「AI×建設」と聞いても、実際に何を作っている会社なのかは伝わりにくいと思います。この記事では、AITechがどんな課題に向き合い、何を作り、どうやって進めているのかを、事業単位で一通り説明します。募集ページを読む前の土台として、または面談前の予習として使ってください。
図面を読めるAIを作っている会社です
建築図面をAIで解析して、これまで人が目で追い、手で拾っていた作業を自動化する。これがAITechの軸です。
東京大学・松尾豊研究室発のAIスタートアップとして2024年3月に創業しました。オフィスは渋谷区神宮前で、メンバーは業務委託を含めて40名です。
ミッションは「AI for People ― 人が創造的な仕事に集中できる環境へ」。面倒な作業はAIに任せ、人は判断と創造に時間を使う。同じ人数で、より多く・より良く・より安全につくれる体制をつくる、という考え方です。
なぜ建設業界なのか
創業のきっかけは、代表の河津の原体験にあります。祖父母が建設関連の企業を創業しており、小さい頃から現場に出入りしていました。その後、慶應義塾大学医学部で生活習慣病のリスク予測など機械学習を使った予防医療の研究に取り組み、東京大学グローバル消費インテリジェンス寄付講座を修了。技術と原体験が交わる場所として建設業界を選び、AITechを立ち上げています。
建設業界には、人を増やすだけでは解けない構造的な課題が三つあります。
属人化
見積もり、図面、設計判断の多くが特定のベテラン社員に依存しています。その人が退職したり繁忙になったりすれば、業務ラインが止まります。
工数過多
議事録、写真整理、日報といった、付加価値を生まない作業が現場の時間を消費しています。本来注力すべき仕事に時間を割けません。
ナレッジ分散
図面、見積、補助金情報が各所に散らばっています。必要な資料を「探す」だけで、毎月まとまった時間が失われます。
ここに、時間外労働の上限規制、BIM/CIMの義務化、熟練者の引退が重なっています。制度の側から業務のやり方を変えることが求められているのに、現場の情報は今も紙とPDFの中にあります。この落差が、私たちが取り組んでいる領域です。
つくっているもの
事業は四つあります。
1. 建設向けSaaS:BLUESEARCH(図面解析)
建築図面をAIで読み取る、メインのプロダクトです。
平面図や立面図から、床面積・壁面積・外壁面積を自動で算出します。建具記号や設備記号も認識します。印刷された文字だけでなく、手書きの文字も読みます。読み取った部材情報はCSVやExcelで出力できるので、そのまま既存の積算や集計の流れに乗せられます。
もう一つの柱が図面照合です。新旧の図面を比べて、変更された箇所を自動で検出します。人が2枚を並べて目で追っていた確認作業が対象です。
2. 建設向けSaaS:eneflash(省エネ計算)
住宅の省エネルギー性能計算を自動化するシステムです。
平面図を入力すると、部屋を検出し、面積を計算し、U値(熱貫流率)とη値(日射熱取得率)を算出します。木造には対応済みで、RC造は今後の対応予定です。立面図から屋根を含めて3Dに復元する機能も開発中です。
計算そのものを引き受ける省エネ計算BPOも提供しています。丸ごとお任せいただき、AIを使うことで他社より安く早く納品する、という組み立てです。
3. AI導入支援・開発事業(受託)
建設会社やハウスメーカー向けに、課題の整理からソリューション提案、実装までを一貫して担います。
たとえば法規チェック。建築基準法・消防法・社内基準をデータベース化し、PDF図面から部屋名・寸法・建具情報をAIで抽出して、ルールエンジンと突き合わせて不適合箇所を自動判定します。ほかにも拾い出しと概算積算、過去図面の横断検索、図面のデータ化などを手がけています。
進め方はPoCから始めて段階的に広げる形で、開発期間はおおむね1〜4か月です。
4. AIコンサルティング事業(AI顧問サービス)
営業・設計・積算・申請・施工管理の5領域に、月額でAIを導入していく顧問サービスです。
特徴は「研修して終わりにしない」ことです。業務を分解し、量・属人性・ミス・売上影響・データの有無という5つの基準で優先順位を決め、データを整え、実装し、定例ミーティングで効果を測って改善を回す。この5ステップで進めます。目指すゴールは、外部に頼らず自走できるAI人材がお客さまの社内に育つことです。
導入実績は建設業界が中心ですが、教育・医療・金融・製造にも広がっています。
技術の中身
土台はコンピュータビジョンと大規模言語モデルです。その上に、図面解析AI、RAGエンジン、AIエージェントという三つのコア技術を持っています。
図面解析AIが図面から情報を取り出し、RAGが社内に散らばった資料を検索できる状態にし、エージェントが一連の作業を実行する。この組み合わせで、業種ごとの業務フローに当てはめていきます。
実装は、フロントエンドがNext.jsとTypeScript、画像解析やAI処理がPython、デプロイはVercelです。AIのSDKはClaude・OpenAI・Geminiを用途で使い分けています。
どうやって進めているか
いきなり大きく作りません。効果が見える業務から小さく始めて、動くものを早く見せ、直していきます。
お客さまから「うちの図面でもできるのか」と聞かれたときも、言葉で説明するより、図面を数枚お預かりして実際に試したほうが早い。できないところも一緒にお見せします。そのほうが話が前に進むからです。
社内では、大型の商談ごとにSlackの専用チャンネルが立ちます。NDAの締結から契約条件の調整まで、担当者が主導します。相手が大手ゼネコンでも進め方は同じです。役職や年次ではなく、必要な人が動きます。
どんな人がいるか
経営陣は2名です。代表の河津と、取締役の渡邉。渡邉も慶應義塾大学医学部で、産婦人科ロボティクス研究室で手術ロボットのAI自動制御に取り組み、教育系AIスタートアップを経て参画しています。
技術側には、研究のバックグラウンドを持つメンバーが揃っています。たとえば國吉は電気通信大学大学院の博士課程で、交通事故データの統計解析やスーパーコンピュータ「富岳」を使った分散シミュレーションに従事し、国際会議に2本採択、Frontiers掲載論文、Kaggle Expert。ソニーで画像生成モデルを開発していたメンバーもいます。
機能としては、図面解析のバックエンドとML、省エネ計算のフロントエンド、熱貫流率や日射取得率のデータベース構築、そして営業とマーケティングが動いています。
職種の垣根は薄いです。エンジニアが商談に出ることもあり、営業がツールを自分で触って検証することもあります。
働き方
出社は週3日以上を基本にしています。大手ゼネコンやハウスメーカーとの商談が仕事の中心にあり、対面で会うことが案件を前に進める一番の近道だからです。オフィスは渋谷区神宮前にあります。
社内の共通言語は「熟考して遅れるより、まず動いて検証する」。テスト環境を入れるときの合図は「安心して自由に触ってください」です。失敗を責めずに記録に残すので、途中の段階を見せることにためらいがありません。
展示会のシフト調整のように予定が動くことも多いのですが、そこはお互いに都合をつけ合っています。裁量とフォローはセットです。
これから
RC造の省エネ計算、立面図からの3D復元、そして対象業界の広がり。ゼネコン、ハウスメーカー、工務店、建材、不動産、サブコン、太陽光、ビル管理と、図面と書類が業務の中心にある領域はまだ広く残っています。
40名の会社なので、仕組みは完成していません。むしろ、作るところから関われる時期です。
募集しています
現在、次のポジションを募集しています。気軽な情報交換からでも歓迎です。
- ハウスメーカー向け営業(社長直下ポジション/正社員)
- ゼネコン向け法人営業コアメンバー(正社員)
- UI/UXデザイナー(副業)
- 建設DXの最前線で事業を創るコアメンバーインターン
メンバー個人の話は別の記事にあります。営業の立ち上げについては宗雪のインタビュー、組織と裁量については代表の河津のインタビューをあわせて読んでみてください。