矢野 宏治のプロフィール - Wantedly
株式会社83Design, 代表取締役 / Design director ...
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はじめまして。モノづくりを楽しみ、本気で没頭する会社、83Designです。
モノづくりにおいて私たちが大切にしているのは、“ワンチームで楽しむ”こと。ワンチームというのは、私たちを選んでくださるクライアント様、生産ラインを担う職人さん、このモノづくりの過程に関わるすべての人たちを示します。
創造者みんなの想いが込められて、はじめて良いプロダクトができる。そのプロダクトがユーザーの手にわたり、あたたかみや想いが伝播する。手触り感あるモノづくりの過程をご紹介するストーリーです。
そこで今回お話しするのが、『PSZ機能搭載パーソナルイヤースピーカー「nwm」』の最新モデル、ワイヤレスタイプの「nwm DOTS」と有線タイプの「nwm WIRED」の開発エピソード。
プロダクトデザインを担当した83Design・矢野、曽我部、近藤が開発の過程を振り返ります。
「耳元だけに音を閉じ込める」というNTTが独自に開発したPSZ(パーソナライズド・サウンド・ゾーン)機能を搭載した、まったく新しいスタイルを実現するパーソナルイヤースピーカー。耳の穴を塞がず、オープンになっているのに、音漏れが少ない。リモートワークやオンライン会議に最適なアイテムになっている。
今回開発を手掛けたのは、ワイヤレスタイプの「nwm DOTS」(上)と、有線タイプの「nwm WIRED」(下)。
▽nwm初期モデルの開発ストーリーはこちら
ーー nwmの最新モデル、nwm DOTS/nwm WIREDの開発を手がけることになった経緯を教えてください。
(矢野)
nwmの初期モデル、その次のオーバーヘッド型のnwm ONEのプロダクトデザインに携わらせていただいたのに引き続きで、今回も依頼を受けました。
従来型のワイヤレスイヤホン(MBE001)と 有線イヤホン(MWE001)の次のモデルを開発したい、という依頼でしたね。
(近藤)
nwm DOTSは、マジックフォーカスボイス技術を搭載した新モデルとして、従来型より音質を向上した商品を作ること、nwm WIREDは、従来型よりイヤーフックの装着感を向上させ、且つ手に取りやすい価格を実現することが、クライアントからの依頼でした。
ーー 83Designは、どのような方針を持って開発に取り組んだのでしょうか?
(矢野)
私たちがプロダクトデザインで叶えるべきミッションは、「nwm ONEのデザインランゲージを踏襲しつつ、ユーザーとブランドのつながりを深める」ことに置きました。
「nwm」というブランドを「商品群」として見た時に、一つのブランドらしく統一感を持って見せることを一番大事にしましたね。
(曽我部)
nwm ONEを開発した際にデザインランゲージを明確に定めたことで、今回のプロダクトデザインの指針はかなり明確になりましたよね。
ただ、部品のレイアウトに沿ってデザインが大きく変わる中、どのようにしてデザインランゲージをなぞっていくのか。ここの議論には一番時間をかけましたね。
ーー 具体的に、どのような流れで進めたのでしょうか?
(近藤)
まずnwm DOTSからお話しすると、最初にカスタマージャーニーの作成から始めました。
ワイヤレス型イヤホンは以前にも手がけたものの、従来モデルには給電できるケースが付いていなかったんですね。ですが、今回は給電機能付きのケースも合わせて開発することになったので、改めて持ち運びのユースケースを細かく分析しました。
(曽我部)
例えば「カバンに入れて持ち運ぶ時に、どこに厚みが付いているとどのように不便が生じそうか」などを一つ一つ考えていきましたね。
それに合わせて、イヤホン本体でどこにバッテリーをつけるか、などレイアウトの話に進んでいきました。
(近藤)
初めは、イヤーフックの先にバッテリーを付ける形を想定していたんですが、そうするとどうしてもケースが大きくなってしまって。
もう少しレイアウトを工夫したいと思って、色々検討しましたね。
(矢野)
5パターンくらいラフに考えてみたよね。
フック型以外も含めて色々アイデア出してみたけど、意外と今と全然違うパターンも盛り上がったやつあったよね。先方でも結構盛り上がってたみたい(笑)
プロジェクトの中盤くらいまでは、ボツになったアイデアもしぶとく生き残ってて、複数の可能性が同時に走っていたね(笑)
(近藤)
結果、3番をベースにして議論が進んで、だんだんと今の形に近づいて来ましたね。
実際に3Dプリンターを使って、バッテリー部分に等重量の重りを入れて耳にかけてみて、装着感を確認しました。
(矢野)
そうすると、やっぱりバッテリー部分は耳の後ろに持ってきた方が安定感が増すから、フックを後ろに伸ばす方向で動き出そうとしていたんですが、正直それは避けたかった。
他社の耳掛けイヤホンも大体バッテリーが後ろにあるタイプばかりなので、他社製と印象が被ってしまうからです。
ーー 装着感と独自のデザインを両立する形を、色々検討されたのですね。
(近藤)
バッテリーはやはり後ろにせず、且つケースをコンパクトにするためにもフック部分をなるべく短くしたりと、色々試したのですが、やっぱりどうしても耳にかけた時にズレてしまったんですね。
だから、部品の位置や角度を微調整しては装着してみて....を繰り返しました。
(曽我部)
耳の形状を細かく測った上で設計しても、耳の形は人によって全然違うので、装着感に差が出過ぎる問題は結構ハードルでしたね。
(矢野)
結局その後また、装着時の安定感からバッテリーを後ろに持ってくるパターンに回帰したね(笑)
nwm ONEには硬めの造形がデザインに含まれているのもあって、それを踏襲する形であれば、ブランドのアイデンティティを保てるんじゃないか、と。
でも、装着時に厚みが出てしまったりして、結局ボツになったんだよね。
(近藤)
ボツになったアイデアにも、結構お気に入りはいましたよね…(笑)ー そこからは、どのように最終形に至ったのでしょうか?
(矢野)
nwmの最大の特徴である「Personalized Sound Zone」。新モデルでは装着感も「Personalize」できる、というコンセプトも叶う「フィットボール」を使う案が出てきました。
(曽我部)
先ほどのフランケン問題もあったので、部品をどのようなパーツに分けると厚みがよりなくなり、且つ機能を保って成形できるのか、という細かな調整にも入っていきました。
ここが工業デザインの真骨頂でもありますね。
(近藤)
この分割によって、色のつけ方も決まってきますしね。カラバリも色々検討しましたね。
(近藤)
それからは、工場の方と金型を作る工程に入りました。実際に成形するとぶつかる部品などもあって、細かく調整しましたね。
ー nwm WIREDも同時並行で進めていたとか?
(矢野)
そうですね。
nwm WIREDは、従来よりも低価格のモデルということで、開発の予算も少し絞りながらの開発になりました。流れは大枠としてnwm DOTSと同じですが、nwm DOTSと比較してコンセプトと形状が決まるのが早かったので、結構スムーズに進みましたね。
(近藤)
低価格モデルということで、量販店で手に取りやすいよう、丸みのある可愛らしい形状を工夫していましたね。また、開発予算を抑えるために、塗装なども含めたサンプル作りは全て自分たちで行いました。
あと、表面に見える穴のデザインも。
nwm ONEは、穴の部分にステンレス素材を用いて高級感を出す等の工夫をしていたので、今回もここのデザインにはこだわりました。
(曽我部)
有線型なので、ケーブルの抜き差しのしやすさも結構調整しましたね。
先方の担当者さんはこの手の開発は初めてだったとのことで、こだわりポイント等は丁寧にすり合わせながら進めました。
ーー 両モデルにおいて、最後はどのようにして決定するのでしょうか?
(矢野)
最終的な決定は、クライアントに行っていただきます。
とは言え、そこまでかなりの時間をかけて私たちも一緒に議論してきていますので。今回のnwm最新モデルの開発では、毎週水曜日の午後を全て使う形で定例会を組んでいました。昼から夜の19時まで話し続けることも、結構ありましたね(笑)
ーー 今回の開発において、大事にしていたことを教えてください。
(矢野)
やはり、nwm ONEとのファミリー感です。
デザインランゲージを踏襲していることで、デザインとブランドを一般の人が紐付けやすくなります。nwm ONEのデザインランゲージはわかりやすいもので、例えば「平面の円がパキッと見える」こと、「装飾のための装飾はできる限り排除する」こと等を盛り込んでいます。
(曽我部)
私も同じです。
あとは、イヤーフックタイプのイヤホンにおけるデザインの新鮮さにはこだわりましたね。競合製品と類似しないことも、デザインとブランドの認知を一致させることにとても重要です。
(近藤)
私もお二人とほとんど一緒ですが、やはり他社にないnwm DOTS独特の特徴であるフィットボール。これはイヤーフックタイプのイヤホンに新しさをもたらしたと思います。
初の試みだったので、30-40人の検証を重ねてサイズを決めていきましたね。
ーー 最後に、このプロジェクトを終えてみての感想を教えてください!
(曽我部)
先行モデルのnwm ONEのデザインランゲージをカスケード展開できたのは、とても良い経験でした。
同じデザインランゲージを用いて複数モデルを手がける経験は貴重なので、個人的にとても楽しかったです。今回複数モデルを手がけたことで、グッとファミリー感が増したと思います。
「デザイナーとしてやりたいことができた。」そう感じさせてくれるプロジェクトでした。
(近藤)
私も、デザインランゲージを踏襲して新規プロダクトを開発する経験ができたのがとても良かったです。
また、今回もたくさんの装着検証を行いましたが、その結果「これでいこう!」という空気を作れた時、「地道に頑張って良かったな」と思えましたし、そんな瞬間が多くありました。この仕事の醍醐味だと感じます。
(矢野)
今回、レイアウトの議論にはかなり時間をかけましたが、真剣にたくさんのアイデアを検証・比較した過程はとても楽しかったですね。
そして総じて ”大事にしたいことを達成できた” プロジェクトだったと思います。「カッコ良いだろ?」と自慢したくなるプロダクトができました。
先行モデルのnwm ONEのデザインランゲージを踏襲しながら、プロダクトのアイデンティティを示せるカタチを探った今回のプロジェクト。
週に一回、午後みっちり時間を使って、クライアントも含めてみんなでアイデアをシェアしながら、熱意を持って没頭するモノづくりの姿がここにはありました。
私たちと一緒に働きたい!まずは話しを聞いてみたい!こう思っていただけるのであれば、ぜひカジュアルにお話ししませんか?