【企業インタビューvol.15】フジ物産株式会社様インタビュー〜スポーツ業界のセーフティネットに。地域に根付く企業の新たな挑戦〜
【企業インタビューvol.15】フジ物産株式会社様インタビュー〜スポーツ業界のセーフティネットに。地域に根付く企業の新たな挑戦〜
Engineerforceではフジ物産株式会社様の新プロジェクトにおけるアスリートのデザイン研修サポートをさせていただいております。
今回はフジ物産株式会社様より山本様、平尾様(以降、敬称略)のお時間を頂戴し、弊社小出がこれまでの取り組みや成果、これから取り組んでいきたいことについてインタビューをさせていただきました。
フジ物産株式会社に根付く文化
小出:
お時間いただきありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。
まず山本さんに御社の事業内容とビジョンなどをお伺いできればと思います。
山本:
はい。フジ物産株式会社は今年て68年目を迎えた、静岡市に本社を構える商社です。多角的な経営をしているので水産やエネルギーなど事業が幅広くあります。中でも日本一の事業が2つあって、1つが遠洋マグロ漁船のサポート事業。マグロ漁船にマグロの餌を販売したり、燃油をおろしたりしています。もう1つはうなぎですね。輸入うなぎの卸業、こちらも日本トップシェアです。こういった水産事業やエネルギー関連事業をしてきた中でここ10年ほどはスポーツへの協賛活動や地域貢献活動にも力を入れていて、約3年半前にアスリートのキャリア支援をするAtn-upを、事業として立ち上げました。さらに最近は旅行事業やスタートアップ支援にも取り組んでいるような会社です。
小出:
ありがとうございます。水産やエネルギーなどの事業から今回のテーマであるスポーツへは全く異なる分野への進出だったのかなと思うのですが、そこにためらいなどはなかったのでしょうか。
山本:
そうですね、直近大きな利益を生み出しているうなぎの事業も創業当初からの事業であるマグロやエネルギーとは異なる事業としてのチャレンジでしたし、積極的に新しい事業にチャレンジするDNAがあったと思います。会社として「利他と挑戦」というものをキーワードに掲げており、地域や目の前の方のためになることに挑戦するという文化が根付いていると思います。
小出:
素晴らしいです。スポーツ事業、特にAth-upの活動には何かきっかけがあったのでしょうか。
山本:
Ath-upは元々スポーツへの協賛を始めたことがきっかけです。スポーツ協賛を通じた地域貢献活動などをしていると、色々なプロ選手とコミュニケーションをとる機会も増えていきました。そうした機会の中で社長が懇意にしていた選手が一名戦力外通告を受けてしまうということがありました。選手が戦力外通告を受けると当然給料は入ってこないですし、家族がいるのに支えることが難しくなります。そういった現実を知って、スポーツ業界におけるセーフティネットのようなものを日本で整備したいと思うようになりました。もちろんスポーツ庁やリーグで一部取り組みはあるのですが、それだけではサポートしきれていない部分もあるので、民間の力、特に静岡というスポーツが盛んなエリアで事業としてサポートしていきたいところから2022年にAth-upが立ち上がりました。
フジ物産株式会社・山本様
小出:
山本さんが参画したのも2022年でしょうか。
山本:
そうです。僕は立ち上げのタイミングから関わっています。
小出:
Ath-upが現在目指しているものはあるのでしょうか。
山本:
アスリートのサポートをしつつ、彼らが企業の推進力にもなるような状態を目指しています。アスリートが困っていることを助けていきたいということはもちろんですが、一方でアスリートは様々な強みを持っています。体力、メンタリティといったベーシックな部分もありますし、成功するための思考力、競争に勝つ力、コミュニケーション能力などを活かして企業の課題を解決していきたいというのが大きなビジョンですね。元々はアスリートの就職支援を行っていたのですが、そこはもちろん継続しつつ、いろんな企業の活力となる機会を増やしたいと思うので企業向けの支援にも取り組んでいきたいと考えています。
アスリートのポテンシャルを活かすプロジェクト
小出:
ありがとうございます。そういった双方向に向けたサービスを展開されている中で、今回せっかく平尾選手に来ていただいているので新しいプロジェクトについてもお伺いしたいのですが、概要としてはアスリートのキャリアをサポートするために、アスリートに新しい専門領域を学んでもらうようなイメージでしょうか。
山本:
そうですね、先ほど申し上げたようにアスリートには様々なポテンシャルがあります。その力を社会で活かす1つの手段としてIT、特にエンジニアリングやデザインという領域に挑戦してもらいたいと考えています。なぜかというと特に地方においてまだまだ足りない職種であり、かつこれからまだ伸びていく分野であることです。そこにアスリートが入っていけるとアスリートと企業の双方にとって良いのではないかと考え、本プロジェクトをスタートしました。
小出:
この仕組みは元々思い描いていたのでしょうか。
山本:
元々思い描いていた部分もありました。デュアルキャリアで働きたいというアスリートからの相談は結構あるのですが、アスリートである以上制約も大きいです。
小出:
それは練習だったりでしょうか。
山本:
はい、練習があるので昼からの出勤であったり午前中で退勤したかったりという制約になります。そうするとアスリートがいない半日分をどこかで補填しなければならないので企業にとって雇用が簡単ではなくなってきたりします。
その一方でエンジニアやデザイナーはパフォーマンスが出せれば働く時間は厳密には問われないと考えています。もちろん納期という意味での時間がありますが、作業時間や場所に縛られない、という点でいくとアスリートにも可能性があるのではないかと思っていてそこでパフォーマンスが出せるとデュアルキャリアも良いものになるのではないかと考えました。
小出:
ありがとうございます。そんなプロジェクトにおいて平尾さんは第一号になるわけですが、まずこれまでの経緯をお伺いしたいです。
昨年までプロサッカー選手でやっていたところから契約満了になって、次のシーズンはJリーグでプレーできないとわかった時の率直な感想はどうだったのでしょうか。
元Jリーガーがデザイナーへ、新たな挑戦
平尾:
自分はずっとサッカーを続けていくつもりでこれまでやってきていたので、Jリーグでサッカーできないとなった時は、すごく困りました。あまり社会人リーグについても知らなかったので、サッカーを続けるか、やめて社会人としてやっていくかという、サッカーをやめる選択肢を考えていたのも事実です。ただサッカーをやめて仕事をするというのが自分の中で全く考えられていなかったので、本当に「どうしようか」という状態でしたね。
フジ物産株式会社、岳南Fモスペリオ・平尾様
小出:
お2人は元々お知り合いでしょうか?
山本:
今のチームに加入する少し前からです。
小出:
そんな山本さんから最初にデザイナーに挑戦する話を聞いた時はどのような感覚だったのでしょうか。
平尾:
会社員としての経験がなく、パソコンも全然触れない中でデザイナーというお仕事のお話だったので「本当に自分に務まるのかな」という不安もありました。ただ、やると決めたらしっかりやりたいと自分の中で思っていました。
小出:
ここは山本さんにお伺いしたいのですが、これまでの活動から様々なアスリートのお知り合いがいる中で、平尾さんにお声がけをしたきっかけはあるのでしょうか。
山本:
どの仕事にも適性があると考えている中で平尾さんにはデザイナーの適性があるのではないかと考えました。
あとは、最初に御社の谷田さんと話をした時に「やる気があって、コミュニケーションがあって、パソコンが嫌いでなければ大丈夫です」という話をいただいて、僕もそこに同意しましたし、平尾さんが当てはまっているのも感じました。
小出:
今少し話が出ましたが、きっかけは谷田と話をする中で発生したものなのでしょうか。
山本:
そうですね。谷田さんと何度か話をしてお互いのやりたいことが一致したので、1つプロジェクト化してみましょうとなりました。
小出:
まさに仕組みをつくりながら、アスリートに声をかけながらといった段階ですね。
山本:
はい、あとは他に同じような座組みでうまくいっている会社があるのでマーケットも一定ありそうだなと感じています。1社しか知らないのですが、逆にいうとその1社がうまくいっているということはまだまだその余地があるのかなと。
小出:
そんなきっかけがありながら、平尾さんを第一号としてアスリートがデザイナーやエンジニアになるプロジェクトがスタートしたわけですが、現時点(撮影時点)でおよそ2ヶ月が経過しました。率直にいかがでしょうか。
平尾:
時間が限られている中で大変だなと感じる部分もあるのですが、やっていく中でこの分野で成長したいという思いが自分の中で強くなってて、毎日「もっと成長したい」と感じながら取り組めています。
小出:
アスリート生活との両立というのはいかがでしょうか。
平尾:
今のところは全然苦に思っていなくて、サッカーも仕事も真剣に取り組めています。
小出:
先ほど山本さんより適性がありそうとのお話がありましたが、ずっと机に向かっての作業に苦手意識などはなさそうでしょうか。
平尾:
苦手という感覚は全くないですね。
小出:
スムーズに作業に入っていけてると。
平尾:
そう思います。
小出:
会社員が初めてでデザイナーという職種も初めてで、同時にこの2つの研修がスタートしたと思うのですがここの頭の切り替えなどの難しさなどはあるのでしょうか。
平尾:
まだ実務の機会が多いわけではないので実感してはいないですが、これからどんどん増えてくると思うのでそうした時にどのような振る舞いができるかが大切になってくると考えています。
小出:
山本さんは普段近くから平尾さんの姿をみていていかがですか?
山本:
毎日成果で上がってくるものを見ているのですが、どんどんできることが増えてクォリティが上がっているので、とても成長を感じています。あとは実際お客さんからお仕事をいただいて納品するとなるとこれはまた一段レベルが上がる話なので、現在の練習段階から公式戦になったときにどうか、というのはわからない部分はあります。ただ現在の練習段階では良いパフォーマンスが出ているのではないでしょうか。
デザイナーとして一人前になる
小出:
素晴らしいですね。逆に残りの1ヶ月で求めているものはありますか?
山本:
そうですね、その公式戦になった時に慌てないための練習をしてほしいです。逆に小出さんにもお伺いしたいのですがデザイナーの仕事でいう練習と公式戦は何が違うのでしょうか。
小出:
一番違うのはまず納期があることです。あとは、どんなお仕事もそうですがお客様側が言語化されていない答えを持っていないことがあります。「なんか違う」などの言葉として出てきますが、お客様の頭の中にはイメージが存在していたりするのでそれを探しにいって、当ててあげる作業が必要になってきますね。どちらかというとデザインスキルよりもソリューションスキルというか、どうしたらモヤモヤが晴れるかを的確に提示できるかが大切になると思います。
山本:
なるほど、デザイナーさんもお客様の意思を汲み取って「つまりこういうことですかね」や「それであればこうしましょう」といったコミュニケーションスキルが求められるということですね。
小出:
はい。なので平尾さんにもお伝えしていることではあるのですが、たくさんのデザインに触れることによって引き出しを持っておかないとお客様からの要望に対する対応ができなくなってしまいます。ですから、残り1ヶ月はどれだけ、デザインをみて、手を動かしていけるだと思います。
平尾さんは残り1ヶ月、どのように過ごしていきたいですか?
平尾:
そうですね、デザイナーとしてまだまだなので多くの制作物をみて、様々なスキルを盗んでデザイナーとして成長しながらサッカーも頑張っていきたいと思います。
小出:
この研修が終わったら実際にクライアントの前に出ながらお仕事をしていきますが、そこに対する不安などはないでしょうか。
平尾:
いや、不安はあります。自分のデザインの営業などは行ったことがなく、どうなるかが全くわからないのでその部分も含めた不安は大きいですね。
小出:
最後にお伺いしたいのは、今後どのような未来を描いているのかという部分です。サッカー軸でもお仕事軸でも構わないので教えていただけますか。
平尾:
今考えているのはやはりサッカーと仕事の両面で活躍することです。サッカーも頑張りながらデザイナーとしても一流になり極めていけるようにしていきたいです。
小出:
おお。山本さん、これは頼もしいですね。
山本:
とても頼もしいです。
小出:
ちなみに極端な話、元いたカテゴリ(Jリーグ)に戻ってもデザインは続けていきたいですか?
平尾:
続けられるならそうですね、続けていきたいと思います。
小出:
素晴らしいですね。山本さん今の言葉を聞いていかがでしょうか。
山本:
はい、1つ武器になると良いと思います。今の時代Jリーグの選手も色々な活動をしている人が増えています。スポーツの軸ともう1つ収入の軸があるとそこが自分の成長や楽しみになったり、セカンドキャリアへの移行もスムーズになることもあります。デザイナーならひょっとしたらプレーヤーとしてチームクリエイティブ制作などの活動を支えることもできるかもしれません。
そのように武器を持って損することはないと思うので今後のキャリアとして活かしていってほしいと思います。
アスリートと企業の関わりの未来
小出:
サッカー選手としてのインフルエンス力ではなく純粋なスキルを活用してプレー以外の部分で活躍することはあまりないと思っています。影響力やサッカー選手としての力をつかって別のことに取り組んでいる方はいますが、専門スキルを身につけた上で、極端にいえば違う人間として動けるのはとても良いなと個人的には思います。
山本:
そうですね、スキルがあって損をすることはないですし、キャリアの可能性が広がるので面白い取り組みだと思います。特に今回のプロジェクトにおけるデザイン職は時間と場所を選ばないのでそれを活かして活動してもらえると可能性が広がるかなと感じています。
あとは僕らも事業としてやっているので平尾さんを筆頭に成功事例や収益化できる事例を増やしていけるとスポーツ選手のキャリアにおいてもお客様の課題解決という面においても良いのではないかと思います。
小出:
ありがとうございます。
今少しありましたが、Ath-upとして今後このプロジェクトの展望のようなものはあったりするのでしょうか。
山本:
そうですね、色々考えていることはあります。
例えば平尾さんの活動に対して企業からの需要があることがわかればもっとアスリートのデザイナーやエンジニアを増やしていくことを考える必要がありますし、その他にも色々な選択肢があると思っています。
また、会社としてもデザインを内製化したいと考えていて、早速平尾さんには弊社のパンフレットを制作してもらうのですがこういった活動による内製化で、これまで外注していたコストも落とせるでしょうし、自分たちがカスタマイズしたいタイミングで変更することができるようになります。そういった意味では会社にとっても良い活動だなと思っています。
小出:
広げ方はたくさんありますよね。
山本:
はい、広げ方がたくさんあるスキルだと思うのでそれをぜひ活かしていきたいですね。
小出:
これは平尾さんの活躍次第ですが、今後同じようなアスリートが増えたらいいなと思いますね。
山本:
そうですね、そのためにまず仕事に繋げることが大事だと思います。
小出:
僕としてはそのお仕事をこなすスキルを身につけてもらえるようサポートしていきたいと思います。
最後に何かお2人からあれば。
山本:
少し今回のテーマからズレますが、今AIが多く広まっているこの時代にデザイナーに求められることはどんなことでしょうか。
小出:
これはたまに僕の周りでも話題になるのですが、まずアウトプットの良し悪しを見極めるスキルは必要です。例えばエンジニアであればコードをAIに生成してもらった際に、そのコードが良いか悪いかを見極められないと実際のシステムでうまく動かなかったりバグが発生してしまいます。デザイナーの場合はそれほど大きな影響が出なかったりするのですが、「よく考えるとここのロジック通らないよね」であったり「この目的に対してはこのデザインにならないよね」ということがあります。そこのスキルはAI時代でも必要だなと感じます。ですから、平尾さんにも多くのデザインをみてもらう中で、どういった理由でこのデザインになっているのか、または自分がどういう理由でこのデザインにしたのかという意味づけをすることが重要だというのは伝えるようにしていますね。
山本:
あとはそうですね、AIのアウトプットを修正するスキルも必要でしょうか。
小出:
はい、目的とずれている部分をどのように調整することができるかだと思います。最初のラフ案は本当にすぐ作れるようになったのであとはどれだけ使いこなせるかですね。
山本:
そのAIを使いこなせるのもスキルですよね。
AIはアウトプットに対して保証や責任がないですもんね。
小出:
お仕事としてやるのであればそこはすごく大事ですね。
平尾さんは何かありますか?
平尾:
先ほど少しお話ししたのですが、営業に不安があります。初めての営業に行くときはあらかじめデザインの案を持っていくのか、何も持っていかずにその場で相手の要望を聞くところから始めるのかどちらでしょうか。
小出:
まず「何も考えない」は絶対にないです。手を動かすかどうかは別にして、打ち合わせをするという段階で課題を想像していきます。その上で余力があれば、課題に対して提案するデザインを持っていきますね。なので僕の場合はお仕事が決まる前に頭と手を動かしていることが多いです。事前準備をサボると最初はなかなかお仕事をとっていくのが難しいと思います。
平尾:
頑張ります。ありがとうございます。
小出:
楽しみにしています。
それでは本日のインタビューは以上になります。ありがとうございました!
一同:
ありがとうございました!
Engineerforceデザインチームでは、以下のサービスを提供しております。
(一例)デザイン周りでお困りの方は、お気軽にお問い合わせください!
- 新規サービスのデザインシステム作成
- 既存サービスのリデザイン
- 企業向けデザイン組織構築サポート
- デザイン知見の蓄積支援