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アルクテラス株式会社に入る前
「21世紀の最初の年」である2001年に富士通を退職して、慶應ビジネススクールに入学しました。インターネットの担い手は大企業ではなくベンチャーと感じるところもあり、また大企業の閉塞感のなかで仕事を続けるよりは新鮮なベンチャーの世界に入りこんでみたい、と思いました。とはいえ、大学の経済学部を出たのにベンチャーという言葉も知らなかった無知さにあきれ、もう一度勉強し直そうとビジネススクールに入学しました。学生としてベンチャーとの接点を模索しました。勉強から入ることが正しかったかは今もわかりませんが、数多くのベンチャー経営者に出会えた機会は学生ならではの特権でしたし、何より共同創業者の新井と出会えたインパクトは非常に大きかったと思います。そして、2年生の時、富士通時代の大先輩が設立されたバイオテックに特化したベンチャーキャピタル設立にインターンとして参画し、日本初の大学発ベンチャー投資ファンドの設立を果たし社員になりました。卒業後は執行役員として、バイオテックを中心に計8社に投資を実行しました。インターネットの分野ではありませんでしたが、念願のベンチャーの世界に投資する側として飛び込み、投資先のメンバーと日夜議論した経験は自分の礎になりました。
「そんなの関係ねぇ」が流行語になった2007年、投資側のベンチャーキャピタルを退職して、投資先のベンチャーに参画しました。経緯はいろいろありましたが、仕事として投資先を探す時間と同じくらい投資先を支援する時間が必要であり、そのバランスをとるのが難しくなり、限界を感じ始めたからです。そこで、投資先で自分の関与度が最も高かった1社に副社長として移籍しました。バイオテックはバーンレートが高い事業構造ですので、資金調達の成否が生命線になります。株式公開も必須でしたので、製薬企業との事業提携を実現させながら、その実現に向けて日夜奔走しました。
「リーマンショック」が全ての2008年、予定していた資金調達と株式公開もご破算になり、単独で生き残るのは難しいと判断し、オーストラリアの上場企業に事業譲渡する決断を下しました。海外企業でしたので、会社の従業員の移籍は難しく、リストラをせざるを得ませんでした。会議室で従業員を呼び出して経緯を説明するうちに、白石に部屋を呼ばれるとリストラされるという噂が広がり、経営者としては二度と味わいたくない辛い経験をしました。幸いにも譲渡した事業はオーストラリアで大活躍しており、それだけが今も救いです。
「キューブリックの宇宙の旅」の年で知られる2010年、同期の新井と共にアルクテラスを創業しました。事業売却後は、独立して複数のベンチャーの社外役員、アドバイザーとして仕事をしていました。ひとつのEXITで精神的にも疲労困憊感があり、自分自身に充電が必要であったことと、バイオテック以外の世界にも自分の経験を活かして積極的に関与していきたいという思いがありました。特にインターネットベンチャーの立ち上げに参画できたことが、今の仕事に大きなインサイトを与えてくれています。ちょうど、この頃は長男が誕生し、自分の人生を模索するような時期でもありました。教育というキーワードが自分のなかで浮上してきたのは、この独立して自分を模索していた熟成期間が必要だったのだと思います。
現在
「教育とは砂漠に水を撒く苛烈な仕事である」と看破された業界の経営者の方がいました。アルクテラスはその苛烈な教育という仕事をベンチャービジネスとして取り組んでいる会社です。 アルクテラスでは個別指導塾の志樹学院という現場を自ら持つことで教育ビジネスの根幹である皮膚感覚を磨いていますが、私が初代塾長として志樹学院で悪戦苦闘していた時には、その苛烈さを身を持って体験しました。仮に、塾の教育を子どもに必要な学力を伸ばすという一義的な部分だけで定義したとしても、意欲や習熟度、学習姿勢といった学習個性が全く異なる塾の生徒達の学力を誰であっても伸ばしていくことは簡単なことではありません。ましてや、学力以外の人間性といった広義の教育で考えれば暗澹たる思いにさせられました。保護者からは授業料という形で報酬を頂いているわけですから、尚更その責務はずしりと重いものがありました。 この経験は、同じような苛烈な教育現場の最前線を働く先生達を支援したいという想いにつながり、カイズという塾向けのクラウドサービスが結実しました。教育というテーマをベンチャービジネスとして向き合う挑戦は今も続いてます。
教育ベンチャーで働いている、と社外で話をするとほぼ全ての人が「子どもを育てる教育はいいね、社会正義だよね、日本の国力につながるね、それで雇用創出もできるなんて素晴らしいね」といくらか過分な応援をしてくれます。私自身もそれは否定しませんし、ある意味では誇らしく思います。ただし、それは砂漠に水をまき続ける覚悟があるか、と訊かれているのとほぼ同じだと思うからでもあります。 砂漠に水をまくことは無益、と思っては教育の仕事はすぐに行き詰ります。水をまくことが子ども達の何かを変えるかもしれない、と思い続ける信念が求められます。武者小路実篤の名言を真似れば、「砂漠に水をまけ、雨雲おのずと来たる」の精神です。 勉強ノートまとめアプリのClearは1冊の勉強ノートの力を信じることを原点としています。一人のユーザが公開してくれた1冊の勉強ノートによって、別のユーザが悩んでいた勉強について救われて、自分の新しい勉強法を気付かされたという、小さな、しかし大きな成果が実際に生まれています。 この積み重ねの成果が新しい教育の形につながることを信じて、現在の仕事に取り組んでいます。
アルクテラス株式会社について
アルクテラスは「子ども達の歩く道を照らしたい」という思いから名付けました。また、アークトゥルス(Arcturus)という、うしかい座で最も明るい恒星で全天21の1等星の1つである赤色巨星にもインスピレーションを得ています。ポリネシア人はアークトゥルスを頼りにポリネシア航法でハワイ諸島へ達したといわれており、この星は船乗りたちの道しるべとも言うべき存在だからです。 私たちは教育のベンチャーであり、教育を通じて子ども達の道しるべになる存在を目指すことを決して忘れてはならないと意識するようにしています。そのため、志樹学院の生徒や卒業生、オフ会などのClearのユーザとの直接的な交流を意図的に増やして、子ども達とリアルな接点を持ち続けることを大切にする会社であり続けたいと思います。