株式会社ESP 代表取締役 高原です。
某銀行で大システムトラブルが続いています。
この経済社会で、入出金や振込が出来ない事態はクリティカルです。
SNS界隈では「またか・・・」と呆れに近い温度感を感じます。
一方、私はエンジニアとして銀行を長く担当したので、裏でのエンジニア達の苦労を想像します。
出来て当たり前、出来なかったらフルボッコという感じと思いますが、これはクリティカルな社会システムを担うエンジニアの宿命と割り切るのが良いかと思います。
リスクへの不安は行き過ぎると、新しい挑戦を控えるようになり、レガシーな文化を作ります。
例えば感染症が広がり電子マネーが普及している時代に、セキュリティ等なんやかんや理由をつけて現金を使い続けるような。
リスクへの不安とどう向き合うかが、バランスをとる鍵になりそうです。
ここで、エンジニアの観点を例にリスクへの対応方法を考察してみます。
■そもそも
そもそもシステムは、人の作業を楽にする手段です。
楽とは、今まで10時間かかっていた手作業が、自動化で1時間になることです。
例えば、銀行も昔は入出金や振込は窓口で伝票を使って手作業でしたが、システムが処理できるようになりました。
その後、ATMやインターネットで利用者が直接処理できるようになり、利用者は物理的な制約が少なくなり楽になりました。
システムが、利用者と銀行を楽にしています。
そして、人は楽な手段にシフトします。
例えば、手紙が電子メールに、電子メールがLINEにシフトしたように。
目的は特定の相手にメッセージを届けるで変わりませんが。
楽なシステムへシフトすると、システムが止まった時の痛みが大きくなります。
なので、痛みへの不安からシステム無停止が強く求められるようになります。
ここでリスク対策が求められます。
リスク対策の本質は、痛みへの不安を解消したい感情です。
■では、どのリスクを想定するか?
私は現役エンジニアでもあり、常にトラブルリスクと向き合ってきました。
まず、リスクは「0」にならず、「確率」の問題という考え方をします。
極端な話、関東大震災再来のリスクも無いとは言い切れませんし、クラウドも年数回停止しています。
問題はどこまでのリスクを想定し、どう対策するかです。
対策はわかりやすい例だとシステムの2重化だったりです。
通常対策レベルによってコスト増になるトレードオフがあるので、コスト効果の判断で決めます。
想定できてもレアケースだった場合は、コスト効果が見合わないということもあります。
■では、想定できないリスクはどうするか?
これは様々なパターンが考えられ、一様な対策は難しいです。
なので、対策しない部分については割り切り、個別対応です。
リスクが無くならない以上、最終的には「割り切る」しかありません。
「割り切る」とは、解像度を上げると「どこで諦めるか?」という点を設定するということです。
思いは諦めたくない、でもそれではキリがない、なので現実的な諦めポイントを決めます。
「どこから先は諦められるか?」ここは他事例も参考に、自問することになります。
■自分にあてはめて考える
想定できるリスクはコスト効果で判断し、想定できないリスクは割り切る。
これにより不安から解放され、やるべきことに集中できるようになる。
リスクへの不安は、行動につなげれば品質向上へのエネルギーです。
そして、これらの考え方は、エンジニアの世界に限らず、人生やビジネスへ応用可能です。
不安への向き合い方、参考にしてみてください。