSF作品を扱ったことのある人に話を聞いたり、監督や設定制作と相談したりしながら、トライアンドエラーを重ねていました。


試行錯誤の末のスタッフィングだったのですね。話をお聞きしていて、とにかく徹底的に作品に向き合うのが磯部さんスタイルなのかなと感じました。

私の責任の取り方がそうなんだと思います。制作進行をやって、設定制作をやって、デスクをやってプロデューサーをやって……という経歴なのですが、要するに全部やったことがある状態でして、どの仕事も手伝おうと思えば手伝えちゃうわけです。プロデューサーのくくりから出ちゃえるというのが、自分のいいところでも悪いところでもあるのだと思います。

忙しい中でも、夜ご飯は手作り


なるほどですね。磯部さんから見て、I.Gはどんな会社だと思いますか?

I.Gはたくさんチャンスをくれる会社だと思います。私の場合、入社1年目の冬に、大好きだったCLAMPさんの『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』のOVA『ツバサ 春雷記』の設定制作を担当させてもらえました。上司から「(磯部が)好きだって聞いたから、任せるよ」と言ってもらえたんです。もちろんアドバイスをもらいながら進めていったんですが、I.Gの「じっくり育てるというよりも、やれそうだからやらせてみる」というのが、私に合ってるなと感じます。

逆に『黒子のバスケ』では、1期では設定制作と制作デスクを、2期では制作デスクを、3期ではプロデューサーをという風に、段階を踏んだ形で任せてもらいました。上司と一緒に現場の土壌を作っていって、3期ではそのうえで「この畑任せる」と、自分も一緒に耕した畑を任せてくれたんです。いい勉強をさせてもらえました。


仕事を任せてもらえるというのは、社内でしっかりと評価されているからこそだと思うのですが、仕事をする上で大事にしていることはありますか?

根底には、一緒に作品に関わってくれている人たちが気持ちよく仕事ができる環境を作れたらいいなぁ、という思いがあります。そこが良ければ、画面から「この作品楽しそうだなぁ」という感じがにじみ出る作品になっていくのかなと。やるときはやって、遊ぶときは遊ぶというメリハリがきっちりあって、何より作品愛がみんなにあるような地盤のある現場が、最終的に良い作品につながると思っています。


場を作るにあたって、取り組まれていることなどはありますか?飲みの場を設けるとか。

そういったものよりも、これは適切なスケジュール感かとか、適切な予算かとかを、私はすごく重視しています。逆に、遊びに行こうとか旅行いこうっていうのに全く興味ないんです。笑 スケジュールのギリギリのところを交渉して、お金も交渉してっていうところが、私のできるフィールドの整理なのかなと思っています。


たしかに、それが一番のスタート地点かもしれませんね。磯部さんは、I.Gにはどんな人が入ってきてほしいですか?

色んな事に興味があって、礼節をわきまえている人ですかね。


それはなぜでしょう?

アニメ業界って、ある種ゆるい業界だと思うんです。多くの人が、創作やアニメなど表現することが好きっていう価値観を共有していて、みんな仲間みたいな。そういう中で、年上のかたにタメ口で話してしまったり、上司や先輩、キャリアの違う人との距離感が結構近い人が時々います。当たり前のことですが、仕事の間はちゃんとするみたいなマインドは、きっちりある方がいいと思います。

私自身ジャケットを着るのは、今は仕事だよって自分に言い聞かせる意味もあります。比較的若いうちからプロデューサーになったので、委員会などで様々なキャリアや立場のかたとお話しするときも、この人ちゃんとしてるんだろうな、清潔感あるなと思ってもらえるように心がけています。これに一回したら楽、というのもありますけど。笑

いつものジャケット姿でインタビューに答えてくれた磯部さん


磯部さんのジャケット秘話ですね…。最後に、磯部さんはもともとアニメーター志望だったとお聞きしたのですが、そのあたりの経緯をお聞かせいただけませんか?

もともとアニメーター志望で、専門学校に通っていました。ただ、クラスに20人くらいの学生がいたんですけど、その中で抜きん出て絵がうまい、というわけではなくて。「この中で一番絵がうまくないのに、アニメーターになれるわけないじゃん!」と思い、そのころから色々考えるようになりました。

授業でも、先生方から「君はプロデューサー向きだよ」と言われることが多かったんです。グループで自主制作することもあったんですけど、気が付いたら自分がグループを仕切っているということも多くて。そういった中で考えを深めていくうちに「絵で食っていきたいわけではなく、アニメで食っていきたいんだ」と思っている自分に気がついて、転向しました。調べていく中で、能力主義という考えが強そうだな、と感じた事も大きいです。


そういったシフトチェンジがあったのですね。この業界を目指す人の中には、自分自身で創作活動をされてらっしゃる方も多いと思いますが、そういった学生さんたちに向けて、磯部さんならではのメッセージをください。

私自身創作もしていたので、作品を進めている中で何かあったとき、演出さんとか監督に「こうしたらどうですかね」という提案をさせて頂くことはあります。多田監督(多田俊介監督)などは、どんな下っ端の意見でも、いいアイデアは引き入れてくれる方で。

アニメーターにはなりませんでしたが、それこそプロデューサーの仕事として、自分が集めるスタッフ次第で生まれるクオリティは全然違います。あるいは設定制作となって、だれに頼むかという頼み方でも、作品の世界観はガラッと変わってきます。シナリオ打ちでも、このキャラクターならこういう風に展開したほうがいいのでは、話の展開の順番はこうがいいのではと提案します。絵以外にも、アニメのクリエイティブの根本にかかわる方法って、いくらでもあるんです。

「絵が描けなかったから、制作進行」という枠にはまらずに、「特撮好き」とか「歴史が好き」とどんどん発信していって、新しい仕事につなげていけばいいと思います。『銀英伝』もずっと好きだと言い続けていたことで、「磯部が好きらしいからチームに入れよう」となりました。自分のやりたいこと、できること、好きなことは、隠さずに言っちゃったほうがいいと思います。


きっちりと仕事を遂行しながら、自身の思いを込めて作品を仕上げていく磯部さんの働き方をうかがえました。本日はありがとうございました!

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