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建築家が好きすぎて悔しい創業者の話    ~建築プラットフォームを運営するスタートアップの物語~

【 根っからの建築家さんファンである創業者が、敬服する建築家の方々の役に立つために、新しい技術で新しい仕組みをつくっているニッチな話です 】


はじめまして、株式会社青山芸術の代表をしている桂と申します。


当社は日本の建築家・設計士の方々に向けた新しいプラットフォームを提供しており、主に2つの事業を運営しています。


titel(タイテル)

家や別荘を建てたい方や、建物や店舗を設計したい企業(エンドユーザー)と、ぴったりの建築家をつなげるマッチング・プラットフォーム

アーキタッグ

忙しくて「人手がほしい設計事務所や企業設計部」と「案件に携われる設計事務所」が案件ごと・作業ごとにタッグを組む BtoB プラットフォーム


2020 年に創業した株式会社青山芸術ですが、創業に至った話や、第二事業「アーキタッグ」を開始した背景をお話しする場があまりなかったので、私たちがどういう想いで事業をしているかをこの記事でお話しできればと思います。

日本の建築家の技術や表現力は、世界一であると言われています。それでも日本ではまだ建築家に設計を頼もうとする人が少なかったり、伝統的な業界であるが故に一部の業務に非効率が残っていたりします。

私たちは、日本の設計士の皆さまを支えられる新しい仕組みをつくることで、「建築家さんのお仕事を増やす」「設計士さんのお仕事を楽にする」ことを目指している会社です。

尊敬してやまない憧れの建築家さんのお役に少しでも立てると嬉しくてニヤニヤしてしまう創業者のよもやま話、世の中が日本の建築家に追いつけていない現状に悔しさを隠せない建築家ファンの話に少しでも興味をもっていただける方は、よろしければしばしお付き合いください。



目次

◆誕生日プレゼントは必ずレゴだった、建築に触れて育った幼少期

◆コロナで創業を決意した「titel(タイテル)」の話

◆コロナ後の世界に建築家はもっと必要

◆(小話)建築家・建築士・設計士の違いとは?

◆設計事務所の経営は「波が激しい」過酷な環境。設計マッチング・プラットフォーム「アーキタッグ」

◆「建築家」なのに「建築」以外のことに時間を取られる

◆独立した後も、実績を増やすまでが大変

◆建築系の大企業も慢性的な「設計士不足」

◆「青山芸術」という古臭い社名に込められた想い

◆建築業界の課題を解決する新しい仕組みを一緒に作りませんか?



◆誕生日プレゼントは必ずレゴだった、建築に触れて育った幼少期



濃い色のかつらパーツはコモディティで、薄い茶色のレアかつらの所有権をめぐり紛争が勃発する兄弟でした。

一般的なサラリーマン家庭に生まれ育ちつつも、父の仕事が建築関係だったせいか、溢れ出る魅力に自然と惹かれていっただけなのか、幼い頃から私は建築が大好きな少年でした。

旅行先では目に留まった建物の絵を自由帳に描き、おもちゃ屋さんに行っては「今年の誕生日はどのレゴを買ってもらおうかな」と妄想し、今となっては恥ずかしいですが将来の夢は「建築家」と書くような子供でした。

4歳下の弟にレゴを壊されて喧嘩していた不毛な記憶、レゴが好きすぎて込み上げたあの頃の腹立ちもなぜかまだ鮮明に残っています。


ちなみにその弟は今、建築学部卒業を経て設計事務所に勤めています。身近な家族に設計士がいることでありがたい刺激をいつももらっていて、この事業を始めた理由の一因にも間違いなくなっています。


(弟が順調に設計士になる傍ら私が道を踏み外してしまったのは本気で玉入れをする不思議な球技に出会ってしまったせいなのですが、その話は割愛することにします。結末だけを言えば、バスケを通じて裏方気質・マネージャー気質が身につき、自分が前に出るよりも尊敬する人をサポートしたい人格に仕上がりました)


親しい友人にもたまたま建築の道に進む人が多く、数奇な運命に翻弄されながら気づけば私は建築に取り憑かれていました。いや、気づけば「建築家」さんのファンになっていました。

できあがった建物はもちろんですが、どんな人がどんな想いでこの建築を設計したのか、記事や雑誌でその背景を知り、妄想し敬服することが社畜をしていた若かりし私の束の間の癒しでした。


◆コロナで創業を決意した「titel(タイテル)」の話



コロナ後の住宅やオフィスでは建築家さんのニーズがより強まる

私は新卒で金融業界に入り、その後フリマアプリでお馴染みの株式会社メルカリに入りました。

メルカリでは創業者直下の会長室で経営イシューに携わったり、Product Manager に転身してプロダクト開発や新規事業創出に取り組んだりしていました。


そんな中、コロナになりました。


未曾有の緊急事態宣言で家に引きこもることになり、リモートワークという新しい現象に遭遇し、契約書に押印をもらうためにやむを得ず出社したときには疫病でもあったかのように(あったのか)様変わりをした無人のオフィスを目にしました。暮らしも、働き方も、今までとはまったく違う世の中になるのだろうなという未来を肌で感じました。


◆コロナ後の世界に建築家はもっと必要

ふと、私は建築のことを想いました。

昔から建築が好きで、いつか建築に携わる仕事ができればと思っていた私ですが、今こそもっと多くの方々に建築家さんとの家づくりを知ってほしいという想いが込み上げました。コロナ後の世界こそ、建築家さんが今以上に必要なのです。


リモートワークが増え、出勤する日数が減ると、家に求めるものが変わります。

今までは週 5 日出勤を前提とした「アクセス」が家選びで重視され、主要駅から徒歩 10 分以内のマンションを選んだり、手狭でも駅近の区画にハウスメーカーの規格住宅をおさめたりするのが王道な住環境でした。



コロナ後の住環境はアクセスよりも暮らしやすさがより求められる

もちろんそれが悪いわけではなく、今でもそれが適している家庭も多いと思います。しかし、そうではない家庭が増えるだろうという確信とともに、家庭ごとの生活に合う住環境が求められたり、会社ごとにカルチャーや働き方に合うオフィスが求められたりしていくのだろうと考えました。

そうすると、建築家さんがより必要になっていくのです。建築家さんはクライアントごと・物件ごとに希望や与件を整理し、毎回ゼロからひとつだけの空間を設計する専門家です。

この家庭はこんな住まいが暮らしやすいだろう、この会社にはこんな働き方が適しているだろう、建築家さんは毎回あらゆる希望や制約を紐解き魔法のように素敵な空間を創りあげる特殊能力を持った方々なのです。


そこで立ち上げた最初の事業が「titel(タイテル)」です。

titel はドイツ語で title(題名)の意味。一人でも多くの方に、題名がつくような世界にたったひとつの住宅を建築家と建ててほしいという想いと、「建てる」という語呂を合わせたサービス名です。

建築家と自由な家づくり|titel(タイテル)


タイテルは、建築家プラットフォームとしてマーケティングや集客を推進することにより、建築家との家づくりの認知向上だけでなく、具体的なニーズがあるお施主さまにリーチし理想の建築家との出会いを実現してもらうことを目指したサービスです。


建築家選びは簡単ではありません。デザイン性だけでなく、予算、人柄、実績、コミュニケーション方法など、さまざまな角度から建築家さんとの相性を吟味する必要があります。

タイテルでは、一級建築士の資格を持つ建築アドバイザーがお客さまごとに個別のヒアリングをし、ぴったりの設計事務所をオーダーメイドでおつなぎしています。


今では多くの方々に利用いただいており、titel biz のリリースで個人から企業にもお施主さまの広がりを見せたりもしています。

初期からタイテルに参画してくださった建築家の方々、業界新参者の私の話を聞いてくださり心優しくご協力いただいた設計事務所の皆さまには、今でも心からの感謝が尽きません。そのような方々のお役に立てる恩返しをしなければならないというのは、今でも事業に全力投球する強い動因となっています。


titel の開発秘話や初期のプロダクトについてはこちらの note もご覧ください

https://note.com/aoyama_art/n/n01c3e28763c4


◆(小話)建築家・建築士・設計士の違いとは?

あえて「建築家」「建築士」「設計士」という言葉を使い分けていますが、これらの言葉の違いをご存知でしょうか?

明確な定義や正解はないのですが、それぞれこのような意味合いで使われることが多いです。


「設計士」

最も広義な言葉。建築設計に従事する方全体を指すことが多い。資格がなくても、設計士にはなれる(設計業務に携わることができる。有資格者は各設計事務所内にいればよい)。


「建築士」

設計士の中の一部で、有資格者(一級建築士、二級建築士など)のことを指しているケースが多い。


「建築家」

個人の名前やブランドを売り、設計事務所を主宰しているクリエイターや芸術家のようなイメージの設計士を指すことが多い。


▼「建築家」「建築士」「設計士」の違い



タイテルは主に「建築家」の方々をサポートするプラットフォームである一方、後述のアーキタッグは幅広く「設計士」の方々をサポートするプラットフォームです。建築設計業界に携わる幅広い設計士の方々のお役に立ちたい「アーキタッグ」がどのように始まったのか、次にお話ししたいと思います。


◆設計事務所の経営は「波が激しい」過酷な環境。設計マッチング・プラットフォーム「アーキタッグ」

タイテルの運営を始め、多くの設計事務所さんと深くお仕事をご一緒する中で、多くの設計事務所さんが深刻な悩みに直面していることを知りました。


それは「波が激しい」「正社員の採用が難しい」または「慢性的に人手が足りない」という問題を抱えながら経営しなければならないということです。

金融やインターネットの業界から来た私も、この業界で経営をすることの難しさを痛烈に実感するとともに、そのような環境下で設計事務所の経営を続けるプロの皆さまに心から敬意を覚えることとなりました。


そのようなお悩みを解決すべく立ち上げた「アーキタッグ」は、設計事務所の皆さまが案件ごと・作業ごとにタッグを組む新しい建築プラットフォームです。

今では 5,000 名以上の設計士が登録しており、「人手がほしい設計事務所や企業設計部」と「案件に携われる設計事務所」がつながる新しい仕組みを提供しています。



設計事務所がタッグを組む新しいマッチング・プラットフォーム|アーキタッグ

駆け出しの事務所は、収益がいつ安定するかわからない中で 1 人目・2 人目のスタッフを採用するのが難しい。

スタッフを多く抱えている事務所は、稼働状況やプロジェクトの数、事務所の収益を管理するのが大変。スタッフが忙しすぎると新しい仕事を受けられない。

大小の組織で、さまざまな難しさがあるのが建築設計事務所の経営の難しさなのかと思います。そのような課題を解決したい想いでアーキタッグは始まりました。


◆「建築家」なのに「建築」以外のことに時間を取られる

人事、採用、財務、営業。建築家の本業は建築設計であるはずなのに、「設計事務所」を構えた途端に、建築家は建築以外のことに時間を使わなければいけなくなります。


もちろんそれが好きな方にとっては良いことかと思いますが、設計に専念したい方にとっては大きな負担になってしまっていることも知りました。

アーキタッグはそんな「建築家」さんが建築により集中していただける環境を作りたいと考えています。


◆独立した後も、実績を増やすまでが大変

また、駆け出しの建築家の方々にとっては、最初の数件の実績を積むことがいかに大切で大変であるかも知りました。どれだけ実力や才能があっても、実績として公表できる案件が少ないだけで機会を逃してしまうことも少なくありません。


アーキタッグでは、設計をサポートするパートナーの成果をなるべく「公表」できるようにする仕組みにもこだわることで、若手建築家の方々がより早く、多くの実績を積んでいただけるプラットフォームとして建築業界に貢献させていただきたいとも思っています。



私たちは、第三者の立場から最善の仕組みを模索しアーキタッグをつくりました。事務所の縛りに左右されず、案件やタスクごとに柔軟なチーム組成ができれば、多くの建築家の方々の負担を減らせるのではないか。そう考えアーキタッグを立ち上げました。


案件を受けやすくなる、実績が積みやすくなる。独立しやすくなる、フリーでも働ける。事務所の収益を安定させられる、設計に集中できるようになる。慢性的な設計士不足を解消できる。

アーキタッグは、そのような世界を実現できるよう、建築家の皆さまの負担を少しでも減らし設計事務所の新しい働き方をつくれるよう、便利で安心なサービスを提供しつづけるために邁進します。


◆建築系の大企業も慢性的な「設計士不足」

過酷な経営環境は、何も中小の設計事務所さんに限ったことではありません。

ゼネコン、組織設計事務所、デベロッパー、ハウスメーカー、建設会社など、社内に「設計部」がある企業の多くは、深刻な「設計士不足」に悩まされています

理由はいくつかあげられますが、設計士の高齢化に加え、業界問わず独立しやすい環境が整ったことで、建築設計でも働き盛りの 30・40 代の設計士の独立が増えたことが大きな要因として言われています。

挑戦が増えるのはもちろん良いことですが、設計の受注が増え続ける大企業にとっては、新しい案件を断らざるを得ないくらい設計士不足に悩まされている状況が生まれていることも事実なのです。

そんな大企業の設計部の方々にも、アーキタッグを活用していただいています。



慢性的に人手が足りていない企業が、アーキタッグで新しい協力事務所を見つけ、中長期的な設計キャパシティを確保する流れが増えています。

数万平米の商業ビルやマンパワーが求められる複雑な設計の受注を、スタッフ数名で運営する中小の設計事務所が受注することは多くないかもしれませんが、

全国の設計事務所の中にも、組織設計やゼネコンの出身で大型建築の設計経験がある優秀な設計士の方々がたくさんいます。

企業にも設計事務所にもお互いメリットがある新しいタッグの形が生まれており、アーキタッグとしても一人でも多くの設計業界の方のお役に立てるようスタッフ一同毎日運営に邁進しています。

すべては、日本の建築家の一ファンである私たちが持つ「一人でも多くの方々に、建築家の方々と関わる美しさを体験してほしい」という想いにつながります。日本の建築家の皆さまのお役に立ち、建築業界全体の発展に微力でも貢献したい、深い意気込みでアーキタッグを運営しています。


◆「青山芸術」という古臭い社名に込められた想い

「なぜこんな社名にしたのか?」

「本当にスタートアップなのか?」

「名前から察するに古美術商なのか?」


そんな質問を多くいただきます。創業3年で、垂直立ち上げを目指すスタートアップ企業としては確かに奇妙な社名なのかもしれません。

青山芸術という社名にも、建築家の方々への敬服の念が込められています。

ここまで話してきたように、私個人そして青山芸術の根底にあるのは、建築家さんへのファン心と、尊敬する方々の役に立ちたいという黒子魂です。

青山芸術は「業界を破壊するスタートアップ」ではなく「建築家の方々を縁の下から支えたい一企業」なのです。あたかも 20~30 年前から存在していたような古びた社名は、伝統的な業界で活躍し続ける設計士の皆さまを精一杯支えたいという私たちの決意表明です。


◆建築業界の課題を解決する新しい仕組みを一緒に作りませんか?




秘めた想いを冗長かつ退屈に書き殴ってしまいましたが、そんな想いで私たちは建築家・設計士の方々のための新しい仕組みづくりに邁進しており、一緒に事業を成長させていく仲間を募集しています。


「建築や芸術が好きな方」

「設計を続けていたけど、違う角度から建築業界に携わってみたい方」

「大きい業界の根深い課題を解決できる事業に携わってみたい方」

「エンプラ営業、事業開発、カスタマーサクセスなどご自身の専門知識を新しいサービスに吹き込んでみたい方」

「成長期のスタートアップで裁量大きく経験を積んでみたい方」

…がいたら、ぜひ一緒に建築プラットフォームをつくりませんか?

建築は私たちの暮らしに不可欠なもので、設計士の方々は世界をデザインする崇高な顧客で、この会社で働いて「建築家さんの役に立てている」というやりがいを実感できることは私が保証いたします。


興味を持ってくださる方は、建築業界のためにぜひ力を貸してください。

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