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「貧しい人の雇用をつくりたい」ビジネスレザーファクトリーの創業秘話

私たちの始まり

2014年、ビジネスレザーファクトリーは、「バングラデシュの雇用創出」のためにはじまった、ソーシャルビジネスです。現在、バングラデシュにある自社工場では、500名以上の雇用を生み出しています。

利益を追求するためのビジネスではなく、社会問題を解決するためのビジネス、それが「ソーシャルビジネス」です。アジア最貧国と言われるバングラデシュで、私たちが解決したい社会問題は、何なのか?

私たちの創業期を、改めて振り返ります。

バングラデシュの社会問題

 バングラデシュでは、日本の約4割という狭い国土に、約1億6千万人の人口を抱えており、その過剰な人口が、都市の高い失業率を招いています。

 家族を養わなければいけない貧しい人々も多く存在していますが、それらの人々は働いたことがない、あるいは教育を受けていないため、他の職場や工場では採用してもらえませんでした。特に、シングルマザーの女性や、障害のある人々は、さらに労働差別に合いやすいという、厳しい現状に苦しんでいました。

きっかけは、偶然の出会いから

 ビジネスレザーファクトリーは、ソーシャルビジネスのプラットフォーム「ボーダレス・ジャパン」から生まれた事業です。

 2011年のある日、ボーダレス・ジャパンのメンバーは、あるバングラデシュ人に出会いました。彼の名は、カマルさん。彼を通じて初めて知った、バングラデシュという国。

「アジア最貧国のひとつ、バングラデシュの貧困状況を知りたい」

 早速、バングラデシュへの視察が決まり、カマルさんに現地のアテンドをお願いしたところ、スケジュールが合わず、代わりにアテンドをしてくれることになったのが、カマルさんの弟ファルクさん(現在のバングラデシュ工場長)でした。

ビジネスで、貧困を解決したい

視察中、ファルク氏と多くの時間を過ごす中で、彼の将来について話をする機会がありました。

「ファルクさんは、将来何したいの?」
「バングラデシュの貧困を何とかしたい。貧困の原因は、政治だと思う。だけど、政治が変わるのを待っていられないから、自分はビジネスで貧困を解決したい!」

彼の志に、ボーダレスのメンバーは、強く共感します。

「じゃあ、ボーダレス・ジャパンで、一緒にソーシャルビジネスをやろう!」

このファルクさんとの偶然の出会いが、ボーダレス・ジャパンが、バングラデシュで事業を始める、きっかけとなりました。

じゃあ、どんなビジネスをするのか?

 一般的なビジネスであれば、まずは「どんなアイテム・サービスを、どう販売するか?」を考えます。つまり、ビジネスモデルを考えます。

 一方で、ソーシャルビジネスは、ビジネスモデルを考える前に「どんな社会の現状に対してどんな理想を描くのか」、まずはここを深く深く掘り下げます。私たちはこれを、ソーシャルコンセプトと呼んでいます。

「バングラデシュの貧しい人々に雇用をつくりたい」

 このソーシャルコンセプトを決めたこの時点では、アイテム・サービスはまったく考えていませんでした。ここから、さまざまなビジネスモデルの可能性を探ります。

 養蜂、マンゴー、クロアッサン、ココナッツオイル…いろんなアイディアがありました。ですがどのアイディアにも、多くの壁が立ちはだかります。

「どうしたら、本当に貧しい人々の役に立ち、ビジネスとして成立するのか?」

 仮説検証を繰り返し、考え抜いた結果、私たちが最終的に行き着いたのが、バングラデシュの現地資源である「牛革」でした。

なぜ牛革製品の生産工場か?

 イスラム教徒の多いバングラデシュでは、年に一度の宗教的行事「犠牲祭」があり、牛肉が大量に流通されます。一方で、牛革はそのままヨーロッパに輸出されるなど、有効活用されていませんでした。そこで私たちは、改めて「牛革」を使ったビジネスモデルを考えます。

 当初考えたのは、すでに存在する革の生産工場に日本から商品を発注し、その発注量を増やすことで、工場での雇用が増える、というストーリーでした。そこで、バングラデシュにあるいくつかの生産工場を視察します。そこで見たものは、生産工場で子どもたちが働いている姿、そしてなめし工場の環境汚染でした。

「この工場で、貧しい人の雇用が増えても、自分たちの理想の姿ではない。」

ならば、自分たちの理想の工場をつくろう!

 私たちは、自分たちで工場をつくることを決めました。その自社工場で、付加価値の高い本革製品に加工し、その商品を日本で販売しよう。そうと決まったら、もう突き進むだけ。

 当時は、革製品の知識も、ものづくりの経験も、正直何もありませんでした。そこで、ファルクさんとボーダレス・ジャパンのメンバーは、日本のものづくりを学ぶため、ビジョンに共感してくれた東京の老舗革製品メーカーにお願いし、修行をさせてもらうことになったのです。

 毎日、工場に通いつめました。毎日、86歳の親方から、厳しくも愛のある指導をうけました。全くの素人から、日本レベルの品質で、生産技術を習得したファルクさん。

 そして、バングラデシュに戻り、工場を探し始めることにします。決まったのが、ダッカのこの場所。

 いつか、この自社工場を、世界のロールモデルとなるような、理想の工場にしていこう!

貧しい人たちを、直接雇用して、彼らが安心安全に働ける環境をつくろう。安定的な収入を実現できるようにしよう!いつか、自社工場には、託児所をつくって、学校や病院もつくろう!

「生きる」も「働く」も実現できる、コミュニティーをつくろう!

こうやって、私たちの理想の社会を、描いていきました。

  現在、自社工場では、「働きたくても働けない」貧しい家庭環境の人々や女性を、積極的に正規雇用していきます。文字の読み書きができない、工場で働いた経験がない、そういうメンバーたちが働くことができるように、他の工場よりも、生産工程を細かく分け、すぐに彼らが力を発揮できる環境を整えています。

 そして、今では約500名の人々を私たちの工場で受け入れることができるようになったのです。

日本のビジネスパーソンのために

 日本では、バングラデシュの自社工場でつくった本革製品を、どのように日本のお客さまに届けるか、これまで試行錯誤を続けてきました。

 まず始めたのは、インターネット販売。数ヶ月後には、ありがたいことに、楽天市場で名刺入れや手帳カバーなどが、デイリーランキング1位を連続獲得しました。

 当時は、「A5手帳カバー」「A5ノートカバー」「名刺入れ」「小銭入れ」など、たった4商品しかなかった商品ラインナップも、商品開発メンバーとバングラデシュの工場メンバーが毎日試行錯誤しながら、商品ラインナップを少しずつ増やしいていきました。

より多くのビジネスパーソンに届けたい

 本革は、合皮と異なり、一つ一つの革の表情が違うもの。「お客さまに、ビジネスレザーファクトリーの本革製品を、直接手にとってほしい。もっとたくさんのビジネスパーソンに届けたい。」

 2014年春、九州で初の期間限定店(催事)をオープン。私たちにとっては、たった1週間のチャレンジでした。この頃、店舗運営のノウハウも、すべてが0の状態からスタートでした。ですが、バングラデシュでつくった商品の高品質とリーズナブルな価格は、多くのビジネスパーソンに受け入れていただきました。

 2015年6月には、福岡天神地下街で直営店第一号店をオープン。たくさんのお客さまに支えられ、そして多くのメンバーが仲間となり、現在では14店舗までオープンすることができました。取扱い商品も、小物、ステーショナリー、ビジネスバッグ、ビジネスシューズなど、100商品以上・13カラーを取り揃えています。すべて、バングラデシュの仲間たちが、丹精込めてつくっています。

 すべては、「バングラデシュの貧しい人々に雇用をつくりたい」。この想いを実現するために、始まった私たちです。創業から4年、一人でも多くの人々を自社工場に迎え入れるように、これからも大きく成長していきます。

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