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【代表インタビュー】子どもたちの安心安全な社会、そして明るい未来のために、テクノロジーができること。

エースチャイルド株式会社 代表取締役CEO
西谷雅史

いまや小学生がスマホを持つ時代。しかしWeb上にはネットいじめや顔の見えない相手からの犯罪など、子どもたちの安心安全な生活を脅かす存在も溢れています。エースチャイルドでは「ITのチカラで、子どもの未来を明るく」というミッションのもと、セキュリティアプリやSNS相談プラットフォーム、SNS学校連絡システムなどのプロダクトを開発。教育機関や国との連携を深めながらサービス領域を広げています。

今回はエースチャイルドの西谷代表にインタビュー。起業に関するエピソードからプロダクト誕生のきっかけ、事業にかける想いなどを語っていただきました。

子どもたちの世代に役立つことを

情報工学系の大学院を卒業して、就職したのは金融系グループに属する大手SIerでした。そこでは赤字・炎上している案件にスポットで入って解決する「火消し」の役割を担っていました。スキルセットとしては、いわゆるフルスタックエンジニアでした。さらに新規事業を立ち上げる部署ができたので、そちらに異動。開発だけでなく、案件を作るための営業、お客様との折衝から運用まで全て手掛け、当時としては珍しかったモバイルやクラウドの事業化に取り組んでいました。

お客様とやり取りしたり、チームを見る立場でやっていると、テクノロジーだけでなく、プロジェクトマネジメントも理解する必要があります。全体感を持って話すためには欠かせませんからね。だから入社5年目ぐらいでPMPという国際資格を取得。一つの領域を深掘りせよという当時の上司の教えに反して、広く、かつ比較的深くという志向性でした。周囲からはあまり理解されませんでしたが(笑)。

そのうちに自分にも子どもが生まれて、子どもたちの世代に役立つことをやりたいと考えるようになりました。クライアントの中には子ども向け事業を展開している会社もありましたが、当然ながら自分のやりたいこととは違います。そこで起業を決意したんです。

800種類以上のアイデアを出す

ただしどうやって起業したらいいかわかりません。家族もいますし、勢いだけでどうにかなるものでもない。そこでベンチャーキャピタルから認められ、出資してもらえたら起業するというプランを描きました。そこからは三日に一回ぐらいの頻度でさまざまなVCにビジネスモデルをプレゼン。ダメ出しの連続だったり、門前払いを食らったことも。それでも最後にようやくサムライインキュベートというVCから認めてもらえました。

そのアイデアが『Filii(フィリー)』の原型です。当時、報道で「LINEいじめ」が取り上げられていた。著名な先生が「LINEは閉じているので外から見えない。われわれには手出しができない」ということを記事で語っていたんです。でもエンジニアからするとスマホアプリの中で起きていることだから何かやりようがあるだろう、と。LINEからの通知や保存データから得られる示唆を家庭で話し合うだけでも状況は改善できると考えた。この「話せる環境をつくろう」というコンセプトが、サムライインキュベートの代表にも刺さったようです。

VCへのプレゼンは100回以上やりました。アイデアだけなら800種類ほど。その中から厳選して、筋がいいものだけを持っていきました。ただし当初から一貫して「子どもたちの安全や子ども世代のためになるものを」という軸はブラさなかったですね。こうして2013年にエースチャイルドを設立。ほどなくして『Filii』のβ版をリリースすることになります。

世の中の5歩も6歩も先を行くプロダクト

リリース直後は反響がすごくありました。テレビの取材も受けたりして認知度は急上昇。しかし契約にはつながりませんでした。プロダクトのコンセプトや機能は問題なくても、ユーザー獲得という視点での設計やテレビを見て検索してくれた人への情報提供などが疎かになっていた。そのあたりのB2Cの経験がなかったので、体制や対策が不十分だったんですね。

そのうちにデザイナーを入れたりしてUIにテコ入れしたり、LPを作ったり。自分が苦手なところはその道のプロに任せて3年ほどリニューアルをひたすら繰り返していました。でも一旦そこで新規開発はストップ。というのも「LINEいじめ」などが概念として広がっていても、国や教育委員会の対策がまったく追いついていなかった。その時点では理解されにくいプロダクトだったんです。

つまり『Filii』のほうが世の中の5歩も6歩も先を行ってることがわかった。だったら少し寝かせるほうがいいんじゃないかと。最近、ようやく国も具体的な対策の重要性に気づいたようで、SNSの見守りを家庭で行なうツールの必要性とか、実態にあわせたルールを作るといった動きを見せるようになりました。先日も内閣府から『Filii』の話を聞かせてほしいと呼ばれたばかり。これからの展開が期待できます。

相談のハードルを下げるサービスを開発

『Filii』の実証実験をある地方都市でやっていたときに、トラブルに対して家庭ではどうにもならないような場合、アプリから市の教育委員会の相談窓口に電話を入れられる仕組みを作りました。そうしたら文科省から声がかかって。同様の事業を手掛ける会社が何社か集められたんです。

実はある県でいじめ電話相談をLINEでやる実験をしたところ、年間250件だったのがたった2週間で2200件も集まった。心理的ハードルが下がれば相談はしてもらえる、と国が認識したのです。そこで文科省と我々事業者が議論するのですが、最終的にはLINEを活用すべきという結論に。であれば、と私たちが手をあげました。

LINEと協力しながら警察とも連携する仕組みを構築して、約3ヶ月でβ版にこぎつけました。それが『つながる相談』です。最初はLINEだけでしたが、いまではTwitterやFacebookなどさまざまなSNSに対応しています。『Filii』とは違い国と連携しながらサービスを作っていけたのが大きな収穫でしたね。リリースから4年、学校のみならず官公庁や自治体、一般企業でも多くの実績をあげています。

教育現場の効率化も推進

『つながる相談』についていくつかの自治体や学校から意見をいただくうちに「連絡のデジタル化を進めたい、どうせならLINEでできないか」という話がでてきました。連絡とは保護者と学校のやり取りがメインになります。であれば保護者個人のLINEアカウントで学校の公式アカウントを友だち登録するのがいちばんハードルが低いな、と。そうして開発されたのが『つながる連絡』です。

これでかなり教育現場の効率化は進むはず。まずプリントを渡す必要がなくなります。さらに朝の欠席連絡を受けるための電話番も不要になる。そもそも国は学校に連絡業務のデジタル化を通達したんですが、実際には広がっていません。それは既存のプロダクトがマッチするかどうかを検証する時間も予算もないからです。

ですからまずは『つながる連絡』を実証実験で一年ぐらい使ってもらう、という草の根運動を通じて実績を増やしていくのが現実的だと考えています。有償提供化ははじまったばかりですが、いま有償で使ってもらっているのが17校。試用期間中で検討していただいているのが10校ぐらい。これも今後の広がりが期待できます。

子どもがITを安心安全便利に使えるように

現在3つのプロダクトで事業展開していますが、今後も必要に応じて新規サービスの開発に取り組んでいきます。ただし、冒頭でも話した通り軸足は子ども世代のため。子どもたちのためになる環境づくりですね。それを担う自治体との関係性を深めて、IT化の推進に貢献しながら、子どもにとって安心・安全・便利なネット社会をつくれればと考えています。

このビジョンの実現には会社組織の一層の充実は不可欠と考えています。もともと起業したときの目標に、エンジニアが評価される風土と働きやすさの多様性を一般的な水準を超えたレベルで実現しようというものがありました。創業時からフルリモートというのもその一環です。メンバーが増えてからは、どんな働き方がしたいのか1人2時間かけて発表と議論をする場も用意。民主的な社風を背景に、より魅力的な会社を作っていくフェーズだと捉えています。

メンバーに求めるのはまず自分の意見を持つこと。そして話し合いの場で表明できること。そうじゃないと楽しく仕事できませんからね。嫌なことは嫌と言ってもらっていい。その上で一緒に代替案を考えるのがベターだと思います。ビジョンへのコミットはあればいいけどなくても構いません。特にエンジニアは技術を突き詰めたいなら、それで成果を出してくれればOKです。自由な空気を大切にしながら、楽しく組織も事業も大きくすることが結果としてビジョンの実現につながると考えています。

【Profile】

エースチャイルド株式会社 代表取締役CEO 西谷雅史

企業基幹システムのシステムエンジニアから、技術戦略策定、新規事業企画を経て、2013年エースチャイルド株式会社を設立。システムエンジニア経験を活かし、ITの専門性を活かした視点で社会問題解決に取り組みたいと考えている。アプリ・システムの提供だけでなく情報モラル等の啓発も重要と考え、主に児童生徒、保護者向けの講演なども年間100件程度実施。3児の父。

一般財団法人全国SNSカウンセリング協議会 理事

千葉県青少年を取り巻く有害環境対策推進協議会 実行委員

全国読売防犯協力会 「ぼうはん日本」防犯セミナー講師

一般財団法人インターネット協会 インターネット利用アドバイザー

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