【話者プロフィール】 冨平準喜(Toshiki Tomihira) / 代表取締役 1997年生まれ。国立東京工業高等専門学校(東京高専)卒業後、筑波大学に編入学し、同大学院に進学。大学院ではAIの研究室に在籍し、深層学習の研究に従事。学生時代に全国高専プログラミングコンテスト最優秀賞、ものづくり大賞内閣総理大臣賞を受賞。大学院在籍中の2021年に株式会社AIdeaLabを創業。日本初の画像生成アプリAIピカソやAIひろゆき、AI議事録取れる君など、複数の独自AIプロダクトを開発・提供。内閣府AI推進委員会のAI時代の知的財産権検討会への登壇や、経済産業省とNEDOが実施するGENIAC第二期への採択実績を持つ。現在は経営に加え、新規事業やプロダクト開発の現場にも深く入り込んでいる。
1. 10代からのものづくりの熱量と、起業の原点となった100万人規模のサービス開発
―― 小学校3年生からプログラミングを始め、高専時代には内閣総理大臣賞を受賞されるなど、昔から「自分で新しいものを作る楽しさ」を感じてこられたと思います。これまでのキャリアについて教えてください。
東京高専を卒業した後、筑波大学に編入し、そのまま筑波大学大学院へ進学しました。大学・大学院では一貫してAIの研究に取り組み、途中ではシンガポール国立大学のAI研究室への短期留学も経験しました。大学院に在籍していた2021年に、研究室の仲間とAIdeaLabを創業しています。
ただ、自分の原点は研究者というより、ものづくりが好きな一人のエンジニアです。小学生の頃、好きだったゲームを自分でも作ってみたいと思い、プログラミングを始めました。それ以来、アプリやゲーム、Webサービスなど、思いついたものを実際に形にすることを続けてきました。学生時代だけでも10〜20個ほどのプロダクトを作ったと思います。
高専では全国高専プログラミングコンテストで優勝した研究で、ものづくり大賞内閣総理大臣賞をいただきました。大学ではAIの研究を深める一方で、研究だけに閉じるのではなく、技術を多くの人に使ってもらえるプロダクトにしたいという思いが強くなっていきました。研究と個人開発を行き来しながら歩んできたことが、今のAIdeaLabにもつながっています。
内閣総理大臣賞を受賞した際の写真 (画像左から3番目)
―― 起業する前から仲間と10個以上のアプリを開発されていたそうですが、筑波大学・大学院という環境のどのような部分に影響を受けて、最終的に「AIdeaLab」という会社を立ち上げるに至ったのでしょうか?
大きなきっかけになったのは、大学生のときに開発したCommentScreenです。プレゼンテーション中に、視聴者が送ったコメントやリアクションを画面上に表示できるサービスで、もともとは自分が登壇するイベントをもっと盛り上げたいと思って作りました。
リリース当初は月に100人ほどしか使われておらず、決して順調なスタートではありませんでした。ただ、コロナ禍でオンライン授業やオンラインイベントが一気に広がると、緊急事態宣言後の約1か月で利用者が20万人まで増え、その後100万人を超える規模に成長しました。自分たちが作ったものが、社会の変化と結びつき、多くの人に届いていく手応えを初めて実感した出来事でした。
筑波大学・大学院には、研究に強い人だけでなく、自分で手を動かして何かを作ることが好きな人が多くいました。研究室の仲間と、思いついたアイデアを話し、すぐに試作品を作り、ユーザーの反応を見る。そのサイクルを自然に回せる環境だったことは、起業に大きく影響しています。
CommentScreenの成長をきっかけに、個人開発の延長ではなく、仲間と会社として挑戦すれば、もっと大きなものを作れると感じました。もともと私たちはAIを研究していたので、AIを使って面白いプロダクトを次々と生み出す会社を作ろうと考え、AIdeaLabを創業しました。
大学院卒業時の研究室にて (画像左)
2. 「AI×Idea」が導く圧倒的な開発スピードと、ゼロイチを可能にする強みの根源
―― 社名に込められた「AI×Idea(AIとアイデアを掛け合わせる)」というコンセプトには、創業当時どのような想いや社会への問題意識が込められていたのか教えてください。
AIdeaLabは、筑波大学大学院でAIを研究していた3人のエンジニアから始まりました。共通していたのは、AIの研究そのものが好きだったことと、自分たちのアイデアをプロダクトとして形にすることが純粋に楽しかったことです。
社名には、「AI」と「Idea」を掛け合わせることで、これまでになかった価値や体験を生み出したいという思いを込めています。単に既存業務を効率化するだけでなく、AIだからこそ実現できる新しいサービスを作り、社会に驚きやワクワクを届けたい。それが創業当時から変わらない考えです。
そのため、私たちは日本初・世界初となる技術やプロダクトにも積極的に挑戦してきました。日本で最初の画像生成AIアプリを開発や、有名人として日本初のAIアバターであるAIひろゆきを世に出し、動画生成AIの研究開発にも早い段階から取り組み、国内初の動画生成AIモデルを公開しました。もちろん、初めての挑戦には足踏みや、失敗もあります。それでも、まだ誰も作っていないものを考え、実際に動く形にして、世の中へ届ける。その過程こそがAIdeaLabらしさだと思っています。
将来的には、次はAIdeaLabが何を出すのだろうと、多くの人が楽しみに待ってくれる会社にしたいと考えています。
―― 現在、代表取締役として経営の舵取りをしながら、具体的にどのような業務やプロダクト開発に深く関わっていらっしゃるのか教えてください。
代表取締役として会社全体の経営に向き合いながら、現在も新規プロダクトや新規事業の立ち上げには深く関わっています。経営だけを行うのではなく、アイデアを考える段階から、仕様の議論、プロトタイプの確認、顧客への提案、販売方法の検討まで、メンバーと一緒に現場に入ることが多いです。
AIdeaLabでは、技術的に面白いものを作るだけでなく、それをユーザーに使ってもらい、事業として成長させるところまでを大切にしています。そのため私自身も、エンジニアやPMと一緒にプロダクトを考え、営業メンバーと一緒にお客様へ提案し、ユーザーから得たフィードバックを再び開発へ戻すところまで関わります。
特に新しい事業では、最初から役割がきれいに分かれているわけではありません。必要であれば代表も営業をしますし、エンジニアも顧客の声を直接聞きます。職種を越えて一緒に試行錯誤しながら、ゼロから事業を形にし、グロースさせていくことが、私自身にとっても一番面白い仕事です。
―― 多くのAI企業が受託開発をメインとする中で、AIdeaLabが独創的なゼロイチの自社プロダクトを、圧倒的なスピードで次々とリリースできる強みの根源はどこにあるのでしょうか?
一番の強みは、AIやプロダクトづくりそのものが好きなメンバーが集まっていることだと思います。社内には、仕事以外でも個人開発をしている人や、自分でサービスを立ち上げた経験がある人、最新のAIツールを休日にも試している人が多くいます。誰かから指示されなくても、「これを作ったら面白いのではないか」と考え、自分で手を動かす文化があります。
アイデアは経営陣だけが出すものではありません。エンジニアやPM、営業など、職種に関係なく社内から提案が生まれます。定期的にアイデアソンやハッカソンも開催し、普段の業務とは異なるチームで、短期間にプロトタイプを作る機会を設けています。良いものができれば、そのまま新しいプロダクトや事業につながることもあります。
思いついたらまず作ってみる、ユーザーに触ってもらい、反応を見て改善するという速度感と、自分のアイデアを実際のプロダクトにできる裁量が、AIdeaLabのゼロイチを支えていると思います。
オフィス近くにて社員の皆さんと(画像中央)
3. 最先端のキャッチアップと、大手企業と先端AIを共創する「クライアントワーク」の魅力
―― 最先端の技術が変わる目まぐるしいAI業界において、冨平代表をはじめとするメンバーの皆様は、日頃どのように最先端の論文や技術をキャッチアップし、それを即座にプロダクトへと昇華させているのですか?
AIの分野は変化が非常に速いため、日常的なキャッチアップが欠かせません。メンバーそれぞれが、最新の論文、モデル、プロダクト、開発ツールなどを追い、面白い情報があればSlackやDiscordで共有しています。AIの情報収集を仕事として義務的に行うというより、純粋に好きで追いかけているメンバーの方が多いのが特徴です。
定期的にLT会も開催しており、最新のAIモデルを試した結果や、実際の開発で使えた手法、うまくいかなかった事例まで共有しています。研究者だけが論文を読み、エンジニアだけが実装するという分業ではなく、職種を越えて知識を共有し合うことで、研究とプロダクトの距離を縮めています。
また、情報を知るだけで終わらせず、できるだけ早く実際に触ってみることを大切にしています。新しい技術が出たら小さな検証環境を作り、既存プロダクトに組み込めるか、ユーザーにどんな価値を提供できるかを試します。論文やニュースで得た知識を、その日のうちにプロトタイプへ反映することもあります。
最先端の技術を追うことと、ユーザーにとって意味のある形に落とし込むこと。この両方を行えることが、AIdeaLabで技術に向き合う面白さだと思います。
―― 現在は自社プロダクトだけでなく、多くの大手企業のクライアントを相手にAIソリューション事業も推進されています。スタートアップとしてのスピード感を持ちながら、大手エンタープライズ企業と先端AIを共創していくやりがいについて教えてください。
AIdeaLabは大学発ベンチャーとして、アプリケーション開発だけでなく、画像生成AIや動画生成AIなどの基盤モデルの研究開発にも取り組んできました。そうした技術力や、これまでに自社プロダクトをゼロから立ち上げてきた実績を評価いただき、「AIの技術を使って新しいことを実現するならAIdeaLabに相談したい」と、大手企業から声をかけていただく機会が増えています。
AIソリューション事業には、大きく分けて既存業務を改革するDX案件と、クライアントと新しいサービスを作る新規事業案件があります。DX案件では、現場の業務や課題を丁寧に理解し、生成AIや音声AIなどの最新技術を使って、実際に使える仕組みへと落とし込みます。技術的に新しいだけでなく、導入した結果として業務負担が減り、現場の方に喜んでいただけたときには、大きなやりがいを感じます。
新規事業案件では、発注されたものをそのまま作るというより、クライアントと一つのチームになってサービスを考えます。事業仮説やユーザー体験についてこちらから提案し、プロトタイプを作り、検証を重ねながら形にしていきます。そのため、受託開発というよりも、自社プロダクトを立ち上げるときに近い感覚があります。
大手企業が持つ顧客基盤や業界知識と、AIdeaLabの技術力やスタートアップとしてのスピードを掛け合わせることで、自社だけでは届かない規模の社会実装に挑戦できます。PMにとっては、経営層や事業責任者と議論しながら、技術と事業の両方を理解してプロジェクトを前に進める経験ができます。エンジニアにとっても、最先端技術を実際の業務やサービスで使われるところまで作り切れる、非常に面白い環境だと思います。
4. 職種や年齢に関係なくフラットに意見を言える「居心地の良さ」
―― 高専出身の優秀なエンジニアをはじめ、第一線で活躍するプロフェッショナルたちがAIdeaLabに集まっていると感じます。冨平代表から見て、AIdeaLabで働くメンバーの魅力や、この組織ならではの「居心地の良さ」「カルチャー」はどんなところにありますか?
エンジニアに限らず、AIや新しい技術が好きなメンバーが集まっています。毎日のスタンドアップでも、業務の話だけでなく、「休日に新しいAIツールを試してみた」「個人でこんなものを作ってみた」といった会話が自然に出てきます。技術の話を楽しめる人にとっては、刺激の多い環境だと思います。
一方で、最先端の技術に取り組んでいるからといって、堅苦しい研究組織ではありません。さまざまなバックグラウンドや専門性を持つプロフェッショナルが集まりつつも、メンバー同士の距離は近く、和気あいあいとしています。分からないことを聞きやすく、役職や年齢に関係なく意見を言える、フラットな雰囲気があります。
AIdeaLabには、高い専門性を持ちながらも、相手を尊重し、チームで良いものを作ろうとする人が多いです。
ハッカソン@八丈島にて(画像中央)
5. 生成AIが変えるものづくりの未来と、AIdeaLabが目指すビジョン
―― 5年後、10年後を見据えて、AIdeaLabをどのような存在に成長させたいとお考えでしょうか。冨平代表の理想像やビジョンを教えてください。
AIdeaLabは2021年に創業し、これまでさまざまなAIプロダクトや研究開発に挑戦してきました。今後は、組織をさらに大きくし、個々のプロダクトを事業として成長させる力も一段と強くしていきたいと考えています。
私が目指しているのは、「面白いAIプロダクトを作る会社といえばAIdeaLabだよね」と、国内外の多くの人から思ってもらえる存在です。AppleやOpenAIが新しい技術や製品を発表するとき、多くの人が「次は何が出るのだろう」と楽しみに待っています。同じように、「AIdeaLabが次にどんなAIやサービスを出すのか楽しみだ」と期待してもらえる会社にしたいです。
そのためには、研究成果を発表するだけでも、アイデアを試作品にするだけでも不十分です。新しい技術をプロダクトにし、ユーザーへ届け、継続的に使われる事業へ育てるところまでやり切る必要があります。これからは自社プロダクトとAIソリューションの両方を伸ばしながら、そこで得た技術や知見を次の挑戦へ循環させていきます。
5年後、10年後には、日本発のAI企業として世界で使われるプロダクトを複数生み出し、AIの可能性を広げ続ける組織になっていたいと思っています。
―― AIが日常に拡がり、多くの人々がAIに触れ始めている今、冨平代表が個人的にワクワクしているAIの未来や、テクノロジーについてお聞かせください。
AIが広く普及することで、ほぼすべての産業や仕事の進め方が変わっていくと思います。その中でも、私が特にワクワクしているのは、「作りたい」と思ったものを形にするまでの距離が、一気に短くなっていることです。
以前は、一つのサービスを作るために、大人数のチームや長い開発期間が必要でした。しかし、生成AIを活用することで、企画、デザイン、実装、テストまでの速度が大きく上がっています。これまで個人では難しかった規模のプロダクトでも、アイデアを持った一人のエンジニアが短期間で形にできるようになりつつあります。個人開発をしている方にとっては、今は歴史上でも非常に面白いタイミングだと思います。
また、私たちは動画生成AIの研究開発にも力を入れていますが、この分野もようやく実用レベルに近づいてきました。動画生成AIが進化すると、映画やアニメのような表現も、大きな制作会社だけのもの commercial ではなくなります。一人の人間が持つ物語や世界観を、少人数でも映像として表現できるようになります。
AIが人の仕事を奪うかどうかだけではなく、人の想像力をどこまで広げられるか。その未来に大きな可能性を感じています。
社員の皆さんと(画像中央)
6. 未来の仲間へのメッセージ:完成された環境より、自らの手で未来を作りたい人へ
―― AIdeaLabでは、変化の大きい環境を楽しめる人や、AIによって世界が変わる未来を本気で信じている仲間を募集しています。最後に、これからジョインする未来のメンバーに向けてメッセージをお願いします。
AIが好きな方、新しい技術に触れることが好きな方、そして自分のアイデアを実際のプロダクトとして世の中に届けたい方と、ぜひ一緒に働きたいと思っています。
今回特にお会いしたいのは、フロントエンド・バックエンドのエンジニア、AIソリューション事業を推進するPM、営業、カスタマーサクセスです。AIの専門研究をしてきた方だけでなく、「新しい技術をまず触ってみる」「思いついたら自分で作ってみる」という姿勢を持つ方であれば、AIdeaLabで活躍できると思います。
AIdeaLabでは、最先端のAI技術を扱えるだけでなく、プロダクトの企画段階から開発、ユーザーへの提供、事業のグロースまで関わることができます。エンジニアが仕様通りにコードを書くだけの会社でも、PMが進捗管理だけをする会社でもありません。職種を越えて意見を出し合い、自分たちでプロダクトや事業の形を決めていける環境です。
まだ整っていないことや、正解が決まっていないことも多くあります。ただ、その分、自分の提案や実装がそのまま会社やプロダクトの未来につながります。完成された環境に入るよりも、自分たちの手でより良い組織やサービスを作っていきたい方には、とても面白いフェーズだと思います。
AIは、インターネットの登場と同じくらい大きく社会を変える可能性を持っています。その変化を外から見るのではなく、作る側として参加したい方と、AIとアイデアを掛け合わせ、世界をあっと驚かせる挑戦ができたら嬉しいです。